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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
これからの二人
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ジーンは『世界樹』の下でフリクを抱っこし、狼姿のロキに寄りかかって、次々と訪れる巡礼者に微笑みながら、『世界樹』の木霊、羽の生えたフリクの存在を見せていた。
希少な存在であるフリクを巡礼者は拝み、大地の恵みと繁栄を願った。
しばらくすると、ジーンは巡礼者の視線にも慣れてきて、微笑みながら、目の前に広がる大地と寝泊まりしていた家を見て思い出す。
…いつからだろう…ロキさんと一緒に居たいと思ったのは…。
背中に感じる温もりが、気持ちが良いと思うようになったのは…。
ジーンは過去を振り返り、初めて一晩、一緒に眠った時の事を思い出す。
…そうだ。
あの時…。
今思えば、ロキさんが夜空の下で、魔法を使って僕にくれた腕輪を作っているのを見て、ドキドキしてその姿に見惚れていた事を思い出す。
…あの時は気が付かなかったが、今なら分かる。
…あの時から、ロキさんの事が気になって、好きになっていたんだ…。
ジーンはそう思って、頬を染めた。
僕…鈍感すぎる…。
ロキさんは番だと言ったけど、きっと、そうでなくとも、気になっていただろう…そう思う。
「なに、赤くなってるんですか?」
不意に声をかけられ、ジーンはハッとした。
「…ルベア…」
友人のルベアが不思議そうに首を傾げてたずねてくる。
「…なんでもない…」
ロキと出会った頃を思い出して、恥ずかしくて赤くなっていたなんて言えない…。
「今日はもう終わりだろうですよ」
「わかった。ありがとう」
ぼんやりと物思いに耽っていて、ルベアが近付いて来たことにも気が付かなかった。
ルベアはジーンの腕の中で眠るフリクを覗き見て微笑む。
「かわいいですね」
「うん。かわいい」
ジーンはまるで我が子のように思えるフリクを見て微笑む。
一緒に成長していかないと…。
そしてルベアが、チラリとロキの方を見て、『先に神殿に戻っている』と、言って、行ってしまった。
まだ、狼姿のロキになれないのだろう…。
初めてルベアがロキさんに会ったときは、獣人の姿だった。
それも、久しぶりに会ったロキさんは、僕を離してくれなくて、ロキさんの膝の上で軽食を食べさせてもらっているのを目撃されてしまった。
…あれは恥ずかしかった。
ルベアにロキさんの事をどう説明して良いか分からず、しどろもどろになっていると、ルベアの前でロキさんは僕に口付けしてきた。
そして『俺の番だからだ手を出すな』と、ルベアに言って牽制するもんだから、ルベアは頭を抱えていた。
僕が真っ赤になって、あたふたすると、ルベアは『アミュール様は知っているんですか』と聞いてきて、『たぶん』と、答えると大きなため息を付いて、その場を離れていった。
ルベアにはいろいろ相談したから、すべてロキさんの事だと分かってしまって、余計に恥ずかしい…。
そんなロキさんは、ジーンの側に時々いた狼と、統一人物だと知って呆れた顔をしていた。
ロキさんの狼姿に慣れてくれるといいけど…。
ジーンは、狼姿で側で頭を伏せて目を閉じているロキの頭を撫でると、ロキは目を開けてチラリとジーンを見てくる。
「…僕の事、待っててくれて、ありがとう…」
何度も言っているかも知れないが、本当にそう思える。
自分の気持ちに気が付かず、グルグルと悩んで、たどり着いたのが、ロキさんの側に居たいと言うこと…。
僕が迷っている間、戻ってくるのを信じて待っていてくれたロキには感謝しかない。
でなければ、誰かと一緒にいると言う、自分の未来が想像できなかったからだ。
ジーンは頬を染めて言う。
「これからは、ずっと一緒にいてね…」
ジーンがそう言うと、ロキが頭をジーンに擦り付けてきて、身体の中がドキドキして、ホクホクとしてくる。
…これも『好き』って言うことなんだね…。
ジーンはこれから、いろんな『好き』をロキから教えてもらい、ジーンの中に集めていって、大人になっていくのだった。
後日、二人が番になって初めての、ロキの発情期が来て、ロキがどれだけ我慢していたのかを、ロキの本気をジーンが知るのは、もう少し後の事。
希少な存在であるフリクを巡礼者は拝み、大地の恵みと繁栄を願った。
しばらくすると、ジーンは巡礼者の視線にも慣れてきて、微笑みながら、目の前に広がる大地と寝泊まりしていた家を見て思い出す。
…いつからだろう…ロキさんと一緒に居たいと思ったのは…。
背中に感じる温もりが、気持ちが良いと思うようになったのは…。
ジーンは過去を振り返り、初めて一晩、一緒に眠った時の事を思い出す。
…そうだ。
あの時…。
今思えば、ロキさんが夜空の下で、魔法を使って僕にくれた腕輪を作っているのを見て、ドキドキしてその姿に見惚れていた事を思い出す。
…あの時は気が付かなかったが、今なら分かる。
…あの時から、ロキさんの事が気になって、好きになっていたんだ…。
ジーンはそう思って、頬を染めた。
僕…鈍感すぎる…。
ロキさんは番だと言ったけど、きっと、そうでなくとも、気になっていただろう…そう思う。
「なに、赤くなってるんですか?」
不意に声をかけられ、ジーンはハッとした。
「…ルベア…」
友人のルベアが不思議そうに首を傾げてたずねてくる。
「…なんでもない…」
ロキと出会った頃を思い出して、恥ずかしくて赤くなっていたなんて言えない…。
「今日はもう終わりだろうですよ」
「わかった。ありがとう」
ぼんやりと物思いに耽っていて、ルベアが近付いて来たことにも気が付かなかった。
ルベアはジーンの腕の中で眠るフリクを覗き見て微笑む。
「かわいいですね」
「うん。かわいい」
ジーンはまるで我が子のように思えるフリクを見て微笑む。
一緒に成長していかないと…。
そしてルベアが、チラリとロキの方を見て、『先に神殿に戻っている』と、言って、行ってしまった。
まだ、狼姿のロキになれないのだろう…。
初めてルベアがロキさんに会ったときは、獣人の姿だった。
それも、久しぶりに会ったロキさんは、僕を離してくれなくて、ロキさんの膝の上で軽食を食べさせてもらっているのを目撃されてしまった。
…あれは恥ずかしかった。
ルベアにロキさんの事をどう説明して良いか分からず、しどろもどろになっていると、ルベアの前でロキさんは僕に口付けしてきた。
そして『俺の番だからだ手を出すな』と、ルベアに言って牽制するもんだから、ルベアは頭を抱えていた。
僕が真っ赤になって、あたふたすると、ルベアは『アミュール様は知っているんですか』と聞いてきて、『たぶん』と、答えると大きなため息を付いて、その場を離れていった。
ルベアにはいろいろ相談したから、すべてロキさんの事だと分かってしまって、余計に恥ずかしい…。
そんなロキさんは、ジーンの側に時々いた狼と、統一人物だと知って呆れた顔をしていた。
ロキさんの狼姿に慣れてくれるといいけど…。
ジーンは、狼姿で側で頭を伏せて目を閉じているロキの頭を撫でると、ロキは目を開けてチラリとジーンを見てくる。
「…僕の事、待っててくれて、ありがとう…」
何度も言っているかも知れないが、本当にそう思える。
自分の気持ちに気が付かず、グルグルと悩んで、たどり着いたのが、ロキさんの側に居たいと言うこと…。
僕が迷っている間、戻ってくるのを信じて待っていてくれたロキには感謝しかない。
でなければ、誰かと一緒にいると言う、自分の未来が想像できなかったからだ。
ジーンは頬を染めて言う。
「これからは、ずっと一緒にいてね…」
ジーンがそう言うと、ロキが頭をジーンに擦り付けてきて、身体の中がドキドキして、ホクホクとしてくる。
…これも『好き』って言うことなんだね…。
ジーンはこれから、いろんな『好き』をロキから教えてもらい、ジーンの中に集めていって、大人になっていくのだった。
後日、二人が番になって初めての、ロキの発情期が来て、ロキがどれだけ我慢していたのかを、ロキの本気をジーンが知るのは、もう少し後の事。
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