神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
431 / 462
二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)

これからの二人

しおりを挟む
 ジーンは『世界樹』の下でフリクを抱っこし、狼姿のロキに寄りかかって、次々と訪れる巡礼者に微笑みながら、『世界樹』の木霊、羽の生えたフリクの存在を見せていた。
 希少な存在であるフリクを巡礼者は拝み、大地の恵みと繁栄を願った。
 
 しばらくすると、ジーンは巡礼者の視線にも慣れてきて、微笑みながら、目の前に広がる大地と寝泊まりしていた家を見て思い出す。
 …いつからだろう…ロキさんと一緒に居たいと思ったのは…。
 背中に感じる温もりが、気持ちが良いと思うようになったのは…。
 ジーンは過去を振り返り、初めて一晩、一緒に眠った時の事を思い出す。
 …そうだ。
 あの時…。
 今思えば、ロキさんが夜空の下で、魔法を使って僕にくれた腕輪を作っているのを見て、ドキドキしてその姿に見惚れていた事を思い出す。
 …あの時は気が付かなかったが、今なら分かる。
 …あの時から、ロキさんの事が気になって、好きになっていたんだ…。
 ジーンはそう思って、頬を染めた。
 僕…鈍感すぎる…。
 ロキさんはつがいだと言ったけど、きっと、そうでなくとも、気になっていただろう…そう思う。
「なに、赤くなってるんですか?」
 不意に声をかけられ、ジーンはハッとした。
「…ルベア…」
 友人のルベアが不思議そうに首を傾げてたずねてくる。
「…なんでもない…」
 ロキと出会った頃を思い出して、恥ずかしくて赤くなっていたなんて言えない…。
「今日はもう終わりだろうですよ」
「わかった。ありがとう」
 ぼんやりと物思いに耽っていて、ルベアが近付いて来たことにも気が付かなかった。
 ルベアはジーンの腕の中で眠るフリクを覗き見て微笑む。
「かわいいですね」
「うん。かわいい」
 ジーンはまるで我が子のように思えるフリクを見て微笑む。
 一緒に成長していかないと…。
 そしてルベアが、チラリとロキの方を見て、『先に神殿に戻っている』と、言って、行ってしまった。
 まだ、狼姿のロキになれないのだろう…。
 
 初めてルベアがロキさんに会ったときは、獣人の姿だった。
 それも、久しぶりに会ったロキさんは、僕を離してくれなくて、ロキさんの膝の上で軽食を食べさせてもらっているのを目撃されてしまった。
 …あれは恥ずかしかった。
 ルベアにロキさんの事をどう説明して良いか分からず、しどろもどろになっていると、ルベアの前でロキさんは僕に口付けしてきた。
 そして『俺のつがいだからだ手を出すな』と、ルベアに言って牽制するもんだから、ルベアは頭を抱えていた。
 僕が真っ赤になって、あたふたすると、ルベアは『アミュール様は知っているんですか』と聞いてきて、『たぶん』と、答えると大きなため息を付いて、その場を離れていった。
 ルベアにはいろいろ相談したから、すべてロキさんの事だと分かってしまって、余計に恥ずかしい…。
 そんなロキさんは、ジーンの側に時々いた狼と、統一人物だと知って呆れた顔をしていた。
 ロキさんの狼姿に慣れてくれるといいけど…。

 ジーンは、狼姿で側で頭を伏せて目を閉じているロキの頭を撫でると、ロキは目を開けてチラリとジーンを見てくる。
「…僕の事、待っててくれて、ありがとう…」
 何度も言っているかも知れないが、本当にそう思える。
 自分の気持ちに気が付かず、グルグルと悩んで、たどり着いたのが、ロキさんの側に居たいと言うこと…。
 僕が迷っている間、戻ってくるのを信じて待っていてくれたロキには感謝しかない。
 でなければ、誰かと一緒にいると言う、自分の未来が想像できなかったからだ。
 ジーンは頬を染めて言う。
「これからは、ずっと一緒にいてね…」
 ジーンがそう言うと、ロキが頭をジーンに擦り付けてきて、身体の中がドキドキして、ホクホクとしてくる。
 …これも『好き』って言うことなんだね…。
 ジーンはこれから、いろんな『好き』をロキから教えてもらい、ジーンの中に集めていって、大人になっていくのだった。


 後日、二人がつがいになって初めての、ロキの発情期が来て、ロキがどれだけ我慢していたのかを、ロキの本気をジーンが知るのは、もう少し後の事。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

処理中です...