423 / 462
二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
腕輪
しおりを挟む
ロキさんに別れを惜しまれながら、僕はアミュール様とジェスさんと一緒にヤマツカ町へと戻った。
僕はお父様のお屋敷で下ろされ、明日、迎えに来ると言う。
アミュール様は領主と話があるので、ジェスさんの館に泊まるらしい。
ジーンは馬車から降りて、アミュール様とジェスさんを振り替えると、決意が揺らがないうちに伝えようと思った。
「僕、神官の試験を受けます。…それで、受かったら、タミネキ村に行きたいです」
アミュールとジェスは驚いて、そして微笑んでくれた。
「頑張りなさい」
「頑張れよ」
そう言って二人を乗せた馬車は領主の館に向かって行った。
頑張って勉強して、神官の試験を受けて、フリクとロキさんのもとに行く…。
堂々と、あの場所に居ることが出来る、資格を得る…。
ジーンは、目標を見つけた。
動機はどうであれ、少し未来が見えた気がした。
王都に戻ったジーンは、友人のルベアと一緒に神官の勉強を始めた。と、言ってもジーンにとっては、ほとんどが復習だ。
ジーンが子供の頃、神官長候補のシノアス様に出会って教えてくれた、いろんな物語やお話が、神殿の成り立ちや、試験で問われる話題が盛りだくさんだったのだ。
今思えば、シノアス様、僕を神官にしようとしていた?
ジーンは、学校の課題も忘れずにこなし、目標が出来たことによって、やる気と暗記の覚えが早かった。
…何とかなりそうだ。
ジーンはそう思いながら、無我夢中で復習と勉強しながら日々を送っていた。
「最近身に付けている腕輪、綺麗ですよね」
ルベアが勉強の休憩時間に声をかけてきて、ジーンはドキリとした。
「…今まで装飾品を着けなかったジーン様が、毎日付けてるので珍しくて…」
ルベアは苦笑いしてそう答えた。
…そう言えば、手元に何か付けているのは、落ち着かなくて、今まで何も付けていなかった。
それが、急に毎日付けているとなると、不思議に思うかもしれない…。
「…もらったんだ。…お守りに…」
ジーンはそう話しながら、ロキの事を思い出して頬を染めた。
ルベアは『おやっ?』っと思って、聞いてきた。
「…もしかして、好きな人にプレゼントされたんですか?」
「えっ!?…好きって言うか…よく分からなくて…」
ジーンはしどろもどろに頬を染めて声を小さくして言う。
「…一緒にいると…ドキドキして…何を話せば良いか…分からなくて…」
「…それで」
「…これをもらって…嬉しくて…」
ジーンは左手首をルベアに見せる。
「それでそれで」
「…もっと、話がしたい…って思って…」
ジーンは机に頭を付けて、顔を隠して耳を真っ赤にして言う。
「でも、それが『好き』って言うのか分からなくて…」
…僕は、何をルベアに話しているんだ…。
ジーンは恥ずかしくて、頭を机から上げられなかった。
「…良いんじゃないですか。『好き』か、分からなくても」
その言葉にジーンは頭を上げてルベアを見ると、微笑んで答えてくれた。
「急がなくて良いと思いますよ。その気持ちを少しづつ大切に育てていけば…。いつか突然、分かるから…」
ルベアもそんな経験をしたことが有るのか、そう答えてくれた。
「…分かるのかな…」
不安そうにジーンが言うと、ルベアはクスクスと笑い出す。
「…ジーン様から恋愛の相談をされるとは思いませんでした」
「…恋愛って…」
ジーンは真っ赤になって、ルベアを睨み付ける。
「…もしかして、神官の試験を受ける気になったのも、その方の影響と言うか、きっかけですか?」
「…。」
…その通りだ。
ジーンは返事が出来ずに俯くと、ルベアが再びクスクスと笑って言う。
「ジーン様をその気にさせた方に会ってみたいですね。…いつか、紹介してくださいよ」
「…。」
…これは、ルベアが言うように、恋愛なのだろうか…。
ロキさんが、僕の事を、番だと言ったから、そんな気がするだけなのだろうか…。
いまだ、僕には分からない…。
でも、もっとロキさんと話をしてみたい…。
そのためにも、試験に受からなくては…。
「ルベア。休憩は終わり!さっきの続きから暗記の確認だぞ!」
「わかってますよ、ジーン様」
ルベアはニコニコとしながらジーンと答え合わせを始めた。
僕はお父様のお屋敷で下ろされ、明日、迎えに来ると言う。
アミュール様は領主と話があるので、ジェスさんの館に泊まるらしい。
ジーンは馬車から降りて、アミュール様とジェスさんを振り替えると、決意が揺らがないうちに伝えようと思った。
「僕、神官の試験を受けます。…それで、受かったら、タミネキ村に行きたいです」
アミュールとジェスは驚いて、そして微笑んでくれた。
「頑張りなさい」
「頑張れよ」
そう言って二人を乗せた馬車は領主の館に向かって行った。
頑張って勉強して、神官の試験を受けて、フリクとロキさんのもとに行く…。
堂々と、あの場所に居ることが出来る、資格を得る…。
ジーンは、目標を見つけた。
動機はどうであれ、少し未来が見えた気がした。
王都に戻ったジーンは、友人のルベアと一緒に神官の勉強を始めた。と、言ってもジーンにとっては、ほとんどが復習だ。
ジーンが子供の頃、神官長候補のシノアス様に出会って教えてくれた、いろんな物語やお話が、神殿の成り立ちや、試験で問われる話題が盛りだくさんだったのだ。
今思えば、シノアス様、僕を神官にしようとしていた?
ジーンは、学校の課題も忘れずにこなし、目標が出来たことによって、やる気と暗記の覚えが早かった。
…何とかなりそうだ。
ジーンはそう思いながら、無我夢中で復習と勉強しながら日々を送っていた。
「最近身に付けている腕輪、綺麗ですよね」
ルベアが勉強の休憩時間に声をかけてきて、ジーンはドキリとした。
「…今まで装飾品を着けなかったジーン様が、毎日付けてるので珍しくて…」
ルベアは苦笑いしてそう答えた。
…そう言えば、手元に何か付けているのは、落ち着かなくて、今まで何も付けていなかった。
それが、急に毎日付けているとなると、不思議に思うかもしれない…。
「…もらったんだ。…お守りに…」
ジーンはそう話しながら、ロキの事を思い出して頬を染めた。
ルベアは『おやっ?』っと思って、聞いてきた。
「…もしかして、好きな人にプレゼントされたんですか?」
「えっ!?…好きって言うか…よく分からなくて…」
ジーンはしどろもどろに頬を染めて声を小さくして言う。
「…一緒にいると…ドキドキして…何を話せば良いか…分からなくて…」
「…それで」
「…これをもらって…嬉しくて…」
ジーンは左手首をルベアに見せる。
「それでそれで」
「…もっと、話がしたい…って思って…」
ジーンは机に頭を付けて、顔を隠して耳を真っ赤にして言う。
「でも、それが『好き』って言うのか分からなくて…」
…僕は、何をルベアに話しているんだ…。
ジーンは恥ずかしくて、頭を机から上げられなかった。
「…良いんじゃないですか。『好き』か、分からなくても」
その言葉にジーンは頭を上げてルベアを見ると、微笑んで答えてくれた。
「急がなくて良いと思いますよ。その気持ちを少しづつ大切に育てていけば…。いつか突然、分かるから…」
ルベアもそんな経験をしたことが有るのか、そう答えてくれた。
「…分かるのかな…」
不安そうにジーンが言うと、ルベアはクスクスと笑い出す。
「…ジーン様から恋愛の相談をされるとは思いませんでした」
「…恋愛って…」
ジーンは真っ赤になって、ルベアを睨み付ける。
「…もしかして、神官の試験を受ける気になったのも、その方の影響と言うか、きっかけですか?」
「…。」
…その通りだ。
ジーンは返事が出来ずに俯くと、ルベアが再びクスクスと笑って言う。
「ジーン様をその気にさせた方に会ってみたいですね。…いつか、紹介してくださいよ」
「…。」
…これは、ルベアが言うように、恋愛なのだろうか…。
ロキさんが、僕の事を、番だと言ったから、そんな気がするだけなのだろうか…。
いまだ、僕には分からない…。
でも、もっとロキさんと話をしてみたい…。
そのためにも、試験に受からなくては…。
「ルベア。休憩は終わり!さっきの続きから暗記の確認だぞ!」
「わかってますよ、ジーン様」
ルベアはニコニコとしながらジーンと答え合わせを始めた。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる