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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
腕輪
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ロキさんに別れを惜しまれながら、僕はアミュール様とジェスさんと一緒にヤマツカ町へと戻った。
僕はお父様のお屋敷で下ろされ、明日、迎えに来ると言う。
アミュール様は領主と話があるので、ジェスさんの館に泊まるらしい。
ジーンは馬車から降りて、アミュール様とジェスさんを振り替えると、決意が揺らがないうちに伝えようと思った。
「僕、神官の試験を受けます。…それで、受かったら、タミネキ村に行きたいです」
アミュールとジェスは驚いて、そして微笑んでくれた。
「頑張りなさい」
「頑張れよ」
そう言って二人を乗せた馬車は領主の館に向かって行った。
頑張って勉強して、神官の試験を受けて、フリクとロキさんのもとに行く…。
堂々と、あの場所に居ることが出来る、資格を得る…。
ジーンは、目標を見つけた。
動機はどうであれ、少し未来が見えた気がした。
王都に戻ったジーンは、友人のルベアと一緒に神官の勉強を始めた。と、言ってもジーンにとっては、ほとんどが復習だ。
ジーンが子供の頃、神官長候補のシノアス様に出会って教えてくれた、いろんな物語やお話が、神殿の成り立ちや、試験で問われる話題が盛りだくさんだったのだ。
今思えば、シノアス様、僕を神官にしようとしていた?
ジーンは、学校の課題も忘れずにこなし、目標が出来たことによって、やる気と暗記の覚えが早かった。
…何とかなりそうだ。
ジーンはそう思いながら、無我夢中で復習と勉強しながら日々を送っていた。
「最近身に付けている腕輪、綺麗ですよね」
ルベアが勉強の休憩時間に声をかけてきて、ジーンはドキリとした。
「…今まで装飾品を着けなかったジーン様が、毎日付けてるので珍しくて…」
ルベアは苦笑いしてそう答えた。
…そう言えば、手元に何か付けているのは、落ち着かなくて、今まで何も付けていなかった。
それが、急に毎日付けているとなると、不思議に思うかもしれない…。
「…もらったんだ。…お守りに…」
ジーンはそう話しながら、ロキの事を思い出して頬を染めた。
ルベアは『おやっ?』っと思って、聞いてきた。
「…もしかして、好きな人にプレゼントされたんですか?」
「えっ!?…好きって言うか…よく分からなくて…」
ジーンはしどろもどろに頬を染めて声を小さくして言う。
「…一緒にいると…ドキドキして…何を話せば良いか…分からなくて…」
「…それで」
「…これをもらって…嬉しくて…」
ジーンは左手首をルベアに見せる。
「それでそれで」
「…もっと、話がしたい…って思って…」
ジーンは机に頭を付けて、顔を隠して耳を真っ赤にして言う。
「でも、それが『好き』って言うのか分からなくて…」
…僕は、何をルベアに話しているんだ…。
ジーンは恥ずかしくて、頭を机から上げられなかった。
「…良いんじゃないですか。『好き』か、分からなくても」
その言葉にジーンは頭を上げてルベアを見ると、微笑んで答えてくれた。
「急がなくて良いと思いますよ。その気持ちを少しづつ大切に育てていけば…。いつか突然、分かるから…」
ルベアもそんな経験をしたことが有るのか、そう答えてくれた。
「…分かるのかな…」
不安そうにジーンが言うと、ルベアはクスクスと笑い出す。
「…ジーン様から恋愛の相談をされるとは思いませんでした」
「…恋愛って…」
ジーンは真っ赤になって、ルベアを睨み付ける。
「…もしかして、神官の試験を受ける気になったのも、その方の影響と言うか、きっかけですか?」
「…。」
…その通りだ。
ジーンは返事が出来ずに俯くと、ルベアが再びクスクスと笑って言う。
「ジーン様をその気にさせた方に会ってみたいですね。…いつか、紹介してくださいよ」
「…。」
…これは、ルベアが言うように、恋愛なのだろうか…。
ロキさんが、僕の事を、番だと言ったから、そんな気がするだけなのだろうか…。
いまだ、僕には分からない…。
でも、もっとロキさんと話をしてみたい…。
そのためにも、試験に受からなくては…。
「ルベア。休憩は終わり!さっきの続きから暗記の確認だぞ!」
「わかってますよ、ジーン様」
ルベアはニコニコとしながらジーンと答え合わせを始めた。
僕はお父様のお屋敷で下ろされ、明日、迎えに来ると言う。
アミュール様は領主と話があるので、ジェスさんの館に泊まるらしい。
ジーンは馬車から降りて、アミュール様とジェスさんを振り替えると、決意が揺らがないうちに伝えようと思った。
「僕、神官の試験を受けます。…それで、受かったら、タミネキ村に行きたいです」
アミュールとジェスは驚いて、そして微笑んでくれた。
「頑張りなさい」
「頑張れよ」
そう言って二人を乗せた馬車は領主の館に向かって行った。
頑張って勉強して、神官の試験を受けて、フリクとロキさんのもとに行く…。
堂々と、あの場所に居ることが出来る、資格を得る…。
ジーンは、目標を見つけた。
動機はどうであれ、少し未来が見えた気がした。
王都に戻ったジーンは、友人のルベアと一緒に神官の勉強を始めた。と、言ってもジーンにとっては、ほとんどが復習だ。
ジーンが子供の頃、神官長候補のシノアス様に出会って教えてくれた、いろんな物語やお話が、神殿の成り立ちや、試験で問われる話題が盛りだくさんだったのだ。
今思えば、シノアス様、僕を神官にしようとしていた?
ジーンは、学校の課題も忘れずにこなし、目標が出来たことによって、やる気と暗記の覚えが早かった。
…何とかなりそうだ。
ジーンはそう思いながら、無我夢中で復習と勉強しながら日々を送っていた。
「最近身に付けている腕輪、綺麗ですよね」
ルベアが勉強の休憩時間に声をかけてきて、ジーンはドキリとした。
「…今まで装飾品を着けなかったジーン様が、毎日付けてるので珍しくて…」
ルベアは苦笑いしてそう答えた。
…そう言えば、手元に何か付けているのは、落ち着かなくて、今まで何も付けていなかった。
それが、急に毎日付けているとなると、不思議に思うかもしれない…。
「…もらったんだ。…お守りに…」
ジーンはそう話しながら、ロキの事を思い出して頬を染めた。
ルベアは『おやっ?』っと思って、聞いてきた。
「…もしかして、好きな人にプレゼントされたんですか?」
「えっ!?…好きって言うか…よく分からなくて…」
ジーンはしどろもどろに頬を染めて声を小さくして言う。
「…一緒にいると…ドキドキして…何を話せば良いか…分からなくて…」
「…それで」
「…これをもらって…嬉しくて…」
ジーンは左手首をルベアに見せる。
「それでそれで」
「…もっと、話がしたい…って思って…」
ジーンは机に頭を付けて、顔を隠して耳を真っ赤にして言う。
「でも、それが『好き』って言うのか分からなくて…」
…僕は、何をルベアに話しているんだ…。
ジーンは恥ずかしくて、頭を机から上げられなかった。
「…良いんじゃないですか。『好き』か、分からなくても」
その言葉にジーンは頭を上げてルベアを見ると、微笑んで答えてくれた。
「急がなくて良いと思いますよ。その気持ちを少しづつ大切に育てていけば…。いつか突然、分かるから…」
ルベアもそんな経験をしたことが有るのか、そう答えてくれた。
「…分かるのかな…」
不安そうにジーンが言うと、ルベアはクスクスと笑い出す。
「…ジーン様から恋愛の相談をされるとは思いませんでした」
「…恋愛って…」
ジーンは真っ赤になって、ルベアを睨み付ける。
「…もしかして、神官の試験を受ける気になったのも、その方の影響と言うか、きっかけですか?」
「…。」
…その通りだ。
ジーンは返事が出来ずに俯くと、ルベアが再びクスクスと笑って言う。
「ジーン様をその気にさせた方に会ってみたいですね。…いつか、紹介してくださいよ」
「…。」
…これは、ルベアが言うように、恋愛なのだろうか…。
ロキさんが、僕の事を、番だと言ったから、そんな気がするだけなのだろうか…。
いまだ、僕には分からない…。
でも、もっとロキさんと話をしてみたい…。
そのためにも、試験に受からなくては…。
「ルベア。休憩は終わり!さっきの続きから暗記の確認だぞ!」
「わかってますよ、ジーン様」
ルベアはニコニコとしながらジーンと答え合わせを始めた。
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