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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
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タミネキ村へたどり着くと、以前とは違って、人の多さに驚いた。
道沿いには屋台が並び、食べ物を販売している店が増え、旅装束の者達もチラホラ見えた。
建築中の建物がいくつもあり、宿や飲食店などになるのかもしれなかった。
観光地になりつつある…。
まだ、神殿は完成していないし、お披露目も行われていない。
それでも、噂を聞いた人々が集まりだしていた。
噂ってすごい…。
馬車に乗車したまま柵の中に入れるのは、領主と神殿の馬車だけで、これからは柵の前で馬車を降りて、歩いて『世界樹』の元に行くようになるそうだ。
以前来たときは、村人が作った簡単な柵だったが、今はしっかりとした丈夫な柵に変わり、警備員が駐屯する小屋も出来ていて、御者が手続きをすると、柵が開けられ、中へと進み始めた。
ジーン達の乗る馬車が『世界樹』の側まで来ると、家の前で止まり、家からロキさんが出てきた。
ジェスさんとアミュール様が馬車から降り、最後にジーンが馬車から降りると、ロキさんと目が合い、ロキさんがジーンに近付いて来て、そのまま腕の中に引き寄せられた。
ジーンはカアッと赤くなる。
恥ずかしいのとドキドキするのと…。
「…ジーン。先に『世界樹』に挨拶にいってますよ」
アミュール様にそう言われて、ジーンはハッとしたが、ロキさんは腕の中からジーンを離してくれなかった。
暖かい温もりと優しい香りが、ジーンを包む。
「…あっ、あの…そろそろ…離してください…」
ジーンがしどろもどろに言うと、ロキはそっと力を緩めてくれた。
「…腕輪…してくれてる…」
ロキはジーンの左手首にはめられたバングルを見つけ、そう呟き、ジーンの左手を手に取り、ロキの視線まで持ち上げるとバングルに口づけてきた。
「つっ…!!」
自分が口付けられた訳でもないのに、ジーンは真っ赤になって、心臓がバクバク鳴って、身体中が痺れた。
…僕の身体、何かおかしい…。
普段は何も思わ無いのに、ロキさんを目の前にする時だけ、どうしたら良いのか分からなくなってしまう。
そんなロキさんに促されて、アミュール様とジェスさんが先に向かった『世界樹』のもとへ、足を向けた。
一緒に歩いているだけなのに、動機が止まらない…。
ジーンはチラリと隣を歩くロキを見上げると、ロキはジーンに気がついて、微笑んでくる。
その微笑みにクラクラしながらジーンは俯いて、『世界樹』の元にたどり着いた。
ジーンは気を取り直して『世界樹』に声をかける。
「フリク」
すると、『世界樹』から木霊のフリクが現れ、ジーンに抱きついて来て、グリグリと頭を擦り付ける。
…かわいい…。
「ジーン様。我々は神殿の建築状況を確認に行きますね。…一緒に神殿の方にいかれますか?それともこちらで…」
ジェスさんが言い終わる前に、ロキがフリクごとジーンを抱き締めてくる。
だから恥ずかしいって…。
ロキに抱き締められるのが嫌ではないジーンは、頬を染めながらアミュールを見る。
「…ココにいます」
アミュールは微笑みながら言う。
「夕方にはヤマツカ町へと戻りますので、それまでは自由にして構わないですよ」
「はい」
ジーンが返事すると、ロキがムッとした表情で、ジーンに問う。
「…帰るのか?」
「…視察に来ただけだから…」
ジーンが申し訳なさそうに言うと、ロキはジーンの身体を抱えて、家の方に向かって行く。
えっ何?
「…嫌がることをしては駄目ですよ」
アミュールがそれとなく声をかけてくるが、言っている意味が分からない。
それって、僕に言ったの?それともロキさんに?
ジーンの戸惑いをよそに、アミュールとジェスは神殿の方に向かって歩いていき、ジーンはフリクを抱えたまま、家の中の、以前一緒に眠った一段上がった場所に座らされた。
そしてジーンはフリクを挟み、ロキと目が合う。
どっ、どうしたんだろう…。
しばらく黙ったまま見つめ合い、ロキは意を決したように、ジーンに言った。
「ジーン。お前は俺の番だ」
道沿いには屋台が並び、食べ物を販売している店が増え、旅装束の者達もチラホラ見えた。
建築中の建物がいくつもあり、宿や飲食店などになるのかもしれなかった。
観光地になりつつある…。
まだ、神殿は完成していないし、お披露目も行われていない。
それでも、噂を聞いた人々が集まりだしていた。
噂ってすごい…。
馬車に乗車したまま柵の中に入れるのは、領主と神殿の馬車だけで、これからは柵の前で馬車を降りて、歩いて『世界樹』の元に行くようになるそうだ。
以前来たときは、村人が作った簡単な柵だったが、今はしっかりとした丈夫な柵に変わり、警備員が駐屯する小屋も出来ていて、御者が手続きをすると、柵が開けられ、中へと進み始めた。
ジーン達の乗る馬車が『世界樹』の側まで来ると、家の前で止まり、家からロキさんが出てきた。
ジェスさんとアミュール様が馬車から降り、最後にジーンが馬車から降りると、ロキさんと目が合い、ロキさんがジーンに近付いて来て、そのまま腕の中に引き寄せられた。
ジーンはカアッと赤くなる。
恥ずかしいのとドキドキするのと…。
「…ジーン。先に『世界樹』に挨拶にいってますよ」
アミュール様にそう言われて、ジーンはハッとしたが、ロキさんは腕の中からジーンを離してくれなかった。
暖かい温もりと優しい香りが、ジーンを包む。
「…あっ、あの…そろそろ…離してください…」
ジーンがしどろもどろに言うと、ロキはそっと力を緩めてくれた。
「…腕輪…してくれてる…」
ロキはジーンの左手首にはめられたバングルを見つけ、そう呟き、ジーンの左手を手に取り、ロキの視線まで持ち上げるとバングルに口づけてきた。
「つっ…!!」
自分が口付けられた訳でもないのに、ジーンは真っ赤になって、心臓がバクバク鳴って、身体中が痺れた。
…僕の身体、何かおかしい…。
普段は何も思わ無いのに、ロキさんを目の前にする時だけ、どうしたら良いのか分からなくなってしまう。
そんなロキさんに促されて、アミュール様とジェスさんが先に向かった『世界樹』のもとへ、足を向けた。
一緒に歩いているだけなのに、動機が止まらない…。
ジーンはチラリと隣を歩くロキを見上げると、ロキはジーンに気がついて、微笑んでくる。
その微笑みにクラクラしながらジーンは俯いて、『世界樹』の元にたどり着いた。
ジーンは気を取り直して『世界樹』に声をかける。
「フリク」
すると、『世界樹』から木霊のフリクが現れ、ジーンに抱きついて来て、グリグリと頭を擦り付ける。
…かわいい…。
「ジーン様。我々は神殿の建築状況を確認に行きますね。…一緒に神殿の方にいかれますか?それともこちらで…」
ジェスさんが言い終わる前に、ロキがフリクごとジーンを抱き締めてくる。
だから恥ずかしいって…。
ロキに抱き締められるのが嫌ではないジーンは、頬を染めながらアミュールを見る。
「…ココにいます」
アミュールは微笑みながら言う。
「夕方にはヤマツカ町へと戻りますので、それまでは自由にして構わないですよ」
「はい」
ジーンが返事すると、ロキがムッとした表情で、ジーンに問う。
「…帰るのか?」
「…視察に来ただけだから…」
ジーンが申し訳なさそうに言うと、ロキはジーンの身体を抱えて、家の方に向かって行く。
えっ何?
「…嫌がることをしては駄目ですよ」
アミュールがそれとなく声をかけてくるが、言っている意味が分からない。
それって、僕に言ったの?それともロキさんに?
ジーンの戸惑いをよそに、アミュールとジェスは神殿の方に向かって歩いていき、ジーンはフリクを抱えたまま、家の中の、以前一緒に眠った一段上がった場所に座らされた。
そしてジーンはフリクを挟み、ロキと目が合う。
どっ、どうしたんだろう…。
しばらく黙ったまま見つめ合い、ロキは意を決したように、ジーンに言った。
「ジーン。お前は俺の番だ」
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