神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)

ヤマツカ町のお屋敷

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 今日は、一泊二日のヤマツカ町への監査の日。
 神殿からヤマツカ町に有る領主の館へ繋がる魔法陣を使って、アミュール様と一緒に『転移』した。
 出迎えてくれたのは、お父様の側近のジェスさん。
 馬車に乗り込み、町中を移動した。
 すぐにタミネキ村へ向かうのではないようだ。
 
 たどり着いたのは、大きなお屋敷。
 ジェスさんとアミュール様と一緒に馬車から降り、入り口の門に向かうと、中から見知った顔が現れた。
「…マークさん?と、カムイさん?」
 二人は、リーンが深い眠りにに付いたとき、リオナスのお父様の仕事場に来て、宿舎や部屋をお掃除をしてくれた、獣人のリーンのお友達。
「こんにちわ。ジーン様」
 待っていましたと、ばかりに、マークさんが微笑んで出迎えてくれた。
「こんにちわ。…ココはマークさんのお屋敷?」
「違うよ。僕はね管理を任されているだけ」
 マークさんはニコニコと微笑みながら、意味深げに答えてくれる。
「どうぞ、中へ」
 マークさんに促されて、僕たちは屋敷へと向かった。


「ジーン様。ココは先日から、ルーク様のお屋敷になりました」
 広い談話室に集まり、事の次第をジェスさんが話してくれた。
 マークさんが仕事に来ていたお屋敷の、おば様に気に入られ、亡くなった時にマークさんに渡すよう遺言され、親族が激怒した。
 収集が付かないため、マークさんが領主に譲渡し、カザンナ王国の第三王子であるお父様へと譲られ、屋敷の使用人はそのまま残ってもらい、マークさんが管理を任されたそうだ。
 そうなんだ…。
「ですので、ココはジーン様がヤマツカ町にいる間、使用する事が出来るお屋敷になります」 
「…。」
 ジーンは茫然としてしまった。
 …それって、今度からヤマツカ町に来たときは、ココに泊まると言うこと…。
「規模は王都のお屋敷よりは小さいですが、庭園が美しいですよ」
 ジェスさんはそう言って微笑む。
「…いわゆる、お父様の別荘…保養地…みたいな、お屋敷と言うことですか?」
 ジーンは思い付く言葉で聞いてみた。
「そう思ってもらっても構わないですよ」
 と、言うことは、このお屋敷と王都のお屋敷を、魔法陣の『転移』を使って繋げれば、いつでもヤマツカ町に来れると言うこと…。
 …お父様にお願いしてみよう…。
「ジーン様。庭園をご覧になりませんか」
 ジェスさんがそう言ったので、ジーンは頷いた。
「見てみたい」
「では、こちらへ」
 ジーンはジェスとマーク、カムイと一緒に、案内されて、建物の奥へと進んだ。
 お屋敷の前庭も綺麗に整えられていたが、奥へと進む渡り廊下から見える小さな庭にも、小さな花が咲いているのが見えた。
 もともとココに住んでいた方の好みが、落ち着きの有る、僕と似た好みのようで嬉しかった。 
 渡り廊下の奥にあった部屋はテラスになっていて、広い庭園が一望できた。
「うわぁっ…」
 思わず声が出てしまった。
 庭園側が殆んどガラス張りになっていて、雨の日でも、この部屋から庭を眺めることが出来る…。
「ココではガーデンパーティーをしたり、お茶会をするのに最適です。前主、イワニおば様も、お茶会をよく催していました」
「…庭園に出ても良い?」
 ジーンはもっと近くで庭を見たくてウズウズして、聞いてみる。
「どうぞ、ご自由に見てください」
 ジーンが庭園に出る扉を開けようとすると、マークさんがニコニコしながら開けてくれた。
「ありがとう」
 ジーンは庭園に出ると、柔らかい暖かな風を感じた。
 気持ちが良い…。
 花壇には小さな花が咲き、いろんな種類の木の葉が青々と繁っていて、果実が実っている木もあれば、花が咲いている木もある。
 なんだか楽しいな…。
 カザナのお屋敷には果実の木は、植えていなかったから、実っていく様子を観察するのも楽しいだろう…。
 ふと視界に、枝が長く上にも横に伸びた、見たことの無い大きな木が、目にはいった。
 ジーンが近付こうとすると、その木の下に、異国の服を着た、薄ピンク色の長い髪の女の子を見つけた。
 どこだったっけ…。
 あの珍しい服は、確か島国の…。
 そんなことを考えながら近付くと、少女と目が合った。
 リーンと一緒の緑色の瞳…。
 …もしかして…木霊…?
 最近、…『世界樹』のフリクに会ってから、木霊が実体化して見えてしまうようになり、時折、人と区別が付かなくなってしまい、困っていたのだ。
 ルベアに、『どうしました?木に話しかけて…』と、言われて気がついた。
 さすがに、恥ずかしかった…。
 ルベアには、木霊達が見えないのだ。
 木の下に居る子は、木霊の可能性があるので要注意。と、自分の中で決め事をした。
「…私が見えるの?」
 女の子がジーンに声をかけてきた。
「うん。見えるよ」
 ジーンがそう言うと、女の子は目を丸くして驚いていた。





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