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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
ジーンの迷い
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ジーンは、『世界樹』のもとから、ヤマツカ町の領主の屋敷に行き、領主の館で今後の調整をしていたアミュール様と一緒に、王都の神殿に繋がる魔法陣を使って王都へと戻った。
一瞬のことだった。
この魔法陣は固定された為、事前に領主側と連絡を取り合えば、いつでもヤマツカ町へと行けるそうだ。
ただし領主の館なので、頻繁には使えない…。
それでも、馬車に揺られて数日かかる道のりよりも、時間の短縮にはなる。
ジーン達が乗ってきた馬車は、ヤマツカ町から王都に向かう者が使用して、すでに王都に戻っているとの事だ。
ちょっと気になってアミュール様に聞いてみた。
『世界樹』の事は、正式に国からの発表がされるまで、秘密だそうで、話をしたかったらお父様になら話してと良いと言われた。
カンの良い、双子のユーリにも秘密だなんて、絶対に無理だ。
別れ際に、アミュール様が思い出したように、ロキさんからもらったバングルを見せて欲しいと言われ、渡すと、しばらくじっと見て返してくれた。
「なるべく身につけていなさい。貴方を守ってくれますよ」
アミュール様にそう言われて、ドキッとした。
…ロキさんが、僕の為に…くれた…。
シンプルなデザインなので、普段から身に付けていても支障はない…。
ジーンはその場で左腕にはめると、目もとまで持ち上げて黒く少し金の入ったバングルを眺めた。
ジーンは学校に戻り、遅れていた分の課題を補修で補った。
友人の見習い神官ルベアは、神官になるべく勉強をしていた。
彼は小等科に通う弟達のために、神官になって給料をもらい、高等科に通わせるのだと意気込んでいた。
ルベアが言うには、本が好きな弟君達は、自分よりも頭が良いので、好きなだけ勉強してもらいたい、そんな思いもあるらしい。
なのでルベアに付き合って、僕も神官になるべく勉強をしている。
質問を言って答え合わせをした方が、頭に入るから、とか…。
ルベアに、神官になる、ならないは、試験に受かってから考えろ。資格を持っているだけで、何かに役立つこともあるかも。
と、言われたのもある。
グダグダ考えるより、気が紛れると言うか、集中できると言うか…。
ジーンは高等科の課題をこなしながら、神官の勉強をしていると、あっという間に、長期休暇の時期がやって来た。
ユーリは獣人の街グオルクへ、キリトを追いかけて…もとい、施設の研修生として向かうことになっていた。
本当に騎士を止めるんだ…。
ユーリの決意は揺るがなかった。
僕は…。
まだ、神殿の見習い神官から、神官になる為の試験を受けるのをためらっていた。
神官になって『世界樹』のフリクの側にいるのは嫌ではない。
だけど、なんだろう…こう、決め手になる何かが欠けている気がして、グルグルと悩み、決めかねていた。
…決意が弱いのだろう…。
これだ!って思えば、前に進めるのに…。
ふと思い出したように、モヤモヤとして落ち着かないときは、ロキさんにもらったバングルを見ると何故か落ち着いた。
…なぜだろう…不思議だ…。
アミュール様からヤマツカ町へ、タミネキ村の『世界樹』の神殿の建築状況を見に行くから、一緒に来るかと言われて、即、返事した。
今まで気にしたことが無かったが、ざわめきの有る王都より、あの村の『世界樹』の側が一番落ち着いた。
カザナのお父様のお屋敷の『宿り木』ミーネがいる場所とよく似ているからかも知れないが…。
もう一度、あの場所に行けば、何か見つかる気がした。
決めかねている、この先の未来を選ぶ選択…。
…それまでに、終わらせれる課題だけは終わらせておこう…。
一瞬のことだった。
この魔法陣は固定された為、事前に領主側と連絡を取り合えば、いつでもヤマツカ町へと行けるそうだ。
ただし領主の館なので、頻繁には使えない…。
それでも、馬車に揺られて数日かかる道のりよりも、時間の短縮にはなる。
ジーン達が乗ってきた馬車は、ヤマツカ町から王都に向かう者が使用して、すでに王都に戻っているとの事だ。
ちょっと気になってアミュール様に聞いてみた。
『世界樹』の事は、正式に国からの発表がされるまで、秘密だそうで、話をしたかったらお父様になら話してと良いと言われた。
カンの良い、双子のユーリにも秘密だなんて、絶対に無理だ。
別れ際に、アミュール様が思い出したように、ロキさんからもらったバングルを見せて欲しいと言われ、渡すと、しばらくじっと見て返してくれた。
「なるべく身につけていなさい。貴方を守ってくれますよ」
アミュール様にそう言われて、ドキッとした。
…ロキさんが、僕の為に…くれた…。
シンプルなデザインなので、普段から身に付けていても支障はない…。
ジーンはその場で左腕にはめると、目もとまで持ち上げて黒く少し金の入ったバングルを眺めた。
ジーンは学校に戻り、遅れていた分の課題を補修で補った。
友人の見習い神官ルベアは、神官になるべく勉強をしていた。
彼は小等科に通う弟達のために、神官になって給料をもらい、高等科に通わせるのだと意気込んでいた。
ルベアが言うには、本が好きな弟君達は、自分よりも頭が良いので、好きなだけ勉強してもらいたい、そんな思いもあるらしい。
なのでルベアに付き合って、僕も神官になるべく勉強をしている。
質問を言って答え合わせをした方が、頭に入るから、とか…。
ルベアに、神官になる、ならないは、試験に受かってから考えろ。資格を持っているだけで、何かに役立つこともあるかも。
と、言われたのもある。
グダグダ考えるより、気が紛れると言うか、集中できると言うか…。
ジーンは高等科の課題をこなしながら、神官の勉強をしていると、あっという間に、長期休暇の時期がやって来た。
ユーリは獣人の街グオルクへ、キリトを追いかけて…もとい、施設の研修生として向かうことになっていた。
本当に騎士を止めるんだ…。
ユーリの決意は揺るがなかった。
僕は…。
まだ、神殿の見習い神官から、神官になる為の試験を受けるのをためらっていた。
神官になって『世界樹』のフリクの側にいるのは嫌ではない。
だけど、なんだろう…こう、決め手になる何かが欠けている気がして、グルグルと悩み、決めかねていた。
…決意が弱いのだろう…。
これだ!って思えば、前に進めるのに…。
ふと思い出したように、モヤモヤとして落ち着かないときは、ロキさんにもらったバングルを見ると何故か落ち着いた。
…なぜだろう…不思議だ…。
アミュール様からヤマツカ町へ、タミネキ村の『世界樹』の神殿の建築状況を見に行くから、一緒に来るかと言われて、即、返事した。
今まで気にしたことが無かったが、ざわめきの有る王都より、あの村の『世界樹』の側が一番落ち着いた。
カザナのお父様のお屋敷の『宿り木』ミーネがいる場所とよく似ているからかも知れないが…。
もう一度、あの場所に行けば、何か見つかる気がした。
決めかねている、この先の未来を選ぶ選択…。
…それまでに、終わらせれる課題だけは終わらせておこう…。
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