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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
贈り物
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朝、ジーンが目覚めると、目の前に、ゴツゴツした固い感触が有った。
…んっ?なんだろう…。
目を開けて、視界に誰かの身体があって、密着して眠っていたことに驚いて、ジーンは思わず飛び起きた。
冷静になって良く見ると、ロキさんだ…。
でも確か、昨日は狼の姿だったよね…?
ジーンが狼狽えていると、ロキが目を開けて、ぼんやりと身体を起こした。
…寝ぼけている?
寝起きが悪いのか、眠れなかったのか…。
…それより、服を着て…。
ジーンの目の前に、体格の良いロキの裸体が有り、メリハリの有る筋肉にジーンは頬を染めた。
山の中を歩いているから、この身体付きなのだろうな…。
憧れと、羨ましさが入り交じった複雑な気持ち…。
ジーンはいくら鍛練しても、体つきは殆んど変わらなかった。
体力的に付いていけないと、言う理由もあるが…。
「…。」
ジーンはふと我に返り、ロキに毛布をかけると、頬を染めて慌ててその場から離れた。
「服を着て!もうすぐ村の人達が来るよ!」
ロキはその声に、自分の身体を見回し、昨日、脱ぎ捨てた服を引っ張ってきて、着始めた。
ジーンは朝食の準備を始め、チラリとロキを見る。
まだ、ぼんやりとして、ノロノロと服を着ている姿が、何故か、かわいく見えて思わず笑みが浮かぶ。
大人の男の人に可愛い…は、無いだろう…。
そう思いながらも、まだ数日しか一緒にいないロキの事が、昔からの知り合いのように思えて、不思議な感じになっていた。
家の外から馬車の音がして、ジェスさんが呼びに来てくれ、いよいよ神殿の一つ目の建物の『転移』が始まった。
ジーンはジェスさんとロキさん、村人数人と一緒に離れた場所から『転移』されてくるのを見守っていた。
四人の男の人が、空中に一つの大きい魔法陣を作りだし、しばらくすると、そこに背の高い建物が出現した。
空中に浮いた状態の建物は、四人によって少しづつ位置を移動しながら、事前に作って有った土台の上に下ろしていく。
ほんの少しのズレも許されない建物の移動は、ゆっくりと調整されて土台の上に重ねられると、魔法陣が消え、大きな音と共に建物がずっしりと落ち着いた。
「すごい…」
ジーンは思わず感嘆の声をあげた。
めったに見れない『移動建築』を見てからの出発で良かったと、つくづく思った。
回りにいた作業員は、土台と運ばれてきた建物を魔法で固定させ、動かないようにしている。
数日ごとに建物が『転移』されてきて、それを渡り廊下で繋いで、一つの神殿を作り上げていくのだそうだ。
ジーンはその作業を最後まで見ることは出来ないが、次に来た時には、神殿は完成しているだろう…。
一通り作業が終わると、ジェスさん達と村人達と共に建物の見学に向かった。
最初に送られて来たのは、神殿の祈りの場。
中に入ると広場になっていて、奥がガラス張りになっており、そこから『世界樹』の木が見えるようになっていた。
王都の港街にある、シンラの神殿と同じ作りだ。
建物だけが来ただけで、調度品やテーブル、椅子などは後から納められるようだ。
ジーンは『転移建築』のすごさを垣間見た。
ほどなくして、ジーンは荷物をジェスさんが乗って来た馬車に乗せた。
そろそろ王都に帰る時間だ。
寝泊まりしていた家の片付けば終わり、日持ちする野菜は保冷箱に入れ、あとはロキさんに渡した。
きっとリーンが戻ってくるだろうから、その辺はロキさんか上手くやるだろう…。
ジーンは『世界樹』の元に行くと、声をかけた。
「フリク。…僕は帰るね…」
ジーンがそう言うと、フリクが顔を出してきて、ジーンの腕の中に飛び込んで来きて、頭をジーンにグイグイと押し付ける。
…可愛い…。
そうじゃなくて…。
ジーンはフリクに言い聞かせる。
「また来るよ。…リーンもココに戻ってくるだろうし、それまで、さよならだ」
フリクはジーンの服にしがみつき、離れようとしない。
どうしよう…。
そう思ったら、ロキさんがヒョイと、フリクを持ち上げ、ジーンから離してくれた。
「…俺も一緒に待つから、寂しく無いぞ」
ロキがそう言うと、フリクはじっとロキを見つめ、ロキの服にしがみついた。
…一緒に…待つって…僕の事を待ってるて、事か?
ジーンは何故か頬が熱くなった。
ロキがフリクを片手で抱えると、ポケットから何やら出してきて、ジーンの方に差し出された。
漆黒の中に星を散りばめたような色をした、シンプルなバングル。
「…やる」
…これは多分、昨日、ロキさんが魔法を使って作っていた物…。
ジーンはドキドキしながらそのバングルを受けとる。
「…ありがとう…」
少し離れた所でジェスさんが、ため息をつく声が聞こえてきた。
そろそろ出発の時間だ。
名残惜しいが、ジーンはジェスの待つ馬車へと向かい、その後をロキとフリクが付いてくる。
ジーンが馬車に乗り込み、窓から外を見ると、寂しそうにロキさんとフリクがこちらを見ていた。
胸が締め付けられるように、キュッとなって、そんな顔をさせたくないのに…。
ジーンはそう思って、もらったバングルを握りしめる。
「また、来るから」
ジーンがそう言うのと同時に馬車は動きだし、ヤマツカ町へと向かって走り出した。
…んっ?なんだろう…。
目を開けて、視界に誰かの身体があって、密着して眠っていたことに驚いて、ジーンは思わず飛び起きた。
冷静になって良く見ると、ロキさんだ…。
でも確か、昨日は狼の姿だったよね…?
ジーンが狼狽えていると、ロキが目を開けて、ぼんやりと身体を起こした。
…寝ぼけている?
寝起きが悪いのか、眠れなかったのか…。
…それより、服を着て…。
ジーンの目の前に、体格の良いロキの裸体が有り、メリハリの有る筋肉にジーンは頬を染めた。
山の中を歩いているから、この身体付きなのだろうな…。
憧れと、羨ましさが入り交じった複雑な気持ち…。
ジーンはいくら鍛練しても、体つきは殆んど変わらなかった。
体力的に付いていけないと、言う理由もあるが…。
「…。」
ジーンはふと我に返り、ロキに毛布をかけると、頬を染めて慌ててその場から離れた。
「服を着て!もうすぐ村の人達が来るよ!」
ロキはその声に、自分の身体を見回し、昨日、脱ぎ捨てた服を引っ張ってきて、着始めた。
ジーンは朝食の準備を始め、チラリとロキを見る。
まだ、ぼんやりとして、ノロノロと服を着ている姿が、何故か、かわいく見えて思わず笑みが浮かぶ。
大人の男の人に可愛い…は、無いだろう…。
そう思いながらも、まだ数日しか一緒にいないロキの事が、昔からの知り合いのように思えて、不思議な感じになっていた。
家の外から馬車の音がして、ジェスさんが呼びに来てくれ、いよいよ神殿の一つ目の建物の『転移』が始まった。
ジーンはジェスさんとロキさん、村人数人と一緒に離れた場所から『転移』されてくるのを見守っていた。
四人の男の人が、空中に一つの大きい魔法陣を作りだし、しばらくすると、そこに背の高い建物が出現した。
空中に浮いた状態の建物は、四人によって少しづつ位置を移動しながら、事前に作って有った土台の上に下ろしていく。
ほんの少しのズレも許されない建物の移動は、ゆっくりと調整されて土台の上に重ねられると、魔法陣が消え、大きな音と共に建物がずっしりと落ち着いた。
「すごい…」
ジーンは思わず感嘆の声をあげた。
めったに見れない『移動建築』を見てからの出発で良かったと、つくづく思った。
回りにいた作業員は、土台と運ばれてきた建物を魔法で固定させ、動かないようにしている。
数日ごとに建物が『転移』されてきて、それを渡り廊下で繋いで、一つの神殿を作り上げていくのだそうだ。
ジーンはその作業を最後まで見ることは出来ないが、次に来た時には、神殿は完成しているだろう…。
一通り作業が終わると、ジェスさん達と村人達と共に建物の見学に向かった。
最初に送られて来たのは、神殿の祈りの場。
中に入ると広場になっていて、奥がガラス張りになっており、そこから『世界樹』の木が見えるようになっていた。
王都の港街にある、シンラの神殿と同じ作りだ。
建物だけが来ただけで、調度品やテーブル、椅子などは後から納められるようだ。
ジーンは『転移建築』のすごさを垣間見た。
ほどなくして、ジーンは荷物をジェスさんが乗って来た馬車に乗せた。
そろそろ王都に帰る時間だ。
寝泊まりしていた家の片付けば終わり、日持ちする野菜は保冷箱に入れ、あとはロキさんに渡した。
きっとリーンが戻ってくるだろうから、その辺はロキさんか上手くやるだろう…。
ジーンは『世界樹』の元に行くと、声をかけた。
「フリク。…僕は帰るね…」
ジーンがそう言うと、フリクが顔を出してきて、ジーンの腕の中に飛び込んで来きて、頭をジーンにグイグイと押し付ける。
…可愛い…。
そうじゃなくて…。
ジーンはフリクに言い聞かせる。
「また来るよ。…リーンもココに戻ってくるだろうし、それまで、さよならだ」
フリクはジーンの服にしがみつき、離れようとしない。
どうしよう…。
そう思ったら、ロキさんがヒョイと、フリクを持ち上げ、ジーンから離してくれた。
「…俺も一緒に待つから、寂しく無いぞ」
ロキがそう言うと、フリクはじっとロキを見つめ、ロキの服にしがみついた。
…一緒に…待つって…僕の事を待ってるて、事か?
ジーンは何故か頬が熱くなった。
ロキがフリクを片手で抱えると、ポケットから何やら出してきて、ジーンの方に差し出された。
漆黒の中に星を散りばめたような色をした、シンプルなバングル。
「…やる」
…これは多分、昨日、ロキさんが魔法を使って作っていた物…。
ジーンはドキドキしながらそのバングルを受けとる。
「…ありがとう…」
少し離れた所でジェスさんが、ため息をつく声が聞こえてきた。
そろそろ出発の時間だ。
名残惜しいが、ジーンはジェスの待つ馬車へと向かい、その後をロキとフリクが付いてくる。
ジーンが馬車に乗り込み、窓から外を見ると、寂しそうにロキさんとフリクがこちらを見ていた。
胸が締め付けられるように、キュッとなって、そんな顔をさせたくないのに…。
ジーンはそう思って、もらったバングルを握りしめる。
「また、来るから」
ジーンがそう言うのと同時に馬車は動きだし、ヤマツカ町へと向かって走り出した。
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