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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
ジーンの憂い
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リーンが『風霊』に呼ばれて森の中へと入って行き、この場には、ジーンとロキだけが残された。
ジーンは、少し離れて側にいる、狼獣人のロキの姿をチラリと盗み見る。
獣人の姿のロキさんと二人だけだと思ったら、ジーンはソワソワして落ち着きが無くなってしまった…。
幼い頃から一緒にいたキリトとは違う、大人の狼獣人だからなのか、自分の回りにいる大人達と何が違うのか分からないが、ドキドキしてしまう…。
自分には無い、大人のかっこ良さに、憧れるからだろうか…。
狼の姿だと、そんな風に思うことはなく、毛並みを触ったり、寄りかかってお昼寝したり、存分に触ってふわふわを堪能できるのに…。
そんな彼ともしばらくお別れだ。
ジーンは残りの課題をするために、家の中に入った。
明日の朝、神殿の一つ目の建物が『転移』してくる。
ジーンはそれを見届けて、タミネキ村を離れるのだ。
家の外から人の声が聞こえる。
祈りを捧げに来たタミネキ村の住人と、ロキさんが何か話をしているのだろう…。
ジーンは少し気になりながらも、もう少しで終わる、与えられた学校の課題をこなしていた。
夕方になり、夕食の準備を始めると、ロキさんがフラりとやって来た。
「…夕食、食べる?」
ジーンがロキに聞くと頷いたので、ジーンは二人分の食事を準備した。
今朝までリーンと二人分の食事を作っていたので、食材的にも支障はない。
テーブルに二人分の食事を並べ、ロキさんと向かい合って食べ始めたが、何を話せば良いのか分からず沈黙が続く…。
何か、話さないと…。
でも、何を話せば良い…。
ロキとジーンの共通するのは、リーンだけ…。
暮らしている環境や生活も、状況も、全て違う…。
悶々と、考えながら食事をしていて、ふと思う。
もしかして、リーンがいないから来てくれた?
一人だと、寂しいと思って来てくれた?
実際、リーンが居なくなって、半日一人で過ごすのは寂しかったのだ。
のんびり過ごしたいと思いながらも、いつも周囲は賑やかだし、常に誰かの気配が側に有った。
何も言わないが、僕の事を気遣ってくれているのかもしれない…。
そう思ったら、嬉しくなった。
…無理して、話をしなくても良いや…。
来てくれただけで、寂しさが紛れる。
ジーンは少し肩の力を抜いて、口許に笑みを浮かべながら、食事を続行した。
夕食が終わり、後片付けをして、残りの課題を終えると、ジーンはシャワーを浴びて、広い部屋に戻った。
さっきまで、部屋の中にいたロキさんがいない…。
ジーンが課題をこなしている間、ソファーに座って本を読んでいたのに…。
「帰ったのかな…」
ジーンはさっきまで、ロキが座っていたソファーに座り、足を丸めて俯いた。
…ほんの少し温もりが有り、ついさっきまで、ココに居たのを感じ、ジーンは寂しく思った。
…やはり一人だと、置いていかれたようで寂しのだ。
急に外から魔力の波動が流れてきて、誰かが外で魔法を使っているのを感じ、ジーンはソファーから飛び降りて、外を眺めた。
誰が…!?
「…ロキさん…」
星の明かりに照らされて、ぼんやりと浮かび上がったロキが、キラキラと光る魔法陣を手元に作りだし、何かを作っている。
ジーンはその光景にぼんやりと見とれていた。
幻想的で、現実のモノとは思えなくて…。
魔法陣が放つ、ほのかな光が、ロキを浮かび上がらせて見え、ロキの真剣な眼差しが、ジーンをドキドキさせる…。
しばらくすると、ロキの手元に光が集まり、小さくなって消えていった。
「ふぅ…」
ロキが肩の力を抜いて、息を吐いたのに気が付いたジーンは、正気に戻り、慌てて部屋の中に戻った。
…何を見とれて、ドキドキしているんだ…?
ジーンは部屋の角に有る、一段上がった床上に座り、畳んで積み上げてある毛布を一枚手に取ると、頭から被って身体を横たえた。
昨日まで、リーンと一緒に毛布にくるまり、眠っていた場所だ。
この家に寝室は無い。
もともと休憩所になっていた家なので、仮眠を取るため、部屋の一角に毛布が有ったので、そこで休んでいたのだ。
…どうしたんだろう…。
僕…なんか変だ…。
毛布を被って戸惑うジーンの元に、ロキが戻ってきて声をかける。
「もう、休むのか?」
「…う、うん…。明日、早いし…」
「そうか…」
ロキがそう答えると、ロキが部屋の明かりを小さくした。
かろうじて、顔が見えるくらいの薄暗さ…。
横たわるジーンに近付いてきたロキが、服を脱ぎ出したのが、視界に入る。
なっ、何で服を脱ぐの!?
慌てるジーンを横目に、ロキは狼の姿に獣変化した。
そしてジーンの側に寄り添い、ジーンを包み込むようにして、その場に寝そべった。
もしかして、僕が眠りやすいように、獣変化してくれた…?
ジーンは何故か、くすぐったく感じて、笑みを浮かべ、狼の背中を撫でる。
柔らかい…。
ジーンは狼に身体を預けると、毛布越しに伝わる温もりに、力が抜けてきた。
「…温かい…」
ジーンは目を閉じて、ロキの温もりを感じながら眠りについた。
ジーンは、少し離れて側にいる、狼獣人のロキの姿をチラリと盗み見る。
獣人の姿のロキさんと二人だけだと思ったら、ジーンはソワソワして落ち着きが無くなってしまった…。
幼い頃から一緒にいたキリトとは違う、大人の狼獣人だからなのか、自分の回りにいる大人達と何が違うのか分からないが、ドキドキしてしまう…。
自分には無い、大人のかっこ良さに、憧れるからだろうか…。
狼の姿だと、そんな風に思うことはなく、毛並みを触ったり、寄りかかってお昼寝したり、存分に触ってふわふわを堪能できるのに…。
そんな彼ともしばらくお別れだ。
ジーンは残りの課題をするために、家の中に入った。
明日の朝、神殿の一つ目の建物が『転移』してくる。
ジーンはそれを見届けて、タミネキ村を離れるのだ。
家の外から人の声が聞こえる。
祈りを捧げに来たタミネキ村の住人と、ロキさんが何か話をしているのだろう…。
ジーンは少し気になりながらも、もう少しで終わる、与えられた学校の課題をこなしていた。
夕方になり、夕食の準備を始めると、ロキさんがフラりとやって来た。
「…夕食、食べる?」
ジーンがロキに聞くと頷いたので、ジーンは二人分の食事を準備した。
今朝までリーンと二人分の食事を作っていたので、食材的にも支障はない。
テーブルに二人分の食事を並べ、ロキさんと向かい合って食べ始めたが、何を話せば良いのか分からず沈黙が続く…。
何か、話さないと…。
でも、何を話せば良い…。
ロキとジーンの共通するのは、リーンだけ…。
暮らしている環境や生活も、状況も、全て違う…。
悶々と、考えながら食事をしていて、ふと思う。
もしかして、リーンがいないから来てくれた?
一人だと、寂しいと思って来てくれた?
実際、リーンが居なくなって、半日一人で過ごすのは寂しかったのだ。
のんびり過ごしたいと思いながらも、いつも周囲は賑やかだし、常に誰かの気配が側に有った。
何も言わないが、僕の事を気遣ってくれているのかもしれない…。
そう思ったら、嬉しくなった。
…無理して、話をしなくても良いや…。
来てくれただけで、寂しさが紛れる。
ジーンは少し肩の力を抜いて、口許に笑みを浮かべながら、食事を続行した。
夕食が終わり、後片付けをして、残りの課題を終えると、ジーンはシャワーを浴びて、広い部屋に戻った。
さっきまで、部屋の中にいたロキさんがいない…。
ジーンが課題をこなしている間、ソファーに座って本を読んでいたのに…。
「帰ったのかな…」
ジーンはさっきまで、ロキが座っていたソファーに座り、足を丸めて俯いた。
…ほんの少し温もりが有り、ついさっきまで、ココに居たのを感じ、ジーンは寂しく思った。
…やはり一人だと、置いていかれたようで寂しのだ。
急に外から魔力の波動が流れてきて、誰かが外で魔法を使っているのを感じ、ジーンはソファーから飛び降りて、外を眺めた。
誰が…!?
「…ロキさん…」
星の明かりに照らされて、ぼんやりと浮かび上がったロキが、キラキラと光る魔法陣を手元に作りだし、何かを作っている。
ジーンはその光景にぼんやりと見とれていた。
幻想的で、現実のモノとは思えなくて…。
魔法陣が放つ、ほのかな光が、ロキを浮かび上がらせて見え、ロキの真剣な眼差しが、ジーンをドキドキさせる…。
しばらくすると、ロキの手元に光が集まり、小さくなって消えていった。
「ふぅ…」
ロキが肩の力を抜いて、息を吐いたのに気が付いたジーンは、正気に戻り、慌てて部屋の中に戻った。
…何を見とれて、ドキドキしているんだ…?
ジーンは部屋の角に有る、一段上がった床上に座り、畳んで積み上げてある毛布を一枚手に取ると、頭から被って身体を横たえた。
昨日まで、リーンと一緒に毛布にくるまり、眠っていた場所だ。
この家に寝室は無い。
もともと休憩所になっていた家なので、仮眠を取るため、部屋の一角に毛布が有ったので、そこで休んでいたのだ。
…どうしたんだろう…。
僕…なんか変だ…。
毛布を被って戸惑うジーンの元に、ロキが戻ってきて声をかける。
「もう、休むのか?」
「…う、うん…。明日、早いし…」
「そうか…」
ロキがそう答えると、ロキが部屋の明かりを小さくした。
かろうじて、顔が見えるくらいの薄暗さ…。
横たわるジーンに近付いてきたロキが、服を脱ぎ出したのが、視界に入る。
なっ、何で服を脱ぐの!?
慌てるジーンを横目に、ロキは狼の姿に獣変化した。
そしてジーンの側に寄り添い、ジーンを包み込むようにして、その場に寝そべった。
もしかして、僕が眠りやすいように、獣変化してくれた…?
ジーンは何故か、くすぐったく感じて、笑みを浮かべ、狼の背中を撫でる。
柔らかい…。
ジーンは狼に身体を預けると、毛布越しに伝わる温もりに、力が抜けてきた。
「…温かい…」
ジーンは目を閉じて、ロキの温もりを感じながら眠りについた。
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