神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)

『風霊』が呼んでいる

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 リーンとジーンが共に、『世界樹』のもとで三日ほど暮らしていたが、ジーンは学校が有るので、そろそろ王都へと帰らなくてはいけなかった。
 神官長候補のシノアスとレオン王子は『転移』の魔法陣を使ってすでに神殿へと帰っている。
 今後の対策と、ココへ派遣する神官の選定、儀式の段取りと準備があるようだ。
 神殿に関しては、ヤマツカ町の方で建物を作り、タミネキ村へ『転移』させて、固定作業をするそうだ。
 事前に作業員が来て、建物の設置場所を測定して、土台になる土地を土魔法を使って平らにし、地下を作るのか穴を掘ったりしていた。
 ジーンはそれらを見学し、それをレポートにまとめあげると言うのも、長期不在の課題のひとつになったらしい。
 その辺はジェスが学校と話を付けてくれ、不在期間が長引いて、ジーンの課題が貯まっているらしく、その一部をジェスが、わざわざ『転移』して持ってきてくれ、それを見てジーンは青ざめながら机に向かっていた。
 学業も大事だから、ジーンは一旦、王都に帰り、改めて長期休暇の時にココに来るように話がついた。
 神官になるか、ならないかは保留と言うことになったが、ジーンは様子からは、この穏やかな場所を気に入ってはいるみたいだ。
 きっとジーンにも、何か切っ掛けが有れば、道が定まるのだろうが、そう簡単に決められるものでもない…。
 それに、私もココにはずっと居るわけではない。
 『風霊』が呼んでいるのだ。
 ジーンはもうすぐ王都に戻るし、私もココを離れるのは少し不安だが、狼獣人のロキがいるし、タミネキ村の療養所のスバルもいる…。
 タミネキ村の住人も私達に協力的だから、神殿から神官が到着するまで、『世界樹』の事を守ってくれるだろう…。
「先に行くよ。また、来るから」
 リーンはそう言って、『風霊』に呼ばれて、足早に森の中に入っていった。
 森の奥で雨が降り、森の住人達が使っている湖の水が増水して、一部決壊しているらしい…。
 水量を減らし、水が溢れないようにしなければ、地盤が緩み、土砂崩れの原因になってしまう。
 いくら対策をとったとしても、いつ自然現象か襲ってくるのかは、わからないのだ。
 『森の管理者』として、出きる限りは手助けして、通常の生活に戻れるよう補佐することしか出来ないが、何も出来ないよりは良い…。
 リーンは本来の自分の役割を果たすために、森の中を移動した。


*****


 急に強い風がリーンを取り巻き、驚くジーンを横目に、リーンの表情が真剣なものになり、リーンは慌てて荷物をまとめて持つと、ジーンの方を向いた。
「『風霊』が呼んでいるから、先に行くよ。また、来るから」
 リーンはそう言って、森の中へと入っていった。
 そして、ジーンは呆然とリーンを見送った。
 突然の事すぎて、何が起こったのか分からなかった。
 しばらく呆然としていたら、狼がフラりとジーンの足元にやって来て、ジーンはハッと我に返った。
「…リーンが行ってしまった…」
 ジーンがそう呟くと、狼は家の中に入っていき、服を着替えた狼獣人のロキさんが姿を表した。
「…『風霊』に呼ばれたんだろ…。しばらくは、帰ってこないかもな…」
 そんな風に言うロキさんは、長い付き合いのリーンの事を良く分かっているのかもしれない。
 僕の方が家族なのに…。
 ジーンは少し、しょんぼりとした。
 ジーンも明日、ココを離れて王都へと戻る。
 
 
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