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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
複雑な気持ち
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狼獣人であるロキの番が、ジーンだ発言に、リーンとジェスとアミュールは混乱と動揺を起こし、のんびりとココティーを飲み軽食を食べる、マイペースなシノアスとレオンを見ている内に、大人四人は少しずつ冷静さを取り戻していた。
「…一旦、落ち着こう…」
リーンはそう言ったが、内心複雑な気持ちだった。
まだ、ロキに言っていない事がある…。
リーンがチラリとジェスを見ると、早めに言った方が良いと、ロキの方に顔で指示する。
アミュールの方を見ると、頭を抱えてうつ向いているし、シノアスとレオン王子に至っては、どうなるのかワクワクこちらを鑑賞している…。
…こういった娯楽は神殿に少ないからな…。
リーンは、ため息を付いてロキの方を向いた。
「…ロキには、まだ紹介していなかったが…あの子はジーン。私の息子だ」
ロキの動きが止まり目を見開き、リーンを見上げてくる。
「…なんだって…?」
「…私の息子。魔力の番である、カザンナ王国の第三王子ルークの長男だ」
リーンはハッキリと言った。
ジーンは王族の子供なのだ…。
「そして、こちらのレオン王子は、ルークの兄弟。ジーンの叔父になる方」
ロキは呆然とリーンの話を聞いている。
「…ジェスは領主の一族だが、ルークの側近なんだ」
ロキの口がポカンと開く…。
「…シノアスとアミュールは、ジーンが通っているカザンナ王国の神殿で、面倒を見てもらっている方。…みんな、ジーンの身内なんだよ…」
リーンのその言葉を聞いたロキは、固まって動けなくなってしまった。
微動だにしないロキと沈黙を破ったのは、成り行きを鑑賞していたシノアスだった。
「…一旦、解散して、もう一度、明日にでも話し合いの場を作りませんか」
シノアスは、どちらかと言うと、今の状況を外から見ているようなものだ。
一番、落ち着いているのも彼だろう…。
「…ジーンは今日、こちらに泊まってもらって、リーンさんから少しお話をされた方が良いかも」
そう言って微笑む。
…そうだな。
このままでは、話が進まない…。
ジーンに前置きとして、少し話をしておいた方が良いかもしれない…。
「久しぶりに、ジーンと一緒に泊まるよ」
リーンは半分ため息と共に、そう答えた。
シノアス達とリーンは、今後の『世界樹』のあり方の確認を話し合うまもなく、シノアスとレオン王子は神殿からの馬車に、ジェスとアミュールは何か話し合いながら、領主の馬車に乗ってヤマツカ町へと戻っていった。
領主の館に戻って、今後の調整を検討するのだろう…。
リーンはジーンと一緒に、四人を見送りながら、すっかりジーンに懐いて、ジーンの腕の中で眠ったフリクを見た。
「目が覚めたら、名前を『フリク』って、呼んで良いか聞いてみようね」
正式名はジンフリークだが、愛称で呼んで反応を見せてくれるのは、今のところリーンしかいなかった。
きっとジーンにも、返事してくれるだろう。
ジーンは嬉しそうに、笑みを浮かべてフリクを見ていた。
予定より早くジェス達が帰ってしまったので、夕食の時間にはまだ早く、時間をもて余してしまう。
フリクは眠ってしまっているし、ジーンから離れそうにないので、ジーンには『世界樹』の木の下でフリクを見てもらって、一緒にお昼寝してくれば良いよ、と言って、見送った。
ジーンは嬉しそうに『世界樹』の元に歩いていく。
三つ子達の面倒も良く見ていたから、心配はないだろう…。
さて、問題はロキだ。
テーブルに張り付いて、撃沈したまま動かないでいる。
そんな状態のロキを、ジーンに、どう説明したら良いのか迷うところだ。
リーンは家に入り、ロキの頭をつついた。
「いつまで、そうしているつもりだ」
「…リーン」
ロキは涙目になって、リーンを見上げてくる。
いつもの威厳はどうした!
「…あの子は今、何歳になった…」
「…十七歳だ。王都の高等科に通っている」
「…まだ、子供ではないか…」
ロキは再びテーブルに頭を打ち付ける。
…そうだろう。
人族より長寿の獣人であるロキにとっては、ジーンは産まれたばかりの赤子のようなものだ。
「…ジーンは人族だから、番であることには気が付いていない」
リーンとしては複雑な気持ちだ。
自分の息子の、番になる相手を、慰めなくてはいけないとは…。
「まずは、少しずつ歩み寄って、信頼を勝ち取れ…。私がそう言うのも、変な感じだが…」
リーンも頭痛がして頭を押さえる。
「嫌がることだけはするなよ!」
それにしても、複雑な気持ちだ…。
「…一旦、落ち着こう…」
リーンはそう言ったが、内心複雑な気持ちだった。
まだ、ロキに言っていない事がある…。
リーンがチラリとジェスを見ると、早めに言った方が良いと、ロキの方に顔で指示する。
アミュールの方を見ると、頭を抱えてうつ向いているし、シノアスとレオン王子に至っては、どうなるのかワクワクこちらを鑑賞している…。
…こういった娯楽は神殿に少ないからな…。
リーンは、ため息を付いてロキの方を向いた。
「…ロキには、まだ紹介していなかったが…あの子はジーン。私の息子だ」
ロキの動きが止まり目を見開き、リーンを見上げてくる。
「…なんだって…?」
「…私の息子。魔力の番である、カザンナ王国の第三王子ルークの長男だ」
リーンはハッキリと言った。
ジーンは王族の子供なのだ…。
「そして、こちらのレオン王子は、ルークの兄弟。ジーンの叔父になる方」
ロキは呆然とリーンの話を聞いている。
「…ジェスは領主の一族だが、ルークの側近なんだ」
ロキの口がポカンと開く…。
「…シノアスとアミュールは、ジーンが通っているカザンナ王国の神殿で、面倒を見てもらっている方。…みんな、ジーンの身内なんだよ…」
リーンのその言葉を聞いたロキは、固まって動けなくなってしまった。
微動だにしないロキと沈黙を破ったのは、成り行きを鑑賞していたシノアスだった。
「…一旦、解散して、もう一度、明日にでも話し合いの場を作りませんか」
シノアスは、どちらかと言うと、今の状況を外から見ているようなものだ。
一番、落ち着いているのも彼だろう…。
「…ジーンは今日、こちらに泊まってもらって、リーンさんから少しお話をされた方が良いかも」
そう言って微笑む。
…そうだな。
このままでは、話が進まない…。
ジーンに前置きとして、少し話をしておいた方が良いかもしれない…。
「久しぶりに、ジーンと一緒に泊まるよ」
リーンは半分ため息と共に、そう答えた。
シノアス達とリーンは、今後の『世界樹』のあり方の確認を話し合うまもなく、シノアスとレオン王子は神殿からの馬車に、ジェスとアミュールは何か話し合いながら、領主の馬車に乗ってヤマツカ町へと戻っていった。
領主の館に戻って、今後の調整を検討するのだろう…。
リーンはジーンと一緒に、四人を見送りながら、すっかりジーンに懐いて、ジーンの腕の中で眠ったフリクを見た。
「目が覚めたら、名前を『フリク』って、呼んで良いか聞いてみようね」
正式名はジンフリークだが、愛称で呼んで反応を見せてくれるのは、今のところリーンしかいなかった。
きっとジーンにも、返事してくれるだろう。
ジーンは嬉しそうに、笑みを浮かべてフリクを見ていた。
予定より早くジェス達が帰ってしまったので、夕食の時間にはまだ早く、時間をもて余してしまう。
フリクは眠ってしまっているし、ジーンから離れそうにないので、ジーンには『世界樹』の木の下でフリクを見てもらって、一緒にお昼寝してくれば良いよ、と言って、見送った。
ジーンは嬉しそうに『世界樹』の元に歩いていく。
三つ子達の面倒も良く見ていたから、心配はないだろう…。
さて、問題はロキだ。
テーブルに張り付いて、撃沈したまま動かないでいる。
そんな状態のロキを、ジーンに、どう説明したら良いのか迷うところだ。
リーンは家に入り、ロキの頭をつついた。
「いつまで、そうしているつもりだ」
「…リーン」
ロキは涙目になって、リーンを見上げてくる。
いつもの威厳はどうした!
「…あの子は今、何歳になった…」
「…十七歳だ。王都の高等科に通っている」
「…まだ、子供ではないか…」
ロキは再びテーブルに頭を打ち付ける。
…そうだろう。
人族より長寿の獣人であるロキにとっては、ジーンは産まれたばかりの赤子のようなものだ。
「…ジーンは人族だから、番であることには気が付いていない」
リーンとしては複雑な気持ちだ。
自分の息子の、番になる相手を、慰めなくてはいけないとは…。
「まずは、少しずつ歩み寄って、信頼を勝ち取れ…。私がそう言うのも、変な感じだが…」
リーンも頭痛がして頭を押さえる。
「嫌がることだけはするなよ!」
それにしても、複雑な気持ちだ…。
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