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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
爆弾発言と混乱
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狼獣人のロキは森の中にいても、『世界樹』の側にリーンがいることを感じていた。
森の奥の狼獣人の里まで行ってしまうと分からなくなるが、この周辺を警戒して歩き回るときは微弱に感じ取っていた。
まだ、ココにいる…。
ロキにとってリーンは、番になって欲しいと望むくらい、大切な人だった。
けれどリーンが選んだのは、人族の男、魔力の番と呼ばれる人だった。
到底、俺には勝ち目は無かった。
それでも大切な人なのは変わらず、リーンが来てくれると嬉しくて、勝手に尻尾がブンブンと揺れた。
急に山間に結界が展開され、ロキは何が起こったのかと慌てて山を降り、リーンの元に向かった。
阻まれるかと思った結界には阻まれず、いつものように山を降りると、リーンとよく似た魔力を感じた。
なんだこの感じは…。
ロキは獣変化したままリーンの住む休憩所に向かい、リーン達の側を横切り、休憩所に駆け込んで行き、慌て姿を半獣に戻し、服を着て休憩所から顔を出した。
「リーン!リーンとよく似た魔力が…」
そう言ったロキの視線が、休憩所の前の馬車の側にいる少年の姿を見て止まった。
リーンにそっくりな少年…!?
その子もロキの方を見て目を見開く。
「「つっ…!!」」
ロキに衝撃が走った。
…嘘だろ…。
その子も何か感じ取ったのか、胸を押さえてふらつき、隣にいた青年に支えられて倒れ込むのを回避した。
「ジーン?ロキ?」
リーンの呟きが聞こえたが、ロキにはそれどころではなかった。
ロキはその子を見て、自分を落ち着かせた。
…あればリーンにそっくりな子供だ。
…人族の少年だ。
その子がこちらの視線を感じたのか、こちらを見てくる。
どうすれば良い…。
ロキが動けないでいると、この間の領主の息子が声をかけてきた。
「家の中で話しませんか」
そう言われてロキの呪縛は解かれ、ロキは家の中に入り、ソファーにドンと座って力を抜いた。
どうすれば良い…。
ロキはそれしか考えられなくなっていた。
部屋に人族が入ってきて、テーブルの回りに座り出したが、動く気力もない。
向こうもこちらを気にしていないみたいなので、ほっておくことにした。
しばらくして、領主の息子が荷物をもって部屋に入ってきて、飲み物と軽食を広げ始めた。
そして、あの子が木霊を抱えて、リーンと一緒に部屋に入ってくる。
並ぶとますます似ている…。
リーンは黒髪だが、あの子は金髪…その違いだけで、雰囲気とか魔力が似すぎだ…。
そう思っていると、ソファーに座るロキの元にあの子が近付いて来て、甘く優しい良い匂いが漂ってきた。
ロキは慌ててソファーから降り、リーン達の元に向かった。
…リーンには話すべきだろう…。
そして、どうすれば良いのか、聞いてみよう…。
混乱するロキには、リーンに似ているのは親族だからとか、回りにいる人族が神殿から派遣されてきた人達だとか、この地域の領主の息子だとか、そんな事がすっぽりと抜けてしまっていた。
リーン達と同じテーブルに付くと、ロキはリーンに言った。
「…あの子…俺の番だ」
五人の動きが止まった。
「…リーン、どうしたら良い…。まさか出会えるなんて思いもしなかったから…俺は…」
混乱し戸惑うロキは、頭を抱えて机に頭を打ち付けていた。
混乱しているはロキだけでなかった。
リーンは、まさか自分の子供がロキの番になるなんて思いもしなかったし、今までのロキとの関係の事もあって、リーンも頭を抱えてブツフツと呟き始めた。
「…ジーンが…ロキの…番…?て、事は、…えっ!?」
ジェスも頭を抱えた。
ジェスは領主の息子であり、カザンナ王国の第三王子の側近だ。
今回の事で、ルークが行けない分、リーンとジーンの事をよろしく見てやってくれ、と、頼まれていたのもある。
子供達に甘いルークには、まだ子離れするには早すぎる…。
「ルーク様のお怒りが…」
アミュールも頭を抱えた。
優秀な人材をシンラの神殿で育てていくつもりが、予定を変更しなくては行けない…。
休日しか神殿に来ないジーンだが、魔力も記憶力も、もう普通の神官並みなのだ。
アミュールとしては、シノアスの後継者として、いずれ神官長候補として、ジーンを育てていこうと思っていた計画も一から見直しだ。
シノアスとレオンは驚いてはいるが、シノアスは『よかったね』とロキに声をかけるくらい、呑気に微笑んでいる。
リーンはロキに、番だと言った少年は、自分の息子だと言うタイミングを逃し、頭を抱えながらロキを見る。
ロキが帰るまでに…伝えなくては…。
四人の大人の葛藤に気がついていないジーンは、ソファーに座って、気に入られた木霊のフリクと遊んでいる。
『世界樹』の問題で集まったつもりが、ロキの番がジーンだと言った事により、カザンナ王国と、シンラの神殿、狼獣人の里の問題になってしまった。
森の奥の狼獣人の里まで行ってしまうと分からなくなるが、この周辺を警戒して歩き回るときは微弱に感じ取っていた。
まだ、ココにいる…。
ロキにとってリーンは、番になって欲しいと望むくらい、大切な人だった。
けれどリーンが選んだのは、人族の男、魔力の番と呼ばれる人だった。
到底、俺には勝ち目は無かった。
それでも大切な人なのは変わらず、リーンが来てくれると嬉しくて、勝手に尻尾がブンブンと揺れた。
急に山間に結界が展開され、ロキは何が起こったのかと慌てて山を降り、リーンの元に向かった。
阻まれるかと思った結界には阻まれず、いつものように山を降りると、リーンとよく似た魔力を感じた。
なんだこの感じは…。
ロキは獣変化したままリーンの住む休憩所に向かい、リーン達の側を横切り、休憩所に駆け込んで行き、慌て姿を半獣に戻し、服を着て休憩所から顔を出した。
「リーン!リーンとよく似た魔力が…」
そう言ったロキの視線が、休憩所の前の馬車の側にいる少年の姿を見て止まった。
リーンにそっくりな少年…!?
その子もロキの方を見て目を見開く。
「「つっ…!!」」
ロキに衝撃が走った。
…嘘だろ…。
その子も何か感じ取ったのか、胸を押さえてふらつき、隣にいた青年に支えられて倒れ込むのを回避した。
「ジーン?ロキ?」
リーンの呟きが聞こえたが、ロキにはそれどころではなかった。
ロキはその子を見て、自分を落ち着かせた。
…あればリーンにそっくりな子供だ。
…人族の少年だ。
その子がこちらの視線を感じたのか、こちらを見てくる。
どうすれば良い…。
ロキが動けないでいると、この間の領主の息子が声をかけてきた。
「家の中で話しませんか」
そう言われてロキの呪縛は解かれ、ロキは家の中に入り、ソファーにドンと座って力を抜いた。
どうすれば良い…。
ロキはそれしか考えられなくなっていた。
部屋に人族が入ってきて、テーブルの回りに座り出したが、動く気力もない。
向こうもこちらを気にしていないみたいなので、ほっておくことにした。
しばらくして、領主の息子が荷物をもって部屋に入ってきて、飲み物と軽食を広げ始めた。
そして、あの子が木霊を抱えて、リーンと一緒に部屋に入ってくる。
並ぶとますます似ている…。
リーンは黒髪だが、あの子は金髪…その違いだけで、雰囲気とか魔力が似すぎだ…。
そう思っていると、ソファーに座るロキの元にあの子が近付いて来て、甘く優しい良い匂いが漂ってきた。
ロキは慌ててソファーから降り、リーン達の元に向かった。
…リーンには話すべきだろう…。
そして、どうすれば良いのか、聞いてみよう…。
混乱するロキには、リーンに似ているのは親族だからとか、回りにいる人族が神殿から派遣されてきた人達だとか、この地域の領主の息子だとか、そんな事がすっぽりと抜けてしまっていた。
リーン達と同じテーブルに付くと、ロキはリーンに言った。
「…あの子…俺の番だ」
五人の動きが止まった。
「…リーン、どうしたら良い…。まさか出会えるなんて思いもしなかったから…俺は…」
混乱し戸惑うロキは、頭を抱えて机に頭を打ち付けていた。
混乱しているはロキだけでなかった。
リーンは、まさか自分の子供がロキの番になるなんて思いもしなかったし、今までのロキとの関係の事もあって、リーンも頭を抱えてブツフツと呟き始めた。
「…ジーンが…ロキの…番…?て、事は、…えっ!?」
ジェスも頭を抱えた。
ジェスは領主の息子であり、カザンナ王国の第三王子の側近だ。
今回の事で、ルークが行けない分、リーンとジーンの事をよろしく見てやってくれ、と、頼まれていたのもある。
子供達に甘いルークには、まだ子離れするには早すぎる…。
「ルーク様のお怒りが…」
アミュールも頭を抱えた。
優秀な人材をシンラの神殿で育てていくつもりが、予定を変更しなくては行けない…。
休日しか神殿に来ないジーンだが、魔力も記憶力も、もう普通の神官並みなのだ。
アミュールとしては、シノアスの後継者として、いずれ神官長候補として、ジーンを育てていこうと思っていた計画も一から見直しだ。
シノアスとレオンは驚いてはいるが、シノアスは『よかったね』とロキに声をかけるくらい、呑気に微笑んでいる。
リーンはロキに、番だと言った少年は、自分の息子だと言うタイミングを逃し、頭を抱えながらロキを見る。
ロキが帰るまでに…伝えなくては…。
四人の大人の葛藤に気がついていないジーンは、ソファーに座って、気に入られた木霊のフリクと遊んでいる。
『世界樹』の問題で集まったつもりが、ロキの番がジーンだと言った事により、カザンナ王国と、シンラの神殿、狼獣人の里の問題になってしまった。
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