神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
405 / 462
二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)

ヤマツカ町の領主の館

しおりを挟む
 ジーンはアミュール様と馬車で移動しながら、近くを通る小さな神殿に寄って祈りを捧げ、休憩を取りながらヤマツカ町へと向かって行った。
 さすがに三泊目の神殿の客室で、アミュール様と一緒の部屋だと言うことに慣れてきた。
 …気にせず寝る。
 それが馬車での移動の、体力温存に良いのだと。
 今日の昼間過ぎにはヤマツカ町の領主の館に着き、神殿からの『移動』の準備をするのだと言う。
 領主の館には話が通してあるらしく、今日は領主の館で宿泊するため、ゆっくりとベッドで眠れそうだ。
 
 領主の館に着くまでに、失礼の無いよう、アミュール様に注意事項を確認された。
 今日は神官見習いとして行く事。
 見知った顔が有っても、態度に出さない事。
 王族であっても、その時の境遇と立場に寄って違うと言うことを改めて説明された。
 …僕は、神殿からの神官見習い。
 ジーンは何度も、そう唱えていた。


 ヤマツカ町の領主の館で、出迎えてくれたのは、お父様の側近であるジェスさん。
 思わず嬉しそうな顔になり、アミュール様に睨まれて、ジーンは慌てて顔を引き締めた。
 僕は神官見習い…。
 領主の親族に見知った顔が有っても、人前では知らないふりをすら事。
 ジーンの事を、カザンナ王国の第三王子の息子だと知らないヤマツカ町の人にとっては、神官見習いでしかないのだから…。
 
 昼食をご馳走になり、予定通り神殿と領主の館を『転移』で繋げる為の魔法陣がある部屋に行くと、壁際に机や椅子が積み上げられていた。 
 普段は別の用途に使われている部屋のようだ。
 床にはすでに、『転移』用の魔法陣が準備され、後は魔力を流して起動させるだけになっていた。
 アミュール様が『風の便り』で報告、状況のやり取りをして、『転移』を始めることになった。
 アミュール様は『位置』、ジェスさんは『移動』そして僕が『魔力』を魔法陣に注ぎ込む。
 僕はお父様とリーンの子供だけあって、大人並みの保有魔力を持っているから、神殿での少人数の『転移』の補助を何回も行っている。
 だけど『魔力』は大人並みだが、『体力』が子供並みのため、身体が付いて行かないので、この後、爆睡してしまうだろう…。
 そんな事を思っていると、魔法陣の中心に二人の姿が現れた。
 白銀のシノアス様と、レオン叔父様だ。
 ジーンは魔力を止め、その場に座り込んだ。
 さすがに、呼吸が乱れる。
 アミュール様とジェスさんは、平然と二人を出迎えている。
 これも、経験を重ねることで、自然に身に付くのだろうが、当分は無理そうだ。
 そんなジーンの姿に気がついたシノアス様が、こちらを見て微笑むと、アミュール様に何か話して、ジェスさんに案内されてアミュール様とレオン叔父様が部屋を出ていった。
「ジーン様。シノアス様が、『部屋で休んで良いですよ』と、おっしゃってました。シノアス様も貴方には、甘いですね…」
 アミュール様がそう言って苦笑いする。
「…うん。僕も…そう思う…」
 でも正直、この後の会合に同席して、居眠りをしない自信はない。
 いまだに、立ち上がることも出来ない。
「…誰か呼んで来ますので、部屋で休んでください」
「…はい。ありがとう…ございます」
 アミュール様は部屋を出ていき、すぐに使用人の人が現れて、ジーンにあてがわれた部屋へと連れていってもらい、ベッドに倒れるようにうつ伏せになると、ジーンは、そのまま眠ってしまった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

処理中です...