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二人の約束 ~ジーンの初恋~(番外編)
旅立ちは突然に…。
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ジーンは、カザンナ王国の第三王子ルークの息子。
双子のユーリと、三つ子のキース、リーナ、ミーナと、王族でも珍しい五人兄妹だ。
五人を産んでくれたのは、リーン。
お父様の魔力の番と言われ、『森の聖域』に住む、長寿な人だ。
普段は森にいて、なかなか会えなくて寂しいけど、会いに来てくれた時には、嬉しくて皆で甘えるのが恒例だ。
ジーンは王都に有る高等科の学校に通いながら、休日は港街シランにある、カザンナ王国の神殿に通っていた。
目的は神殿に有る多くの書物だ。
植物の調合魔法や、珍しい植物の本と、その実物が保管されているなんて、嬉しいばかりだ。
王都に来て、小等科に通いだしてから今までに、学校の図書館に有る専門書の本を読み尽くしてしまった。
神殿に行く事になったきっかけは、王城の資料室に居た時、神官長候補のシノアス…神官見習いなので人前ではシノアス様にお会いしたからだ。
資料室の本を風魔法を使って取り出すことは禁止されていたから、高い場所に置いてある本に少し身長が足りなくて、届かなかったのを取ってくれたのが出会いだ。
後から聞いたら、お父様のお兄様が護衛している、神殿の人だと知った。
それから何度か会い、シノアス様と話をするようになって、神殿にはココとは違った本が有るよ。と教えてくれたのだ。
だが、神殿の資料室に出入りできるのは、神官とその見習いだけだと聞いて、ジーンは神官見習いになることの許可をお父様に取った。
始めは渋っていたが、学業を疎かにしない事と、休日だけだと言う条件を守ることを約束した。
王都から神殿の有るシンラの街までは、馬車で一時間ほど…。
最初は乗り合い馬車で行くと言ったら反対されて、お父様の屋敷から馬車を出してもらっている。
ジーンは学校が終わったら屋敷に戻って、待機している馬車に乗り、シンラの神殿に向かい、夜は神殿の見習いの宿舎を一部屋借りて、寝泊まりしている。
だから今日は夕食を終えて、明日は朝からめぼしい本を探して読むぞ!と、思い、早めにベッドに入ったのだが、すぐにたたき起こされてしまった。
なんでも明日の早朝から、ヤマツカ町へと向かう見習い神官の一人に、ジーンが行くことになってしまったからだ。
なんで僕?
そんな事を言っている間はなく、慌てて一週間くらいの旅行の準備をすることになり、学校を休む連絡を王都のお屋敷に連絡した。
神殿からも、屋敷の方と学校には連絡を入れてくれてたので、学校の手続きはすぐに終わった。
着替えとか、どれだけ持っていけば良いんだ?
普段、出かけるときは、お父様やリーンがいたし、準備してもらったのを持って出掛けていた。
ジーンは、何をどれだけ持っていけば良いのか分からず、部屋を出て談話室に向かった。
談話室には同じ神官見習いがいて、顔見知りの友人を見つけるとジーンは近付いて行って声をかけた。
「ルベア。…一週間くらい出かける荷物って、どれくらい準備すれば良い?」
「ジーン様がお出かけ?」
ルベアは人懐っこい顔を横に傾げた。
神殿の中で、僕が王族だと知っていても気にせず普通に接してくれる、貴重な友人の一人。
「ヤマツカ町に行くみたいで、一緒に行くよう言われたんだけど…」
ジーンがそう言うと、ルベアから同情の眼差しを受けた。
えっ、何?!
「ヤマツカ町の場所は把握してますか?」
「地図上では…」
ジーンがそう言うと、ルベアは深いため息をつく。
「…ヤマツカ町まで、馬車に乗って四日はかかります」
…四日。
「休憩は有りますが、ずっと馬車の中ですよ」
「…。」
ジーンは今まで、長距離の移動はリーンの魔法陣を使って獣人の町グオルクに移動したり、転移魔法を使って移動していてので、馬車で移動したのは、カザナから王都までの半日くらいの移動だけだ。
朝一で出発するって言っていたから、転移を使って移動するわけではないよな…。
「取りあえず、カバンに詰めれるだけの着替えを準備した方が…。時間潰しの本も一冊は持っていった方が良いですよ」
そう言われて、ジーンは苦笑いしながら頭を押さえた。
「…どなたの同行なのですか」
「…アミュール様」
ルベアは目を見開き、羨ましそうにかつ、同情の顔をした。
「馬車内での講義、頑張って下さい」
「…馬車内での…講義…」
狭い馬車内で、アミュール様の個人授業。
嬉しいが、それと同時に疲労が増しそうだ。
ジーンはルベアに馬車で長時間移動するときの苦労話を聞いて、荷造りのために部屋に戻った。
双子のユーリと、三つ子のキース、リーナ、ミーナと、王族でも珍しい五人兄妹だ。
五人を産んでくれたのは、リーン。
お父様の魔力の番と言われ、『森の聖域』に住む、長寿な人だ。
普段は森にいて、なかなか会えなくて寂しいけど、会いに来てくれた時には、嬉しくて皆で甘えるのが恒例だ。
ジーンは王都に有る高等科の学校に通いながら、休日は港街シランにある、カザンナ王国の神殿に通っていた。
目的は神殿に有る多くの書物だ。
植物の調合魔法や、珍しい植物の本と、その実物が保管されているなんて、嬉しいばかりだ。
王都に来て、小等科に通いだしてから今までに、学校の図書館に有る専門書の本を読み尽くしてしまった。
神殿に行く事になったきっかけは、王城の資料室に居た時、神官長候補のシノアス…神官見習いなので人前ではシノアス様にお会いしたからだ。
資料室の本を風魔法を使って取り出すことは禁止されていたから、高い場所に置いてある本に少し身長が足りなくて、届かなかったのを取ってくれたのが出会いだ。
後から聞いたら、お父様のお兄様が護衛している、神殿の人だと知った。
それから何度か会い、シノアス様と話をするようになって、神殿にはココとは違った本が有るよ。と教えてくれたのだ。
だが、神殿の資料室に出入りできるのは、神官とその見習いだけだと聞いて、ジーンは神官見習いになることの許可をお父様に取った。
始めは渋っていたが、学業を疎かにしない事と、休日だけだと言う条件を守ることを約束した。
王都から神殿の有るシンラの街までは、馬車で一時間ほど…。
最初は乗り合い馬車で行くと言ったら反対されて、お父様の屋敷から馬車を出してもらっている。
ジーンは学校が終わったら屋敷に戻って、待機している馬車に乗り、シンラの神殿に向かい、夜は神殿の見習いの宿舎を一部屋借りて、寝泊まりしている。
だから今日は夕食を終えて、明日は朝からめぼしい本を探して読むぞ!と、思い、早めにベッドに入ったのだが、すぐにたたき起こされてしまった。
なんでも明日の早朝から、ヤマツカ町へと向かう見習い神官の一人に、ジーンが行くことになってしまったからだ。
なんで僕?
そんな事を言っている間はなく、慌てて一週間くらいの旅行の準備をすることになり、学校を休む連絡を王都のお屋敷に連絡した。
神殿からも、屋敷の方と学校には連絡を入れてくれてたので、学校の手続きはすぐに終わった。
着替えとか、どれだけ持っていけば良いんだ?
普段、出かけるときは、お父様やリーンがいたし、準備してもらったのを持って出掛けていた。
ジーンは、何をどれだけ持っていけば良いのか分からず、部屋を出て談話室に向かった。
談話室には同じ神官見習いがいて、顔見知りの友人を見つけるとジーンは近付いて行って声をかけた。
「ルベア。…一週間くらい出かける荷物って、どれくらい準備すれば良い?」
「ジーン様がお出かけ?」
ルベアは人懐っこい顔を横に傾げた。
神殿の中で、僕が王族だと知っていても気にせず普通に接してくれる、貴重な友人の一人。
「ヤマツカ町に行くみたいで、一緒に行くよう言われたんだけど…」
ジーンがそう言うと、ルベアから同情の眼差しを受けた。
えっ、何?!
「ヤマツカ町の場所は把握してますか?」
「地図上では…」
ジーンがそう言うと、ルベアは深いため息をつく。
「…ヤマツカ町まで、馬車に乗って四日はかかります」
…四日。
「休憩は有りますが、ずっと馬車の中ですよ」
「…。」
ジーンは今まで、長距離の移動はリーンの魔法陣を使って獣人の町グオルクに移動したり、転移魔法を使って移動していてので、馬車で移動したのは、カザナから王都までの半日くらいの移動だけだ。
朝一で出発するって言っていたから、転移を使って移動するわけではないよな…。
「取りあえず、カバンに詰めれるだけの着替えを準備した方が…。時間潰しの本も一冊は持っていった方が良いですよ」
そう言われて、ジーンは苦笑いしながら頭を押さえた。
「…どなたの同行なのですか」
「…アミュール様」
ルベアは目を見開き、羨ましそうにかつ、同情の顔をした。
「馬車内での講義、頑張って下さい」
「…馬車内での…講義…」
狭い馬車内で、アミュール様の個人授業。
嬉しいが、それと同時に疲労が増しそうだ。
ジーンはルベアに馬車で長時間移動するときの苦労話を聞いて、荷造りのために部屋に戻った。
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