神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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希少種

相談

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「別件なんだけど、マークの事で、相談したいことがあるんだ」
 リーンはそう言って話を切り出した。
 リマ商会の仕事で、マークがイワニおばさんの屋敷に出入りしていて、亡くなった後に、屋敷の相続をマークにと遺言され、親族が激怒して、収拾が付かないので一旦保留になった事。
 マークの安全もかねて、ヤマツカ町を離れてタミネキ村に一緒に来たこと。
 そしてマークの話からイワニおばさんは、『桜』を守って欲しいのだと推測した事…。
 マークとしても、お屋敷と使用人もそのまま継続して維持できて、イワニおばさんが守りたかった『桜』を守る事が出来れば、相続しなくてもかまわない。との、話をした。
「あの『桜』が、どれだけ美しく素晴らしいのか、近所の方達なら知っています。毎年、庭を開放して、皆で花見をするのが恒例でした」
 マークは思い出しながら、そう語った。
「私は知らないんだ。『桜』と言う木の事を…」
 リーンがそう言うと、ジェスの祖父は驚いてリーンを見る。
 リーンは『世界樹』の魔力を感知できる範囲の、木の事や植物の事は大概知っている。
 『私』の記憶の中でも『桜』は見たことが無かったのだ。
「…島国固有の品種だったのだと思います」
「なるほど…」
 ジェスの祖父はしばらく考え、マークに言う。
「屋敷の所有者にならなくても良いのかね」
「僕には不要です。小さい家で充分です」
 マークがきっぱりと言うと、ジェスの祖父は微かに微笑んでいた。
「ならば、屋敷の管理者だったらどうだろう。屋敷を維持していく為の権限を君が持つ。…所有者は別の者だ。所有者から管理を任されている…立場なら…」
 マークは不安そうにカムイを見る。
 知りたいのだろう。
 マークにどこまでの覚悟が有るのか…。
 マークはジェスの祖父を見て、真剣な眼差しで答えた。
「…それなら…やります」
 ジェスの祖父は微笑んで言う。
「ならば屋敷の権利を受け取らず、領主に預けなさい。その権限は指名された君に有る」
「はい」
 マークは頷く。
 領主である、ジェスの祖父に任せておけば、悪いようにはしないだろう…。
 これで屋敷の件の根回しは出来ただろうか。
 ルークに相談したら、管轄外だから領主の采配に任せるしかない。と、言っていた。
 …この地方の領主がジェスの一族だと知っていたから、ルークはそう言ったのだろう。
 その件も兼ねて、ジェスが来たのだろうな…。
 リーンはルークの根廻しに微笑んだ。
 

 一通り話が終わり、ジェスとジェスの祖父がヤマツカ町に戻ることになり、六人は家の外に出て、『世界樹』を見上げた。
「…噂の、羽の生えた木霊には会えないだろうか…」
 ジェスの祖父がボソっと呟いた。
 するとジェスがリーンの側にやって来て、リーンに囁く。
「…会わせてあげられないか。祖父はなかなかココまで来ることが出来ない」
 高齢だし、馬車とはいえ、ヤマツカ町からココまで移動してくるだけでも、かなりの体力を使うだろう。
 今後の事もあるし、会わせてあげれば強力な後ろ楯になってくれるだろう…。
 リーンは『世界樹』の方を向くと声をかけた。
「フリク」
 しばらくしても反応はない。
「フリク。君を守ってくれると約束してくれた人だから、大丈夫だよ」
 リーンが再びそう言うと、『世界樹』からヒョコリとフリクが顔を出し、辺りをキョロキョロと見て、リーンの腕の中に飛び込んできた。
 驚くジェスとジェスの祖父は、リーンの腕の中にいる木霊を見る。
「懐かれてますな…」
「…まあね」
 リーンが微笑んでフリクの髪の毛を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めた。
「フリク…ジンフリークは、まだ幼い。それを忘れないで欲しい」
「はい。ありがとうございます」
 ジェスの祖父はリーンに頭を下げ、馬車へと戻って行った。
「ジェス。…どこまで話してある?」
 その場に残ったジェスに確認するため聞いてみた。
「…ルーク様との旅の途中で、リーンさんに会って、行動を共にしていたから知っていると、言うことまで」
「そうか…」
 さすがにルークの魔力のつがいで、ルークの子供を産んだのは私だと言うことまで伝えると、驚いて恐縮して倒れてしまわないか心配だ。
「どうしても必要だったら言って良いよ」
「…いずれルーク様が来られれば、バレてしまいますけどね」
 ジェスはそう言って微笑むと、馬車へと戻って乗り込み、来た道を戻って帰っていった。 



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