神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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希少種

話し合い

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 今は休憩所となっているこの家は、『宿り木』に眠ったジンの実家だった場所。
 建物は補修され、タミネキ村の住人と獣人達の交流の場として、本来は使われていた場所だ。
 使わなくなったテーブルや椅子、ソファーなどを持ちより、部屋に置かれている。
 大きすぎて部屋に置けないと置いていかれたテーブルに、形の違う椅子が回りを囲み、棚や食器も持ち込みで、綺麗に整頓収納され、気楽に立ち寄って使える雰囲気を出している。
 ジェスの祖父は少し大きくて柔らかそうな椅子に座ると、隣にジェスが座った。
 そしてリーンが二人の向かいに座ると、マークが奥のキッチンからコップに入ったココティーを持ってきてくれた。
 それを三人の前に奥と、部屋を出ていこうとしたので、リーンはカムイを呼んできて、一緒に同席して欲しいと頼んだ。
 マークは少し複雑な顔をしたが、頷いてカムイを呼びに行った。
 少し迷ったのだが、ヤマツカ町のマークの話も、彼らにしておこうと思ったからだ。
 話したとしても、結果がどちらに転ぶかは分からないが、世話になってばかりの彼らのために、何かしてあげたかったのもある。

 リーンの隣にマークが座り、その隣にカムイが座ると、リーンは、すべての経緯を話し始めた。
 『御神木』が切り倒され、土地が痩せて、リーンがタミネキ村の人達と狼獣人と協力し、『御神木』を復活させ、彼らが守ってきたこと。
 私が『御神木』に魔力を与えて繋がった影響で、『世界樹』に変質してしまった事。
 その事を話した上で、村人や獣人達の配慮、この地の風景を守る為、もし神殿を建てるなら、なるべく離れた端の方にとお願いした。
 神殿との交渉は、もし私達が立ち合えても、領主達が行うことになるだろうからだ…。
 こちら側の希望だけは伝えておいた方が良い…。
 …それに、ココに来る前に、タミネキ村の過去の事を、多少調べて来ているだろうけれど…。
 そんな話をしていると、入り口の方からロキが獣変化したままの姿で現れた。
 ロキはするりと足早に奥の部屋に入っていき、しばらくすると、半獣化した姿で戻って来て、マークとは反対側の、リーンの隣に座った。
 奥の部屋には服がたくさん置いてある場所が有り、獣人達が獣変化したままの山を降りてきたとき、奥の部屋で着替えて、村人達と話をするためだ。
「彼はロキ。さっき言っていた狼獣人の里のリーダー。…私の友人?みたいな者だ」
 リーンがロキを紹介すると、ロキは顔を歪めて言う。
「なぜ、疑問系なんだ?」
「…改めてロキとの関係を考えたら、なんて言ったら良いのか分からなくて…」
 …ルークと出会う前は『魔力の交合』をした仲だし、会いに行けば喜んでくれて、隣に座って相談事にのってくれる、長い時間生きるリーンにとって、変わらず接してくれる数少ない貴重な獣人…。
「…長い付き合いなんだ。友人で良いだろう?」
 ロキはふて腐れたように言う。
「そうだね」
 リーンは苦笑いして、ジェスを見た。
「こっちは人族の領主の一族のジェス。…ジェスも友人?で良いのか?」
「リーンさんにそう言って頂けると、嬉しいですよ」
 ジェスはそう言って微笑み、祖父を紹介して一息ついた。
 リーンはロキを見て、ジェスに言う。
「ロキ達の意見も先に聞いておきたくて、呼んだんだ」
 リーンは、『世界樹』を守るためにココに神殿を建て、神官が常駐することになるだろう事を話した。
「…この休憩所には自由に出入り出来なくなるのか?」
「そうだね。多少、村人達も制約がかけられるかも…」
「…。」
 今まで自由に出入りして、のんびりと過ごしていた場所が、『世界樹』を守るために規制されるのは、思わしくないだろう…。
 沈黙を破ったのは、ずっと話を聞いていただけのジェスの祖父だった。
「…先ほどリーン様が話された事を、この地に『世界樹』が出現した逸話として伝え、彼らも守ってきたのだから、自由に出入りできるよう進言しよう」
 領主の方からそう言ってもらえれば、ロキ達も自由にココに来れるだろう…。
「それなら、獣変化したままの狼姿で『世界樹』の回りをウロウロしていても気にしないようにしてくれ」
 ロキは真剣な眼差しで言う。
「それが、ココでは普通だ」
「ああ。神殿側にそう伝えよう」
 ジェスの祖父はそう言って微笑んでくれた。
 理解のある人で良かった。
 これで神殿側が難色を示しても、領主が許可しなければ、この風景は保たれる…。
 そんな事を思っていると、ジェスがリーンの方を向いて話しかけてきた。
「…ここは人族と獣人族の交流の場なのですね」
「ちなみにマークとカムイも獣人だ。長年、ヤマツカ町のリマ商会で、仕事をしている」
 リーンがそう言うと、ジェスとジェスの祖父は一瞬驚いて微笑んだ。
「さすがリマ商会だ」
 リーンはハッとしてマークを見ると、不安そうにリーンを見ていて、リーンはマークの不安を取り除くために、大丈夫だと、頷いた。
 そしてリーンは、ジェスとジェスの祖父の方を見て、真剣な眼差しで言った。
「別件なんだけど、マークの事で、相談したいことがあるんだ」
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