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希少種
信仰
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翌朝、タミネキ村の住人が時折やって来て、『世界樹』を前に祈りを捧げていた。
そして休憩所であり、リーン達が滞在する家にやって来て、朝取れたばかりの野菜だと、色々と置いていってくれた。
昨日、もらった野菜だけでも食べきれないくらいあるので、神殿から派遣されて来るもの達にも食べてもらおうと、保冷石を使って急遽、木箱を保冷庫に変え、野菜を詰め込んだ。
常温で日持ちする野菜はそのまま、袋にいれておいて、必要な分だけを食事に使った。
リーンが『世界樹』のもとに行くと、羽の生えた木霊フリクが現れ、リーンの腕のなかに飛び込んでくる。
とは言え、ずっと抱き抱えているわけにもいかず、『世界樹』の側に座り、どうしようかと迷っていると、ふと、カザナのルークのお屋敷の『宿り木』ミーネの側で、三つ子達に、絵本の読み聞かせをしていたことを思い出す。
フリクも産まれたばかりで、魔力を与えて復活させた私を慕ってくれるのと、ジンの欠片がフリクの中に有るからかもしれない…とも思う。
部屋の片付けをしていたマークを呼んで、絵本の話をすると、スバルの療養所に有ることを教えてくれ、カムイに持ってきてもらうことにした。
それまでは、少し早いがフリクとお昼寝だ。
リーンは『世界樹』に寄りかかり、腕の中でしがみつくフリクの髪の毛を撫でながら目を閉じた。
風霊が柔らかい風をリーン達に届け、リーンの髪を揺らす。
リーンの腕の中にいたフリクは、そっとリーンの顔を覗き込み、手を伸ばしてリーンの頬に触れる。
ペタペタと数回触ると、安心したように力を抜いてリーンの身体にもたれ掛かり目を閉じた。
すると『世界樹』がザワザワと葉を揺らし、ゆっくりと枝葉が伸び始める。
その気配に気が付いたマークが、慌てて家から出てくると、リーンとフリクが昼寝している辺りの上の枝が伸びていて、二人に日陰を作っている。
それを見てホッとしたマークは思わず座り込んでしまい、ロキが山から降りてくるまで、その風景に見とれていた。
*****
「何、ぼっとしているんだ?」
ふいにマークの背後からロキが近付いてきたので、ビクッとマークの身体が跳ねた。
「…ロキさん」
マークは正気に戻り、振り向いてホッとして苦笑いした。
「…あの情景を見ていたら、なんだろう…人族みたいに神殿にはあまり興味は無かったけれど、信仰…と言うものの対象に、したくなる…神聖な姿に見えて…」
マークはしどろもどろで、『世界樹』の根元で、羽の生えた木霊を抱き抱え眠るリーンの方を見て、ロキに言う。
「…そうだな…。人里で、こんな情景はめったに見られない…」
マークは、ロキが何が、自分とは違うものを見ている気がして、聞いてみた。
「…ロキさんには…二人以外に何か見えているんですか?」
ロキが不思議そうにマークを見てくる。
「…木霊や風霊達の姿が見えないのか?」
魔力の少ないマークには、リーンと羽の生えた木霊しか見えない。
それに気が付いたロキが見たままを話してくれた。
「…リーンの回りに…小さい木霊が寄り添うように集まって、昼寝をしている…。枝には、それを見ている風霊が、ニコニコと優しい風を送っている…」
ロキのその話を聞いて、見てみたい…そう思った。
「…僕も見る事が出来ますか?」
ロキは少し考え、苦笑いした。
「カムイにも見えたら、魔力を分けてもらって見ると良い。…俺がマークに魔力与えれば見れるだろうが、後でカムイに文句を言われたくない」
「…ああ。カムイなら言いそう…」
マークも苦笑いした。
カムイは独占欲が強い。
ロキさんに魔力を分けてもらったら、後でマークがひどい目に合うのは目に見えていた。
「そうするよ…。カムイ、早く帰ってこないかな…」
マークは再び眠るリーンと羽の生えた木霊の方を見た。
そして休憩所であり、リーン達が滞在する家にやって来て、朝取れたばかりの野菜だと、色々と置いていってくれた。
昨日、もらった野菜だけでも食べきれないくらいあるので、神殿から派遣されて来るもの達にも食べてもらおうと、保冷石を使って急遽、木箱を保冷庫に変え、野菜を詰め込んだ。
常温で日持ちする野菜はそのまま、袋にいれておいて、必要な分だけを食事に使った。
リーンが『世界樹』のもとに行くと、羽の生えた木霊フリクが現れ、リーンの腕のなかに飛び込んでくる。
とは言え、ずっと抱き抱えているわけにもいかず、『世界樹』の側に座り、どうしようかと迷っていると、ふと、カザナのルークのお屋敷の『宿り木』ミーネの側で、三つ子達に、絵本の読み聞かせをしていたことを思い出す。
フリクも産まれたばかりで、魔力を与えて復活させた私を慕ってくれるのと、ジンの欠片がフリクの中に有るからかもしれない…とも思う。
部屋の片付けをしていたマークを呼んで、絵本の話をすると、スバルの療養所に有ることを教えてくれ、カムイに持ってきてもらうことにした。
それまでは、少し早いがフリクとお昼寝だ。
リーンは『世界樹』に寄りかかり、腕の中でしがみつくフリクの髪の毛を撫でながら目を閉じた。
風霊が柔らかい風をリーン達に届け、リーンの髪を揺らす。
リーンの腕の中にいたフリクは、そっとリーンの顔を覗き込み、手を伸ばしてリーンの頬に触れる。
ペタペタと数回触ると、安心したように力を抜いてリーンの身体にもたれ掛かり目を閉じた。
すると『世界樹』がザワザワと葉を揺らし、ゆっくりと枝葉が伸び始める。
その気配に気が付いたマークが、慌てて家から出てくると、リーンとフリクが昼寝している辺りの上の枝が伸びていて、二人に日陰を作っている。
それを見てホッとしたマークは思わず座り込んでしまい、ロキが山から降りてくるまで、その風景に見とれていた。
*****
「何、ぼっとしているんだ?」
ふいにマークの背後からロキが近付いてきたので、ビクッとマークの身体が跳ねた。
「…ロキさん」
マークは正気に戻り、振り向いてホッとして苦笑いした。
「…あの情景を見ていたら、なんだろう…人族みたいに神殿にはあまり興味は無かったけれど、信仰…と言うものの対象に、したくなる…神聖な姿に見えて…」
マークはしどろもどろで、『世界樹』の根元で、羽の生えた木霊を抱き抱え眠るリーンの方を見て、ロキに言う。
「…そうだな…。人里で、こんな情景はめったに見られない…」
マークは、ロキが何が、自分とは違うものを見ている気がして、聞いてみた。
「…ロキさんには…二人以外に何か見えているんですか?」
ロキが不思議そうにマークを見てくる。
「…木霊や風霊達の姿が見えないのか?」
魔力の少ないマークには、リーンと羽の生えた木霊しか見えない。
それに気が付いたロキが見たままを話してくれた。
「…リーンの回りに…小さい木霊が寄り添うように集まって、昼寝をしている…。枝には、それを見ている風霊が、ニコニコと優しい風を送っている…」
ロキのその話を聞いて、見てみたい…そう思った。
「…僕も見る事が出来ますか?」
ロキは少し考え、苦笑いした。
「カムイにも見えたら、魔力を分けてもらって見ると良い。…俺がマークに魔力与えれば見れるだろうが、後でカムイに文句を言われたくない」
「…ああ。カムイなら言いそう…」
マークも苦笑いした。
カムイは独占欲が強い。
ロキさんに魔力を分けてもらったら、後でマークがひどい目に合うのは目に見えていた。
「そうするよ…。カムイ、早く帰ってこないかな…」
マークは再び眠るリーンと羽の生えた木霊の方を見た。
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