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希少種
墓標
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リーンは羽の生えた木霊のジルフリークを抱えたまま、目の前の『世界樹』を見上げた。
まだ幼い『世界樹』は、自然のままに弱い魔力を吸い上げ放つだけ。
神官が来れば魔力調整を行い、一定の魔力を放つようになり、タミネキ村…ヤマツカ町…へと植物が今以上に育つようになり、人もタミネキ村へと集まってくる事になる。
「あまり騒がしくしてほしくないけれど…」
リーンにとってこの『世界樹』はジンの墓標でもある。
休憩場所は、かつてジンが暮らしていた家でもあり、思い出の場所…。
リーンは『世界樹』に寄りかかるように座ると、腕の中のジンフリークが顔を上げ、リーンをじっと見てくる。
ジンフリークと呼ぶと、ジンの事を思い出しすぎてしまうので、リーンは少し考えて見上げてくるジンフリークに微笑んだ。
「…フリク。そう呼ぶね」
フリクは小さく微笑んでリーンの腕の中から消えた。
さあ、どうする…。
この周辺には建物を建てて欲しくない。
この景観を壊したくないからだ。
ここからほんの少し見えて、景観を壊さない場所は…。
リーンは馬車に乗ってきた道を見る。
山間の谷間まで離れていれば、違和感はない…。
あの辺りから、タミネキ村の方に建物は建ててもらおう。
森の方はロキがいるから安全だし、ここの結界石の効果を『世界樹』を守るために使わせてもらって…山から降りてくる場所を変えてもらおう。
祈りを捧げる村人達には悪いが、不審者が入り込まないように警備を強化して…制限付きで入ってもらうようにするしかない…。
その辺は、神殿側との話し合いになるだろうが…。
リーンは『世界樹』から見える開けた土地を見て、ぼんやりと、この先の事を思った。
スバルがカムイと共に馬車に荷物を乗せて戻ってくると、その荷物の多さに驚いた。
荷台いっぱいに、木箱や袋、かごに入った野菜などが積まれている。
「…どうしたの…こんなにたくさん…」
マークがカムイに聞くと、一緒に御者台に座るスバルが苦笑いして答える。
「村人達からだ」
村人達から?
「『世界樹』がこの地で具現化したのは『森の管理者』様のおかげ。…いわゆる奉納?みたいなものだ。…『世界樹』のおかげで村が活性化する…と、言うのを期待しているからだと思うぞ」
リーンはスバルの解釈を聞いて苦笑いした。
『世界樹』がこの地にあると分かれば、豊作を願い、祈りを捧げに人が訪れるだろう。
そうすれば、村は通り道になり、宿泊の宿や飲食店が繁盛し増えていき、村は活性化する…と、期待しているのだ。
それに、出て行った村の若い人達が戻ってきてくれれば、村は安泰になる。
「それも、神殿の人達次第だけどね」
スバルとカムイは、マークが掃除した休憩場所へと荷物を運び、リーンはマークにリマ商会へ、手紙を書くように言う。
「『世界樹が出現』したので、しばらくタミネキ村に滞在する。と、伝えてくれれば分かると思うよ」
マークは魔法で『風の便り』を作り出し、ヤマツカ町のリマ商会へと送った。
それがどういう意味か、アズマやオヤジさんには分かるだろう。
ヤマツカ町の物資の流れを把握しているリマ商会ならば、神殿を建てるための物資、人手など、秘密裏に確認して段取りしていくはず…。
数日もすれば、神殿から人が派遣され、町中騒がしくなってしまうだろう…。
それも『世界樹』を守るためだと思えば仕方ないことだろうが…。
まだ幼い『世界樹』は、自然のままに弱い魔力を吸い上げ放つだけ。
神官が来れば魔力調整を行い、一定の魔力を放つようになり、タミネキ村…ヤマツカ町…へと植物が今以上に育つようになり、人もタミネキ村へと集まってくる事になる。
「あまり騒がしくしてほしくないけれど…」
リーンにとってこの『世界樹』はジンの墓標でもある。
休憩場所は、かつてジンが暮らしていた家でもあり、思い出の場所…。
リーンは『世界樹』に寄りかかるように座ると、腕の中のジンフリークが顔を上げ、リーンをじっと見てくる。
ジンフリークと呼ぶと、ジンの事を思い出しすぎてしまうので、リーンは少し考えて見上げてくるジンフリークに微笑んだ。
「…フリク。そう呼ぶね」
フリクは小さく微笑んでリーンの腕の中から消えた。
さあ、どうする…。
この周辺には建物を建てて欲しくない。
この景観を壊したくないからだ。
ここからほんの少し見えて、景観を壊さない場所は…。
リーンは馬車に乗ってきた道を見る。
山間の谷間まで離れていれば、違和感はない…。
あの辺りから、タミネキ村の方に建物は建ててもらおう。
森の方はロキがいるから安全だし、ここの結界石の効果を『世界樹』を守るために使わせてもらって…山から降りてくる場所を変えてもらおう。
祈りを捧げる村人達には悪いが、不審者が入り込まないように警備を強化して…制限付きで入ってもらうようにするしかない…。
その辺は、神殿側との話し合いになるだろうが…。
リーンは『世界樹』から見える開けた土地を見て、ぼんやりと、この先の事を思った。
スバルがカムイと共に馬車に荷物を乗せて戻ってくると、その荷物の多さに驚いた。
荷台いっぱいに、木箱や袋、かごに入った野菜などが積まれている。
「…どうしたの…こんなにたくさん…」
マークがカムイに聞くと、一緒に御者台に座るスバルが苦笑いして答える。
「村人達からだ」
村人達から?
「『世界樹』がこの地で具現化したのは『森の管理者』様のおかげ。…いわゆる奉納?みたいなものだ。…『世界樹』のおかげで村が活性化する…と、言うのを期待しているからだと思うぞ」
リーンはスバルの解釈を聞いて苦笑いした。
『世界樹』がこの地にあると分かれば、豊作を願い、祈りを捧げに人が訪れるだろう。
そうすれば、村は通り道になり、宿泊の宿や飲食店が繁盛し増えていき、村は活性化する…と、期待しているのだ。
それに、出て行った村の若い人達が戻ってきてくれれば、村は安泰になる。
「それも、神殿の人達次第だけどね」
スバルとカムイは、マークが掃除した休憩場所へと荷物を運び、リーンはマークにリマ商会へ、手紙を書くように言う。
「『世界樹が出現』したので、しばらくタミネキ村に滞在する。と、伝えてくれれば分かると思うよ」
マークは魔法で『風の便り』を作り出し、ヤマツカ町のリマ商会へと送った。
それがどういう意味か、アズマやオヤジさんには分かるだろう。
ヤマツカ町の物資の流れを把握しているリマ商会ならば、神殿を建てるための物資、人手など、秘密裏に確認して段取りしていくはず…。
数日もすれば、神殿から人が派遣され、町中騒がしくなってしまうだろう…。
それも『世界樹』を守るためだと思えば仕方ないことだろうが…。
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