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希少種
羽の生えた木霊 2
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「…『世界樹』に変わっている…。カザンナ王国だけでなく、神殿まで巻き込むことになる…」
集まった、みんなの息を飲む声が聞こえる。
カザンナ王国では…人族の世界では、『世界樹』の有るところに神殿が建てられている。
『世界樹』が魔力を放出し、大地を潤し、神官が祈りを捧げて魔力を循環させ『世界樹』を守る。
人族の中でも『森の聖域』と同様、特別な『聖域』となるのだ。
そしてそれを管理、保護するのが神殿。
カザンナ王国には、海辺に近い街に一つだけ有り、カザンナ王国の第二王子の部隊が警護している。
そしてリーンの息子、ジーンも今、見習い神官として学業の合間に通っているのだ…。
ジーンの目的は神殿の書物らしいが…。
『世界樹』の出現で、この地に神殿が建てられ、物々しい状態になってしまわないか不安だ…。
村人達は遅れながら意味を理解し、青ざめ硬直して震え出す。
「…『森の管理者』様…」
村長が震えながら頑張って声を出し、リーンに聞いてくる。
「…こちらの…『宿り木』が…『世界樹』に…変わってしまったと…」
「…そうだ。…私の影響かも知れないが…」
最近この子が現れたと言っていたから、リーンが魔力を失い、世界樹のもとで魔力を復活させたとき、こちらにも影響を及ぼしたのかもしれない…。
リーンは少し考えて言う。
「村長。『世界樹の出現』と、ヤマツカ町の領主の元に書状を…直ぐにカザンナ王国へ通達をお願いします。…こちらからも手を回しておくので、急ぎ神館長にお越し頂くよう伝えてください」
村長は真っ青な顔をして何度も頷く。
「…あと、この子が離れてくれなさそうなので、しばらくここに宿泊します。王都から派遣された人達が来るまで、村人以外がこちらの方に来ないよう、監視してください」
「…承りました」
村長達はあたふたと馬車に乗り込み、来た道を戻っていく。
馬車の姿が見えなくなると、ジンフリークはそっと顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回す。
ロキとマークとスバルがリーンの側に近くと、再びジンフリークはリーンの腕の中に頭を埋める。
…人見知り…みたいなものだろうか…。
「…スバル。私の荷物と食料を持ってきてくれないか。王都から派遣されてくるまで、休憩場所で生活する。確か設備は整っていたよね」
「ああ。寝泊まりできる」
「ロキは、この周辺一帯の警護するよう段取りをして欲しい。森から入られたら村人には分からないからね…」
「ああ。里に戻って手配する」
そう言って、ロキは森の中に入り、服を脱いで狼の姿になると狼獣人の里に向かって山を駆け上がっていった。
「僕は休憩場所の部屋を掃除して、住めるようにするよ。…僕達も一緒にいて良いのかな?」
マークが不安そうに言うと、リーンは微笑んだ。
「大丈夫だよ。…ただ、この子に触れることは出来ないけど…」
「恐れおおくて、触れられないよ…」
マークは苦笑いして、カムイの方を見る。
「僕達の荷物も持ってきて」
「分かった」
カムイは返事するとスバルと共に馬車に乗って療養所へと戻って行き、マークは掃除をするために休憩所の中に入っていった。
…ルークに連絡をしよう…。
今後の神殿側の動きが、どうなってくるのかを知りたいし、カザンナ王国も、どこまで関わるのか知りたい…。
リーンはそう思い、腕の中でしがみつく『羽の生えた木霊』を見下ろし、髪の毛を撫でてあげた。
…ジン…。
…ココにいるんだね…。
集まった、みんなの息を飲む声が聞こえる。
カザンナ王国では…人族の世界では、『世界樹』の有るところに神殿が建てられている。
『世界樹』が魔力を放出し、大地を潤し、神官が祈りを捧げて魔力を循環させ『世界樹』を守る。
人族の中でも『森の聖域』と同様、特別な『聖域』となるのだ。
そしてそれを管理、保護するのが神殿。
カザンナ王国には、海辺に近い街に一つだけ有り、カザンナ王国の第二王子の部隊が警護している。
そしてリーンの息子、ジーンも今、見習い神官として学業の合間に通っているのだ…。
ジーンの目的は神殿の書物らしいが…。
『世界樹』の出現で、この地に神殿が建てられ、物々しい状態になってしまわないか不安だ…。
村人達は遅れながら意味を理解し、青ざめ硬直して震え出す。
「…『森の管理者』様…」
村長が震えながら頑張って声を出し、リーンに聞いてくる。
「…こちらの…『宿り木』が…『世界樹』に…変わってしまったと…」
「…そうだ。…私の影響かも知れないが…」
最近この子が現れたと言っていたから、リーンが魔力を失い、世界樹のもとで魔力を復活させたとき、こちらにも影響を及ぼしたのかもしれない…。
リーンは少し考えて言う。
「村長。『世界樹の出現』と、ヤマツカ町の領主の元に書状を…直ぐにカザンナ王国へ通達をお願いします。…こちらからも手を回しておくので、急ぎ神館長にお越し頂くよう伝えてください」
村長は真っ青な顔をして何度も頷く。
「…あと、この子が離れてくれなさそうなので、しばらくここに宿泊します。王都から派遣された人達が来るまで、村人以外がこちらの方に来ないよう、監視してください」
「…承りました」
村長達はあたふたと馬車に乗り込み、来た道を戻っていく。
馬車の姿が見えなくなると、ジンフリークはそっと顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回す。
ロキとマークとスバルがリーンの側に近くと、再びジンフリークはリーンの腕の中に頭を埋める。
…人見知り…みたいなものだろうか…。
「…スバル。私の荷物と食料を持ってきてくれないか。王都から派遣されてくるまで、休憩場所で生活する。確か設備は整っていたよね」
「ああ。寝泊まりできる」
「ロキは、この周辺一帯の警護するよう段取りをして欲しい。森から入られたら村人には分からないからね…」
「ああ。里に戻って手配する」
そう言って、ロキは森の中に入り、服を脱いで狼の姿になると狼獣人の里に向かって山を駆け上がっていった。
「僕は休憩場所の部屋を掃除して、住めるようにするよ。…僕達も一緒にいて良いのかな?」
マークが不安そうに言うと、リーンは微笑んだ。
「大丈夫だよ。…ただ、この子に触れることは出来ないけど…」
「恐れおおくて、触れられないよ…」
マークは苦笑いして、カムイの方を見る。
「僕達の荷物も持ってきて」
「分かった」
カムイは返事するとスバルと共に馬車に乗って療養所へと戻って行き、マークは掃除をするために休憩所の中に入っていった。
…ルークに連絡をしよう…。
今後の神殿側の動きが、どうなってくるのかを知りたいし、カザンナ王国も、どこまで関わるのか知りたい…。
リーンはそう思い、腕の中でしがみつく『羽の生えた木霊』を見下ろし、髪の毛を撫でてあげた。
…ジン…。
…ココにいるんだね…。
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