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希少種
羽の生えた木霊 1
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馬車が山間を抜け、村より少し奥に入った開けた場所に来ると、遠くに『宿り木』が見えた。
リーンが最後にみた時よりも、大きく育っている…。
年数が経っているのだから、当たり前なのだが…。
けれど、リーンは不思議な感じを覚えた。
なんだろう…。
懐かしいと言うか、よく知っている気配…。
これは…。
馬車が一本道を奥まで登りきり、『宿り木』の側の休憩場所の前まで来ると馬車が止まり、リーンは真っ先に降りた。
リーンは『宿り木』を見上げ、誘われるように…呼ばれたような気がして近く。
順序、馬車から降りてきた人々はリーンのその行動を黙ってみている。
…そう、この感じは…『森の聖域』から感じる魔力と同じ…。
リーンが『宿り木』にそっと触れると、目の前の木の幹から子供が顔を覗かせて出てきた。
緑色の髪の毛をして、緑色の瞳を持つ…そして、背中に透明な小さな羽を持つ木霊…。
本当に羽の生えた木霊が…。
驚くリーンに、その子供は、幹から身体を全身出してくると、フワリとリーンに抱きついてきた。
『森の聖域』の木霊と同じくらいの感触で、リーンに触れてくる…。
それは有り得ないことだ。
魔素が少ないこの場所で、触れることは出来ないはず…。
私の保有魔力が多いから、触れられるのか…?
「…ジンフリーク…」
リーンが、この『宿り木』につけた名前…。
ジンフリークは名前を呼ばれてそっと顔を上げる。
綺麗な深い緑色の瞳がリーンをじっと見つめる。
リーンが手を添えて落ちないように抱き上げると、ジンフリークはリーンの胸に顔を埋めた。
…なんとなく面影は、ジンに似ている。
ジンの身体を呑み込んだ『宿り木』なのだから、影響を受けているのだろう…。
そして背中に見える透明な羽。
飛べるほど大きくはないが、完全に『風霊』が持つ、風を操る事のできる魔力を秘めている。
そして『宿り木』を見上げる。
…変質している。
微弱ながら魔力を放っている…。
いつからか分からないが、『宿り木』事態がその存在を変えている…。
リーンはジンフリークを抱き上げたまま、振り向き馬車から降りてきた人々を見る。
そして動揺しているロキと目が合った。
「…ロキは気がついた?」
「…今、気がついた…。最初の木と違う…」
ロキは呆然と『宿り木』を見上げて言う。
『宿り木』の復活の魔法を使い、甦らせた時は、普通の『宿り木』だった。
「どう言うこと…?」
マークもカムイもスバルも、タミネキ村の住人も意味が分かっていないみたいに、首を傾げている。
ロキでさえ、今、気がついたのだから、魔力の弱い村人達は気が付かなくて当然だろう…。
リーンは震える声で言った。
「…『世界樹』に変わっている…。カザンナ王国だけでなく、神殿まで巻き込むことになる…」
リーンが最後にみた時よりも、大きく育っている…。
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けれど、リーンは不思議な感じを覚えた。
なんだろう…。
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本当に羽の生えた木霊が…。
驚くリーンに、その子供は、幹から身体を全身出してくると、フワリとリーンに抱きついてきた。
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それは有り得ないことだ。
魔素が少ないこの場所で、触れることは出来ないはず…。
私の保有魔力が多いから、触れられるのか…?
「…ジンフリーク…」
リーンが、この『宿り木』につけた名前…。
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…なんとなく面影は、ジンに似ている。
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そして背中に見える透明な羽。
飛べるほど大きくはないが、完全に『風霊』が持つ、風を操る事のできる魔力を秘めている。
そして『宿り木』を見上げる。
…変質している。
微弱ながら魔力を放っている…。
いつからか分からないが、『宿り木』事態がその存在を変えている…。
リーンはジンフリークを抱き上げたまま、振り向き馬車から降りてきた人々を見る。
そして動揺しているロキと目が合った。
「…ロキは気がついた?」
「…今、気がついた…。最初の木と違う…」
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『宿り木』の復活の魔法を使い、甦らせた時は、普通の『宿り木』だった。
「どう言うこと…?」
マークもカムイもスバルも、タミネキ村の住人も意味が分かっていないみたいに、首を傾げている。
ロキでさえ、今、気がついたのだから、魔力の弱い村人達は気が付かなくて当然だろう…。
リーンは震える声で言った。
「…『世界樹』に変わっている…。カザンナ王国だけでなく、神殿まで巻き込むことになる…」
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