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希少種
狼獣人のロキ
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リーンがスバルに一通り今の状況を話すと、スバルは疲れた顔をしてソファーにもたれ掛かり、額を押さえて天井を見上げる様子に、リーンは苦笑いした。
あまりにも多い情報を整頓しているのかもしれなかった。
マークとカムイは借りる部屋に荷物を運び、寝泊まりする準備をしてくれるそうだ。
慣れているから、どこにシーツや毛布が置いてあるのか分かっているみたいで、リーンの部屋の準備もしてくと言う。
なので二人に後を任せて、懐かしい庭に出た。
ジンと二人で作った花壇の薬草園は、屋根が付いて温室になり、荒れ果てていた畑は綺麗に野菜が並んでいた。
スバルはものぐさで、あまりなにもしない様子だったが、一緒に住んでいるロイが育てているのかもしれない。
温室の薬草園を覗くと、あの頃、種を植えた薬草が生き生きと育っている。
大切に育てられたのが分かり、嬉しくて微笑んだ。
時々、狼獣人達が管理しに来てくれるとは言っていたが、これだけ綺麗に育てられていると嬉しく思う。
思い出に浸りなから庭を歩いていると、山続きの森の方から足音が響いた。
リーンが振り向くと狼が二匹駆け寄ってきて、先頭を走る一匹が、そのまま獣人の姿に変わり、リーンに抱きついてきた。
「リーン!!」
勢いが強くふらついて、座り込みそうになるのを何とか堪えた。
「ロキ…」
ガッチリとした体格の黒い髪と三角の耳、長い尻尾を振り回して、変わらない姿でリーンを抱き締める。
「…さすがに苦しいって…」
リーンが苦笑いしてそう言うと、腕を少し緩めてくれた。
そして顔をリーンに擦り付け、首筋を舐める。
「…ロキ兄様、服を…」
そう言って、ロキそっくりの服を着替えたロイが、服を差し出してきた。
ロキは狼の姿から獣人に変わったので、服は来ていない。
ロキはリーンから離れ、ロイから服をもらうと手早く着て、もう一度リーンを抱き締めてきた。
「リーン…」
こんな姿、ロキの仲間達に見せられないよな…。
狼獣人達を束ねるリーダーであるロキが、まるで子供のように懐いてくる。
側にいる弟のロイの目が点になって、硬直しているのを見てリーンは苦笑いした。
ロキの兄のこんな姿を見たことが無かったのだろう…。
リーンは微笑んで、ロキの頭を撫でる。
「…久しぶり。元気そうで良かった」
「リーン…」
ロキは、少し潤んだ目をリーンに向け、口付けようとしてきたので、手で口元を塞ぎ微笑んだ。
「もうダメだよ。私には番がいるんだから」
「…。」
ロキは悔しそうに、しょんぼりとして耳を垂れ下げ、リーンから身体を離した。
「…分かってる…」
ロキは私に番がいることを知っている。
ジーンとユーリが産まれた後にタミネキ村に来ているので、その時に会っているのだ。
そしてその時に、伝えた。
「…分かってる…」
「…家に入って話をしないか?」
いつの間にか庭に出てきていたスバルが声をかけてきた。
「そうだね。ロキにも教えて欲しい。羽の生えた木霊の事について」
リーンがそう言うと、ロキはハッとしてリーンを見る。
「…そうだな…」
ロキは少し冷静になって、建物の方に向かって歩き出した。
リーンはホッとして後に続く。
ロキは何を知っているのか聞かなくてはいけない。
何が起きているのかを…。
家の中に入ってリビングに集まると、ロキは知っていることを話してくれた。
最近、新しい『宿り木』の側に有る祠に、結界用の魔力を注ぎに行った時、人の気配がして振り向くと、子供の姿の木霊が姿を表して、じっとこちらを見てしばらくすると姿を消したそうだ。
その時は、羽が生えているなんて、気がつかなかった。
その次に魔力を注ぎに行った時、違和感を覚え、よく見ると羽が生えていたそうだ。
飛んでいる姿を見たわけでなく、ただ、羽があると言うだけで、普通の木霊と同じように『宿り木』に座って遠くを見ているのだと言うことだ。
「…誰かを探しているみたい…待っているみたい…そんな気がした」
ロキはそう言う。
…探して…待っている…。
リーンは苦笑いした。
…きっとジンだ。
木霊に生まれ変わって、記憶はなくとも、もしかしたら私が会いに来るのを待っているのかもしれない…。
「…アイツが眠っているんだ…リーンを探しているのかも…とは、思った」
ロキは苦笑いして言う。
「だけど、俺にはリーンと連絡を取ることが出来ない。来るのを待つしかなかった…」
「…そうだね。私も魔力を失って、動けなかったから…」
スバル経由でマークに連絡を入れ、マークからグオルクに連絡を入れ、グオルクのヒイロから私に連絡が届くのはかなり先になる…。
魔力を取り戻したから、風霊が来て欲しいと呼んでいるのが分かったくらいなのだから…。
「…明日、『宿り木』の元に行けば、全てが分かるね…」
リーンはロキに微笑んだ。
…ジン。
会いにいくよ…。
あまりにも多い情報を整頓しているのかもしれなかった。
マークとカムイは借りる部屋に荷物を運び、寝泊まりする準備をしてくれるそうだ。
慣れているから、どこにシーツや毛布が置いてあるのか分かっているみたいで、リーンの部屋の準備もしてくと言う。
なので二人に後を任せて、懐かしい庭に出た。
ジンと二人で作った花壇の薬草園は、屋根が付いて温室になり、荒れ果てていた畑は綺麗に野菜が並んでいた。
スバルはものぐさで、あまりなにもしない様子だったが、一緒に住んでいるロイが育てているのかもしれない。
温室の薬草園を覗くと、あの頃、種を植えた薬草が生き生きと育っている。
大切に育てられたのが分かり、嬉しくて微笑んだ。
時々、狼獣人達が管理しに来てくれるとは言っていたが、これだけ綺麗に育てられていると嬉しく思う。
思い出に浸りなから庭を歩いていると、山続きの森の方から足音が響いた。
リーンが振り向くと狼が二匹駆け寄ってきて、先頭を走る一匹が、そのまま獣人の姿に変わり、リーンに抱きついてきた。
「リーン!!」
勢いが強くふらついて、座り込みそうになるのを何とか堪えた。
「ロキ…」
ガッチリとした体格の黒い髪と三角の耳、長い尻尾を振り回して、変わらない姿でリーンを抱き締める。
「…さすがに苦しいって…」
リーンが苦笑いしてそう言うと、腕を少し緩めてくれた。
そして顔をリーンに擦り付け、首筋を舐める。
「…ロキ兄様、服を…」
そう言って、ロキそっくりの服を着替えたロイが、服を差し出してきた。
ロキは狼の姿から獣人に変わったので、服は来ていない。
ロキはリーンから離れ、ロイから服をもらうと手早く着て、もう一度リーンを抱き締めてきた。
「リーン…」
こんな姿、ロキの仲間達に見せられないよな…。
狼獣人達を束ねるリーダーであるロキが、まるで子供のように懐いてくる。
側にいる弟のロイの目が点になって、硬直しているのを見てリーンは苦笑いした。
ロキの兄のこんな姿を見たことが無かったのだろう…。
リーンは微笑んで、ロキの頭を撫でる。
「…久しぶり。元気そうで良かった」
「リーン…」
ロキは、少し潤んだ目をリーンに向け、口付けようとしてきたので、手で口元を塞ぎ微笑んだ。
「もうダメだよ。私には番がいるんだから」
「…。」
ロキは悔しそうに、しょんぼりとして耳を垂れ下げ、リーンから身体を離した。
「…分かってる…」
ロキは私に番がいることを知っている。
ジーンとユーリが産まれた後にタミネキ村に来ているので、その時に会っているのだ。
そしてその時に、伝えた。
「…分かってる…」
「…家に入って話をしないか?」
いつの間にか庭に出てきていたスバルが声をかけてきた。
「そうだね。ロキにも教えて欲しい。羽の生えた木霊の事について」
リーンがそう言うと、ロキはハッとしてリーンを見る。
「…そうだな…」
ロキは少し冷静になって、建物の方に向かって歩き出した。
リーンはホッとして後に続く。
ロキは何を知っているのか聞かなくてはいけない。
何が起きているのかを…。
家の中に入ってリビングに集まると、ロキは知っていることを話してくれた。
最近、新しい『宿り木』の側に有る祠に、結界用の魔力を注ぎに行った時、人の気配がして振り向くと、子供の姿の木霊が姿を表して、じっとこちらを見てしばらくすると姿を消したそうだ。
その時は、羽が生えているなんて、気がつかなかった。
その次に魔力を注ぎに行った時、違和感を覚え、よく見ると羽が生えていたそうだ。
飛んでいる姿を見たわけでなく、ただ、羽があると言うだけで、普通の木霊と同じように『宿り木』に座って遠くを見ているのだと言うことだ。
「…誰かを探しているみたい…待っているみたい…そんな気がした」
ロキはそう言う。
…探して…待っている…。
リーンは苦笑いした。
…きっとジンだ。
木霊に生まれ変わって、記憶はなくとも、もしかしたら私が会いに来るのを待っているのかもしれない…。
「…アイツが眠っているんだ…リーンを探しているのかも…とは、思った」
ロキは苦笑いして言う。
「だけど、俺にはリーンと連絡を取ることが出来ない。来るのを待つしかなかった…」
「…そうだね。私も魔力を失って、動けなかったから…」
スバル経由でマークに連絡を入れ、マークからグオルクに連絡を入れ、グオルクのヒイロから私に連絡が届くのはかなり先になる…。
魔力を取り戻したから、風霊が来て欲しいと呼んでいるのが分かったくらいなのだから…。
「…明日、『宿り木』の元に行けば、全てが分かるね…」
リーンはロキに微笑んだ。
…ジン。
会いにいくよ…。
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