385 / 462
希少種
ヤマツカ町
しおりを挟む
リーンは山の中を『瞬脚移動』して、ヤマツカ町に向かった。
ここには、代々、薬草や山菜を納めて取引しているリマ商会が有る。
かなりしばらく…十年以上、行っていなかったから、覚えていてくれるだろうか…。
少し不安が有ったが、リマ商会には知り合いの獣人達も働いているので、そっちの長屋に行ってもいいだろう…。
そんな事を思いながら、リーンはヤマツカ町のリマ商会に向かった。
森の中は変わらず動物達が歩き、鳥がさえずり、木の葉がカサカサと音をたてて、優しい風を送ってくれる。
町が近づくにつれて、所々に杭と防波堤が作られていて、土砂崩れ対策が取られ、所々に少量の土砂がたまっている。
木の伐採により地盤の弱い場所を調査し、防波堤が作られているのだろう。
昔、来たときには、こういったモノは一切無く、度々小規模の土砂崩れが起きていた。
ヤマツカ町は、カザンナ王国の王都から離れた場所には有るが、カザンナ王国内の町だ。
年月をかけて、ここまで対策が取られるようになってきたのだろう…。
それに奥地の薬草などの群生地まで、入って来ていないのは助かる。
下手に生態系を壊されると枯れてしまうからだ。
木々の隙間から町並みが見えてくると、リーンは歩みを緩めた。
確かこの辺に、町へ降りる山道が整備されていたはず…。
山の木の管理をするために作られた、馬車が一台やっと通れるくらいの一本道。
枯れた木の伐採や、間引きの為の運搬用でもある。
リーンはその道を見つけると、道に沿って山を降りていった。
リマ商会は町の中心より少し山側に有る。
リマ商会で扱うのは、商品の売買だけでなく、人材派遣も行い、多くの獣人達が雇用されている。
と、言っても人族に擬態出来る者ばかりだが…。
そして山側に有るのは、獣人達が暮らす長屋が集まっていて、森が近い方が安心できると言うのも理由の一つだ。
リーンは獣人達が住む長屋を横目に町中に入り、リマ商会を目指した。
リマ商会が有る町周辺は、人がまばらで、二階建ての大きな建物はすぐに目に入った。
相変わらず人の出入りが多く、仕事を探しに来る者と、仕事に行く者が、行き交う。
建物の中に入ると、中は広場になっていて、待ち合いのテーブルと椅子が有り、脇には個室がいくつもあって、手続きをしたり問い合わせをしたりするのに使用している。
リーンは奥に有る受付を目指した。
十年も経っているから、受付の女の子達も入れ替わっている。
すんなりと奥の部屋へは入れてもらえないだろう。
「こんにちは。オヤジさんかアズマ、居ますか?」
リーンが受付の女の子に言うと、不思議そうな顔をしてこちらをじっと見る。
「…お二方とも、お出掛けになってます」
…突然訪ねて、不審に思われているのかもしれない。
でも、二人とも居ないなんて珍しい…。
どちらかは、必ずここに居るようにしていたはず…。
何か有ったのだろうか?
だったら、獣人のマークはいるだろうか?
真面目な彼は、リマ商会の清掃部門に無くてはならない人になり、今は常連の固定客以外は出向せず、人員の采配をしていると言っていた。
「…それでは、マークは居ますか?」
「…彼も一緒にお出掛けになっています」
「…。」
一緒に出掛けている?
オヤジさんとアズマ、マークの三人が一緒に出掛けているなんて、何かあったに違いない。
「何時ごろ戻るとかは、聞いていないよね」
リーンが聞くと、受付の女の子は頷く。
帰宅の時間が決まって居ないなら、仕事ではない。
リーンは少し迷って受付に伝言を残す。
「リーンが来たと伝えてください。夕方には、ここにもう一度顔を出します。と…」
「わかりました。お戻りしましたら伝えます」
「よろしく」
リーンは受付にお願いして、リマ商会の建物を後にした。
…夕方にまで時間はある。
市場に行って、食事して、少し町を散策でもするか…。
リーンはリマ商会から、昔の記憶を便りに市場へと向かった。
ここには、代々、薬草や山菜を納めて取引しているリマ商会が有る。
かなりしばらく…十年以上、行っていなかったから、覚えていてくれるだろうか…。
少し不安が有ったが、リマ商会には知り合いの獣人達も働いているので、そっちの長屋に行ってもいいだろう…。
そんな事を思いながら、リーンはヤマツカ町のリマ商会に向かった。
森の中は変わらず動物達が歩き、鳥がさえずり、木の葉がカサカサと音をたてて、優しい風を送ってくれる。
町が近づくにつれて、所々に杭と防波堤が作られていて、土砂崩れ対策が取られ、所々に少量の土砂がたまっている。
木の伐採により地盤の弱い場所を調査し、防波堤が作られているのだろう。
昔、来たときには、こういったモノは一切無く、度々小規模の土砂崩れが起きていた。
ヤマツカ町は、カザンナ王国の王都から離れた場所には有るが、カザンナ王国内の町だ。
年月をかけて、ここまで対策が取られるようになってきたのだろう…。
それに奥地の薬草などの群生地まで、入って来ていないのは助かる。
下手に生態系を壊されると枯れてしまうからだ。
木々の隙間から町並みが見えてくると、リーンは歩みを緩めた。
確かこの辺に、町へ降りる山道が整備されていたはず…。
山の木の管理をするために作られた、馬車が一台やっと通れるくらいの一本道。
枯れた木の伐採や、間引きの為の運搬用でもある。
リーンはその道を見つけると、道に沿って山を降りていった。
リマ商会は町の中心より少し山側に有る。
リマ商会で扱うのは、商品の売買だけでなく、人材派遣も行い、多くの獣人達が雇用されている。
と、言っても人族に擬態出来る者ばかりだが…。
そして山側に有るのは、獣人達が暮らす長屋が集まっていて、森が近い方が安心できると言うのも理由の一つだ。
リーンは獣人達が住む長屋を横目に町中に入り、リマ商会を目指した。
リマ商会が有る町周辺は、人がまばらで、二階建ての大きな建物はすぐに目に入った。
相変わらず人の出入りが多く、仕事を探しに来る者と、仕事に行く者が、行き交う。
建物の中に入ると、中は広場になっていて、待ち合いのテーブルと椅子が有り、脇には個室がいくつもあって、手続きをしたり問い合わせをしたりするのに使用している。
リーンは奥に有る受付を目指した。
十年も経っているから、受付の女の子達も入れ替わっている。
すんなりと奥の部屋へは入れてもらえないだろう。
「こんにちは。オヤジさんかアズマ、居ますか?」
リーンが受付の女の子に言うと、不思議そうな顔をしてこちらをじっと見る。
「…お二方とも、お出掛けになってます」
…突然訪ねて、不審に思われているのかもしれない。
でも、二人とも居ないなんて珍しい…。
どちらかは、必ずここに居るようにしていたはず…。
何か有ったのだろうか?
だったら、獣人のマークはいるだろうか?
真面目な彼は、リマ商会の清掃部門に無くてはならない人になり、今は常連の固定客以外は出向せず、人員の采配をしていると言っていた。
「…それでは、マークは居ますか?」
「…彼も一緒にお出掛けになっています」
「…。」
一緒に出掛けている?
オヤジさんとアズマ、マークの三人が一緒に出掛けているなんて、何かあったに違いない。
「何時ごろ戻るとかは、聞いていないよね」
リーンが聞くと、受付の女の子は頷く。
帰宅の時間が決まって居ないなら、仕事ではない。
リーンは少し迷って受付に伝言を残す。
「リーンが来たと伝えてください。夕方には、ここにもう一度顔を出します。と…」
「わかりました。お戻りしましたら伝えます」
「よろしく」
リーンは受付にお願いして、リマ商会の建物を後にした。
…夕方にまで時間はある。
市場に行って、食事して、少し町を散策でもするか…。
リーンはリマ商会から、昔の記憶を便りに市場へと向かった。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる