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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
願い
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…僕も、ユグと一緒にいたいな…。
ヒナキはそう、正直に思った。
素直な、今の気持ち…。
ソレがどんな意味を持つのかも分からないまま、ユグに微笑んでいた。
ユグは目を丸くして、そして嬉しそうに微笑んで、ヒナキに抱きついてきた。
ヒナキの胸に顔を埋めて、グリグリと頭を擦り付けるように…。
「…痛いよ、ユグ」
ヒナキはそう言いながら、ユグの緑色の髪の毛を撫でていた。
ユグの身長が伸びて、ヒナキと同じくらいの背丈になり、久しぶりに穏やかな時間が訪れた。
ユグが幼い姿の時、いつもヒナキの身体の上に乗り昼寝をしていたが、さすがに重たいので、ヒナキはユグに膝枕をして、昼寝をすることにした。
ヒナキは昨日、ヒイロが来て思わず泣いて、泣きつかれて眠ってしまい、目が覚めてから、ユグの事をグルグルと考えていて、ぐっすりと眠れていなかったのもある。
ヒナキは膝枕をしたユグの髪の毛を撫でながら、風霊の優しい風に身を任せ、世界樹に寄りかかりなから目を閉じた。
…いつまでも、こうしていたいね…。
それは、ヒナキの小さな望みだった。
*****
ヒナキが世界樹に寄りかかりながら寝息をたて始めた頃、ユグはムクりと身体を起こし、ヒナキの身体を跨ぐように太ももに座ると、ヒナキの顔をじっと見つめる。
「…僕と一緒に…生きて…」
ユグは両手をヒナキの胸に当て、額をヒナキの額にくっ付けて目を閉じると、ユグの両手がヒナキの身体の中に埋もれていった。
ユグの両手が手首までヒナキの身体の中に入ると、淡い緑色の光を放ちながら、ヒナキの身体の中に細い細い枝を巡らせる。
リーンが使う魔法の『癒しの枝』だ。
ヒナキの身体に張り巡らされた『枝』は、炎症を起こしている場所を治し、活動の弱っている場所を活性化させる。
それだけでは足りない…。
成長が止まり、身体の活動も最小限で止まっているからだ。
『長寿の実』の効果が切れている…。
ユグは難しい顔をして、ヒナキの身体から両手を抜いた。
このままでは、衰弱していくだけ…。
ユグがそう思っていると、木霊と土霊達がヒョコリと顔を覗かせ、いくつもの葉っぱを差し出してきた。
…これは?
『回復薬を作るときに使う薬草』
『大きい者達が言ってる』
『治療に使う』
『完全回復』
『友達』
『優しい大きい者』
ユグは目を丸くした。
自分もそうだが、違う時間を生きる存在の為に、自ら行動に出ることは少ない。
そこまで自我を持たないからだ。
…彼らも長い時間、一緒にいるからか…。
持ってきてくれた薬草をユグが受け取ると、木霊と土霊達はニコニコ笑って、いつもの公園の方に向かっていった。
ユグは目を閉じ、自分の胸の上に置いて、身体の中に薬草を押し込み吸収する。
寝転がって、一緒に見た本に載っていた薬草ばかりだ。
特に『森の聖域』と呼ばれるこの場所の薬草は、魔素を多く含み、効能と持続性を上げてくれる。
…そう言っていた。
この薬草の効能と、自分の時間魔法を組み合わせて、特別な薬を作る…。
これからの時間を一緒に生きるために…。
僕と一緒に生きて…。
ソレがユグの願い…。
ユグは自分の体内で練り上げた。
自分の持つ時間の魔法と、木霊達が持ってきてくれた薬草と、世界樹が持つ魔素のエネルギーと…。
たった一人の大切な者の為に…。
それはユグの身体も成長させ、ユグの身体の中で凝縮して結晶になる…。
どこまで効くかはわからない…。
でも、手を尽くさずに後悔するよりはいい…。
ユグは目の前で眠る、一緒に生きたい者の為に、未知なる魔法に意識を集中した。
ヒナキはそう、正直に思った。
素直な、今の気持ち…。
ソレがどんな意味を持つのかも分からないまま、ユグに微笑んでいた。
ユグは目を丸くして、そして嬉しそうに微笑んで、ヒナキに抱きついてきた。
ヒナキの胸に顔を埋めて、グリグリと頭を擦り付けるように…。
「…痛いよ、ユグ」
ヒナキはそう言いながら、ユグの緑色の髪の毛を撫でていた。
ユグの身長が伸びて、ヒナキと同じくらいの背丈になり、久しぶりに穏やかな時間が訪れた。
ユグが幼い姿の時、いつもヒナキの身体の上に乗り昼寝をしていたが、さすがに重たいので、ヒナキはユグに膝枕をして、昼寝をすることにした。
ヒナキは昨日、ヒイロが来て思わず泣いて、泣きつかれて眠ってしまい、目が覚めてから、ユグの事をグルグルと考えていて、ぐっすりと眠れていなかったのもある。
ヒナキは膝枕をしたユグの髪の毛を撫でながら、風霊の優しい風に身を任せ、世界樹に寄りかかりなから目を閉じた。
…いつまでも、こうしていたいね…。
それは、ヒナキの小さな望みだった。
*****
ヒナキが世界樹に寄りかかりながら寝息をたて始めた頃、ユグはムクりと身体を起こし、ヒナキの身体を跨ぐように太ももに座ると、ヒナキの顔をじっと見つめる。
「…僕と一緒に…生きて…」
ユグは両手をヒナキの胸に当て、額をヒナキの額にくっ付けて目を閉じると、ユグの両手がヒナキの身体の中に埋もれていった。
ユグの両手が手首までヒナキの身体の中に入ると、淡い緑色の光を放ちながら、ヒナキの身体の中に細い細い枝を巡らせる。
リーンが使う魔法の『癒しの枝』だ。
ヒナキの身体に張り巡らされた『枝』は、炎症を起こしている場所を治し、活動の弱っている場所を活性化させる。
それだけでは足りない…。
成長が止まり、身体の活動も最小限で止まっているからだ。
『長寿の実』の効果が切れている…。
ユグは難しい顔をして、ヒナキの身体から両手を抜いた。
このままでは、衰弱していくだけ…。
ユグがそう思っていると、木霊と土霊達がヒョコリと顔を覗かせ、いくつもの葉っぱを差し出してきた。
…これは?
『回復薬を作るときに使う薬草』
『大きい者達が言ってる』
『治療に使う』
『完全回復』
『友達』
『優しい大きい者』
ユグは目を丸くした。
自分もそうだが、違う時間を生きる存在の為に、自ら行動に出ることは少ない。
そこまで自我を持たないからだ。
…彼らも長い時間、一緒にいるからか…。
持ってきてくれた薬草をユグが受け取ると、木霊と土霊達はニコニコ笑って、いつもの公園の方に向かっていった。
ユグは目を閉じ、自分の胸の上に置いて、身体の中に薬草を押し込み吸収する。
寝転がって、一緒に見た本に載っていた薬草ばかりだ。
特に『森の聖域』と呼ばれるこの場所の薬草は、魔素を多く含み、効能と持続性を上げてくれる。
…そう言っていた。
この薬草の効能と、自分の時間魔法を組み合わせて、特別な薬を作る…。
これからの時間を一緒に生きるために…。
僕と一緒に生きて…。
ソレがユグの願い…。
ユグは自分の体内で練り上げた。
自分の持つ時間の魔法と、木霊達が持ってきてくれた薬草と、世界樹が持つ魔素のエネルギーと…。
たった一人の大切な者の為に…。
それはユグの身体も成長させ、ユグの身体の中で凝縮して結晶になる…。
どこまで効くかはわからない…。
でも、手を尽くさずに後悔するよりはいい…。
ユグは目の前で眠る、一緒に生きたい者の為に、未知なる魔法に意識を集中した。
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