神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
376 / 462
名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話

願い

しおりを挟む
 …僕も、ユグと一緒にいたいな…。
 ヒナキはそう、正直に思った。
 素直な、今の気持ち…。
 ソレがどんな意味を持つのかも分からないまま、ユグに微笑んでいた。
 ユグは目を丸くして、そして嬉しそうに微笑んで、ヒナキに抱きついてきた。
 ヒナキの胸に顔を埋めて、グリグリと頭を擦り付けるように…。
「…痛いよ、ユグ」
 ヒナキはそう言いながら、ユグの緑色の髪の毛を撫でていた。

 ユグの身長が伸びて、ヒナキと同じくらいの背丈になり、久しぶりに穏やかな時間が訪れた。
 ユグが幼い姿の時、いつもヒナキの身体の上に乗り昼寝をしていたが、さすがに重たいので、ヒナキはユグに膝枕をして、昼寝をすることにした。
 ヒナキは昨日、ヒイロが来て思わず泣いて、泣きつかれて眠ってしまい、目が覚めてから、ユグの事をグルグルと考えていて、ぐっすりと眠れていなかったのもある。
 ヒナキは膝枕をしたユグの髪の毛を撫でながら、風霊の優しい風に身を任せ、世界樹に寄りかかりなから目を閉じた。
 …いつまでも、こうしていたいね…。
 それは、ヒナキの小さな望みだった。

*****

 ヒナキが世界樹に寄りかかりながら寝息をたて始めた頃、ユグはムクりと身体を起こし、ヒナキの身体を跨ぐように太ももに座ると、ヒナキの顔をじっと見つめる。
「…僕と一緒に…生きて…」
 ユグは両手をヒナキの胸に当て、額をヒナキの額にくっ付けて目を閉じると、ユグの両手がヒナキの身体の中に埋もれていった。
 ユグの両手が手首までヒナキの身体の中に入ると、淡い緑色の光を放ちながら、ヒナキの身体の中に細い細い枝を巡らせる。
 リーンが使う魔法の『癒しの枝』だ。
 ヒナキの身体に張り巡らされた『枝』は、炎症を起こしている場所を治し、活動の弱っている場所を活性化させる。
 それだけでは足りない…。
 成長が止まり、身体の活動も最小限で止まっているからだ。
『長寿の実』の効果が切れている…。
 ユグは難しい顔をして、ヒナキの身体から両手を抜いた。
 このままでは、衰弱していくだけ…。
 ユグがそう思っていると、木霊と土霊達がヒョコリと顔を覗かせ、いくつもの葉っぱを差し出してきた。 
 …これは?
『回復薬を作るときに使う薬草』
『大きい者達が言ってる』
『治療に使う』
『完全回復』
『友達』
『優しい大きい者』
 ユグは目を丸くした。
 自分もそうだが、違う時間を生きる存在の為に、自ら行動に出ることは少ない。
 そこまで自我を持たないからだ。
 …彼らも長い時間、一緒にいるからか…。
 持ってきてくれた薬草をユグが受け取ると、木霊と土霊達はニコニコ笑って、いつもの公園の方に向かっていった。
 ユグは目を閉じ、自分の胸の上に置いて、身体の中に薬草を押し込み吸収する。
 寝転がって、一緒に見た本に載っていた薬草ばかりだ。
 特に『森の聖域』と呼ばれるこの場所の薬草は、魔素を多く含み、効能と持続性を上げてくれる。
 …そう言っていた。
 この薬草の効能と、自分の時間魔法を組み合わせて、特別な薬を作る…。
 これからの時間を一緒に生きるために…。
 僕と一緒に生きて…。
 ソレがユグの願い…。

 
 ユグは自分の体内で練り上げた。
 自分の持つ時間の魔法と、木霊達が持ってきてくれた薬草と、世界樹が持つ魔素のエネルギーと…。
 たった一人の大切な者の為に…。
 それはユグの身体も成長させ、ユグの身体の中で凝縮して結晶になる…。
 どこまで効くかはわからない…。
 でも、手を尽くさずに後悔するよりはいい…。
 ユグは目の前で眠る、一緒に生きたい者の為に、未知なる魔法に意識を集中した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

若さまは敵の常勝将軍を妻にしたい

雲丹はち
BL
年下の宿敵に戦場で一目惚れされ、気づいたらお持ち帰りされてた将軍が、一週間の時間をかけて、たっぷり溺愛される話。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...