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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
話し合い
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ヒナキは、しばらくベッドで横になるばかりの生活で、足腰が弱ったのかフラフラと歩いていたら、途中からヒイロに抱き上げられて『森の聖域』へと連れていかれた。
少し恥ずかしかったが、途中で転ぶよりはましだろう。と言われ、大人しく連れてきてもらった。
『森の聖域』は、いつも優しくヒナキを包む。
それが、世界樹のユグの意志が働いているからだと気がついたのは最近だ。
長い間、側に居たのに、意識しなかっただけ…見ようとしなかっただけ…なのかもしれない。
今さらだが…。
ヒナキがヒイロに連れられ世界樹の側にたどり着くと、久しぶりにユグが顔を覗かせた。
「…ユグ」
ユグは何故か悔しそうな顔をして、ヒナキに抱きついてこようとする。
「待て!」
ヒイロはユグを止めた。
「お前まで乗られたら重い!」
ヒイロは渋い顔をしてユグを睨み付ける。
…そうだ、ヒイロに抱き上げられているのだから、何処かに下ろしてもらって…。
「…こっち…」
ユグが家から見えない、世界樹の裏側…リーンが眠る様子を見れた場所へと手招きする。
ヒナキはため息をついて、ユグの後を追い、世界樹の根本に寄りかかれるように下ろしてくれた。
「夕方には迎えに来る。じっくりと話せ」
ヒイロはそう言って、腰に付けていた袋をヒナキに差し出し、クルーラへと戻っていった。
ヒイロがくれた袋を開けてみると、焼き菓子類や小さな果物か入っていた。
おやつ、もしくは昼ごはんに食べるようにだろう。
ヒナキはクスッと笑って袋の口を閉じた。
ユグはヒナキの隣に座り、ヒナキに寄りかかってくる。
緑色の柔らかい髪の毛が、ヒナキの頬をくすぐる。
「…ユグ…」
「…ずっと…一緒にいたい…。これからも…ずっと…」
きっと僕も同じ気持ち…。
だけど僕は限りの有る者…。
ただ、『長寿の実』を食べたことによって、長生きしているだけの人族…。
流れ行く時間のなかで、忘れかけていたけれど…。
「…いっぱい…考えた。…あれに変わるモノ…」
隣でユグがこちらを見てくる。
視線が近い…。
「…僕が吸収した魔素に…時間の魔法を溶け込ませて…時間を少し進めて…止める…」
…何だって?
ヒナキは目を点にして言う。
「…意味がわからない…」
「…本当は…時間を…戻そうと…思った…」
「戻ったら、記憶を失くす…」
「…でも、…失くさなかった…」
リーンの事を言っているのだろう。
何か理由か、法則が有るのだろう…。
「…それだけでは…足りない…」
リーンは時間を戻ることを繰り返し、結果的に時間はあまり進んでいないのだろう…。
だけど僕は、時間を戻っているわけてはない…。
「…ずっと…一緒にいるためには…足りない…」
ただ、戻っただけでは、すぐに時間が来てしまう…。
「…時間の魔法を使って…身体の中から変える…」
…身体の中から…。
「…いっぺんには…無理だから…少し進めて…止める…」
ユグの真剣な眼差しにヒナキは苦笑いした。
ユグが、どれだけ魔素を使ってソレをするつもりか、わからないが、上手くいくとは限らない。
思うように時間が止まらず、老いていくかもしれない…。
魔素が身体に順応せず、死を向かえるかも知れない…。
何せ、初めての試みなのだから…。
それに今さらか…。
ヒナキはユグの髪を撫でた。
「ユグがソレを行って、上手く作用しなくて、僕が死を向かえても後悔しない?」
身体の異変に気がついていたヒナキは、ユグに後悔してほしくなかった。
いずれ訪れる死に、向き合って欲しかった。
「…絶対、死なせない!」
ヒナキは微笑んだ。
人族にしては長く生きた。
…いつも隣にいるユグの好きなようにさせても良いかな…と、思うくらい。
ユグが見つけた方法は、僕には良くわからないが、ソレが上手くいくと信じている…。
だったらユグを信じて、任せても良いのかと…もしダメでも、すぐに死を向かえるわけではない。
ユグに良く言い聞かせ、楽しい思い出を胸に眠るのも良いのかも知れない…。
「…良いよ。…ユグに任せる。僕も、できるだけ一緒にいたい…」
ヒナキにとって、今、一番分かっている自分の気持ち。
…僕も、ユグと一緒にいたいな…。
少し恥ずかしかったが、途中で転ぶよりはましだろう。と言われ、大人しく連れてきてもらった。
『森の聖域』は、いつも優しくヒナキを包む。
それが、世界樹のユグの意志が働いているからだと気がついたのは最近だ。
長い間、側に居たのに、意識しなかっただけ…見ようとしなかっただけ…なのかもしれない。
今さらだが…。
ヒナキがヒイロに連れられ世界樹の側にたどり着くと、久しぶりにユグが顔を覗かせた。
「…ユグ」
ユグは何故か悔しそうな顔をして、ヒナキに抱きついてこようとする。
「待て!」
ヒイロはユグを止めた。
「お前まで乗られたら重い!」
ヒイロは渋い顔をしてユグを睨み付ける。
…そうだ、ヒイロに抱き上げられているのだから、何処かに下ろしてもらって…。
「…こっち…」
ユグが家から見えない、世界樹の裏側…リーンが眠る様子を見れた場所へと手招きする。
ヒナキはため息をついて、ユグの後を追い、世界樹の根本に寄りかかれるように下ろしてくれた。
「夕方には迎えに来る。じっくりと話せ」
ヒイロはそう言って、腰に付けていた袋をヒナキに差し出し、クルーラへと戻っていった。
ヒイロがくれた袋を開けてみると、焼き菓子類や小さな果物か入っていた。
おやつ、もしくは昼ごはんに食べるようにだろう。
ヒナキはクスッと笑って袋の口を閉じた。
ユグはヒナキの隣に座り、ヒナキに寄りかかってくる。
緑色の柔らかい髪の毛が、ヒナキの頬をくすぐる。
「…ユグ…」
「…ずっと…一緒にいたい…。これからも…ずっと…」
きっと僕も同じ気持ち…。
だけど僕は限りの有る者…。
ただ、『長寿の実』を食べたことによって、長生きしているだけの人族…。
流れ行く時間のなかで、忘れかけていたけれど…。
「…いっぱい…考えた。…あれに変わるモノ…」
隣でユグがこちらを見てくる。
視線が近い…。
「…僕が吸収した魔素に…時間の魔法を溶け込ませて…時間を少し進めて…止める…」
…何だって?
ヒナキは目を点にして言う。
「…意味がわからない…」
「…本当は…時間を…戻そうと…思った…」
「戻ったら、記憶を失くす…」
「…でも、…失くさなかった…」
リーンの事を言っているのだろう。
何か理由か、法則が有るのだろう…。
「…それだけでは…足りない…」
リーンは時間を戻ることを繰り返し、結果的に時間はあまり進んでいないのだろう…。
だけど僕は、時間を戻っているわけてはない…。
「…ずっと…一緒にいるためには…足りない…」
ただ、戻っただけでは、すぐに時間が来てしまう…。
「…時間の魔法を使って…身体の中から変える…」
…身体の中から…。
「…いっぺんには…無理だから…少し進めて…止める…」
ユグの真剣な眼差しにヒナキは苦笑いした。
ユグが、どれだけ魔素を使ってソレをするつもりか、わからないが、上手くいくとは限らない。
思うように時間が止まらず、老いていくかもしれない…。
魔素が身体に順応せず、死を向かえるかも知れない…。
何せ、初めての試みなのだから…。
それに今さらか…。
ヒナキはユグの髪を撫でた。
「ユグがソレを行って、上手く作用しなくて、僕が死を向かえても後悔しない?」
身体の異変に気がついていたヒナキは、ユグに後悔してほしくなかった。
いずれ訪れる死に、向き合って欲しかった。
「…絶対、死なせない!」
ヒナキは微笑んだ。
人族にしては長く生きた。
…いつも隣にいるユグの好きなようにさせても良いかな…と、思うくらい。
ユグが見つけた方法は、僕には良くわからないが、ソレが上手くいくと信じている…。
だったらユグを信じて、任せても良いのかと…もしダメでも、すぐに死を向かえるわけではない。
ユグに良く言い聞かせ、楽しい思い出を胸に眠るのも良いのかも知れない…。
「…良いよ。…ユグに任せる。僕も、できるだけ一緒にいたい…」
ヒナキにとって、今、一番分かっている自分の気持ち。
…僕も、ユグと一緒にいたいな…。
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