神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話

どうありたい?

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 クルーラの宿に泊まったヒイロは、翌日、ヒナキの朝食を持って、ヒナキの家に向かった。
 もし、本当にヒナキの寿命が来ているならば…。
 昨日はヒイロが泣き出してしまい、話をするどころではなかった。
 …それとも、今のヒナキの身体に限界が来ているのか…?
 取りあえずは、ヒナキの状態を見て、『森の聖域』へと連れていくしかない。
 ヒイロはヒナキの家の扉を開けた。


 ヒナキはベッドに横たわり、ぼんやりと虚空を見上げていた。
「ヒナキ」
 ヒイロが声をかけると、ヒナキはビクッとして、目に生気が戻り始めヒイロを見た。
「…ヒイロ…」
 ヒナキの弱々しい声に、胸が締め付けられた。
 ヒイロはヒナキの身体を起こし、ベッドに寄りかからせると朝食を食べさせ、ヒイロは側にあった椅子に座った。
「…何があったか話せるか?」
「…ユグが…会ってくれなくなった…。…リーンとルークみたいに…魔力が一つになりたいって…触ってきて…混乱して…拒絶したから…。顔も見せてくれなくなって…」
 ヒナキはうつむいたまま、ボソボソと話し出す。
「…こんなに会えないのは…初めてじゃないのに…苦しくて…どうしたら良いのか…分からなくて…」
 弱っているのは、心理的なものなのか…?
「…その内に…身体が上手く動かなくなって…」
 …やはり長い年月が経って、ヒナキの身体の何処かが支障をきたしているのかも知れない…。
「…『長寿の実』の寿命はどれくらいか、分かっていないんだろ。本来の人族の身体のままだと、限界なのかも知れない…」
 ヒナキはハッとしてヒイロを見て、苦笑いする。
「…そうかもしれない…」
 もしかして、以前から身体の不調を感じていたのか…?
 それに今回のリーンの事や、『魔素の解放』の事があって、世界樹の木霊の変化があって、その疲労と共にヒナキの身体が悲鳴を上げたのかもしれなかった。
「…ヒナキは世界樹の木霊と、どうなりたい」
「…僕の役目は『彼』に寄り添うこと…」
 そう、分かっている。
 …だからだ。
「その『彼』リーンがつがいを得た。いずれ、ルークがリーンに寄り添う事になる。ヒナキは?」
「…。」
「ヒナキは役目から解放されて、どうしたい」
「…わからない…」
「…世界樹の木霊とは…?」
「…わからない…」
 ヒナキは目に涙を貯めて、どうしたら良いのか本当にわからないようだ。
「…考えろ。ヒナキの望みは何だ?」
 しばらく沈黙が続き、ヒナキがボソリと言う。
「…僕は、ここにいて良いの?」
「ヒナキはクルーラの村長だ。お前が居ないと困る」
「役目を終えても?」
「役目と友人とは別物だろ。今まで通り『彼』の友達でいれば良い」
 ヒナキは目を丸くしてヒイロ見る。
「…そうだね…。友達だ…」
 …ヒナキは不安を一人で抱えてきたのだろう…。
 少しホッとしたヒナキに再度言う。
「世界樹の木霊とは、どうありたい」
「…ユグは、長年側にいてくれた空気のような存在。…側にいるのが当たり前…だから…今さら、どうとか言われても…」
 ヒナキは困ったように首を傾げる。
 ならばと、ヒイロは思ったことを口にする。
「…身体が成長して、大人の身体になりたいか?」
「…今さらだけど、なれるものならね…」
 ヒナキは二百年近く今の姿のままだ。
 本当に今さらだが…。
「…大人の身体になれば、ヒナキは世界樹の木霊の魔力を受け入れることが出来るか?」
「…大人になってみないと、わからない…」
「まあ、嫌ではないんだな…」
 ヒイロは苦笑いした。
 わからないと言っているが、『嫌だ』とは言っていない。
 世界樹の木霊次第だな…。
「…あとは、世界樹の木霊と話をするんだ。互いに納得のいくように…」
 世界樹の木霊には、ヒナキの嫌がることをするなと念を押しておこう。
 ヒナキの身体の時間が止まりすぎているのだろう…せめて俺達獣人の様に、成人してから成長が止まれば良かったのかも知れないが…人族だし『長寿の実』の事もある。
 言うならば、ヒナキは人族だが、未知の存在になってしまっている。
 その原因と話を付けるのが、一番だろう…。
「落ち着いたら、世界樹の所に行くぞ。グダクダ考えるより話し合え」
「…うん。ありがとう…」
 ヒナキは少し落ち着いた様子でヒイロに微笑んだ。

 

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