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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
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そしてヒイロは『森の聖域』、世界樹の元に向かった。
外は暗くなってしまったが、ヒイロは獣人なので夜目がきく。
ヒナキの家の脇道から真っ暗な細い道を歩き、『森の聖域』に向かった。
夜の『森の聖域』は、昼間とは違う姿を見せる。
星の光に照らされて、大地が…木々が…森が…ほんのりと光を放つ。
夜行性の木霊が姿を表し、ブランコに乗ってゆっくりと揺れている。
昼間の木霊達とは違って静かにゆっくりと、のんびりと遊んでいる。
そんな光景は、なかなか見れないだろう…。
ヒイロは世界樹の根本まで行くと、木の幹をコンコンと叩いて呼んだ。
「おい。起きろ」
ヒイロがそう言ってしばらくすると、姿は見せないが、木の葉っぱが揺れた。
「何があったか知らないが、ヒナキを泣かすな」
ヒイロがそう言うと、木の幹から世界樹の木霊が、顔から胸の辺りまで出てきて、その姿にヒイロは目を丸くして驚く。
今まで子供の姿だった筈なのに、少年の…ヒナキと同じくらいの年頃の姿になっていたからだ。
「…いつの間に…」
「…魔素を…いっぱい…吸収した…」
…この間の『魔素の解放』が短かったのは、世界樹の木霊が成長するために、魔素を吸収したからなのか…。
「…。」
ヒイロは気を取り直して、世界樹の木霊に言う。
「ヒナキが泣いていた。…それも衰弱している。何があった」
しばらく黙っていた世界樹の木霊が、ボソボソと話し始めた。
「…魔力が…一つになりたくて…触ったら…好きな者同士でする…繁殖行為だって…身体が…成熟してないから…無理って…」
「…。」
言われた言葉に、ヒイロは頭を抱えた。
まかさの返答だ。
どう、答えてあげれば良い…。
…それに魔力が一つに…とは、リーンとルークを見ていたからだろう…。
…それに…触ったら…好きな者同士でする繁殖行為…。
世界樹の木霊は、ヒナキに手を出したのか?
木霊は、本体自らの根を伸ばし、そこから分身とも言える新しい芽を出して繁殖する…。
人族であるヒナキとは、あまりにも存在が違いすぎる…。
それでも…世界樹の木霊はヒナキと、そう言った行為をしたいと思ったのか…?
…原因は、リーンとルークの行為を見ていたからだろうと、予測はつくが…。
…それと、身体の成熟…。
ヒナキの身体は大人になりきれていない…。
無理に身体を繋げるような行為をすれば、ヒナキが受け止めきれない…。
…だが、身体が大人になりきってしまえば、ヒナキは世界樹の木霊を受け入れるだけの気持ちは有るのだろうか…。
どちらにしろ、世界樹の木霊とヒナキが、話し合わなくてはいけないこと…。
それと気になったのが、ヒナキの体調の悪さ。
…心理的な事なのかも知れないが…。
「…ヒナキと長年一緒にいるんだろ。何で肝心なことを話さない」
「…肝心なこと…?」
世界樹の木霊は首を傾げる。
「…これからも、ずっと一緒にいたい。だから魔力を受け入れてって!」
「…言ってない…」
今まで長年、何を見てきた!
ヒイロは叫びたかったが我慢して言った。
「ヒナキの体調の悪さに気がついているのか?!」
「えっ…?!」
ヒイロは大きなため息をついた。
世界樹の木霊は、自分の事で精一杯なのだ。
長年側にいるヒナキはいつも元気だと言うことが当たり前で、塞ぎ混んで、とじ込もっている内に、ヒナキの体調が悪くなっているなんて、思いもよらなかったのだろう。
「『長寿の実』を食べて長い時間を生きているが、不死ではないんたぞ!食べて、どれだけ長い時間を生きるか、分かっていないんだろ?!百年…二百年近く生きてるヒナキは元は人族だ。寿命が来ているのかも知れない。…『長寿の実』を与えたお前がヒナキを守ってあげなくて、誰がヒナキを守るんだ!」
ヒイロ叫びに、うつむきショボくれた世界樹の木霊を見て、ヒイロはため息を付いた。
「…このままヒナキに会えなくなっても良いのか?」
ユグは首を横に振る。
ここからは、ヒナキと世界樹の木霊の問題だ。
「…どうしたい」
「…会いたい…。ずっと…側にいて…欲しい…」
涙目になってヒイロを見上げてくる。
「明日、連れて来るから、ヒナキと話をしろ」
ユグが頷く。
「…もし、ヒナキの寿命が来ているならば、どうするか考えろ。…俺にはどうすることも出来ないからな」
もし、本当にヒナキの寿命が来ているのならば…。
「…時間を…戻す…?」
「だからそれをヒナキと相談するんだ。お互いに納得するように」
…下手に時間を戻したら、記憶を無くすんだぞ!
こいつ、分かってないな…。
「…わかった…」
世界樹の木霊は素直に頷き、ヒイロは、ため息を付きつつも、世界樹の木霊の頭を撫でると、微笑んでクルーラに戻った。
…あと、ヒナキはどう思っているのか、話してみないとな…。
外は暗くなってしまったが、ヒイロは獣人なので夜目がきく。
ヒナキの家の脇道から真っ暗な細い道を歩き、『森の聖域』に向かった。
夜の『森の聖域』は、昼間とは違う姿を見せる。
星の光に照らされて、大地が…木々が…森が…ほんのりと光を放つ。
夜行性の木霊が姿を表し、ブランコに乗ってゆっくりと揺れている。
昼間の木霊達とは違って静かにゆっくりと、のんびりと遊んでいる。
そんな光景は、なかなか見れないだろう…。
ヒイロは世界樹の根本まで行くと、木の幹をコンコンと叩いて呼んだ。
「おい。起きろ」
ヒイロがそう言ってしばらくすると、姿は見せないが、木の葉っぱが揺れた。
「何があったか知らないが、ヒナキを泣かすな」
ヒイロがそう言うと、木の幹から世界樹の木霊が、顔から胸の辺りまで出てきて、その姿にヒイロは目を丸くして驚く。
今まで子供の姿だった筈なのに、少年の…ヒナキと同じくらいの年頃の姿になっていたからだ。
「…いつの間に…」
「…魔素を…いっぱい…吸収した…」
…この間の『魔素の解放』が短かったのは、世界樹の木霊が成長するために、魔素を吸収したからなのか…。
「…。」
ヒイロは気を取り直して、世界樹の木霊に言う。
「ヒナキが泣いていた。…それも衰弱している。何があった」
しばらく黙っていた世界樹の木霊が、ボソボソと話し始めた。
「…魔力が…一つになりたくて…触ったら…好きな者同士でする…繁殖行為だって…身体が…成熟してないから…無理って…」
「…。」
言われた言葉に、ヒイロは頭を抱えた。
まかさの返答だ。
どう、答えてあげれば良い…。
…それに魔力が一つに…とは、リーンとルークを見ていたからだろう…。
…それに…触ったら…好きな者同士でする繁殖行為…。
世界樹の木霊は、ヒナキに手を出したのか?
木霊は、本体自らの根を伸ばし、そこから分身とも言える新しい芽を出して繁殖する…。
人族であるヒナキとは、あまりにも存在が違いすぎる…。
それでも…世界樹の木霊はヒナキと、そう言った行為をしたいと思ったのか…?
…原因は、リーンとルークの行為を見ていたからだろうと、予測はつくが…。
…それと、身体の成熟…。
ヒナキの身体は大人になりきれていない…。
無理に身体を繋げるような行為をすれば、ヒナキが受け止めきれない…。
…だが、身体が大人になりきってしまえば、ヒナキは世界樹の木霊を受け入れるだけの気持ちは有るのだろうか…。
どちらにしろ、世界樹の木霊とヒナキが、話し合わなくてはいけないこと…。
それと気になったのが、ヒナキの体調の悪さ。
…心理的な事なのかも知れないが…。
「…ヒナキと長年一緒にいるんだろ。何で肝心なことを話さない」
「…肝心なこと…?」
世界樹の木霊は首を傾げる。
「…これからも、ずっと一緒にいたい。だから魔力を受け入れてって!」
「…言ってない…」
今まで長年、何を見てきた!
ヒイロは叫びたかったが我慢して言った。
「ヒナキの体調の悪さに気がついているのか?!」
「えっ…?!」
ヒイロは大きなため息をついた。
世界樹の木霊は、自分の事で精一杯なのだ。
長年側にいるヒナキはいつも元気だと言うことが当たり前で、塞ぎ混んで、とじ込もっている内に、ヒナキの体調が悪くなっているなんて、思いもよらなかったのだろう。
「『長寿の実』を食べて長い時間を生きているが、不死ではないんたぞ!食べて、どれだけ長い時間を生きるか、分かっていないんだろ?!百年…二百年近く生きてるヒナキは元は人族だ。寿命が来ているのかも知れない。…『長寿の実』を与えたお前がヒナキを守ってあげなくて、誰がヒナキを守るんだ!」
ヒイロ叫びに、うつむきショボくれた世界樹の木霊を見て、ヒイロはため息を付いた。
「…このままヒナキに会えなくなっても良いのか?」
ユグは首を横に振る。
ここからは、ヒナキと世界樹の木霊の問題だ。
「…どうしたい」
「…会いたい…。ずっと…側にいて…欲しい…」
涙目になってヒイロを見上げてくる。
「明日、連れて来るから、ヒナキと話をしろ」
ユグが頷く。
「…もし、ヒナキの寿命が来ているならば、どうするか考えろ。…俺にはどうすることも出来ないからな」
もし、本当にヒナキの寿命が来ているのならば…。
「…時間を…戻す…?」
「だからそれをヒナキと相談するんだ。お互いに納得するように」
…下手に時間を戻したら、記憶を無くすんだぞ!
こいつ、分かってないな…。
「…わかった…」
世界樹の木霊は素直に頷き、ヒイロは、ため息を付きつつも、世界樹の木霊の頭を撫でると、微笑んでクルーラに戻った。
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