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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
涙
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豹族の獣人ヒイロはコレでも多忙だ。
獣人の町グオルクの執務をこなしながら、ルークと立ち上げた人族と獣人族など交流の町リオナスの、リオナスでは処理しきれない獣人側の書類が時々舞い込む。
補佐であるチイが番なので、家で待ってる娘のルナの為に、なるべく定時で帰ってもらうから、処理しきれない時が有り、家に帰るのが遅くなるときもある。
そんな中、『森の聖域』の『クルーラ』から連絡が入った。
通常、クルーラ内で何か起これば、ヒイロの父親に連絡が行き、『森の聖域』周辺の町の代表が集まって話し合いになる。
そして俺のところに連絡が来て、手配するのだが…連絡してきたのが、クルーラの門番のチトセからだった。
そこそこ面識は有るし、何故俺に?と、疑問に思ったが、伝えられた内容を聞いて納得した。
クルーラの村長、ヒナキが倒れたとの事。
どうも最近、調子が悪かったみたいで、食堂でもあまり食べていなかった。と。
…個人的な問題だから俺に言ってきたのもあるし、ヒナキが寝不足と魔力切れ以外で、病気になったことなど無かったものだから不安になった。
「なるべく早く行く」
ヒイロには、そう言う事しか出来なかった。
ヒイロは区切りの良いところで仕事を終え、書類の手配をもう一人の補佐、ホムラに任せるとクルーラに向かった。
クルーラは森の深い場所に有り、日が沈むと同時に出入口の門を閉じる。
ヒイロがギリギリで出入口の小屋に駆け込むと、チトセが泣き笑いで迎えてくれた。
チトセの話によると、ヒナキは連日、世界樹の元に通っているらしいが、世界樹の木霊が姿を見せてくれないらしい。
何があったのか分からないが、ヒナキは憔悴していくし、食堂でもあまり食べていなくて、周りで何か言っても、大丈夫だってしか言わなくて、でも何か苦しそうで見ていられない。だそうだ。
ヒイロはチトセから話を聞き終わると、ヒナキの家に向かった。
日は沈み薄暗くなってきたが、村の主要街路は魔法で街灯が灯る。
各家からは明かりが漏れ、さほど暗くなはい。
一番奥に有る、ヒナキの家にたどり着くと、家の明かりはほんの少し灯っているだけだ。
…眠っているのか…?
ヒイロはヒナキの家の中に入り、明かりを灯し、寝室へと足を向ける。
「ヒナキ。起きているか?」
ヒイロは寝室の部屋の扉をノックし、声をかけると、中からボソボソと声がした。
起きてるみたいだな…。
ヒイロは寝室の扉を開き、ベッドに横たわり、青ざめて弱ったヒナキを見て目を丸くした。
「…ヒイロ…」
弱々しいヒナキの声がして、目から涙が溢れ始めた。
…これだけ弱ったと言うか、今にも消えてしまいそうなヒナキを見たのは始めてだ。
ヒナキの溢れ始めた涙は止まらず、シーツを濡らす。
ずっと溜め込んでいた何かが溢れ出ていくように…。
ヒイロは何も言わずヒナキの側に行き、ヒナキの頭を撫でてあげた。
泣きたい時には泣いた方が良い…。
溜め込んで、溜め込んで、我慢し続けて、自分が弱ってしまうより良い…。
ヒイロにとって、ヒナキは幼馴染みでもあり、リーンと一緒で兄弟のようなものだ。
ヒナキは『長寿の実』を食べ、成長が時間が止まり、俺より長い時間を生きている人族なのだ。
しばらくすると、泣きつかれたのか、目を閉じて寝息をたて始めた。
ヒイロはヒナキの涙を拭い、大きなため息を付いた。
そしてヒイロは『森の聖域』、世界樹の元に向かった。
獣人の町グオルクの執務をこなしながら、ルークと立ち上げた人族と獣人族など交流の町リオナスの、リオナスでは処理しきれない獣人側の書類が時々舞い込む。
補佐であるチイが番なので、家で待ってる娘のルナの為に、なるべく定時で帰ってもらうから、処理しきれない時が有り、家に帰るのが遅くなるときもある。
そんな中、『森の聖域』の『クルーラ』から連絡が入った。
通常、クルーラ内で何か起これば、ヒイロの父親に連絡が行き、『森の聖域』周辺の町の代表が集まって話し合いになる。
そして俺のところに連絡が来て、手配するのだが…連絡してきたのが、クルーラの門番のチトセからだった。
そこそこ面識は有るし、何故俺に?と、疑問に思ったが、伝えられた内容を聞いて納得した。
クルーラの村長、ヒナキが倒れたとの事。
どうも最近、調子が悪かったみたいで、食堂でもあまり食べていなかった。と。
…個人的な問題だから俺に言ってきたのもあるし、ヒナキが寝不足と魔力切れ以外で、病気になったことなど無かったものだから不安になった。
「なるべく早く行く」
ヒイロには、そう言う事しか出来なかった。
ヒイロは区切りの良いところで仕事を終え、書類の手配をもう一人の補佐、ホムラに任せるとクルーラに向かった。
クルーラは森の深い場所に有り、日が沈むと同時に出入口の門を閉じる。
ヒイロがギリギリで出入口の小屋に駆け込むと、チトセが泣き笑いで迎えてくれた。
チトセの話によると、ヒナキは連日、世界樹の元に通っているらしいが、世界樹の木霊が姿を見せてくれないらしい。
何があったのか分からないが、ヒナキは憔悴していくし、食堂でもあまり食べていなくて、周りで何か言っても、大丈夫だってしか言わなくて、でも何か苦しそうで見ていられない。だそうだ。
ヒイロはチトセから話を聞き終わると、ヒナキの家に向かった。
日は沈み薄暗くなってきたが、村の主要街路は魔法で街灯が灯る。
各家からは明かりが漏れ、さほど暗くなはい。
一番奥に有る、ヒナキの家にたどり着くと、家の明かりはほんの少し灯っているだけだ。
…眠っているのか…?
ヒイロはヒナキの家の中に入り、明かりを灯し、寝室へと足を向ける。
「ヒナキ。起きているか?」
ヒイロは寝室の部屋の扉をノックし、声をかけると、中からボソボソと声がした。
起きてるみたいだな…。
ヒイロは寝室の扉を開き、ベッドに横たわり、青ざめて弱ったヒナキを見て目を丸くした。
「…ヒイロ…」
弱々しいヒナキの声がして、目から涙が溢れ始めた。
…これだけ弱ったと言うか、今にも消えてしまいそうなヒナキを見たのは始めてだ。
ヒナキの溢れ始めた涙は止まらず、シーツを濡らす。
ずっと溜め込んでいた何かが溢れ出ていくように…。
ヒイロは何も言わずヒナキの側に行き、ヒナキの頭を撫でてあげた。
泣きたい時には泣いた方が良い…。
溜め込んで、溜め込んで、我慢し続けて、自分が弱ってしまうより良い…。
ヒイロにとって、ヒナキは幼馴染みでもあり、リーンと一緒で兄弟のようなものだ。
ヒナキは『長寿の実』を食べ、成長が時間が止まり、俺より長い時間を生きている人族なのだ。
しばらくすると、泣きつかれたのか、目を閉じて寝息をたて始めた。
ヒイロはヒナキの涙を拭い、大きなため息を付いた。
そしてヒイロは『森の聖域』、世界樹の元に向かった。
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