368 / 462
名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
魔素の吸収
しおりを挟む
ヒナキが『クルーラ』から『森の聖域』へと入ると、濃い霧が立ち込めていて、視界が阻まれ、静けさが漂っていた。
朝を迎えているので、もう少し日が登り始めれば、霧は無くなり、視界が良くなるはず…。
ヒナキはじっとしておれず、リーンの小屋に向かって、歩きなれた道をゆっくりと進んだ。
徐々に視界を閉ざしていた霧が晴れてきて、リーンの小屋の輪郭が見えてくる。
隣に有るルークが作った公園も、徐々に姿を見せ、何事も無かったかのようにそこに有った。
リーンの家の横に有る世界樹も見えてきて、風霊が横切り、『森の聖域』全体が一気に見えてきた。
『魔素の解放』以前と変わらない風景が有り、まだ、木霊や土霊達が戻ってきて姿を見せてくれないだけ…。
ヒナキはリーンの家の中を確認し、川辺の方に向かうと、水車がカタカタと音を立てていて、水中から水霊がヒョコンと顔を除かせた。
ヒナキはホッとして水霊に微笑む。
「お帰り」
水霊はニコリと笑って水中に消えていった。
ヒナキが小屋に戻ってくると、ブランコが揺れて木霊が座っていた。
その様子にヒナキはホッとすると、土の中から土霊がニュッと出てきて、ヒナキを見て微笑んだ。
「みんな、お帰り」
…大丈夫だ。
『魔素の解放』は終わっている。
木霊や土霊、水霊、風霊達も帰ってきている。
…ユグは…?
ヒナキは世界樹の方に近づき、木の幹に手を触れる。
「…ユグ」
ヒナキが声をかけるが姿を表さない。
…どうしたのだろう…。
いつもは声をかけなくても、近づいただけで出てくるのに…。
何か異変があったのだろうか…。
「ユグ」
ヒナキがもう一度声をかけると、世界樹から緑色の髪の毛が出てきた。
そして手足が出てきて、体が世界樹から完全に出てくる様子を見ながら、ヒナキは目を丸くして驚いた。
ついこの間まで、背丈が腰くらいまでしか無かったのに、ヒナキと同じくらいの身長に…少年の姿になっていたのだ。
ヒナキが言葉無く茫然と少年を見ていると、少年はニヤっと笑ってヒナキに近付いてきた。
ヒナキはハッとして声をかける。
「…ユグ…なのか…?」
「…そうだよ。…いっぱいの…魔素を吸収して…大きくなった…」
「…。」
『魔素の解放』が早く終わったのは、ユグが大きく成長するために、大量の魔素を吸収したからなのか…。
ヒナキの前でユグが立ち止まると、同じ高さで視線が合い、変な感じがする。
ユグなんだけれど、別人のようだ…。
そしてユグがヒナキにギュッと抱きついてくる。
「…やっと、腕の中で…ギュッて…出来る…」
ユグの顔がヒナキの肩の上辺りに有って、ユグがしゃべるとヒナキの耳元で話しているみたいで、くすぐったい…。
「…ユグ…。魔素を大量に取り込んで、大丈夫なのか?」
「…大丈夫。…視界が高くて、…バランスがとれないだけ…」
一気に身長が伸びて、今までの感覚とは違うから、重心がぶれるのだろう。
…それは慣れだな…。
それにしても、魔素を吸収って…今までユグがそれをしてこなかったから、成長しなかったと言うことか?
実際は長い年月が経っているので、大人の姿でもおかしくないのだから…。
そう言っている間に、木霊や土霊が少しづつ戻って来て、ブランコや滑り台で遊び始めた。
そろそろクルーラに、『魔素の解放』が終わったことを告げて、強化魔法を解かなくては…。
ヒナキがユグから体を離すと、ヒナキは微笑んで言った。
「一度、クルーラに戻る。…後でまた来るよ。…その身長になった経緯と言うか、どんな感じだったのか聞きたいから」
ユグの成長過程を聞きたい。
「…待ってる…」
少年のユグは寂しそうにヒナキを見る。
同じユグなのに、身長が伸びただけで、何故かソワソワしてムズムズして、変な感じがする…。
…なんだ?
…これは…?
今までに経験の無い、ムズムズとしたものがヒナキの中に生まれた。
「…また後で」
ヒナキはそう言って世界樹を離れ、『森の聖域』から『クルーラ』に戻った。
朝を迎えているので、もう少し日が登り始めれば、霧は無くなり、視界が良くなるはず…。
ヒナキはじっとしておれず、リーンの小屋に向かって、歩きなれた道をゆっくりと進んだ。
徐々に視界を閉ざしていた霧が晴れてきて、リーンの小屋の輪郭が見えてくる。
隣に有るルークが作った公園も、徐々に姿を見せ、何事も無かったかのようにそこに有った。
リーンの家の横に有る世界樹も見えてきて、風霊が横切り、『森の聖域』全体が一気に見えてきた。
『魔素の解放』以前と変わらない風景が有り、まだ、木霊や土霊達が戻ってきて姿を見せてくれないだけ…。
ヒナキはリーンの家の中を確認し、川辺の方に向かうと、水車がカタカタと音を立てていて、水中から水霊がヒョコンと顔を除かせた。
ヒナキはホッとして水霊に微笑む。
「お帰り」
水霊はニコリと笑って水中に消えていった。
ヒナキが小屋に戻ってくると、ブランコが揺れて木霊が座っていた。
その様子にヒナキはホッとすると、土の中から土霊がニュッと出てきて、ヒナキを見て微笑んだ。
「みんな、お帰り」
…大丈夫だ。
『魔素の解放』は終わっている。
木霊や土霊、水霊、風霊達も帰ってきている。
…ユグは…?
ヒナキは世界樹の方に近づき、木の幹に手を触れる。
「…ユグ」
ヒナキが声をかけるが姿を表さない。
…どうしたのだろう…。
いつもは声をかけなくても、近づいただけで出てくるのに…。
何か異変があったのだろうか…。
「ユグ」
ヒナキがもう一度声をかけると、世界樹から緑色の髪の毛が出てきた。
そして手足が出てきて、体が世界樹から完全に出てくる様子を見ながら、ヒナキは目を丸くして驚いた。
ついこの間まで、背丈が腰くらいまでしか無かったのに、ヒナキと同じくらいの身長に…少年の姿になっていたのだ。
ヒナキが言葉無く茫然と少年を見ていると、少年はニヤっと笑ってヒナキに近付いてきた。
ヒナキはハッとして声をかける。
「…ユグ…なのか…?」
「…そうだよ。…いっぱいの…魔素を吸収して…大きくなった…」
「…。」
『魔素の解放』が早く終わったのは、ユグが大きく成長するために、大量の魔素を吸収したからなのか…。
ヒナキの前でユグが立ち止まると、同じ高さで視線が合い、変な感じがする。
ユグなんだけれど、別人のようだ…。
そしてユグがヒナキにギュッと抱きついてくる。
「…やっと、腕の中で…ギュッて…出来る…」
ユグの顔がヒナキの肩の上辺りに有って、ユグがしゃべるとヒナキの耳元で話しているみたいで、くすぐったい…。
「…ユグ…。魔素を大量に取り込んで、大丈夫なのか?」
「…大丈夫。…視界が高くて、…バランスがとれないだけ…」
一気に身長が伸びて、今までの感覚とは違うから、重心がぶれるのだろう。
…それは慣れだな…。
それにしても、魔素を吸収って…今までユグがそれをしてこなかったから、成長しなかったと言うことか?
実際は長い年月が経っているので、大人の姿でもおかしくないのだから…。
そう言っている間に、木霊や土霊が少しづつ戻って来て、ブランコや滑り台で遊び始めた。
そろそろクルーラに、『魔素の解放』が終わったことを告げて、強化魔法を解かなくては…。
ヒナキがユグから体を離すと、ヒナキは微笑んで言った。
「一度、クルーラに戻る。…後でまた来るよ。…その身長になった経緯と言うか、どんな感じだったのか聞きたいから」
ユグの成長過程を聞きたい。
「…待ってる…」
少年のユグは寂しそうにヒナキを見る。
同じユグなのに、身長が伸びただけで、何故かソワソワしてムズムズして、変な感じがする…。
…なんだ?
…これは…?
今までに経験の無い、ムズムズとしたものがヒナキの中に生まれた。
「…また後で」
ヒナキはそう言って世界樹を離れ、『森の聖域』から『クルーラ』に戻った。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる