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名前を呼んで…。(番外編) その後のヒナキとユグの話
魔素の吸収
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ヒナキが『クルーラ』から『森の聖域』へと入ると、濃い霧が立ち込めていて、視界が阻まれ、静けさが漂っていた。
朝を迎えているので、もう少し日が登り始めれば、霧は無くなり、視界が良くなるはず…。
ヒナキはじっとしておれず、リーンの小屋に向かって、歩きなれた道をゆっくりと進んだ。
徐々に視界を閉ざしていた霧が晴れてきて、リーンの小屋の輪郭が見えてくる。
隣に有るルークが作った公園も、徐々に姿を見せ、何事も無かったかのようにそこに有った。
リーンの家の横に有る世界樹も見えてきて、風霊が横切り、『森の聖域』全体が一気に見えてきた。
『魔素の解放』以前と変わらない風景が有り、まだ、木霊や土霊達が戻ってきて姿を見せてくれないだけ…。
ヒナキはリーンの家の中を確認し、川辺の方に向かうと、水車がカタカタと音を立てていて、水中から水霊がヒョコンと顔を除かせた。
ヒナキはホッとして水霊に微笑む。
「お帰り」
水霊はニコリと笑って水中に消えていった。
ヒナキが小屋に戻ってくると、ブランコが揺れて木霊が座っていた。
その様子にヒナキはホッとすると、土の中から土霊がニュッと出てきて、ヒナキを見て微笑んだ。
「みんな、お帰り」
…大丈夫だ。
『魔素の解放』は終わっている。
木霊や土霊、水霊、風霊達も帰ってきている。
…ユグは…?
ヒナキは世界樹の方に近づき、木の幹に手を触れる。
「…ユグ」
ヒナキが声をかけるが姿を表さない。
…どうしたのだろう…。
いつもは声をかけなくても、近づいただけで出てくるのに…。
何か異変があったのだろうか…。
「ユグ」
ヒナキがもう一度声をかけると、世界樹から緑色の髪の毛が出てきた。
そして手足が出てきて、体が世界樹から完全に出てくる様子を見ながら、ヒナキは目を丸くして驚いた。
ついこの間まで、背丈が腰くらいまでしか無かったのに、ヒナキと同じくらいの身長に…少年の姿になっていたのだ。
ヒナキが言葉無く茫然と少年を見ていると、少年はニヤっと笑ってヒナキに近付いてきた。
ヒナキはハッとして声をかける。
「…ユグ…なのか…?」
「…そうだよ。…いっぱいの…魔素を吸収して…大きくなった…」
「…。」
『魔素の解放』が早く終わったのは、ユグが大きく成長するために、大量の魔素を吸収したからなのか…。
ヒナキの前でユグが立ち止まると、同じ高さで視線が合い、変な感じがする。
ユグなんだけれど、別人のようだ…。
そしてユグがヒナキにギュッと抱きついてくる。
「…やっと、腕の中で…ギュッて…出来る…」
ユグの顔がヒナキの肩の上辺りに有って、ユグがしゃべるとヒナキの耳元で話しているみたいで、くすぐったい…。
「…ユグ…。魔素を大量に取り込んで、大丈夫なのか?」
「…大丈夫。…視界が高くて、…バランスがとれないだけ…」
一気に身長が伸びて、今までの感覚とは違うから、重心がぶれるのだろう。
…それは慣れだな…。
それにしても、魔素を吸収って…今までユグがそれをしてこなかったから、成長しなかったと言うことか?
実際は長い年月が経っているので、大人の姿でもおかしくないのだから…。
そう言っている間に、木霊や土霊が少しづつ戻って来て、ブランコや滑り台で遊び始めた。
そろそろクルーラに、『魔素の解放』が終わったことを告げて、強化魔法を解かなくては…。
ヒナキがユグから体を離すと、ヒナキは微笑んで言った。
「一度、クルーラに戻る。…後でまた来るよ。…その身長になった経緯と言うか、どんな感じだったのか聞きたいから」
ユグの成長過程を聞きたい。
「…待ってる…」
少年のユグは寂しそうにヒナキを見る。
同じユグなのに、身長が伸びただけで、何故かソワソワしてムズムズして、変な感じがする…。
…なんだ?
…これは…?
今までに経験の無い、ムズムズとしたものがヒナキの中に生まれた。
「…また後で」
ヒナキはそう言って世界樹を離れ、『森の聖域』から『クルーラ』に戻った。
朝を迎えているので、もう少し日が登り始めれば、霧は無くなり、視界が良くなるはず…。
ヒナキはじっとしておれず、リーンの小屋に向かって、歩きなれた道をゆっくりと進んだ。
徐々に視界を閉ざしていた霧が晴れてきて、リーンの小屋の輪郭が見えてくる。
隣に有るルークが作った公園も、徐々に姿を見せ、何事も無かったかのようにそこに有った。
リーンの家の横に有る世界樹も見えてきて、風霊が横切り、『森の聖域』全体が一気に見えてきた。
『魔素の解放』以前と変わらない風景が有り、まだ、木霊や土霊達が戻ってきて姿を見せてくれないだけ…。
ヒナキはリーンの家の中を確認し、川辺の方に向かうと、水車がカタカタと音を立てていて、水中から水霊がヒョコンと顔を除かせた。
ヒナキはホッとして水霊に微笑む。
「お帰り」
水霊はニコリと笑って水中に消えていった。
ヒナキが小屋に戻ってくると、ブランコが揺れて木霊が座っていた。
その様子にヒナキはホッとすると、土の中から土霊がニュッと出てきて、ヒナキを見て微笑んだ。
「みんな、お帰り」
…大丈夫だ。
『魔素の解放』は終わっている。
木霊や土霊、水霊、風霊達も帰ってきている。
…ユグは…?
ヒナキは世界樹の方に近づき、木の幹に手を触れる。
「…ユグ」
ヒナキが声をかけるが姿を表さない。
…どうしたのだろう…。
いつもは声をかけなくても、近づいただけで出てくるのに…。
何か異変があったのだろうか…。
「ユグ」
ヒナキがもう一度声をかけると、世界樹から緑色の髪の毛が出てきた。
そして手足が出てきて、体が世界樹から完全に出てくる様子を見ながら、ヒナキは目を丸くして驚いた。
ついこの間まで、背丈が腰くらいまでしか無かったのに、ヒナキと同じくらいの身長に…少年の姿になっていたのだ。
ヒナキが言葉無く茫然と少年を見ていると、少年はニヤっと笑ってヒナキに近付いてきた。
ヒナキはハッとして声をかける。
「…ユグ…なのか…?」
「…そうだよ。…いっぱいの…魔素を吸収して…大きくなった…」
「…。」
『魔素の解放』が早く終わったのは、ユグが大きく成長するために、大量の魔素を吸収したからなのか…。
ヒナキの前でユグが立ち止まると、同じ高さで視線が合い、変な感じがする。
ユグなんだけれど、別人のようだ…。
そしてユグがヒナキにギュッと抱きついてくる。
「…やっと、腕の中で…ギュッて…出来る…」
ユグの顔がヒナキの肩の上辺りに有って、ユグがしゃべるとヒナキの耳元で話しているみたいで、くすぐったい…。
「…ユグ…。魔素を大量に取り込んで、大丈夫なのか?」
「…大丈夫。…視界が高くて、…バランスがとれないだけ…」
一気に身長が伸びて、今までの感覚とは違うから、重心がぶれるのだろう。
…それは慣れだな…。
それにしても、魔素を吸収って…今までユグがそれをしてこなかったから、成長しなかったと言うことか?
実際は長い年月が経っているので、大人の姿でもおかしくないのだから…。
そう言っている間に、木霊や土霊が少しづつ戻って来て、ブランコや滑り台で遊び始めた。
そろそろクルーラに、『魔素の解放』が終わったことを告げて、強化魔法を解かなくては…。
ヒナキがユグから体を離すと、ヒナキは微笑んで言った。
「一度、クルーラに戻る。…後でまた来るよ。…その身長になった経緯と言うか、どんな感じだったのか聞きたいから」
ユグの成長過程を聞きたい。
「…待ってる…」
少年のユグは寂しそうにヒナキを見る。
同じユグなのに、身長が伸びただけで、何故かソワソワしてムズムズして、変な感じがする…。
…なんだ?
…これは…?
今までに経験の無い、ムズムズとしたものがヒナキの中に生まれた。
「…また後で」
ヒナキはそう言って世界樹を離れ、『森の聖域』から『クルーラ』に戻った。
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