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新たなる旅達
約束
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ヒナキはリーンに全てを話すと、スッキリした顔をして微笑んだ。
「だから僕は、世界樹の木霊の望むまま『長寿の実』を食べて、ココに居る。…身体がほとんど成長しないのが、難点だけとね」
リーンは苦笑いした。
だから、リーンがこの地で目覚めた時から、ヒナキは近すぎず、離れず側に居てくれたのだ。
…同じ顔の、別人の『私』の中にピットの面影を見ていたのかも知れない…。
「あの時、『ピット』の存在はなくなったけれど、確かにリーンの中に生きているのを知っているから。『キュイ』…リーンの一つ前の『キュイ』は、記憶はないのに『ピット』の時にマキノさんからもらった本を大事にしていた…」
もしかして机の側に置いてある本棚にあった、ボロボロになるくらい読まれていた植物の本の事だろうか…。
「あの頃の事を知っている者は、数少なくなってしまったけれど、僕は約束を守れている…はず…」
ヒナキがそう言うと、寄りかかっていた世界樹から子供の木霊がスッと姿を現し、ヒナキの頭をなでなでしてくる。
側で聞いていたのだろう…。
そしてリーンは思った。
ヒナキに懐いているなら、ヒナキからも時々、外に出てくるように言えないだろうか…。
「…外に出て来ないか?…ルークがブランコを作ってくれたんだ」
リーンがそう言うと、ヒナキも微笑んで話しかけた。
「リーンの番が、木霊や土霊達の為に遊具…遊び場を作ってくれたんだ。…今までに無いことだろ…?」
「…。」
子供の木霊はじっとヒナキを見ている。
「…会いに来るとは言ったけど、…一緒に遊ぼうって、言えばよかったな…」
…ヒナキは世界樹に会いに来ると、約束していたんだ…。
ただ、会って話をするだけ…だったのかも知れない…。
「…今からでも、遅くないよ。ルークが大きいブランコを作ってくれるって言ってたし、一緒に遊べるよ」
リーンがそう言うと、子供の木霊が、木から抜け出してきて、ヒナキの膝の上にちょこんと座り、ヒナキを見上げた。
ヒナキは驚いて目を丸くし、そして嬉しそうに微笑んだ。
「一緒に遊ぼう」
ヒナキは子供の木霊を抱えて、リーンの家の横にあるブランコに向かい、木霊を座らせた。
そこで遊んでいた木霊が遠巻きに見ている。
「ひもに掴まって…」
ヒナキがそう言って、ブランコの両脇のヒモに掴まったのを確認すると、ヒナキはゆっくりとブランコを動かした。
最初は怯えていた子供の木霊も、だんだんと慣れてきて、「うぉー。うゎー」と、声をあげている。
遠巻きに見ていた木霊達も、近付いてきて、手招きし始める。
ヒナキがブランコを止め、行っておいでと言うと、オズオズと不安そうにこちらを振り返りながら、木霊に付いていって、滑り台へと向かっていく。
ヒナキも後を付いていって、木霊が階段を登り、子供の木霊も登り始め、木霊が滑り台を滑り降りた。
それを真似して座るが、恐々と滑って行ってスピードが出ないでいると、後ろから外の木霊達が滑り降りてきて、途中で詰まっているのを楽しそうに笑って居る。
ズズッと少しづつ滑り降りてくるのを、ヒナキは笑いながら見ている。
下まで滑り降りると、後ろにいた木霊達が滑り台から降りて、また階段を上っていく。
子供の木霊が立ち上がってそれを見ていると、また別の木霊が手招きして、シーソーの方に向かい、子供の木霊がシーソーの片方に座ると、反対側に何人もの木霊と土霊が乗り込み、動かそうとするが動かないのがヒナキの笑いを誘って、笑い続けている。
リーンが子供の木霊の側に行って、
「少しジャンプしてあげて…」
そう言うと、座ったまま、ジャンプしてシーソーが動き、少し上に上がると降りてきて、驚いた表情をして戻ってきた。
「ジャンプ、ジャンプ」
リーンがそう言うと、再びジャンプして、反対側にのっていた木霊や土霊が、はしゃぎ出した。
そのうちに慣れたのか、子供の木霊も笑いながら遊び始めた。
「かわいいな…」
ヒナキがそう呟いて、微笑んでいた。
遊びに夢中になっている木霊達を横目に、リーンは気になっていることをヒナキに聞いてみた。
「あの子の名前は?」
「…名前で呼んでない…」
「…折角外に出てきたんだから、付けてあげれば?」
「…僕が付けて良いの?」
「…私が付けるより、ヒナキに名前を付けてもらった方が喜ぶと思うけど…」
リーンがそう言うと、ヒナキはしばらく考えて言った。
「…ユグ。世界樹の別名がユグドラシル…だったはずだから…」
「良いんじゃないか。…木霊の個性がこれだけ出ているのに、名前を付けてあげてないとは思わなかったけど…」
「…僕が名付けて良いのか、分からなかったから…」
ヒナキは苦笑いした。
宿り木のように名前が付けば、存在意識が孤立して、きっと中身も外見も成長するようになる。
…ヒナキ次第かも知れないけれど…。
そんな話をしている内に、ルークがブランコの材料を木霊達と持ってきて、製作し始めた。
遊んでいたユグは不思議そうに、ルークの作業を見ている。
そっか、人の手で作られる作業を見る、と言う経験も、あまり無いか…。
ルークは見られているのを気にせずに、黙々と作業して、木霊と土霊達に手伝ってもらって、ブランコを組み立てていく。
リーンはその作業をユグと一緒に見ながら、ルーク…かっこいいな…と思って頬を染めていた。
「だから僕は、世界樹の木霊の望むまま『長寿の実』を食べて、ココに居る。…身体がほとんど成長しないのが、難点だけとね」
リーンは苦笑いした。
だから、リーンがこの地で目覚めた時から、ヒナキは近すぎず、離れず側に居てくれたのだ。
…同じ顔の、別人の『私』の中にピットの面影を見ていたのかも知れない…。
「あの時、『ピット』の存在はなくなったけれど、確かにリーンの中に生きているのを知っているから。『キュイ』…リーンの一つ前の『キュイ』は、記憶はないのに『ピット』の時にマキノさんからもらった本を大事にしていた…」
もしかして机の側に置いてある本棚にあった、ボロボロになるくらい読まれていた植物の本の事だろうか…。
「あの頃の事を知っている者は、数少なくなってしまったけれど、僕は約束を守れている…はず…」
ヒナキがそう言うと、寄りかかっていた世界樹から子供の木霊がスッと姿を現し、ヒナキの頭をなでなでしてくる。
側で聞いていたのだろう…。
そしてリーンは思った。
ヒナキに懐いているなら、ヒナキからも時々、外に出てくるように言えないだろうか…。
「…外に出て来ないか?…ルークがブランコを作ってくれたんだ」
リーンがそう言うと、ヒナキも微笑んで話しかけた。
「リーンの番が、木霊や土霊達の為に遊具…遊び場を作ってくれたんだ。…今までに無いことだろ…?」
「…。」
子供の木霊はじっとヒナキを見ている。
「…会いに来るとは言ったけど、…一緒に遊ぼうって、言えばよかったな…」
…ヒナキは世界樹に会いに来ると、約束していたんだ…。
ただ、会って話をするだけ…だったのかも知れない…。
「…今からでも、遅くないよ。ルークが大きいブランコを作ってくれるって言ってたし、一緒に遊べるよ」
リーンがそう言うと、子供の木霊が、木から抜け出してきて、ヒナキの膝の上にちょこんと座り、ヒナキを見上げた。
ヒナキは驚いて目を丸くし、そして嬉しそうに微笑んだ。
「一緒に遊ぼう」
ヒナキは子供の木霊を抱えて、リーンの家の横にあるブランコに向かい、木霊を座らせた。
そこで遊んでいた木霊が遠巻きに見ている。
「ひもに掴まって…」
ヒナキがそう言って、ブランコの両脇のヒモに掴まったのを確認すると、ヒナキはゆっくりとブランコを動かした。
最初は怯えていた子供の木霊も、だんだんと慣れてきて、「うぉー。うゎー」と、声をあげている。
遠巻きに見ていた木霊達も、近付いてきて、手招きし始める。
ヒナキがブランコを止め、行っておいでと言うと、オズオズと不安そうにこちらを振り返りながら、木霊に付いていって、滑り台へと向かっていく。
ヒナキも後を付いていって、木霊が階段を登り、子供の木霊も登り始め、木霊が滑り台を滑り降りた。
それを真似して座るが、恐々と滑って行ってスピードが出ないでいると、後ろから外の木霊達が滑り降りてきて、途中で詰まっているのを楽しそうに笑って居る。
ズズッと少しづつ滑り降りてくるのを、ヒナキは笑いながら見ている。
下まで滑り降りると、後ろにいた木霊達が滑り台から降りて、また階段を上っていく。
子供の木霊が立ち上がってそれを見ていると、また別の木霊が手招きして、シーソーの方に向かい、子供の木霊がシーソーの片方に座ると、反対側に何人もの木霊と土霊が乗り込み、動かそうとするが動かないのがヒナキの笑いを誘って、笑い続けている。
リーンが子供の木霊の側に行って、
「少しジャンプしてあげて…」
そう言うと、座ったまま、ジャンプしてシーソーが動き、少し上に上がると降りてきて、驚いた表情をして戻ってきた。
「ジャンプ、ジャンプ」
リーンがそう言うと、再びジャンプして、反対側にのっていた木霊や土霊が、はしゃぎ出した。
そのうちに慣れたのか、子供の木霊も笑いながら遊び始めた。
「かわいいな…」
ヒナキがそう呟いて、微笑んでいた。
遊びに夢中になっている木霊達を横目に、リーンは気になっていることをヒナキに聞いてみた。
「あの子の名前は?」
「…名前で呼んでない…」
「…折角外に出てきたんだから、付けてあげれば?」
「…僕が付けて良いの?」
「…私が付けるより、ヒナキに名前を付けてもらった方が喜ぶと思うけど…」
リーンがそう言うと、ヒナキはしばらく考えて言った。
「…ユグ。世界樹の別名がユグドラシル…だったはずだから…」
「良いんじゃないか。…木霊の個性がこれだけ出ているのに、名前を付けてあげてないとは思わなかったけど…」
「…僕が名付けて良いのか、分からなかったから…」
ヒナキは苦笑いした。
宿り木のように名前が付けば、存在意識が孤立して、きっと中身も外見も成長するようになる。
…ヒナキ次第かも知れないけれど…。
そんな話をしている内に、ルークがブランコの材料を木霊達と持ってきて、製作し始めた。
遊んでいたユグは不思議そうに、ルークの作業を見ている。
そっか、人の手で作られる作業を見る、と言う経験も、あまり無いか…。
ルークは見られているのを気にせずに、黙々と作業して、木霊と土霊達に手伝ってもらって、ブランコを組み立てていく。
リーンはその作業をユグと一緒に見ながら、ルーク…かっこいいな…と思って頬を染めていた。
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