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森の聖域 2
記憶
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リーンがゆっくりと目を開けると、見慣れた木目の天井が見えた。
『森の聖域』の私の部屋…。
ゆっくりと指を動かし、感覚が戻ってくると、ココは現実世界なのだと理解する。
そしてルークに見送られ、世界樹に自ら入った事を思い出す。
…覚えている…。
…記憶が…有る…。
…忘れていない…。
リーンは思わず涙を溢した。
記憶を失くしてしまうと、不安で仕方なかった思いが、無くなったのだ。
ルークの事も…五人の子供達の事も…覚えている…。
リーンがゆっくりと身体を起こすと、扉が急に開き、ルークとヒナキが姿を現した。
ルークが青ざめた顔をして、恐る恐る聞いてくる。
「…リーン。…俺の事を…覚えているか…?」
「…覚えているよ。ルークの事も、五人の子供達の事も…」
リーンがそう言って微笑むと、ルークがギュッと抱きしめてきた。
「…良かった…」
ルークの温もりが身体にじわりと染み込んでくる。
リーンも感覚が戻ってきた腕を持ち上げ、ルークに触れる。
まだ『私』は、リーンでいられる…。
「そろそろ良いかな」
しばらくルークの温もりを堪能していると、ヒナキが声をかけてきた。
「リーンはどこまで覚えている?」
リーンはルークの腕の中から離れると、ヒナキの方を向いて答えた。
「…多分、全て…。記憶のどこかが、消えてしまっているかも知れないけれど、世界樹の中に入ったのを覚えている」
ヒナキもルークも驚いてリーンを見る。
「だったら、時間が戻ったのはリーンの髪の毛だけなのか…」
リーンはそう言われて、髪に手で触れてみて、肩に届くか届かないかの短さまで戻っている事に気が付く。
「本当だ…短くなってる…」
リーンはハッとして、服を捲り上げ、お腹の傷を確認する。
子供達を産んだとき、お腹を切って取り出した…。
傷口はルークが魔法で綺麗に治してくれたが、赤い線だけがうっすらと残っている。
それも二本…二回分…。
魔力を持っている時間まで戻っているなら、傷跡は一本のはず…。
「…残ってる…」
リーンは自分の目を疑った。
髪の毛だけが短くなっただけで、身体はもとのまま…。
「…魔力は戻っているのか?」
ルークが聞いてきたので、リーンは目を閉じた。
…木霊や土霊達が、近くにたくさん居るのが分かる…。
風霊が、窓をから家の中を覗いて、様子を伺っているのも分かる…。
「…どこまで戻っているか分からないが、木霊や土霊や風霊達を感じ取れる」
リーンは微笑んだ。
また、あの子達と一緒に過ごすことが出来る…。
ルークとヒナキが、ホッとため息を付いて微笑んだ。
「リーン、お腹空いてない?もうすぐ目覚めると思って、食事を準備してあるんだ」
「ああ、食べるよ。急にお腹が空いてきた…」
ホッとしたらお腹が空いてきた…。
リーンがそう言って笑うと、ヒナキは部屋を出てリビングに向かった。
そしてルークがリーンの身体を両腕で抱き上げる。
「ちょっとルーク!」
リーンは驚きと恥ずかしさで耳を赤くすると、ルークが微笑んだ。
「しばらく歩いていないんだ。力が入らないだろ…」
言われてみればそうだ。
まだ身体の筋肉が硬直している気がする。
世界樹の中では、状態的に仮死状態だったのかも知れない…。
リーンが素直にルークにもたれ掛かると、ルークは嬉しそうに微笑んで、リビングへと移動した。
『森の聖域』の私の部屋…。
ゆっくりと指を動かし、感覚が戻ってくると、ココは現実世界なのだと理解する。
そしてルークに見送られ、世界樹に自ら入った事を思い出す。
…覚えている…。
…記憶が…有る…。
…忘れていない…。
リーンは思わず涙を溢した。
記憶を失くしてしまうと、不安で仕方なかった思いが、無くなったのだ。
ルークの事も…五人の子供達の事も…覚えている…。
リーンがゆっくりと身体を起こすと、扉が急に開き、ルークとヒナキが姿を現した。
ルークが青ざめた顔をして、恐る恐る聞いてくる。
「…リーン。…俺の事を…覚えているか…?」
「…覚えているよ。ルークの事も、五人の子供達の事も…」
リーンがそう言って微笑むと、ルークがギュッと抱きしめてきた。
「…良かった…」
ルークの温もりが身体にじわりと染み込んでくる。
リーンも感覚が戻ってきた腕を持ち上げ、ルークに触れる。
まだ『私』は、リーンでいられる…。
「そろそろ良いかな」
しばらくルークの温もりを堪能していると、ヒナキが声をかけてきた。
「リーンはどこまで覚えている?」
リーンはルークの腕の中から離れると、ヒナキの方を向いて答えた。
「…多分、全て…。記憶のどこかが、消えてしまっているかも知れないけれど、世界樹の中に入ったのを覚えている」
ヒナキもルークも驚いてリーンを見る。
「だったら、時間が戻ったのはリーンの髪の毛だけなのか…」
リーンはそう言われて、髪に手で触れてみて、肩に届くか届かないかの短さまで戻っている事に気が付く。
「本当だ…短くなってる…」
リーンはハッとして、服を捲り上げ、お腹の傷を確認する。
子供達を産んだとき、お腹を切って取り出した…。
傷口はルークが魔法で綺麗に治してくれたが、赤い線だけがうっすらと残っている。
それも二本…二回分…。
魔力を持っている時間まで戻っているなら、傷跡は一本のはず…。
「…残ってる…」
リーンは自分の目を疑った。
髪の毛だけが短くなっただけで、身体はもとのまま…。
「…魔力は戻っているのか?」
ルークが聞いてきたので、リーンは目を閉じた。
…木霊や土霊達が、近くにたくさん居るのが分かる…。
風霊が、窓をから家の中を覗いて、様子を伺っているのも分かる…。
「…どこまで戻っているか分からないが、木霊や土霊や風霊達を感じ取れる」
リーンは微笑んだ。
また、あの子達と一緒に過ごすことが出来る…。
ルークとヒナキが、ホッとため息を付いて微笑んだ。
「リーン、お腹空いてない?もうすぐ目覚めると思って、食事を準備してあるんだ」
「ああ、食べるよ。急にお腹が空いてきた…」
ホッとしたらお腹が空いてきた…。
リーンがそう言って笑うと、ヒナキは部屋を出てリビングに向かった。
そしてルークがリーンの身体を両腕で抱き上げる。
「ちょっとルーク!」
リーンは驚きと恥ずかしさで耳を赤くすると、ルークが微笑んだ。
「しばらく歩いていないんだ。力が入らないだろ…」
言われてみればそうだ。
まだ身体の筋肉が硬直している気がする。
世界樹の中では、状態的に仮死状態だったのかも知れない…。
リーンが素直にルークにもたれ掛かると、ルークは嬉しそうに微笑んで、リビングへと移動した。
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