神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
347 / 462
森の聖域 2

観察日記 4

しおりを挟む
 観察二十五日目。
 リーンの髪飾り、五個目が消えた。
 髪の毛の長さも、だいぶ短くなった。
 予定では、折り返し地点だ。
 ただ、リーンの魔力の戻り具合と、世界樹がリーンを離してくれるかの問題になるので、多少前後はするだろう…。
 今日は木霊達と果樹園に行って、果物を収穫する予定だ。
 リーンが眠りについてから、果実の成長が遅くなったらしく、定期的に収穫に来ていたクルーラの獣人達に、木霊が収穫に呼びに来たら連絡して欲しいと言われていて、取りあえずヒナキに連絡を入れた。
 少し遅れて獣人達が来るのだろう。
 ルークは木霊に誘われるまま、果樹園の中へ入っていった。
 果樹園の中は甘い匂いでいっぱいになっていた。
 見たことの無い果実も有り、ココは季節に関係なく実るのだと思いながら木霊に付いていくと、果樹園の中の、家から一番遠い場所に有る木まで連れてこられた。
 その木はリーンが眠る世界樹に似ているが、何も果実は実っていない…。
 木霊達が何人も垂直に木に登り始め、木のは葉がガサガサと音を立てているので登っているのだろうが、姿は見えない。
 しばらくすると木霊二人が、果実のついた枝を肩に乗せて、二人がかりで担いで降りてきた。
「…。」
 ルークはそれを見て、目を丸くして驚いた。
 …金色の…果実…。
 形はリンゴに似ているが、きっと違うものだろう…。
 木霊は木から降りてくると、ルークの前まで来て差し出してくる。
 ルークはしゃがんで木霊から、枝つきの果実を受け取ると、木霊は姿を消した。
「…これをどうしろと…」
 ルークが独り言を言うと、足音と人の声がし始め、獣人達がやって来て、籠を手に果実の収穫を始めた。
 そしてヒナキがルークに気が付いて、近付いてくる。
 木霊達が姿を消したのは、獣人やヒナキ達が近くに来たからだろう。
「ルーク?どうかしたのか?」
 ルークは立ち上がり、無言でヒナキに金色の果実を見せると、ヒナキは目を丸くして口をパクパクさせて驚いていた。
 …やっぱり驚くよな…。
「ルーク。それを『物質保管庫』にしまえ」
 ヒナキは落ち着きを取り戻すと、こっそりとルークに言う。
 ヒナキも知っているのだな。
 リーンが使っていた『物質保管庫』を、俺に開けられる事を…。
 ルークは頷いて『物質保管庫』の空きスペースの引出しに入れると、ヒナキがホッと息をついた。
「…なんか、ヤバイモノなのか?」
「…後で説明する」
 ヒナキはそう言って、一緒に来た獣人達と果実の収穫を始めた。
 まあ俺も収穫の手伝いに来たんだしな…。
 ルークも籠を手に取り、ヒナキ達と一緒に収穫し始めた。

 昼の休憩を挟んで午後からも少し収穫すると、獣人達はクルーラへと帰っていった。
 この後、クルーラの各家に配り歩くそうだ。
 ルークもテーブルいっぱいに、いろんな果実をもらい、ヒナキに果実の説明と、どれから食べた方が良いのかを聞いた。
 そして椅子に座り、ルークはヒナキと向き合って本題に入った。
「あれは、何なんだ?」
「…長寿の果実だ。…めったに実をつけない…」
 ヒナキが真剣な眼差しで言う。
「…木霊達によっぽど気に入られたんだな…」
「…。」
 長寿の果実…。
 長生き出来ると言う、伝説になっている幻の果実か?!
 ルークは頭を抱えた。
 そんな幻の果実をもらってもな…。
「…ルーク。それを食べれば、どれだけだか分からないが、リーンと一緒の時間を過ごす事が出来るぞ」
「…。」
 リーンは長い時間を生きている。
 何度も世界樹に戻り、時間を巻き戻すことによって記憶を失くし、新しい自分になって、再び生きている…。
 リーンと生きるためには長寿の果実は魅力的がだ、それと同時に人族ではなくなってしまう。
 子供達と違う時間を生きる者になってしまう…。
「少し考えさせてくれ…」
 ルークは頭を抱えて苦笑いした。
 ただ、リーンの眠りを待っているだけでは、終わらないものだな…。
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...