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森の聖域 2
観察日記 1
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リーンが世界樹の中に眠りについた。
ルークはリーンの帰りを待ちなかがら、ヒナキに言われて観察したことを…気が付いた事を、ココでの出来事を書き込むようになった。
観察一日目。
リーンが眠りについた。
ヒイロとヒナキが食事を持ってきてくれたので、食べ終わると、リーンに教えてもらった書斎に入り、一冊の本を手にして書斎を出ようとしたら、扉が勝手に閉まって、本を持ち出せないことを知った。
姿は見せてくれないが、誰かいるのだろう。
「隣の世界樹の場所までだ。リーンの側にいたいから、そこで読むことを許可して欲しいのだが」
ルークがそう言うと、閉まった扉が再び開いた。
許可してもらえたみたいだ。
「ありがとう」
ルークはそう言って、本をもって、リーンの姿が見える場所に座り、本を読み出した。
リーンの集めた本の中にあった、リーンの手書きの覚え書き。
『山の奥で雨が大量に降ったときは、町では降っていなくても、川に近付かないようにする事。
時間差で、町に水が流れてくる事が多い。』
そして、過去の事例がいくつも書かれていた。
…マメだな…。
ルークはそう思いながら、リーンが今までに書き留めていたモノを読み始めた。
いつの間にか、世界樹の側で眠っていたらしく、毛布がかけてあった。
ヒイロかヒナキが…?
一瞬そう思ったが、風霊達がこっそりとこちらを覗いていたので、あの子達がかけてくれたのだと思った。
「ありがとう」
ルークがそう声をかけると、スッと消えてどこかへ行ってしまった。
…まだ、警戒されているみたいだ。
夜はリーンのベッドで眠った。
グシャグシャに乱れていたベッドのシーツは新しいものに変えられていて、申し訳ないな…と、思いながら眠りについた。
観察二日目。
朝食はテーブルの上に果物が置いてあったのを頂いて、昨日の本をもって世界樹のリーンの見える場所に向かった。
そっと覗くが、状態は変わらないまま…。
ルークは世界樹に寄りかかり、昨日の続きを読み出した。
柔らかな風がルークの髪の毛を撫でる。
しばらくすると、ヒナキが食事を持って来てくれた。
果物だけでは物足りないので、ありがたい。
今日はヒナキの分も入っているらしく、その場に座って食べ始めた。
細長いパンに切り込みを入れ、野菜や肉を挟み込んだ軽食が、たくさん入っていた。
ルークが気になることをヒナキに質問すると、答えられる範囲で答えてくれた。
『森の聖域』の事、ココに住む水霊や風霊の事、部屋を掃除してくれる見えないモノの事…。
ヒナキは苦笑いしながら教えてくれた。
『森の聖域』は涌き出てくる魔素が外部に多く流れ込まないように、調整する役目を持つ森で、もともと森の魔素が濃く、この世界樹が中心となって木霊達が産まれた。
そう言って側に有る世界樹を見上げる。
…リーンが…ずっと昔のリーンになる前の『彼』の波長が、世界樹と同調したらしく、動けない自分の変わりに『彼』が目となり、世界を見ることになった。
『彼』の産まれ方も独特だったから…。
ヒナキはそう言う。
いつからだったか…リーンは思い出したこと、『記憶の図書館』で見たことを記録するようになった。
何度も繰り返し見たりする事も有るので、同じようなことが書かれていることも有るそうだ。
リーンの本棚に有るから、読んでみると良いよ。
そう言ってヒナキは微笑んだ。
ヒナキが長年調べて、『彼』らから話を聞いて、まとめると、そんな感じだそうだ。
ヒナキは昨日の食事が入っていた籠を持って、クルーラに帰っていった。
…て、言うか、ヒナキはいったい何歳なんだ?
ルークに疑問を残して…。
観察三日目。
優しい雨が降ってきた。
ルークは世界樹のリーンの様子を覗きに行って、変わりが無いことを確認すると部屋に戻り、書斎へと入っていった。
奥に入りすぎないように、リーンに注意されていたので、ソファーが見えるところまでで、一つの本棚の本のタイトルを読んでいった。
この辺の本棚は植物に関しての本ばかりだ。
針葉樹、落葉樹、果実のなる木、花が咲く木、食用に使える木、薬草、草花…それぞれに細かく使い方、手入れのしかたなどが書かれていた。
…王都の…ジーンに買った図鑑より詳しいぞ…。
…持ち出し禁止だから、これを写させてくれると有りがたいが、これだけの量を写そうと思ったら、何年かかるだろう…。
それだけの量の本がココには有る…。
それも植物に関してだ…。
チラリと他の本棚を見ると、石の事…宝石、魔法石等の表紙が見える…。
…新しいものも、古そうな本も…。
ルークはため息をついて、食用になる木の本を選び、ソファーに座って読み出した。
観察四日目。
雨が上がった。
外はほんのりと靄がかかり、空気が澄んでいた。
『森の聖域』の魔素に慣れたのか、朝起きても頭痛はしなくなった。
ルークは世界樹のリーンの元に向かって、リーンの様子を見ると、ほんの少し、髪の毛が短くなっているような気がした。
リーンに付けた髪飾りはまだ、形を維持している…。
少し戻りだしたのか…?
ルークは期待と不安に揺れながら、リーンを見ていた。
すると土が急に盛り上がり、手のひらサイズの人の形をした小さな土霊が姿を表し、何もない丘の方を指差してきた。
何かあったのか?
ルークは立ち上がり、土霊に呼ばれるまま、後を付いていった。
途中、風霊が姿を表し同じ方向に向かって飛んで行く…。
呼ばれた先でルークが見たものは、浅瀬の川に、流れてきた流木が引っ掛かって、水の流れをせき止め、丘に流れ込んで、辺り一面を水浸しにしていた。
これをどかして欲しいのか…。
ルークは魔法を使って流木を浮かせ、水の浸かっていない地面に置いた。
塞き止められていた水が正常に流れだし、ホッとため息を付くと、土霊が再び川の上流を指差した。
…まだ、何ヵ所も有るのか…。
ルークは土霊に案内されて、いくつもの流木を川から取り出し、積み上げた。
昨日の雨で、地盤が緩くなっているのか?
それとも何か理由が有るのか…?
五つ目の流木の元に向かっていると、ピチピチと小さな魚が何匹も、地上で跳ねているのが見えた。
これって、川に返した方が良いのか?
土霊の方を見ると、何を言っているのか分からないが、口をパクパクさせる。
「…食べて良いって事か?」
ルークがそう聞くと、土霊が頷いたので、遠慮無くいただくことにして、氷魔法で魚を瞬時に凍らせた。
そして、流木を川から取り出して地上に置くと、土霊は姿を消した。
…魚はお礼…って事か?
ルークは魚を持って、もと来た道を戻り、世界樹の有るリーンの家に戻った。
せっかくなので、キッチンで魚を丸焼きにして、食べていると、ヒナキがやって来て驚いていた。
ルークはさっきの出来事を話すと、ヒナキは微笑んで言った。
「少しは認めてくれたんだよ。そうやって、ここの子達と仲良くしてあげて」
「ああ。わかった」
ルークはそう答えた。
観察五日目。
リーンに付けた髪飾りの一つが消えた。
昨日、髪が短くなった気がしたのは、気のせいではなかった。
ヒナキが、一つ目が一年だと言っていたから、五日で一年なら、十年だと単純計算にしても五十日。
約二ヶ月…。
今まで眠るリーンを待っていた時間が長いから、すごく短く感じる。
…もう少し…もう少し…。
ルークは待ち続けた。
ルークはリーンの帰りを待ちなかがら、ヒナキに言われて観察したことを…気が付いた事を、ココでの出来事を書き込むようになった。
観察一日目。
リーンが眠りについた。
ヒイロとヒナキが食事を持ってきてくれたので、食べ終わると、リーンに教えてもらった書斎に入り、一冊の本を手にして書斎を出ようとしたら、扉が勝手に閉まって、本を持ち出せないことを知った。
姿は見せてくれないが、誰かいるのだろう。
「隣の世界樹の場所までだ。リーンの側にいたいから、そこで読むことを許可して欲しいのだが」
ルークがそう言うと、閉まった扉が再び開いた。
許可してもらえたみたいだ。
「ありがとう」
ルークはそう言って、本をもって、リーンの姿が見える場所に座り、本を読み出した。
リーンの集めた本の中にあった、リーンの手書きの覚え書き。
『山の奥で雨が大量に降ったときは、町では降っていなくても、川に近付かないようにする事。
時間差で、町に水が流れてくる事が多い。』
そして、過去の事例がいくつも書かれていた。
…マメだな…。
ルークはそう思いながら、リーンが今までに書き留めていたモノを読み始めた。
いつの間にか、世界樹の側で眠っていたらしく、毛布がかけてあった。
ヒイロかヒナキが…?
一瞬そう思ったが、風霊達がこっそりとこちらを覗いていたので、あの子達がかけてくれたのだと思った。
「ありがとう」
ルークがそう声をかけると、スッと消えてどこかへ行ってしまった。
…まだ、警戒されているみたいだ。
夜はリーンのベッドで眠った。
グシャグシャに乱れていたベッドのシーツは新しいものに変えられていて、申し訳ないな…と、思いながら眠りについた。
観察二日目。
朝食はテーブルの上に果物が置いてあったのを頂いて、昨日の本をもって世界樹のリーンの見える場所に向かった。
そっと覗くが、状態は変わらないまま…。
ルークは世界樹に寄りかかり、昨日の続きを読み出した。
柔らかな風がルークの髪の毛を撫でる。
しばらくすると、ヒナキが食事を持って来てくれた。
果物だけでは物足りないので、ありがたい。
今日はヒナキの分も入っているらしく、その場に座って食べ始めた。
細長いパンに切り込みを入れ、野菜や肉を挟み込んだ軽食が、たくさん入っていた。
ルークが気になることをヒナキに質問すると、答えられる範囲で答えてくれた。
『森の聖域』の事、ココに住む水霊や風霊の事、部屋を掃除してくれる見えないモノの事…。
ヒナキは苦笑いしながら教えてくれた。
『森の聖域』は涌き出てくる魔素が外部に多く流れ込まないように、調整する役目を持つ森で、もともと森の魔素が濃く、この世界樹が中心となって木霊達が産まれた。
そう言って側に有る世界樹を見上げる。
…リーンが…ずっと昔のリーンになる前の『彼』の波長が、世界樹と同調したらしく、動けない自分の変わりに『彼』が目となり、世界を見ることになった。
『彼』の産まれ方も独特だったから…。
ヒナキはそう言う。
いつからだったか…リーンは思い出したこと、『記憶の図書館』で見たことを記録するようになった。
何度も繰り返し見たりする事も有るので、同じようなことが書かれていることも有るそうだ。
リーンの本棚に有るから、読んでみると良いよ。
そう言ってヒナキは微笑んだ。
ヒナキが長年調べて、『彼』らから話を聞いて、まとめると、そんな感じだそうだ。
ヒナキは昨日の食事が入っていた籠を持って、クルーラに帰っていった。
…て、言うか、ヒナキはいったい何歳なんだ?
ルークに疑問を残して…。
観察三日目。
優しい雨が降ってきた。
ルークは世界樹のリーンの様子を覗きに行って、変わりが無いことを確認すると部屋に戻り、書斎へと入っていった。
奥に入りすぎないように、リーンに注意されていたので、ソファーが見えるところまでで、一つの本棚の本のタイトルを読んでいった。
この辺の本棚は植物に関しての本ばかりだ。
針葉樹、落葉樹、果実のなる木、花が咲く木、食用に使える木、薬草、草花…それぞれに細かく使い方、手入れのしかたなどが書かれていた。
…王都の…ジーンに買った図鑑より詳しいぞ…。
…持ち出し禁止だから、これを写させてくれると有りがたいが、これだけの量を写そうと思ったら、何年かかるだろう…。
それだけの量の本がココには有る…。
それも植物に関してだ…。
チラリと他の本棚を見ると、石の事…宝石、魔法石等の表紙が見える…。
…新しいものも、古そうな本も…。
ルークはため息をついて、食用になる木の本を選び、ソファーに座って読み出した。
観察四日目。
雨が上がった。
外はほんのりと靄がかかり、空気が澄んでいた。
『森の聖域』の魔素に慣れたのか、朝起きても頭痛はしなくなった。
ルークは世界樹のリーンの元に向かって、リーンの様子を見ると、ほんの少し、髪の毛が短くなっているような気がした。
リーンに付けた髪飾りはまだ、形を維持している…。
少し戻りだしたのか…?
ルークは期待と不安に揺れながら、リーンを見ていた。
すると土が急に盛り上がり、手のひらサイズの人の形をした小さな土霊が姿を表し、何もない丘の方を指差してきた。
何かあったのか?
ルークは立ち上がり、土霊に呼ばれるまま、後を付いていった。
途中、風霊が姿を表し同じ方向に向かって飛んで行く…。
呼ばれた先でルークが見たものは、浅瀬の川に、流れてきた流木が引っ掛かって、水の流れをせき止め、丘に流れ込んで、辺り一面を水浸しにしていた。
これをどかして欲しいのか…。
ルークは魔法を使って流木を浮かせ、水の浸かっていない地面に置いた。
塞き止められていた水が正常に流れだし、ホッとため息を付くと、土霊が再び川の上流を指差した。
…まだ、何ヵ所も有るのか…。
ルークは土霊に案内されて、いくつもの流木を川から取り出し、積み上げた。
昨日の雨で、地盤が緩くなっているのか?
それとも何か理由が有るのか…?
五つ目の流木の元に向かっていると、ピチピチと小さな魚が何匹も、地上で跳ねているのが見えた。
これって、川に返した方が良いのか?
土霊の方を見ると、何を言っているのか分からないが、口をパクパクさせる。
「…食べて良いって事か?」
ルークがそう聞くと、土霊が頷いたので、遠慮無くいただくことにして、氷魔法で魚を瞬時に凍らせた。
そして、流木を川から取り出して地上に置くと、土霊は姿を消した。
…魚はお礼…って事か?
ルークは魚を持って、もと来た道を戻り、世界樹の有るリーンの家に戻った。
せっかくなので、キッチンで魚を丸焼きにして、食べていると、ヒナキがやって来て驚いていた。
ルークはさっきの出来事を話すと、ヒナキは微笑んで言った。
「少しは認めてくれたんだよ。そうやって、ここの子達と仲良くしてあげて」
「ああ。わかった」
ルークはそう答えた。
観察五日目。
リーンに付けた髪飾りの一つが消えた。
昨日、髪が短くなった気がしたのは、気のせいではなかった。
ヒナキが、一つ目が一年だと言っていたから、五日で一年なら、十年だと単純計算にしても五十日。
約二ヶ月…。
今まで眠るリーンを待っていた時間が長いから、すごく短く感じる。
…もう少し…もう少し…。
ルークは待ち続けた。
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