神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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森の聖域 2

しばしの別れ 1

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 リーンは目覚めると、目の前にいるルークの温もりを感じて微睡んでいた。
 しばらくして視線を感じ、辺りを見回して、ココが『森の聖域』の家なのだと思いだし、見ているのが風霊達だと気が付いて、ため息をついた。
 …そうだった。
 ココは常に風霊達が行き来しているので、見られるのが当たり前の場所だった事を思い出した。
 カザナではそう言った視線をほとんど感じずに生活していたので、カンが鈍っているのかもしれない。
 リーンは身体を起こし、隣に有るシャワールームに向かった。
 水は水霊達が、リーンが戻ってきた時点で、屋根に有る貯水槽に水を入れてくれるので、心配しなくても済む。
 どうしても足りなければ、魔法で川の水を運び入れるだけなのだが、今のリーンには出来ない。
 後でルークに教えておかなくては…。
 
 リーンがシャワー室から戻ってくると、ルークが身体を起こしてぼんやりとしていた。
 きっと魔素が濃くて、いつもみたいにスッキリと起きれないのだろう。
 リーンはルークに軽く口付けして微笑んだ。
「おはよう」
「…おはよう…」
 ルークは顔をしかめている。
「…もしかして、頭痛がするのか?」
「…ああ、少しな…」
「シャワーを浴びてくると、少しはスッキリするかな…」
「…そうするよ」
 ルークは身体を起こしてシャワールームに向かった。
 
 リーンが着替えて、リビングに向かうと、テーブルの上にいくつもの果物が置かれていた。
 木霊や風霊達が運んで来てくれたモノだ。
 リーンはキッチンで果物の皮をむき、食べやすいサイズにカットして器に入れた。
 ココでは果物や野菜しかないので、肉や魚を食べるときはクルーラの食堂に行って、食事をするのが一番良いだろう。
 もしくは持ち運び出来るようにお弁当にしてもらって、ここで食べるか…。
 …ルークの心配ばかりしている…。
 リーンは密かに笑った。
 …この思いも、消えてしまうのだろうか…。
 リーンは耳飾りに触れ、少しの不安と魔法の期待を胸にした。
 ルークが着替えてリビングに来ると椅子に座り、果物を食べなから、ココでの生活の事について話し始めた。
 使用する水の事、食べ物の事。
 ココにいる水霊や風霊達の事…。
 しばらくは警戒して近づいて来ないだろうが、何かお願いしてきたら、手助けして欲しい事など…。
 どうしても困ったときは、最終的にヒナキに相談するのが一番だから…。
 そう伝えた。

 
 ヒイロとヒナキが再び、リーンの家にやって来て、ヒナキがリーンの髪に髪飾りを付けながら、ルークに説明を付け加えた。
 時間の経過と共に、リーンに付けた髪飾りの時間も戻るだろう事を説明して。
 そしてルークは指に嵌めていた指輪を引き抜いた。
 その指輪に見覚えがある。
 以前、人魚の湖で竜人のフールシアにもらった魔法石の指輪…。
 魔力が大きいので二つに分けて、一つはルークが通行書として指に嵌め、一つは『物質保管庫』に仕舞っておいたモノ…。
 ルークは無言でその指輪をリーンの親指に嵌め、ルークはリーンから預かった『物質保管庫』を開き、もう一つの指輪を取り戻し嵌め直す。
「俺とはこの指輪で繋がっている。忘れても、この指輪の事はリーンが覚えているはず。魔力が満ちて、出れるなら合図しろ!」
「ルーク…」
 リーンはルークに口付ける。
 ヒナキやヒイロがいようとかまわない。
 ルークはリーンの両耳…耳飾りに触れ、魔力を込める。
 暖かくて、優しい魔力が流れ込んでくる…。
「必ず戻ってこい」
「うん」
 リーンは微笑むと、家の隣に有る世界樹のもとに向かい、世界樹に寄りかかる。
 すると、木の根が伸びてきてリーンを包み込み、木の中へ沈んでいく…。
 一緒に世界樹の元に来た、ヒイロとヒナキは黙ったままリーンを見ている。
 リーンの視線はルークと交わったまま、離れない…。
「…つっ…リーン…」
 見届けるものとして、一緒にいるヒイロが、一歩踏み出そうとするルークを止めたのが見えた。
 いつも待たせてばかりで、ごめんね…。
 それでも、ルークが待っていてくれると思うから怖くない…。
 ルーク…好き…。
 リーンはその言葉を胸に、目を閉じて眠りについた。

 
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