神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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森の聖域 2

ヒイロの思い

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 俺にとってもリーンは、少年時代から一緒に過ごした大切な弟分で家族だ。
 魔力を取り戻すと同時に、記憶を失くすのは悲しいものがある。
 だが魔力を持っていた時だと、十年分は戻らなくてはいけない。
 俺達、獣人にとって十年は短い時間だが、人族であるルーク達にとっては長い時間だ。
 ましてや、子供達の成長もある。
 ルークと相談して、リーンが眠っている間、ルークは『森の聖域』にとどまることにした。
 クルーラのヒナキとも、その事は話し合って、許可はもらっている。
 リーンが眠りながら後退していくのを見守り、途中で引きずり出す予定だ。
 うまく行くかな…。
 不安は残る。
 どれだけ時間が戻っているのか確認するため、時間の経過を示すモノを準備した。
 製作してから一年目、二年目、三年目となる髪飾りを付け、後退する時間を計り、『始まりの宿り木』の後、目覚めてから伸ばし始めたリーンの髪の毛の長さも、時間の経過を示す計りとすることにした。
 俺達の思いと、世界樹の時間が違えば意味をなさないが、それでもすがる思いで、思い付く限りの事を予防策としてするしかなかった。
 それがうまく行けば、世界樹を長年見てきたヒナキにとって、新しい発見と今後の事につながると言っていた。
 明日の朝、リーンは世界樹の中に眠る…。
 どれだけの時間で、どれだけ後退するのかは判明していない。
 ヒナキは、それには興味津々で、ルークが滞在する許可をしてくれたのも、観察して報告して欲しいからだ。
 ヒナキの好奇心を満たし、魔力を取り戻したいリーンと、見守るルークの思いが一致したから出来ること…。
 リーンは、魔力が戻ったら森へ戻るのだろう…。
 今のままでも幸せだと思うが、森の管理者として森を守る生活をしていたリーンにとって、森が気になるのは仕方ない…。
 …帰る場所が有るから、森に行くと言うのかもしれないが…。
 今はただ、出来るだけ記憶を失くさないことを祈るしかない…。


 リーンとルークを『森の聖域』に置いて、クルーラに戻ってきたが、明日の朝にはもう一度行って、リーンが眠るところを確認しなくてはいけない。
 グオルクの親父にも報告しなくてはいけないからだ。
 …家族同然に暮らしてきたリーンの事を心配しているからだ。
 戻ってきたヒナキは家に入り、明日リーンに付ける髪飾りを取り出して、最終確認を行っている。
 あれにもいくつもの魔法をかけてあるらしい…。
 今の俺に出来ることはない。
 ヒイロはクルーラ唯一の宿に入り食事をして、ぐったりとベッドに横になった。
 朝から大きな魔法を使って、疲れているのも有るのだろう。 
 ココは魔素が充満しているから、魔力的には問題ないが、お腹は空く。
 そう言えば、食べ物を持って行かなかったな…。
 …でも、あの子達がいれば、用意してくれるか…。
 『森の聖域』の風霊達が果実を運んでくれる。
 それだけでは、足りないだろうが…。
 リーンが眠ると、『森の聖域』の果物や薬草の収穫量が一気に減る。
 リーンの回復に『森の聖域』一帯が魔力を注ぎ込むからだ。
 あらかじめ伝えてあったので、クルーラの住民の収穫は終わった。
 しばらくの間、『森の聖域』は静かになる…。
 ヒイロはそんなことを思いながら、疲れもあって目蓋が降り眠りについた。


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