神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
337 / 462
森の聖域 2

クルーラ 3

しおりを挟む
 ヒイロが蓋を開けると、そこには金色の耳飾りが、二つ並んでいた。
「これは…」
 デザインこそ違うが、『始まりの宿り木』の時に、ソフィアの魔法で砕け散った耳飾りを思い出す。
「『始まりの宿り木』の時に、失くなっただろう。…身に付けるものとしては、これが一番馴染むかと思ってな…」
 ヒイロがそう言うと、ヒナキが苦笑いして言う。
「この大きさに、どれだけの時間と、どれだけの魔法石を使って、どれだけ魔法を詰め込んだと思う!作り上げるのに二年はかかっているんだぞ!」
「だから、ありがとうって」
 ヒイロは苦笑いして言う。
 話の内容に置いて行かれてしまったリーンは聞く。
「これが、記憶を無くさないかもしれない魔法道具?」
「そうだ。後は魔力を注ぎ込めば起動する」
「…そのためにルークがいる。リーンに馴染んだつがいの魔力の方が良いだろうと、思ってな」
「…それは、譲りたくないな」
 ルークは微笑んでそう言う。
「…リーンのつがい?」
 ヒナキがキョトンとしてルークを見る。
「そうだ。子供もいる」
「…リーンが…子供を…産んだ…?」
 ヒナキの目がキラキラと輝き出す。
 何か見つけたかのように…。
「…今までの…方々に、そんな事は無かった…。子供の状態を見てみたいな。どの影響を受けているのか…リーンのような能力を備えているのか、成長速度と、魔力と…」
「はい。ストップ。ヒナキが気になるのも分からないでは無いが、耳飾りの説明をしてくれ」
 ヒイロがそう言って、話の続きを促すと、ヒナキは苦笑いして、椅子に座り話し出す。
「『森の聖域』のリーンが眠る世界樹の中は、時間が後退していると思う。なので、身体は後退しても記憶だけは後退しないように、魔法をかける。両耳に付けることで、それを促せると思うのだが、憶測でしかない」
「…時間が後退か…」
 ルークがそう呟くと、
「そういえば、親父が昔、眠っているときは大人の身体だったのに、外に出てきたら少年の姿だったと言っていた」
 ヒイロがそう話す。
「時間が戻った分だけ、記憶を無くすと言うことか?」
「ハッキリはわからないが、その可能性はある」
 ヒナキが過去の『私』知っているから、そう感じるのだろう…。
「…記憶は、『記憶の図書館』に吸収されているのかも…」
 『記憶の図書館』には過去の『私』の記憶が詰まっていた。
 だから忘れても、記録としてあそこに残る…。
 ただの記録になってしまうから、自分の体験したこととは思えなくなってしまう…。
「…耳飾りの魔法が効かなければ、そこから早く引き出せば、すべての記憶を無くさない…そう言うことだろ」
 ルークがそう言うと、ヒナキは難しそうな顔をして言う。
「そうなる…。だけど、リーンの魔力を取り戻すには、魔力を持っていた頃にまで後退させなければいけない」
「…つまり…『始まりの宿り木』の頃まで…」
「…。」
 それは約十年くらい前まで戻ると言うこと…。
 そしてそれは、キースとミーナとニーナを産む前に、戻ると言うこと…。
 あの子達の事を忘れると言うこと…。
「記録は有るんだ。記憶を無くしても、身体が覚えている。もう一度、記憶を乗り越えて覚えていけば良い…」
 ルークがそう言って微笑む。
 無くしても、記録を見て、もう一度、自分のモノにすれば良いと…。
「子供達も協力してくれるはずだ」
 ルークは確信して言う。
 そうだ…。
 それだけの家族の絆を作ってきた…。
「耳飾りの魔法が少しでも効いていれば、そこまで無くさないはず…」
 ヒナキはそう言って笑う。
「ありったけの知識と魔法を詰め込んだんだ。全く効いていなかったら泣くよ…」
 四人は笑いあった。
 難しく考えないで、少し時間が戻り、魔力を取り戻す事を願おう…。
 そして、笑顔でみんなの前に帰ることを誓おう…。

 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

処理中です...