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森の聖域 2
クルーラ 3
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ヒイロが蓋を開けると、そこには金色の耳飾りが、二つ並んでいた。
「これは…」
デザインこそ違うが、『始まりの宿り木』の時に、ソフィアの魔法で砕け散った耳飾りを思い出す。
「『始まりの宿り木』の時に、失くなっただろう。…身に付けるものとしては、これが一番馴染むかと思ってな…」
ヒイロがそう言うと、ヒナキが苦笑いして言う。
「この大きさに、どれだけの時間と、どれだけの魔法石を使って、どれだけ魔法を詰め込んだと思う!作り上げるのに二年はかかっているんだぞ!」
「だから、ありがとうって」
ヒイロは苦笑いして言う。
話の内容に置いて行かれてしまったリーンは聞く。
「これが、記憶を無くさないかもしれない魔法道具?」
「そうだ。後は魔力を注ぎ込めば起動する」
「…そのためにルークがいる。リーンに馴染んだ番の魔力の方が良いだろうと、思ってな」
「…それは、譲りたくないな」
ルークは微笑んでそう言う。
「…リーンの番?」
ヒナキがキョトンとしてルークを見る。
「そうだ。子供もいる」
「…リーンが…子供を…産んだ…?」
ヒナキの目がキラキラと輝き出す。
何か見つけたかのように…。
「…今までの…方々に、そんな事は無かった…。子供の状態を見てみたいな。どの影響を受けているのか…リーンのような能力を備えているのか、成長速度と、魔力と…」
「はい。ストップ。ヒナキが気になるのも分からないでは無いが、耳飾りの説明をしてくれ」
ヒイロがそう言って、話の続きを促すと、ヒナキは苦笑いして、椅子に座り話し出す。
「『森の聖域』のリーンが眠る世界樹の中は、時間が後退していると思う。なので、身体は後退しても記憶だけは後退しないように、魔法をかける。両耳に付けることで、それを促せると思うのだが、憶測でしかない」
「…時間が後退か…」
ルークがそう呟くと、
「そういえば、親父が昔、眠っているときは大人の身体だったのに、外に出てきたら少年の姿だったと言っていた」
ヒイロがそう話す。
「時間が戻った分だけ、記憶を無くすと言うことか?」
「ハッキリはわからないが、その可能性はある」
ヒナキが過去の『私』知っているから、そう感じるのだろう…。
「…記憶は、『記憶の図書館』に吸収されているのかも…」
『記憶の図書館』には過去の『私』の記憶が詰まっていた。
だから忘れても、記録としてあそこに残る…。
ただの記録になってしまうから、自分の体験したこととは思えなくなってしまう…。
「…耳飾りの魔法が効かなければ、そこから早く引き出せば、すべての記憶を無くさない…そう言うことだろ」
ルークがそう言うと、ヒナキは難しそうな顔をして言う。
「そうなる…。だけど、リーンの魔力を取り戻すには、魔力を持っていた頃にまで後退させなければいけない」
「…つまり…『始まりの宿り木』の頃まで…」
「…。」
それは約十年くらい前まで戻ると言うこと…。
そしてそれは、キースとミーナとニーナを産む前に、戻ると言うこと…。
あの子達の事を忘れると言うこと…。
「記録は有るんだ。記憶を無くしても、身体が覚えている。もう一度、記憶を乗り越えて覚えていけば良い…」
ルークがそう言って微笑む。
無くしても、記録を見て、もう一度、自分のモノにすれば良いと…。
「子供達も協力してくれるはずだ」
ルークは確信して言う。
そうだ…。
それだけの家族の絆を作ってきた…。
「耳飾りの魔法が少しでも効いていれば、そこまで無くさないはず…」
ヒナキはそう言って笑う。
「ありったけの知識と魔法を詰め込んだんだ。全く効いていなかったら泣くよ…」
四人は笑いあった。
難しく考えないで、少し時間が戻り、魔力を取り戻す事を願おう…。
そして、笑顔でみんなの前に帰ることを誓おう…。
「これは…」
デザインこそ違うが、『始まりの宿り木』の時に、ソフィアの魔法で砕け散った耳飾りを思い出す。
「『始まりの宿り木』の時に、失くなっただろう。…身に付けるものとしては、これが一番馴染むかと思ってな…」
ヒイロがそう言うと、ヒナキが苦笑いして言う。
「この大きさに、どれだけの時間と、どれだけの魔法石を使って、どれだけ魔法を詰め込んだと思う!作り上げるのに二年はかかっているんだぞ!」
「だから、ありがとうって」
ヒイロは苦笑いして言う。
話の内容に置いて行かれてしまったリーンは聞く。
「これが、記憶を無くさないかもしれない魔法道具?」
「そうだ。後は魔力を注ぎ込めば起動する」
「…そのためにルークがいる。リーンに馴染んだ番の魔力の方が良いだろうと、思ってな」
「…それは、譲りたくないな」
ルークは微笑んでそう言う。
「…リーンの番?」
ヒナキがキョトンとしてルークを見る。
「そうだ。子供もいる」
「…リーンが…子供を…産んだ…?」
ヒナキの目がキラキラと輝き出す。
何か見つけたかのように…。
「…今までの…方々に、そんな事は無かった…。子供の状態を見てみたいな。どの影響を受けているのか…リーンのような能力を備えているのか、成長速度と、魔力と…」
「はい。ストップ。ヒナキが気になるのも分からないでは無いが、耳飾りの説明をしてくれ」
ヒイロがそう言って、話の続きを促すと、ヒナキは苦笑いして、椅子に座り話し出す。
「『森の聖域』のリーンが眠る世界樹の中は、時間が後退していると思う。なので、身体は後退しても記憶だけは後退しないように、魔法をかける。両耳に付けることで、それを促せると思うのだが、憶測でしかない」
「…時間が後退か…」
ルークがそう呟くと、
「そういえば、親父が昔、眠っているときは大人の身体だったのに、外に出てきたら少年の姿だったと言っていた」
ヒイロがそう話す。
「時間が戻った分だけ、記憶を無くすと言うことか?」
「ハッキリはわからないが、その可能性はある」
ヒナキが過去の『私』知っているから、そう感じるのだろう…。
「…記憶は、『記憶の図書館』に吸収されているのかも…」
『記憶の図書館』には過去の『私』の記憶が詰まっていた。
だから忘れても、記録としてあそこに残る…。
ただの記録になってしまうから、自分の体験したこととは思えなくなってしまう…。
「…耳飾りの魔法が効かなければ、そこから早く引き出せば、すべての記憶を無くさない…そう言うことだろ」
ルークがそう言うと、ヒナキは難しそうな顔をして言う。
「そうなる…。だけど、リーンの魔力を取り戻すには、魔力を持っていた頃にまで後退させなければいけない」
「…つまり…『始まりの宿り木』の頃まで…」
「…。」
それは約十年くらい前まで戻ると言うこと…。
そしてそれは、キースとミーナとニーナを産む前に、戻ると言うこと…。
あの子達の事を忘れると言うこと…。
「記録は有るんだ。記憶を無くしても、身体が覚えている。もう一度、記憶を乗り越えて覚えていけば良い…」
ルークがそう言って微笑む。
無くしても、記録を見て、もう一度、自分のモノにすれば良いと…。
「子供達も協力してくれるはずだ」
ルークは確信して言う。
そうだ…。
それだけの家族の絆を作ってきた…。
「耳飾りの魔法が少しでも効いていれば、そこまで無くさないはず…」
ヒナキはそう言って笑う。
「ありったけの知識と魔法を詰め込んだんだ。全く効いていなかったら泣くよ…」
四人は笑いあった。
難しく考えないで、少し時間が戻り、魔力を取り戻す事を願おう…。
そして、笑顔でみんなの前に帰ることを誓おう…。
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