神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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森の聖域 2

旅立ち

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 三つ子の子供達を連れて王都に来て、数日が過ぎた。
 自分の部屋だと喜んでいた子供達は、夜になると私のベッドに潜り込んでくる。
 夜中に目を覚まして、眠れなくて、コッソリとベッドの中に潜り込み、先に妹弟きょうだいが潜り込んでいるのに気が付いて、笑って一緒に眠るのだ。
 リーンが朝になって、重くて暑くて目覚めると、三人は目覚めた順番に苦笑いしながら自分の部屋に駆け込んでいく。
 それはそれで、可愛いのだが…。
 
 もうすぐ学校が始まる。
 しばらくはジーンが一緒に登校して、下校は迎えの馬車が行く手はずだ。
 そして私もルークと共に『森の聖域』に向かう。
 …私の帰ってくる場所を、忘れないでいることを願う。


 学校が始まり、ジーンがキースとミーナとニーナを連れて登校の馬車に乗り、学校に向かった。
 昨日、キースとミーナとニーナに、しばらく出掛けると話したら、三人とも引っ付き虫になって離れてくれなかった。
 でも、帰ってきたら、学校の話をたくさんして欲しいと頼んだら、しぶしぶ手を離してくれた。
 ジーンが頑張って説得してくれたのも有るけれど…。
 ジーンも、優しいお兄ちゃんになったね…。
 寂しい日が続くかもしれない…。
 帰ってきたら、いっぱい甘えさせてあげるから…。
 

 リーンは四人が学校に向かったのを確認すると、もう一台の馬車に乗り込み、カザナに向かった。
 カザナから、ルークと一緒にグオルクのリーンの部屋に行き、そこから『森の聖域』に向かう。
 そしてヒイロが案内役として同行する。
 チイはヒイロが抜ける分の仕事を、ホムラと作業を行うため留守番だ。
 カザナまでの道中、のんびりと外を眺めながら子供達の事を思い出していた。
 …私の方が、離れて寂しいのかも…。
 リーンは苦笑いした。


 カザナに着くと、待っていたルークと一緒にグオルクに向かった。
 リーンの小屋の寝室に有る魔法陣をルークが起動する。
 そしてルークが微笑んで、手を差し出してきた。
 リーンはその手を取り、手を繋いで魔法陣をくぐった。
 出た先は、変わらない私の部屋。
 リビングに向かうとチイとヒイロが待っていた。
 チイから「おやつに食べてね」と、カバンにたくさんのおやつと飲み物、軽食が詰め込まれていた。
「ありがとう。行ってきます」
 リーンはチイに微笑んでそう言った。
 ヒイロは苦笑いして、玄関に向かう。
「さあ、出掛けるぞ!」
 リーンとルークはヒイロの後について、家の玄関を出た。

 この家の玄関から、普通に歩いて出かけるのは久しぶりだ。
 普段は固定の魔法陣が繋がったヒイロの執務室に行き、そこからグオルクの町の市場へ出ることが多い。
 その方が近いからだ。
 『森の聖域』に行くにはまず、グオルクの町を囲んでいる結界の外に出なくてはいけない。
 この町へ魔獣が入ってこないように、いくつもの結界が施され、目に見えない魔力で保護されている。
 静かな住宅街を歩き、次第に木々におおわれた森の中に入っていく…。
 道は整備され、馬車が行き来したりもするが、『森の聖域』まで馬車では行けない。
 まあ、飼い慣らした魔力の強い魔獣が引く馬車なら可能だろうが…。
 普通の馬だと強い魔力に反応して、怯えて進んでくれない。
 三人は鳥の鳴き声と、木の葉の木漏れ日の中、黙々と歩いた。
 しばらく進むと小さな広場があり、馬車や旅人などが休憩する、休憩所が見えてきた。
「ココまでがグオルクの管理地だ」
 ヒイロがそう言って、ルークを見る。
「…ココから、どれくらいの時間がかかるんだ?」
 ヒイロは微笑む。
「普通に道を知っていて歩けば、半日ほどでたどり着く。だが、道を知らなければ、深い森だから迷子になる」
「…。」
 リーンは微笑む。
「ヒイロなら、直ぐだけどね」
「…『森の聖域』の近くの村に転移するからな」
 いつもこの方法で『森の聖域』に行くから移動は楽だ。
 ただ、魔力が強い者でないと、転移したとたんに倒れるだろう…。
 …ルークなら大丈夫。
「『森の聖域』の近くに村?」
 ルークは不思議そうに聞いてくる。
「研究者と言うか…変わり者の集まる村だけどね」
 リーンは微笑んだ。
 『森の聖域』だけが何故、魔素が強く存在しているのか。
 『森の聖域』で作られた食べ物を食べると魔力が増す者と、変わらない者がいるのは何故か。とか…。
 『森の聖域』の植物を使って、魔力増進剤を作っている者とか…。
 様々な種族が暮らしている。
「興味は有るな…」
 ルークは楽しそうに微笑む。
 ヒイロはニコリと笑い、三人は休憩所の外に出る。
 ヒイロとリーンが手を繋ぎ、リーンとルークが手を繋ぎ、三人が顔を向き合わせると、大地に淡く魔法陣が浮かぶ。
「クルーラ」
 ヒイロがそう叫ぶと、その場から三人の姿が消えた。

 


 


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