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森の聖域 1
小さな思い出
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おやつを食べ終わった三人を、ルナがグオルクの家まで連れて帰ってくれた。
ルナは、リオナスの待ち合いで、大人達が役所の手続きをしている間、子供達の面倒を見ていたから大丈夫だと思うが、三人いっぺんにだと少し大変かもしれない。
まあ、良い経験になるだろう…。
改めて、ソファーにルークとヒイロと、チイとホムラの五人で顔を向き合わせた。
「…『森の聖域』の話を親父にも聞いてみたが、自ら眠りについた記録はないそうだ。…リーンが眠っていたのを親父は見ているそうだが、気が付いたら外に出ていて、幼くなっていたと言っていた」
「…。」
ヒイロの報告に四人は首を傾げる。
「…外に出たら、肉体も退行するのか?」
「俺にもよく分からない…」
ヒイロは苦笑いする。
「俺がリーンと会ったのは、子供の頃、魔力制御が出来なくて、『森の聖域』で訓練するために来たときだから…」
「…遊びながら覚えて、いろんな事を試したよね」
リーンは懐かしく思い出し微笑む。
「その時は、俺と同じ少年の姿だった」
そうだ、『森の聖域』を出てから、身長も伸び、成長したような気がする。
「『森の聖域』は魔素が充満した場所だから、ある程度魔力を持つ者でないと、魔力酔いを起こして意識を失ってしまう」
「私は、ヒイロに補助されて一度だけ行ったことが有るわ。…そこで初めて獣変化出来たのよね…」
チイは、懐かしそうに言う。
確かチイは人族の中でずっと生活していて、ヒイロと出会って番になるための条件が、獣変化する事だった。
ヒイロが一族の未来の家長になるため、それが最低限の条件だった。
色々有って、最終手段として『森の聖域』に来て、魔力が解放され、見事に獣変化し、ヒイロの番として認められた。
今では懐かしい思い出だ。
「…私は途中で魔力酔いを起こして、たどり着けなかった」
ホムラが苦笑いして、ぼそり言う。
「かなり近くまでは、行けたんだけどな…」
ヒイロが苦笑いして言う。
「あの時は、下手すれば命に係わるから引き返した」
…たどり着くのは一握りの者達だけだ。
「…今の俺なら、たどり着けるか?」
ルークがそう言うと、ヒイロが微笑んだ。
「ああ、今のルークならたどり着ける。…リーンを連れて行くつもりだろう。案内人として俺も一緒に行くから」
「たまっている仕事が終わってから、行ってください!」
ホムラが、ヒイロに釘を刺す。
「分かってるって…」
…過去の記録が無いのなら、初めての試みだから、できる限りの事を考えて、行動に移さないといけない…。
「…予定としては、もう少し…三つ子達が小等科に入ったら王都に住むことになるから、その後くらいと思っている。…今はまだ…子供達とルークと居ようと思っているから…」
リーンは頬を染めてそう言う。
もう少し、今の幸せを味わいたい…。
「…目覚めさせる方法を、考えなくてはいけないだろう?そのまま眠ってしまったら、記憶を無くしかねない…」
考えなくてはいけないことは、たくさん有る。
「ああ、何か魔法道具を考えた方が良いかもしれないな…」
その辺を頭に置いて、いいアイデアが浮かぶと良いな…。
もう少し時間はあるから、いろいろと探ってみよう…。
「…さて、『森の聖域』の報告会はこれくらいにして、ちょっと相談があるんだが…」
ヒイロは自分の机の上から書類を持って来て、話し始める。
「今日、会議があってな…」
ヒイロとルークは、互いに相談しながら町を運営していくのには、良い仲間なのだろう。
互いにこういう時はどうしているかを相談して、良い収まりぐわいを探す…。
真剣に話し出すヒイロとルークとホムラを横目に、チイと目があって微笑んだ。
「私たちは先に帰ろうかしら」
「そうだね。ルナ、一人では限界があるだろうし、早めに夕食の準備に取りかかろうか」
そう言って、リーンとチイは席を立ち、グオルクのヒイロとチイの家に繋がる魔法陣をくぐった。
ルナは、リオナスの待ち合いで、大人達が役所の手続きをしている間、子供達の面倒を見ていたから大丈夫だと思うが、三人いっぺんにだと少し大変かもしれない。
まあ、良い経験になるだろう…。
改めて、ソファーにルークとヒイロと、チイとホムラの五人で顔を向き合わせた。
「…『森の聖域』の話を親父にも聞いてみたが、自ら眠りについた記録はないそうだ。…リーンが眠っていたのを親父は見ているそうだが、気が付いたら外に出ていて、幼くなっていたと言っていた」
「…。」
ヒイロの報告に四人は首を傾げる。
「…外に出たら、肉体も退行するのか?」
「俺にもよく分からない…」
ヒイロは苦笑いする。
「俺がリーンと会ったのは、子供の頃、魔力制御が出来なくて、『森の聖域』で訓練するために来たときだから…」
「…遊びながら覚えて、いろんな事を試したよね」
リーンは懐かしく思い出し微笑む。
「その時は、俺と同じ少年の姿だった」
そうだ、『森の聖域』を出てから、身長も伸び、成長したような気がする。
「『森の聖域』は魔素が充満した場所だから、ある程度魔力を持つ者でないと、魔力酔いを起こして意識を失ってしまう」
「私は、ヒイロに補助されて一度だけ行ったことが有るわ。…そこで初めて獣変化出来たのよね…」
チイは、懐かしそうに言う。
確かチイは人族の中でずっと生活していて、ヒイロと出会って番になるための条件が、獣変化する事だった。
ヒイロが一族の未来の家長になるため、それが最低限の条件だった。
色々有って、最終手段として『森の聖域』に来て、魔力が解放され、見事に獣変化し、ヒイロの番として認められた。
今では懐かしい思い出だ。
「…私は途中で魔力酔いを起こして、たどり着けなかった」
ホムラが苦笑いして、ぼそり言う。
「かなり近くまでは、行けたんだけどな…」
ヒイロが苦笑いして言う。
「あの時は、下手すれば命に係わるから引き返した」
…たどり着くのは一握りの者達だけだ。
「…今の俺なら、たどり着けるか?」
ルークがそう言うと、ヒイロが微笑んだ。
「ああ、今のルークならたどり着ける。…リーンを連れて行くつもりだろう。案内人として俺も一緒に行くから」
「たまっている仕事が終わってから、行ってください!」
ホムラが、ヒイロに釘を刺す。
「分かってるって…」
…過去の記録が無いのなら、初めての試みだから、できる限りの事を考えて、行動に移さないといけない…。
「…予定としては、もう少し…三つ子達が小等科に入ったら王都に住むことになるから、その後くらいと思っている。…今はまだ…子供達とルークと居ようと思っているから…」
リーンは頬を染めてそう言う。
もう少し、今の幸せを味わいたい…。
「…目覚めさせる方法を、考えなくてはいけないだろう?そのまま眠ってしまったら、記憶を無くしかねない…」
考えなくてはいけないことは、たくさん有る。
「ああ、何か魔法道具を考えた方が良いかもしれないな…」
その辺を頭に置いて、いいアイデアが浮かぶと良いな…。
もう少し時間はあるから、いろいろと探ってみよう…。
「…さて、『森の聖域』の報告会はこれくらいにして、ちょっと相談があるんだが…」
ヒイロは自分の机の上から書類を持って来て、話し始める。
「今日、会議があってな…」
ヒイロとルークは、互いに相談しながら町を運営していくのには、良い仲間なのだろう。
互いにこういう時はどうしているかを相談して、良い収まりぐわいを探す…。
真剣に話し出すヒイロとルークとホムラを横目に、チイと目があって微笑んだ。
「私たちは先に帰ろうかしら」
「そうだね。ルナ、一人では限界があるだろうし、早めに夕食の準備に取りかかろうか」
そう言って、リーンとチイは席を立ち、グオルクのヒイロとチイの家に繋がる魔法陣をくぐった。
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