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森の聖域 1
おやつ
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ヒイロの執務室のソファーにリーンとルークが座ると、ルークの膝の上にミーナとニーナが座り、リーンの膝の上にキースが座った。
まだ少し緊張しているのか、ソファーに座ろうとはしない。
そんな様子を、お茶と子供達用にジュースとおやつを持ってきたチイが見て笑う。
「ジーンとユーリの時とは大違いね」
「そうだな…。確かこれくらいの時、二人でグオルクのリーンの部屋に転がり込んでたからな…」
ルークは思い出して、苦笑いする。
「何に、何の話?」
リーンは二人の顔を見合わせる。
チイはテーブルの上に飲み物とおやつを置いて『食べてね』と、三つ子に言うと、反対側のソファーに座り、クスクスと笑うと、ルークが話し始めた。
「ジーンとユーリが、二人でグオルクのリーンの部屋へ潜ってしまって、二人が居なくなったと屋敷は大騒ぎ。チイから連絡が来て、グオルクにいることは分かったが、迎えに行けなくて、ルナと一緒に遊んで夕食を食べて、そのまま寝てしまって…て、事があってな…」
ルークがリーンが居なかった時の事を話してくれた。
…遊びに来てたんだ。
「その後からは、『ルナの所に遊びに行く』と、言って、何度も出入りしていた…」
「…。」
リーンは頭を抱える。
あの魔法陣は、特定の人物にしか反応しない様に作ったのだが…。
「ジーンとユーリが一緒にいて、グオルク側から『来ても良いよ』と、私が許可をしたから通れるようになってしまったのよ」
…二人が寂しいだろうと、遊びに来れるように、チイが魔法陣の上書きをしたのか…。
そして、カザナ側はルークが…。
「三つ子ちゃん達は、いつも側にリーンもルークもいるから、寂しくないのかも…」
「そうだな…」
リーンは苦笑いした。
…そうだね。
ジーンとユーリの側にいる時間は短かったかもしれない。
そんな昔話をしていると、キースがリーンの膝から降りて、テーブルの上の持ち手付のコップを手にしてジュースを飲み出す。
それを溢れないように、リーンが軽く支えると、ルークの膝の上に乗っていた、ミーナとニーナも降り始め、テーブルの上のコップを手にして飲み始めた。
緊張して喉が渇いたのだろう。
ミーナとニーナのコップをルークがそっと支える。
キースはチラリとチイの方を向いて、様子を伺いながら、おやつのクッキーに手を伸ばす。
それを真似して、ミーナとニーナもクッキーに手を伸ばす。
恐る恐ると言うか、良いよね、良いよね、と、チイを見ながらクッキーを手に取っている様子が、なんとも言えない…。
でも、キースが二枚目に手を出したので、一言だけ。
「食べ過ぎないでね」
「夕食が食べられなくなるわよ」
チイも加勢して言うが、緊張してエネルギーを使った子供達の手は止まらない。
そんな三人の子供達の様子に微笑みながら、リーン達はお茶を飲んだ。
「…疲れた…」
そう言ってヒイロと補佐官のホムラが扉を開け、戻って来ると、おやつを食べていた三つ子が硬直した。
…びっくりしたんだ…。
まあ、会議で白熱すると魔力を押さえず、駄々漏れになってしまうからな…。
まだその余波が、ヒイロとホムラを包んでいるのを見て、動けなくなってしまったのだろう…。
「おっ、もう来てたのか」
ヒイロは微笑んでソファーに近付くと、子供達が食べていたおやつを置いて、ルークとリーンの後ろに隠れた。
その様子を見て、ヒイロはショックを受けている。
「…逃げられた…」
「少し魔力を押さえてよ。子供達がビックリしているわ」
「ああ、悪い…」
ガッカリしたヒイロが、今さらだが魔力を押さえる。
それでも、子供達は隠れたまま出てこない…。
「大丈夫だよ」
リーンがそう言っても、動こうとしない。
こうなったら、なかなか動かないぞ…。
リーンはため息をついた。
ヒイロもガックリと肩を落とし、執務室の自分の席に座る。
「もうすぐルナが帰ってくるから、先に家に帰って遊んでいてもらうわ」
チイはそう言って、ヒイロとホムラにお茶を差し出す。
「そうしてくれ…」
弱々しくヒイロが答えると、執務室の扉が叩かれて、チイそっくりのルナが顔を覗かせた。
「…ただいま」
子供達の視線が扉に向き、目がキラキラと輝いたのを見た。
まだ少し緊張しているのか、ソファーに座ろうとはしない。
そんな様子を、お茶と子供達用にジュースとおやつを持ってきたチイが見て笑う。
「ジーンとユーリの時とは大違いね」
「そうだな…。確かこれくらいの時、二人でグオルクのリーンの部屋に転がり込んでたからな…」
ルークは思い出して、苦笑いする。
「何に、何の話?」
リーンは二人の顔を見合わせる。
チイはテーブルの上に飲み物とおやつを置いて『食べてね』と、三つ子に言うと、反対側のソファーに座り、クスクスと笑うと、ルークが話し始めた。
「ジーンとユーリが、二人でグオルクのリーンの部屋へ潜ってしまって、二人が居なくなったと屋敷は大騒ぎ。チイから連絡が来て、グオルクにいることは分かったが、迎えに行けなくて、ルナと一緒に遊んで夕食を食べて、そのまま寝てしまって…て、事があってな…」
ルークがリーンが居なかった時の事を話してくれた。
…遊びに来てたんだ。
「その後からは、『ルナの所に遊びに行く』と、言って、何度も出入りしていた…」
「…。」
リーンは頭を抱える。
あの魔法陣は、特定の人物にしか反応しない様に作ったのだが…。
「ジーンとユーリが一緒にいて、グオルク側から『来ても良いよ』と、私が許可をしたから通れるようになってしまったのよ」
…二人が寂しいだろうと、遊びに来れるように、チイが魔法陣の上書きをしたのか…。
そして、カザナ側はルークが…。
「三つ子ちゃん達は、いつも側にリーンもルークもいるから、寂しくないのかも…」
「そうだな…」
リーンは苦笑いした。
…そうだね。
ジーンとユーリの側にいる時間は短かったかもしれない。
そんな昔話をしていると、キースがリーンの膝から降りて、テーブルの上の持ち手付のコップを手にしてジュースを飲み出す。
それを溢れないように、リーンが軽く支えると、ルークの膝の上に乗っていた、ミーナとニーナも降り始め、テーブルの上のコップを手にして飲み始めた。
緊張して喉が渇いたのだろう。
ミーナとニーナのコップをルークがそっと支える。
キースはチラリとチイの方を向いて、様子を伺いながら、おやつのクッキーに手を伸ばす。
それを真似して、ミーナとニーナもクッキーに手を伸ばす。
恐る恐ると言うか、良いよね、良いよね、と、チイを見ながらクッキーを手に取っている様子が、なんとも言えない…。
でも、キースが二枚目に手を出したので、一言だけ。
「食べ過ぎないでね」
「夕食が食べられなくなるわよ」
チイも加勢して言うが、緊張してエネルギーを使った子供達の手は止まらない。
そんな三人の子供達の様子に微笑みながら、リーン達はお茶を飲んだ。
「…疲れた…」
そう言ってヒイロと補佐官のホムラが扉を開け、戻って来ると、おやつを食べていた三つ子が硬直した。
…びっくりしたんだ…。
まあ、会議で白熱すると魔力を押さえず、駄々漏れになってしまうからな…。
まだその余波が、ヒイロとホムラを包んでいるのを見て、動けなくなってしまったのだろう…。
「おっ、もう来てたのか」
ヒイロは微笑んでソファーに近付くと、子供達が食べていたおやつを置いて、ルークとリーンの後ろに隠れた。
その様子を見て、ヒイロはショックを受けている。
「…逃げられた…」
「少し魔力を押さえてよ。子供達がビックリしているわ」
「ああ、悪い…」
ガッカリしたヒイロが、今さらだが魔力を押さえる。
それでも、子供達は隠れたまま出てこない…。
「大丈夫だよ」
リーンがそう言っても、動こうとしない。
こうなったら、なかなか動かないぞ…。
リーンはため息をついた。
ヒイロもガックリと肩を落とし、執務室の自分の席に座る。
「もうすぐルナが帰ってくるから、先に家に帰って遊んでいてもらうわ」
チイはそう言って、ヒイロとホムラにお茶を差し出す。
「そうしてくれ…」
弱々しくヒイロが答えると、執務室の扉が叩かれて、チイそっくりのルナが顔を覗かせた。
「…ただいま」
子供達の視線が扉に向き、目がキラキラと輝いたのを見た。
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