神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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森の聖域 1

ふわふわフサフサ

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「うわっ…」
「ふわふわ…」
「フサフサ…」
 ヒイロの執務室に出で、子供達が一斉に声を上げた。
 …うん?
 子供達の視線の先に、チイの揺れる尻尾が有った。

「いらっしゃい。リーン。ルーク」
 そう言って動きやすそうなズボン姿の、豹の獣人チイが金色の髪の毛と尻尾を揺らし、耳をピクピクさせて微笑んだ。
「久しぶり。ヒイロは…」
「会議中。もう少しかかりそうよ」
 そう言ってチイが苦笑いする。
 子供達は見上げて、じっとチイを見ている。
 それに気が付いたチイがしゃがんで、視線を子供達に合わせ微笑む。
「こんにちは。私はチイ。リーンの家族よ」
 子供達はハッとして、モジモジしながらチイを見ている。
 ほら、頑張れ!
 練習してきただろうが!
 リーンとルークは、黙って応援する。
 しばらくすると、意を決して、ミーナがチイの方を見る。
「…カザンナおうこく、…だい三おうじの子。…ミーナです。…こんにちは…」
「こんにちは。ミーナちゃん」
 チイがそう言って微笑むと、ミーナはリーンの後ろに隠れてしまった。
 よし、頑張った!
 次はキースがチイの方を向いた。
「…カザンナおうこく…だい三おうじの子。…キース…です。…こっ…こんにちは…」
「こんにちは。キースくん」
 チイがそう言うとキースはルークの後ろに隠れてしまう。
 あとは、ニーナ…。
 ニーナはうつ向いて、ルークの足にしがみつき、ボソボソと言い出す。
「…カザンナおうこく…だい三おうじの子…ニーナ…です…」
 ニーナはそこまで言って、ルークの足にきゅっとしがみつく。
 …ニーナはココまでか…。
 三人とも、自分から挨拶をすることが無く、挨拶の練習をいっぱいしてきたのだが、初めて会う者と対面すると、やはり緊張してしまうみたいだ。
「こんにちは。ニーナちゃん。…さっきは何に驚いていたの?」
 …部屋に来たすぐに、三人とも声を上げて居たことを言っているのだろう。
「…フサフサ…」
 ニーナがルークの足元から、チイをチラリと見て顔を引っ込めて言う。
「何がフサフサ?」
「…。」
 ニーナはじっと揺れるチイの尻尾を見ている。
「…しっぽ…」
 ルークの反対側の足に隠れているキースが、横から言ってくる。
「なるほどね。リーンのところでは、みんな仕舞ってるから…」
 屋敷にいる獣人は、人族にまぎれるため、耳も尻尾も隠している。 
「まあ、珍しいのかも…」
 リーンがそう言うと、チイが微笑んだ。
「少しだけなら触っても良いわよ」
 チイがそう言うと、ニーナもキースもミーナも、目がキラキラと輝いた。
「順番にね」
 チイがそう言って、一番最初に動いたのがニーナだった。
 恥ずかしそうにうつむいたまま、ちょこっとづつチイに近付いて行く姿がまた、可愛らしい…。
 チイは微笑んで尻尾を手に取り、『どうぞ』とニーナに向ける。
 ニーナは手を伸ばし、少し触れて手を引っ込めて、また手を伸ばすを繰り返し、少し慣れたのか、顔を上げてチイの尻尾に触れる。
「…フサフサ…」
 ニーナは少し撫でると、緊張が解けてきたのか、頬を緩めて微かに微笑んでいる。
 そこへリーンの後ろに隠れていたミーナも近付いて行った。
「はい。次はミーナちゃん」
 チイがそう言うと、ニーナがミーナにチイの尻尾を差し出しミーナが受けとり、ニーナはルークの足元に戻って隠れてしまう。
 よく頑張った!ニーナ!
「…ふわふわ…」
 ミーナも嬉しそうに撫で撫でしていると、キースがそっと近付いて行く。
「次はキースくん」
 ミーナの前にキースが来ると、ミーナがキースにチイの尻尾を手渡し、ミーナもリーンの足元に戻ってくる。
「…うわっ…やわらかい…」
 キースは触り心地に感動しているようだ。
 しばらく触ってキースが堪能し終わると、キースもルークの足元に戻ってく。
「悪いねチイ」
「良いのよ」
 そしてチイは三人に言う。
「触って見たかったら、『触らせてください』って、お願いする事。『ダメ』って、言うことも有るから、きちんと確認するのよ」
 三人はコクコクと頷いている。
 その様子を見て、チイは微笑み、
「そこに座っていて、おやつを持って来るわね」
 そう言って、執務室の横に有るキッキンに向かった。

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