神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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森の聖域 1

戸惑い

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 夜、リーンは子供達を寝かしつけ、後の事をキリトに任せて、ルークの部屋に向かった。
 ルークは夕食後、部屋にこもって急ぎの書類を作成すると言っていたが、そろそろ終わっている頃だろう…。
 ソフィアが言った、『魔力が戻ってくるかもしれない』事について、相談したかったからだ。
 …魔力が戻ってくるのは嬉しい。
 今まで長い時間、常に自分の回りを包んでくれていた魔力が無くなった時は、不安で仕方なかった。
 けれど側に、ルークがいたし、子供達もいた。
 そしていろいろと助けてくれるキリトやルークの側近達。
 リーンのもうひとつの家族である、ヒイロやチイ。
 回りの者達が手助けしてくれたおかげで、リーンは今、こうして不自由無く、暮らしている。
 …魔力が戻ってきたら…。
 私は子供達を置いて…慣れてしまった生活を置いて、森に帰ることは出きるのだろうか…。
 …一人で悩んでも、グルグルと迷うだけなので、ルークに話を聞いてもらいたかった。


 リーンがルークの部屋の扉をノックして、扉を開けると、ルークはまだ机に向かっていた。
「今、大丈夫?」
「ああ、終わったところだ」
 そう言ってルークは書類を封書に入れた。
 リーンは部屋のソフィアに座り、テーブルに置いてあったマグカップに飲み物を二人分注ぐ。
 ルークはリーンの隣に座ってきて首を傾げた。
「何か有ったのか?」
「…。」
 リーンはマグカップを手に取り、一口飲む。
 …伝えなくては…。
「…ソフィアが…私の魔力が戻る方法が分かったかもしれないって、言ってきた。」
 ルークは驚いてリーンを見る。
「戻るのか?!」
「…まだ、確かとは言えない。確認しなくてはいけない事が有ると言っていた」
「…。」
 ソフィアはどうしたのか考えて欲しいと言っていた…。
 リーンは答えが出なくても、思ったことを口にして見る。
「…魔力が戻ることは嬉しい。…ずっと側に渦巻いていたものだから…」
 ルークは静かに聞いてくれる。
「…でも、魔力が戻ったら…『森の管理者』として、森に戻ることになる…」
 …それは長い時間を生きる、私にしか出来ない自分の使命だと、思っている…。
 ココを離れることになる…。
「…時々帰って来ればいい…」
 ルークがそう言ってリーンの身体を自分に引き寄せ、リーンはルークの肩にもたれ掛かる。
「ジーンやユーリの時みたいに、森に帰っても、また、ここへ帰って来ればいい」
 …そうだ。
 ジーンとユーリの時は、『風霊』に呼びれて…子供達を置いて、森に帰っていた…。
 そしてココに…ルークとジーンとユーリの居る、カザナの屋敷に帰ってきていた…。
 どうして忘れていたのだろう…。
 リーンは苦笑いした。
「…そうだね…」
 …帰ってくる場所が有る…。
 置いていくのではなく、森に出掛けて行って、ココに帰ってくるのだと…。
 …今度、ソフィアが来たら答えよう。
 魔力を取り戻すための方法を教えて欲しいと…。
 …戻るかも…って、事を忘れずにいよう…。
「…でもな…」
 ルークが苦笑いして言う。
「出来たら、三つ子が王都の小等科に入るまで、待って欲しい…かな…」
 リーンがルークの方を見ると微笑んだ。
「ジーンとユーリの時に比べたら、子供達に甘いかもしれないが、もう少し、こうして一緒に居たいかも…」
 リーンはキョトンとして、言われた意味がわかって、耳を真っ赤にした。
「…私も…」
 リーンはうつ向いて、そう答えた。
 それが、リーンの真実…。
 もう少し、この幸せを感じさせて…。
 するとルークが急にソファーから立ち上がり、リーンを両腕に抱えた。
「…ル、ルーク…」
 戸惑うリーンにルークが微笑んだ。
「今日は、キリトが子供達を見てくれているんだろ。時間を有効に使わないとな」
 そう言って、ルークの部屋の寝室に向かって歩きだした。
 リーンは意味がわかって、頬を染め、ルークにしがみついた。



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