神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
307 / 462
新たなる命

しおりを挟む
 月日が経ち、リーンのお腹が少し膨らんできた。
 ジーンとユーリの時もそうだったが、やっと、なんとなく実感がわいてきた。
 …そんな感じだ…。
 ココにいるんだ…。
 身体の作り的に前回と一緒で、ある程度お腹の中で大きくして、リーンの負担が掛からない内に、腹を切って取り出す事は決まっていた。
 切り傷は、ルークが綺麗に魔法で治してくれるそうだ。
 治癒魔法も使えない状態だからな…。
 リーンはそんなことを思いながら、すくすくと育つお腹を撫でていた。
 
 リーンの体調も以前より良くなり、ルークに魔力を注いでもらって、ルークと共に、宿り木ミーネのもとに向かった。
 体調が悪いときに魔力をもらうと、逆に魔力酔いを起こして気持ち悪くなってしまったから、長い間、ルークに魔力を注いでもらってはいない。
 今のリーンに魔力が無いので、ミーネを見ることは出来ないが、ルークに魔力を分けてもらえれば、ほんの少しの時間だが、姿を見ることもできるし、声を聞くこともできる。
 リーンがお昼寝に、宿り木ミーネに寄りかかっていると、いつも暖かい気配がするし、気持ち良くて、普段から姿は見えなくても、側に居てくれているのは知っている。
 リーンがルークと一緒に宿り木ミーネのもとにたどり着くと、ミーネが姿を表して待っていてくれ、微笑んで言った。
『光が宿っています。…強い光が一つ。…弱い光が二つ』
 今、何って、言った?
 リーンはルークと顔を見合せる。
「…強い光と、…弱い光が…二つ…」
 リーンはミーネが言ったことを繰り返して言い、頭を働かせた。
「三つ子か?!」
 ルークが思わず大きい声をあげる。
 ははっ…。
 三つ子…。
 …本当に入っているのか…?
『今は人族の身体。以前とは違うのですから、身体に気を付けてください』
 ミーネはそう言って微笑む。
 リーンとルークは呆然として、リーンのお腹を撫でる。
「…強い光は…ソフィアの…」
「…弱い光…二つは…俺の…」
 リーンは嬉しいやら恥ずかしいやら、どういう顔をしているのか分からなかった。
 ソフィアが『実を結ぶ』と言ったから、また双子だと思っていた。
 …三つ子…。
 リーンが戸惑っていると、ルークが口付けてくる。
「家族が増えるぞ!」
 ルークは嬉しそうに微笑んで、何度も口付けてくる。
「…ル、ルーク…」
 ミーネが見ているって!
 ルークは嬉しさを隠さず、そっと抱きついてくる。
「双子だとばかり思っていたから、もう一人分、準備をさせないと!」
 ああ、そうでした。
 着替えやベビードレスに、ベビーベットにオムツに…。
 ジーンとユーリの時に、自分が手配できなかったと言って、今回は張り切って準備をしているからな…。
 ルークが楽しそうで、嬉しいなら良いか…。
 リーンが無意識に微笑んでいると、ミーネがそっと囁いてきた。
『以前と違って楽しそうですね』
 ミーネはそう言って姿を消した。
 …ああ、楽しいのかもしれない。
 魔力が無いから、『森の聖域』に帰ることも出来ず、魔法陣を使って移動する事も出来ず、回りを取り巻き側にいるはずの『風霊』達も見えない…。
 『森の管理者』としての使命は果たせない…。
 だけど、ココにいて良いと、居場所をくれる…。
 側にいて欲しいと、側に居たいルークに言われて、嬉しくて顔が歪む…。
 …これが楽しくて…幸せ…なのかもしれない…。
「リーン!屋敷に戻ってジーンとユーリにも報告だ!」
 そう言ってルークが、リーンを抱き上げて歩き出す。
「ちょっと待ってよ」
 屋敷まですぐ側だと言っても、お姫様抱っこされて、歩くの恥ずかしい…。
 リーンは頬を染めた。
 ルークはウキウキと段取りを話し始める。
「先に主治医に三つ子だと連絡して、診察をしてもらってだな…」
 嬉しいのは分かってけれど、これ以上、過保護になるのだけは止めて欲しい…。
 



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

処理中です...