神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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新たなる命

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 月日が経ち、リーンのお腹が少し膨らんできた。
 ジーンとユーリの時もそうだったが、やっと、なんとなく実感がわいてきた。
 …そんな感じだ…。
 ココにいるんだ…。
 身体の作り的に前回と一緒で、ある程度お腹の中で大きくして、リーンの負担が掛からない内に、腹を切って取り出す事は決まっていた。
 切り傷は、ルークが綺麗に魔法で治してくれるそうだ。
 治癒魔法も使えない状態だからな…。
 リーンはそんなことを思いながら、すくすくと育つお腹を撫でていた。
 
 リーンの体調も以前より良くなり、ルークに魔力を注いでもらって、ルークと共に、宿り木ミーネのもとに向かった。
 体調が悪いときに魔力をもらうと、逆に魔力酔いを起こして気持ち悪くなってしまったから、長い間、ルークに魔力を注いでもらってはいない。
 今のリーンに魔力が無いので、ミーネを見ることは出来ないが、ルークに魔力を分けてもらえれば、ほんの少しの時間だが、姿を見ることもできるし、声を聞くこともできる。
 リーンがお昼寝に、宿り木ミーネに寄りかかっていると、いつも暖かい気配がするし、気持ち良くて、普段から姿は見えなくても、側に居てくれているのは知っている。
 リーンがルークと一緒に宿り木ミーネのもとにたどり着くと、ミーネが姿を表して待っていてくれ、微笑んで言った。
『光が宿っています。…強い光が一つ。…弱い光が二つ』
 今、何って、言った?
 リーンはルークと顔を見合せる。
「…強い光と、…弱い光が…二つ…」
 リーンはミーネが言ったことを繰り返して言い、頭を働かせた。
「三つ子か?!」
 ルークが思わず大きい声をあげる。
 ははっ…。
 三つ子…。
 …本当に入っているのか…?
『今は人族の身体。以前とは違うのですから、身体に気を付けてください』
 ミーネはそう言って微笑む。
 リーンとルークは呆然として、リーンのお腹を撫でる。
「…強い光は…ソフィアの…」
「…弱い光…二つは…俺の…」
 リーンは嬉しいやら恥ずかしいやら、どういう顔をしているのか分からなかった。
 ソフィアが『実を結ぶ』と言ったから、また双子だと思っていた。
 …三つ子…。
 リーンが戸惑っていると、ルークが口付けてくる。
「家族が増えるぞ!」
 ルークは嬉しそうに微笑んで、何度も口付けてくる。
「…ル、ルーク…」
 ミーネが見ているって!
 ルークは嬉しさを隠さず、そっと抱きついてくる。
「双子だとばかり思っていたから、もう一人分、準備をさせないと!」
 ああ、そうでした。
 着替えやベビードレスに、ベビーベットにオムツに…。
 ジーンとユーリの時に、自分が手配できなかったと言って、今回は張り切って準備をしているからな…。
 ルークが楽しそうで、嬉しいなら良いか…。
 リーンが無意識に微笑んでいると、ミーネがそっと囁いてきた。
『以前と違って楽しそうですね』
 ミーネはそう言って姿を消した。
 …ああ、楽しいのかもしれない。
 魔力が無いから、『森の聖域』に帰ることも出来ず、魔法陣を使って移動する事も出来ず、回りを取り巻き側にいるはずの『風霊』達も見えない…。
 『森の管理者』としての使命は果たせない…。
 だけど、ココにいて良いと、居場所をくれる…。
 側にいて欲しいと、側に居たいルークに言われて、嬉しくて顔が歪む…。
 …これが楽しくて…幸せ…なのかもしれない…。
「リーン!屋敷に戻ってジーンとユーリにも報告だ!」
 そう言ってルークが、リーンを抱き上げて歩き出す。
「ちょっと待ってよ」
 屋敷まですぐ側だと言っても、お姫様抱っこされて、歩くの恥ずかしい…。
 リーンは頬を染めた。
 ルークはウキウキと段取りを話し始める。
「先に主治医に三つ子だと連絡して、診察をしてもらってだな…」
 嬉しいのは分かってけれど、これ以上、過保護になるのだけは止めて欲しい…。
 



 
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