神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
303 / 462
新たなる命

つわり

しおりを挟む
 カザナのルークのお屋敷にたどり着くと、リーンをベッドに寝かせ、ルーク達は作戦会議を始めた。
 魔力の無いリーンに、魔女王の子供が宿っている。
 それに、もしかして、自分の子供も…。
 魔女王は『実を結ぶ』と言っていた。
 リーンに、ジーンとユーリが宿ったときもそう言われていたからだ。
 魔女王の子供も、ルークの子供として育てる。
 それは決定事項だ。
 第一、産まれてきたときに、分かるわけ無いだろう…。
 ルークも魔女王も金髪だし、瞳の色までは分からないが…。
 リーンには以前のように、このままカザナで生活してもらって、出産と育児をしてもらう…。
 ただ、以前のように魔力が無いため、どういう状態になるかわからない…。
 確か前は…半年くらいで産まれていたような気がするが…。
 ルークは遠征に行っていて、産まれるまで気が付かなかったから、後から仲間や執事達に聞いたので、はっきりとは覚えていない…。
「魔力が無いので、普通の人族と同じ様に、成長する可能性があります」
 アオはそう言ってルークを見る。
「…そう言えば、リーンの髪が少し伸びていた…」
 今までは、適度にカットしているのかと思っていたが、時間が緩やかに流れているので、髪も伸びないと言っていたことを思い出す。
「…人族に近くなっているのかも、しれないですね…」
「ああ。その可能性が高い」
 と、言うことは、成長速度も人族に近いものなのかもしれない…。
「執事のロバートさんを呼んできて、話に加わってもらった方が、良いような気がしますが…」
 ガズキにそう言われて、三人は顔を見合せ頷いた。
「呼んできてくれ」
「はい」
 ガズキは席を立ち、執事を呼びに行った。
「…とは言え、確実に宿ったとは言い難いが…」
 ルークは苦笑いする。
 魔女王に言われたので、そう確信するが、現実味は無い…。
「直ぐに現実味を持ちますよ」
 アオがそう言って笑う。
「…今のリーンさんの状態は『つわり』のような気がしますが…」
「…そうかもしれない…」
 『魔女の森』からカザナへ帰る途中、リーンは何度も目覚めて、吐き気を催し、しばらく落ち着くまで、街道の端に馬車を停めていたのだ。
 リーンの身体に魔女王の『移植転移』の魔法が馴染まないから…と思っていたが、『つわり』か…。
 だがそれは魔女王の子供の方であって、俺の子供が宿っている確証ではないが…。
「…それこそ人族と同じ状態だな…」
 側に誰か侍女を付けて、様子を見てもらった方が良いのかもしれない。
 それに、確実に宿っていることが分かれば、ジーンやユーリにも伝えなくてはいけないし、王城にも連絡しなくてはいけない。
「しばらくは…屋敷内だけの秘密にしておこう」
「…そうですね。リーンさんの容態が落ち着いて来たらでも大丈夫かと…。分かれば回りが騒がしくなりますからね」
 アオがそう言って苦笑いする。
「…だよな…」
 ルークも苦笑いして、眠るリーンを見る。
 無事に産まれてくるまで、そっとしておいて欲しいが、そんなわけにはいかないだろう。
 ルークはカザンナ王国の第三王子。
 ジーンとユーリの時は、自分も知らなかったとは言え、家族には事後報告だったので、後から兄上達に叱られた。
 それも顔見せを、二人がよちよち歩けるようになってからだったので尚更だ。 
「…確定したら、王城に報告をする」
「はい。」
 そんな話をアオとしていると、ガズキと執事のロバートが部屋に入ってきて、今後の話をし始めた。

 …リーン。
 今度は俺も側にいるから…。
 一緒に育てていこうな…。

  
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

素敵なおじさんと僕 〜少年とバーテンダーの出逢いから始まる優しい物語〜

紅夜チャンプル
BL
少年とバーテンダーの出逢いから始まる優しい物語(BL) (1章) 雨に濡れる僕を見つけてくれたのは、一見怖そうに見える男の人だった。僕はその人のことが気になっていく。 6年後、20歳となった僕はバーに行く。あの人に会いたくて。 (2章) 僕の恋人は怜さん。結構年上だけど一緒にいると安心する。ある日突然、怜さんのことを「父さん」と呼ぶ人が現れた。 (3章) 昔から女性が苦手だった僕はあの日、貴方に恋をした。 ずっと親友だと思っていたお前のことを意識するようになった。 バーの常連客で大学生の翔(しょう)と拓海(たくみ)、そして凪(なぎ)のBLのお話。 そして既に恋人同士であるバーテンダーの怜(れい)と大学生の日向(ひなた)も仲良しさんです。 (4章) 社会人3年目となった僕には年の離れた恋人、怜さんがいる。ある日、怜さんの職場にシングルマザーがアルバイトで入って来た。その人の子どもを可愛いがる怜さんを見て僕は‥‥

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...