神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
300 / 462
新たなる命

魔女王の願い

しおりを挟む
 魔女王の城に入ると、広場ではなく、長い廊下の奥の客室に連れていかれた。
 大きなフロアーにソファー、リビング、別室にベッドルーム、シャワールームなど、宿泊用の部屋だ。
 そしてソフィアを待つ間に、軽食まで準備され、リーンとルークは小腹を満たした。

 しばらくするとソフィアがやって来て、ゆったりとしたソファーに座り、リーンとルークと向き合う。
「あの手紙、どういう事だ?」
 リーンが問うとソフィアは微笑んで言う。
「私の中に、リーンの子供がいるの。あの時に、宿ったみたい」
 …やはりそうなのか…。
 だが…。
「あれから十年以上たってる」
「忘れた?私の時間はゆっくり流れている。だから、育たない」
「…。」
 そう、ソフィアの時間も私と一緒で、ゆっくりと流れているタイプの長寿だ。
「リーンも覚えが有るでしょう。回りの人は年をとっていくけど、自分はそのままの姿と言うことを。…今は時間が動いているみたいだけど…」
 ソフィアはそう言って笑う。 
「魔力の無い、今のリーンになら抵抗無く移せるわ」
「…どうして、私が産むことになる」
「貴方が双子ちゃんを産んだときから考えていたの。このままだと、この子は外に出れないし、この子を作っている半分の貴方の身体なら、馴染むと思うのよね…」
 ソレくらいの時から、考えていたのか…。
「…。それで満月の宴に…」
 ソフィアが言いたいことがなんとなくわかった。
 私が一度、子供を産んでいる身体だからだ。
「そうよ。今は眠っているけど、一度出来た体内の母体を活性化させて、体内に移動させる。『魔女の宴』が一番魔力が強くなるし、何年もかけて組み合わせてきた魔法だから成功するわ」
 体内から体内への移動…。
「…私が拒否すれば…」
「この子は…そうね、百年か二百年くらい、出てこれないかも…。ただ、それだけ体内にいて、大丈夫なのか、不安でもあるわ。だから、私の子供を産んで欲しい」
「…。」
 時間の流れが遅いソフィアの体内で、子供が育つとは思えない。
 もし、子供が普通の人族と同じ時間を持つ者だとしたら、きっと魔力に耐えれなくて、消滅してしまう可能性もある。
 十年以上、ソフィアの体内にいて、今の状況ならば、早く外に出してあげた方が良いのは確実だ。
 こう言った場合は、他の種族はどうしているんだ?
「ソレって、リーンの子供でも有るんだよな…」
 今まで黙っていたルークが聞いてくる。
「魔女はね、女性主力なの。だから私が産めば、産まれてくる子供は、魔女ソフィアの子供になるのよ」
 そう、魔女にとっては父親より、母親が主力になる。
 父親が誰だと言うのは、軽視される…。
「…ちょっと考えさせて…。頭が追い付かない…」
 リーンは混乱していた。
 ソフィアが自分の子供を宿していたのはわかった。
 だが、私が産む…?
 今の魔力の無い状態だから、私が産める…?
 …ちょっと情報を整頓させてくれ…。
「いいわ。宴は夜だもの。月が昇るまでに考えてみて」
 ソフィアはそう言って部屋を出ていく。
「…どうしようルーク」
 頭が混乱している。
 するとルークがリーンの身体を引き寄せ、口付けてきた。
「あの魔女王ソフィアとリーンの子供なんだよな…。美人になりそうだ」
 ルークは楽観的にそう答える。
「ルーク!」
「いいんじゃないか。何百年も出てこれないのは…せっかく命が宿ったんだろ」
「…ルークは…いいの?」
 …私とソフィアの子供…を私が産む…。
「何が?」
「…。」
 リーンは何て言っていいか迷う。
「リーンの子供だろ。経緯はちょっと違うが、双子達に弟か妹を作ってあげたいとは、思ってたしな…」
 この間も、そんな話をしていたところ…。
 一度、産んだとはいえ、身体の構造が違うと思っていた。
 …眠っているだけで…また、産むことが出来る…。
 嬉しいのと恥ずかしいのとが入り交じり、リーンは真っ赤になった。
「その寛大さに呆れるよ」
 懐の大きさと言うか、どんな事でもリーンをまるごと包んでくれる、強さと言うか…。
 …私のつがい…。
「まだ、月は昇ってないが、宿したらしばらく無理できないだろ」
 ルークはそう言ってリーンを抱き上げ、ベッドルームに向かう。
「…ルーク」
「ヤリ貯めしようぜ」
 ルークは楽しそうにそう言って、リーンをベッドに座らせると服を脱ぎ始めた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして

ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。

処理中です...