神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
292 / 462
新たなる命

側に…。

しおりを挟む
 キリトとカズキがワイトデ自治区からカザンナ王国にたどり着いたとき、全ては終わっていた。
 本来ならば、もっと早くに帰れたのたが、途中で土砂崩れに会い道が塞がれ、復旧作業を手伝い、馬車が動かせるようになるまでは時間がかかった。
 何日も足止めをされているうちに、リーンは枯れていく森の『再生』を行って、眠りについてしまった。
 ヒイロさんが言うには、『森の聖域』に連れていかれるのを引き止めたので、魔力が回復するまで当分眠ったままらしい…。
 キリトは、なんとも言えない複雑な気持ちだった。
 
 キリトは、ワイトデ自治区の荷物をカザナのお屋敷に運び込み、一旦ジーンとユーリのいる王都に戻った。
 そして荷物をまとめ、カザナの屋敷に戻ると決心した。
 カザナの屋敷の小屋に一人、リーンを置いておけなかったからだ。
 王子や側近達は訪ねてくるも、それぞれ仕事を持っていたし、今回のワイトデ自治区の滞在によって、新たな交易と、道の整備が課題になり、その手配をしなくては行けなくなったからだ。
 キリトは、リーンを一人にして、『森の聖域』に連れ去られないか心配だった。
 『宿り木』ミーネの結界も有るし、ルーク王子の結界も有るから、心配することは無いのだが…。
 もともとキリトはリーンの側に居たくて、付いてきたのだ。
 そしてリーンに頼まれ、ジーンとユーリを見守ってきた…。
 そのリーンが動けない状態に有るのに…ジーンとユーリの側にいるより、リーンの側に居てあげたかった。
 その事をジーンとユーリに話し、滞在している屋敷の執事達にも伝えなくてはいけない。
 キリトは自分がどうしたいのか、伝えるために王都に戻って来たのだ。


 滞在している屋敷の『メジノの館』からは許可をもらった。
 部屋はそのまま残しておいてくれるらしく、『いつでも戻ってきなさい』と、言われて感謝した。
 ジーンとユーリの事も気掛かりだから、誰かがリーンの側にいるときは、こちらに戻って来て、二人の面倒をみるのも私の仕事の一つだ。
 ジーンとユーリが学校から帰ってきて、宿題を終え、夕食を食べ終わってから、二人のいる部屋に行って話をした。
 ジーンは『仕方ないな…』と言って苦笑いしたが、思いの外、ユーリが抵抗した。
「…折角、帰ってきたのに…」
 ユーリは寂しそうに、うつ向く。
 ワイトデ自治区に行っていたから、会うのも久しぶりだ。
「…リーンを一人にしたくないんだ」
 キリトがリーンに頼まれて、ジーンとユーリの側にいることは二人とも知っている。
「…しばらくは、ここに居てくれるの?」
「…明日にはカザナに戻る」
 キリトがそう言うとユーリは泣きそうな顔をして、涙をこらえているのがわかる…。
 …一緒に居てあげたい。
 でも、俺の優先順位は、リーンが一番上なのだ。
「…時々、戻ってくるよ」
 キリトはユーリに言い聞かせた。
「…休みになったら、カザナに…リーンに会いに来てくれても良い…。俺もいるから…」
「…。」
 ユーリは黙りとしたまま答えない。
 キリトはどうしたら良いのか分からず、二人の頭を撫でてあげると、部屋を出ていった。
 いつも側にいたから寂しのは分かる…。
 …ごめんな。
 ジーン、ユーリ…。
 

 キリトはカザナのリーンの小屋のリビングの角にベッドを運び込み、簡単な衝立をして、そこで寝泊まりするようになった。
 キッチンは有るし、シャワールームも付いていて不便は無いが、さすがにソファーで毎日眠るのは、首が痛いし落ち着かない。
 かといって、屋敷の一角に部屋をもらって通うとなると、何のためにココに来たのか分からなくなる。
 だから広いリビングを少し片付け、仮の部屋を作ったのだ。
 もちろんルーク王子にも許可をもらい、住まわせてもらっている。
 食事は使用人の方が持ってきてくれたり、頼めば食材を持って来てくれる。
 キリトはリーンの眠る小屋周辺で、リーンがやっいた薬草や果実の採取、保存、記録を始めた。
 薬草や果実は屋敷でも使うので、こまめに補充して作ったり、リーンを訪ねてくる人々の話し相手にもなっていた。

 なぁ、リーン。
 あの時、リーンに拾われてなかったら、今こうして穏やかな生活をすることは出来なかっただろう…。
 …いつの間にか、俺を理解してくれる仲間が増え、こうしてリーンの側にいれる…。
 …俺の大切な人…。
 今度は俺が、見守るから…。
 目覚めるまで…側にいるから…。
 




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして

ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...