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神の宿り木~再生 3~
キラと双子
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約束の満月の前の日の夜、炎の竜キラの元に、有翼族の二人がやって来た。
そっくりな顔をして、少し違う表情と魔力を持った双子の兄弟だった。
キラは物珍しく、好奇心一杯で二人の回りを比べながら見て回った。
「本当にそっくりだね」
「双子だからな…」
「シバ様から言われて『魔力転移』の手伝いに来たのだけれど…」
二人は戸惑いながらキラに言った。
「うん。ありがとう」
キラは嬉しそうに微笑んで、二人を部屋の中に招いた。
二人は物珍しそうに部屋の中を見て回り、時折ピクピクと翼を動かしている。
キラは久しぶりに夜、誰かと一緒にいるので、嬉しくて仕方なかった。
「その翼は眠るとき、どうしてるの?」
興味を持って聞くと、二人は違う答えをくれた。
「…そのまま…丸まって眠る」
「俺は横向き」
姿は同じなのに、返答は違って区別がつく。
気安く話しかけてくるのがイオリアス。
冷静に話してくるのがシオリアス。
「今日は一緒に寝よう!ベッドも大きいし、どんな感じで寝るのか見てみたい!」
「「…。」」
二人は硬直して、顔を見合わせる。
「…ダメ?」
キリトに教えてもらって(キリトは教えたつもりはないが)、可愛く甘えることを知ったキラは、誰にでもソレを発揮する。
「…今日だけなら…」
「…シバ様に、炎の竜キラさまの要望に答えるように、言われてるからな…」
双子は仕方ないな…と添い寝することを承諾してくれた。
「やった!」
キラは満面の微笑みで、イオリアスとシオリアスを見て言った。
「明日の朝、寝坊しそうだったら起こしてね」
キラは…それが一番、心配だった。
翌朝、日の出と共に、イオリアスとシオリアスが作り出した『魔力転移』にキラは竜体の姿で魔力を送り始めた。
昨日の夜は、イオリアスとシオリアスと一緒にベッドの上でいろんな話をして、二人の間に挟まれて眠った。
キラが、あまり行った事がない、ロバロク山の町ナシャールの話や、有翼族にはあまり馴染みのない温泉の話をして、三人は盛り上がって話した。
…久しぶりに楽しかった。
そして、明け方、キラは叩き起こされた。
朝、早いのは苦手だ…。
『炎の魔法石』の場所は事前にシバから、リムナード山付近と聞いていたらしく、二人は先に『炎の魔法石』の場所を確認していた。
「こんな強い『炎の魔法石』なら、見間違うことはないよな…」
「アレを作ったのが、キラさまだとは思えない…」
まあ、本来のキラの姿を見ていないから、信じられないのも仕方ない。
「リーンと一緒に温泉に入る為に、頑張るぞ!」
キラはそう言って服を脱ぎ、首をブルリと一振して、人の姿の倍は有る、竜体へと姿を変えた。
「「…。」」
ソレを見ていた二人は、茫然として、キラを見る。
「すげぇ…竜だ…」
「…綺麗な姿だ…」
二人は感嘆して、我にかえり、頷き有って、両手を互いに付き出した。
「「『魔力転移』」」
二人の間に魔法陣が浮かび上がり、中央に空間が開き、向こう側が見える。
ソレと同時にソコから重たい空気も流れてきた。
キラはソレを押し込めるように空間に魔力を注ぎ、二人が向こう側の目標の『炎の魔法石』を見つけ、裂け目から『炎の魔法石』が見えると、ソコへ魔力を送り続けた。
側にリーンの気配を感じる…。
…リーン。
キースみたいに消えないでくれ!
キラの心の叫びだった。
どれだけの時間が過ぎたのかわからない。
双子のイオリアスとシオリアスは荒い息をして、汗が吹き出ている。
…日は登った。
まだなのか…?
キラは焦りを感じていた。
『魔力転移』を行っている二人の魔力が持たない…。
キラは火山地帯にいるので、大地の奥の火山から魔力をもらって送り続けることは出来る。
その分、噴火はしばらく起こらない…。
けれど、反動で噴火する可能性が有るから、そろそろギリギリだ…。
そんな事を思っていると、魔力の流動が止まった。
キラが魔力を止めると、イオリアスとシオリアスも空間を閉じ、その場にしゃがみこんで、大地に寝転んだ。
「…もう…無理…」
「…身体が…痺れて…動け…ない…」
二人とも荒い息をして、ぐったりと寝転んだまま…。
「ありがとう…」
キラは二人にお礼を言うと、『風霊』に気配を探ってもらった。
まだ、魔力が渦巻いていて、誰も近付くことが出来ない…。
…リーンは無事なのだろうか…。
キラは人の姿に戻ると、脱ぎ捨てた服を着て、小屋の中に入り、コップに冷水を持って二人の元に戻ってきた。
「お水…飲む?」
キラがそう言うと、イオリアスは身体をゆっくりと起こし、コップを受け取って、水を飲み始めた。
シオリアスも身体をゆっくりと起して、ため息をついた。
「…さすがに疲れた…」
キラははシオリアスにもコップを渡し、ゆっくりと飲み始めた。
飲み終わると二人は、「はぁ」と、大きな息をついて再び寝転がった。
「…キラさま…。今日も泊まっても良い?」
「…俺も言おうと思った。…帰る…元気は無い」
二人とも飛んで来たのだ。
隣のロバロク山まで帰ろうと思うと、かなりの距離がある。
「良いよ!昨日の続きの話をしようよ!」
キラはニコニコ顔で二人に答える。
「お腹空いたし、朝御飯の準備するね」
キラは二人のコップをもらい、小屋へと戻っていった。
やった!
また、一緒に川の字になって寝れる!
キラはウキウキとしながら、朝食の準備を始めた。
魔女王は協力すれば、リーンは消えないって言ってた…。
ソレを信じるしかない…。
…リーンは大丈夫だよね。
しばらくして、『風霊』が教えてくれた。
キースみたいに連れては行かれなかったけど、眠ったままだって…。
魔力が戻れば目が覚めるだろうって、言っていた。
今度、リーンの所に行ってみよう。
僕からリーンに会いに…。
そっくりな顔をして、少し違う表情と魔力を持った双子の兄弟だった。
キラは物珍しく、好奇心一杯で二人の回りを比べながら見て回った。
「本当にそっくりだね」
「双子だからな…」
「シバ様から言われて『魔力転移』の手伝いに来たのだけれど…」
二人は戸惑いながらキラに言った。
「うん。ありがとう」
キラは嬉しそうに微笑んで、二人を部屋の中に招いた。
二人は物珍しそうに部屋の中を見て回り、時折ピクピクと翼を動かしている。
キラは久しぶりに夜、誰かと一緒にいるので、嬉しくて仕方なかった。
「その翼は眠るとき、どうしてるの?」
興味を持って聞くと、二人は違う答えをくれた。
「…そのまま…丸まって眠る」
「俺は横向き」
姿は同じなのに、返答は違って区別がつく。
気安く話しかけてくるのがイオリアス。
冷静に話してくるのがシオリアス。
「今日は一緒に寝よう!ベッドも大きいし、どんな感じで寝るのか見てみたい!」
「「…。」」
二人は硬直して、顔を見合わせる。
「…ダメ?」
キリトに教えてもらって(キリトは教えたつもりはないが)、可愛く甘えることを知ったキラは、誰にでもソレを発揮する。
「…今日だけなら…」
「…シバ様に、炎の竜キラさまの要望に答えるように、言われてるからな…」
双子は仕方ないな…と添い寝することを承諾してくれた。
「やった!」
キラは満面の微笑みで、イオリアスとシオリアスを見て言った。
「明日の朝、寝坊しそうだったら起こしてね」
キラは…それが一番、心配だった。
翌朝、日の出と共に、イオリアスとシオリアスが作り出した『魔力転移』にキラは竜体の姿で魔力を送り始めた。
昨日の夜は、イオリアスとシオリアスと一緒にベッドの上でいろんな話をして、二人の間に挟まれて眠った。
キラが、あまり行った事がない、ロバロク山の町ナシャールの話や、有翼族にはあまり馴染みのない温泉の話をして、三人は盛り上がって話した。
…久しぶりに楽しかった。
そして、明け方、キラは叩き起こされた。
朝、早いのは苦手だ…。
『炎の魔法石』の場所は事前にシバから、リムナード山付近と聞いていたらしく、二人は先に『炎の魔法石』の場所を確認していた。
「こんな強い『炎の魔法石』なら、見間違うことはないよな…」
「アレを作ったのが、キラさまだとは思えない…」
まあ、本来のキラの姿を見ていないから、信じられないのも仕方ない。
「リーンと一緒に温泉に入る為に、頑張るぞ!」
キラはそう言って服を脱ぎ、首をブルリと一振して、人の姿の倍は有る、竜体へと姿を変えた。
「「…。」」
ソレを見ていた二人は、茫然として、キラを見る。
「すげぇ…竜だ…」
「…綺麗な姿だ…」
二人は感嘆して、我にかえり、頷き有って、両手を互いに付き出した。
「「『魔力転移』」」
二人の間に魔法陣が浮かび上がり、中央に空間が開き、向こう側が見える。
ソレと同時にソコから重たい空気も流れてきた。
キラはソレを押し込めるように空間に魔力を注ぎ、二人が向こう側の目標の『炎の魔法石』を見つけ、裂け目から『炎の魔法石』が見えると、ソコへ魔力を送り続けた。
側にリーンの気配を感じる…。
…リーン。
キースみたいに消えないでくれ!
キラの心の叫びだった。
どれだけの時間が過ぎたのかわからない。
双子のイオリアスとシオリアスは荒い息をして、汗が吹き出ている。
…日は登った。
まだなのか…?
キラは焦りを感じていた。
『魔力転移』を行っている二人の魔力が持たない…。
キラは火山地帯にいるので、大地の奥の火山から魔力をもらって送り続けることは出来る。
その分、噴火はしばらく起こらない…。
けれど、反動で噴火する可能性が有るから、そろそろギリギリだ…。
そんな事を思っていると、魔力の流動が止まった。
キラが魔力を止めると、イオリアスとシオリアスも空間を閉じ、その場にしゃがみこんで、大地に寝転んだ。
「…もう…無理…」
「…身体が…痺れて…動け…ない…」
二人とも荒い息をして、ぐったりと寝転んだまま…。
「ありがとう…」
キラは二人にお礼を言うと、『風霊』に気配を探ってもらった。
まだ、魔力が渦巻いていて、誰も近付くことが出来ない…。
…リーンは無事なのだろうか…。
キラは人の姿に戻ると、脱ぎ捨てた服を着て、小屋の中に入り、コップに冷水を持って二人の元に戻ってきた。
「お水…飲む?」
キラがそう言うと、イオリアスは身体をゆっくりと起こし、コップを受け取って、水を飲み始めた。
シオリアスも身体をゆっくりと起して、ため息をついた。
「…さすがに疲れた…」
キラははシオリアスにもコップを渡し、ゆっくりと飲み始めた。
飲み終わると二人は、「はぁ」と、大きな息をついて再び寝転がった。
「…キラさま…。今日も泊まっても良い?」
「…俺も言おうと思った。…帰る…元気は無い」
二人とも飛んで来たのだ。
隣のロバロク山まで帰ろうと思うと、かなりの距離がある。
「良いよ!昨日の続きの話をしようよ!」
キラはニコニコ顔で二人に答える。
「お腹空いたし、朝御飯の準備するね」
キラは二人のコップをもらい、小屋へと戻っていった。
やった!
また、一緒に川の字になって寝れる!
キラはウキウキとしながら、朝食の準備を始めた。
魔女王は協力すれば、リーンは消えないって言ってた…。
ソレを信じるしかない…。
…リーンは大丈夫だよね。
しばらくして、『風霊』が教えてくれた。
キースみたいに連れては行かれなかったけど、眠ったままだって…。
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僕からリーンに会いに…。
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