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神の宿り木~再生 3~
魔女王の策略 3
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時が近づいている…。
…『風霊』達が騒ぎだした。
…もう、時間がない…。
ソフィアは、まだワイトデ自治区にいるはずの、リーンの元に『魔女の抜け道』を繋げた。
「ずいぶん遠くにいるのね」
リーンは気配を察知したのか、驚いた様子もない。
見える景色は森の深い場所で、側に山小屋が見え、遠くで賑やかな声がする…。
「…今から帰るよ」
リーンがそう言うと、ソフィアは真剣な眼差しで言った。
「…次の満月に…」
「…。」
ソフィアはそう言って、『魔女の抜け道』を閉じた。
リーンには、それで分かるはず…。
侵食が進んでいることが…。
『物質保管庫』の気配から、全ての『魔法石』が揃ったのを感じる。
『物質保管庫』は、ソフィアとリーンと共同で作り、リーンが使っている収納庫。
なので、ソフィアにも開けることが出きるのだ。
…ソフィアは使ったことは、ほとんど無いが…。
…やはり、まだ足りない…。
バランス良く、『魔法石』の魔力が揃って、初めてリーンの生存率が上がるのだ。
…浄化して『再生』を行うには、『炎の魔法石』の魔力が足りない。
ソフィアは少し考え、『魔女の抜け道』を炎の竜の元に繋いだ。
ここ間、リーンに伝言するため『魔女の抜け道』を使った場所になら、開くことは出来る。
深い森の山小屋…。
気配は感じるが、姿が見えない…。
ソフィアは、ぼんやりと、のどかな風景を眺めて待っていた。
柔らかな風がソフィアの金色の髪を揺らす…。
木葉がサラサラと揺れて、鳥が飛び交う…。
穏やかな時間…。
リムナード山では侵食が進み、朽ちようとしているなんて、嘘のようだ…。
…けれど、今、止めなければ、この地域の緑も…時間も、訪れなくなってしまう…。
一点の場所から始まった反転の魔法が、円状態に範囲を拡げて進行している。
…急速に面積を拡大しているのだ。
炎の竜は、協力してくれるだろうか…。
ズシン、ズシンと音がして、竜体の炎の竜が姿を現し、物珍しそうに『魔女の抜け道』を覗いてきた。
赤色と言うよりはエンジ色の艶の有る美しい鱗を持った、背丈の倍はある、炎の竜の姿にソフィアは微笑んだ。
「こんにちは。シラミネの魔女王ソフィアよ。貴方にお願いしたいことが有って来たの。…人の姿になれるかしら…」
ソフィアがそう言うと、ブルッと首を震わせ、竜体が縮み人の姿へと変わっていく…。
赤毛の青年の姿だ。
そして小屋の中に入り、服を着て戻ってきた。
「…僕は、キラ」
「炎の竜キラ。貴方にお願いがあって来た。…リーンが消えないようにするため、次の満月の日の出と共に『炎の魔法石』に魔力を送って欲しい」
「…リーン…が、消える…?」
キラは不思議そうに首を傾げる。
「…『浄化』と『再生』と『成長』の魔法を使うと、魔力を使い果たし、深い眠りについてしまう…。そうならないため、協力して欲しい」
キラの表情が強ばり、ソフィアを見てくる。
「…キースが…眠りに付いたみたいにか…?」
「…キース?」
…そう言えば、シバもその様な事を言っていた。
「…リーンの…昔の…ここに来たの時の名前だよ…」
もしかして、リーン…キースはキラの目の前で眠りについたのかしら…?
「…協力すれば、リーンはまた、ここに来てくれる?」
「…そうね。リーンならまた、来ることは出来るわ」
眠りについて、記憶を無くしてしまったら、来れない可能性の方が高くなる。
キラは頷いた。
「協力してもいいけど、遠くに有る『炎の魔法石』に魔力を送るのは、どうすれば良いの?」
「『転移』の魔法を使える?」
「…翼で飛ぶから、必要なくて覚えてない」
「…。」
それは誤算だった。
炎の竜キラの行動範囲は、アリミネ火山周辺だけなのだろう…。
すぐに覚えれる魔法ではないし…。
「シバに…有翼族のシバに、お願いしておくわ。『魔力転移』を使えるものを派遣してって…」
シバならば、誰か知っているかもしれない。
『魔力転移』を扱える者を…。
「わかった。…この話し…ワイトデ自治区の領主に話してもいい?…魔力を蓄えるため、お仕事、しばらく手伝えないって伝えたいんだけど」
「何を手伝っているの?」
ソフィアは好奇心で聞いてみた。
「温泉作り。…新しいところでお湯が涌き出たから、回りの環境を整えていて、僕が竜体で入れる場所を作ってくれるって言うから、手伝ってるの。…遠目に海が見えるんだ」
炎の竜キラは嬉しそうに、そう話す。
「…温泉に入りながら、海が見えるのは良いわね」
確かここは内陸だから、少し海から離れている。
今までと、違う場所から涌き出たのかもしれない…。
「完成したら、リーンと一緒に温泉に入りたいな」
「…そうね。領主に話しても良いわ」
ソコから彼らに伝わったとしても、その時にはリーンは『始まりの宿り木』の元にいるだろう…。
「よろしくね」
ソフィアはそう言って『魔女の抜け道』を閉じ、有翼族のシバのもとへ繋ぎ、炎の竜の元に、『魔力転移』を使える者を派遣して欲しいと頼みに行った。
…ねえ、リーン。
貴方の事を無くしたくないと思う人が、こんなに、たくさんいるのよ…。
…もっと自分の事を大切にして、皆と一緒に生きていきましょう…。
…『風霊』達が騒ぎだした。
…もう、時間がない…。
ソフィアは、まだワイトデ自治区にいるはずの、リーンの元に『魔女の抜け道』を繋げた。
「ずいぶん遠くにいるのね」
リーンは気配を察知したのか、驚いた様子もない。
見える景色は森の深い場所で、側に山小屋が見え、遠くで賑やかな声がする…。
「…今から帰るよ」
リーンがそう言うと、ソフィアは真剣な眼差しで言った。
「…次の満月に…」
「…。」
ソフィアはそう言って、『魔女の抜け道』を閉じた。
リーンには、それで分かるはず…。
侵食が進んでいることが…。
『物質保管庫』の気配から、全ての『魔法石』が揃ったのを感じる。
『物質保管庫』は、ソフィアとリーンと共同で作り、リーンが使っている収納庫。
なので、ソフィアにも開けることが出きるのだ。
…ソフィアは使ったことは、ほとんど無いが…。
…やはり、まだ足りない…。
バランス良く、『魔法石』の魔力が揃って、初めてリーンの生存率が上がるのだ。
…浄化して『再生』を行うには、『炎の魔法石』の魔力が足りない。
ソフィアは少し考え、『魔女の抜け道』を炎の竜の元に繋いだ。
ここ間、リーンに伝言するため『魔女の抜け道』を使った場所になら、開くことは出来る。
深い森の山小屋…。
気配は感じるが、姿が見えない…。
ソフィアは、ぼんやりと、のどかな風景を眺めて待っていた。
柔らかな風がソフィアの金色の髪を揺らす…。
木葉がサラサラと揺れて、鳥が飛び交う…。
穏やかな時間…。
リムナード山では侵食が進み、朽ちようとしているなんて、嘘のようだ…。
…けれど、今、止めなければ、この地域の緑も…時間も、訪れなくなってしまう…。
一点の場所から始まった反転の魔法が、円状態に範囲を拡げて進行している。
…急速に面積を拡大しているのだ。
炎の竜は、協力してくれるだろうか…。
ズシン、ズシンと音がして、竜体の炎の竜が姿を現し、物珍しそうに『魔女の抜け道』を覗いてきた。
赤色と言うよりはエンジ色の艶の有る美しい鱗を持った、背丈の倍はある、炎の竜の姿にソフィアは微笑んだ。
「こんにちは。シラミネの魔女王ソフィアよ。貴方にお願いしたいことが有って来たの。…人の姿になれるかしら…」
ソフィアがそう言うと、ブルッと首を震わせ、竜体が縮み人の姿へと変わっていく…。
赤毛の青年の姿だ。
そして小屋の中に入り、服を着て戻ってきた。
「…僕は、キラ」
「炎の竜キラ。貴方にお願いがあって来た。…リーンが消えないようにするため、次の満月の日の出と共に『炎の魔法石』に魔力を送って欲しい」
「…リーン…が、消える…?」
キラは不思議そうに首を傾げる。
「…『浄化』と『再生』と『成長』の魔法を使うと、魔力を使い果たし、深い眠りについてしまう…。そうならないため、協力して欲しい」
キラの表情が強ばり、ソフィアを見てくる。
「…キースが…眠りに付いたみたいにか…?」
「…キース?」
…そう言えば、シバもその様な事を言っていた。
「…リーンの…昔の…ここに来たの時の名前だよ…」
もしかして、リーン…キースはキラの目の前で眠りについたのかしら…?
「…協力すれば、リーンはまた、ここに来てくれる?」
「…そうね。リーンならまた、来ることは出来るわ」
眠りについて、記憶を無くしてしまったら、来れない可能性の方が高くなる。
キラは頷いた。
「協力してもいいけど、遠くに有る『炎の魔法石』に魔力を送るのは、どうすれば良いの?」
「『転移』の魔法を使える?」
「…翼で飛ぶから、必要なくて覚えてない」
「…。」
それは誤算だった。
炎の竜キラの行動範囲は、アリミネ火山周辺だけなのだろう…。
すぐに覚えれる魔法ではないし…。
「シバに…有翼族のシバに、お願いしておくわ。『魔力転移』を使えるものを派遣してって…」
シバならば、誰か知っているかもしれない。
『魔力転移』を扱える者を…。
「わかった。…この話し…ワイトデ自治区の領主に話してもいい?…魔力を蓄えるため、お仕事、しばらく手伝えないって伝えたいんだけど」
「何を手伝っているの?」
ソフィアは好奇心で聞いてみた。
「温泉作り。…新しいところでお湯が涌き出たから、回りの環境を整えていて、僕が竜体で入れる場所を作ってくれるって言うから、手伝ってるの。…遠目に海が見えるんだ」
炎の竜キラは嬉しそうに、そう話す。
「…温泉に入りながら、海が見えるのは良いわね」
確かここは内陸だから、少し海から離れている。
今までと、違う場所から涌き出たのかもしれない…。
「完成したら、リーンと一緒に温泉に入りたいな」
「…そうね。領主に話しても良いわ」
ソコから彼らに伝わったとしても、その時にはリーンは『始まりの宿り木』の元にいるだろう…。
「よろしくね」
ソフィアはそう言って『魔女の抜け道』を閉じ、有翼族のシバのもとへ繋ぎ、炎の竜の元に、『魔力転移』を使える者を派遣して欲しいと頼みに行った。
…ねえ、リーン。
貴方の事を無くしたくないと思う人が、こんなに、たくさんいるのよ…。
…もっと自分の事を大切にして、皆と一緒に生きていきましょう…。
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