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神の宿り木~再生 3~
魔女王の策略 2
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あまり会いたくは無いが、背に腹は変えられない…。
ソフィアは父親…シバの元に『魔女の抜け道』を繋いだ。
シバは有翼族の町ナシャールを治める首領で、光の塔の側に、神殿みたいな豪華な屋敷をかまえ、そこで家族…親族と共に暮らしている。
ソフィアが『魔女の抜け道』で、出た場所は、光の塔の最上階…。
昔、よくここに登り、レンガ造りの町を眺めていた。
遠くまで見渡せるこの場所は、翼が無く飛べないソフィアにとって、一番空に近い隠れ家でもあった。
「…珍しい客人だな」
有翼族のシバは、大きな翼をはためかせ、突然開いた『魔女の抜け道』に驚きもせず、こちらを見ていた。
「…協力して欲しいんだけど」
「…内容しだいによる」
シバは相変わらず年を取らないまま…。
ずいぶん前に会った時と同じ姿…。
一体、幾つになったのよ!
シバはじっとこちらを見ている。
「…出会った頃の…母親とそっくりに、なってきたな…」
シバは懐かしむように、目を細めてそう言う。
「何十年…何百年前の話をしているの…?」
「…どれくらい経過しているかな…」
シバはのんびりとそう答える。
この人と話していると、時間を忘れる…。
のらりくらりと、昔話が始まってしまうからだ。
…懐かしむ思い出が、多すぎるからかもしれない…。
ソフィアは気を取り直して言った。
「…もうすぐ、『炎の魔法石』を求めてカザンナ王国から使者が来る。リムナード山が、朽ち果てるのを止めるために…。その魔法石を使って魔法を使うとき、『風の魔法石』に魔力を注いで欲しいの」
「…。」
突然のことで、言葉無くシバは驚いている。
「…『魔女の森』の水脈も、この先に有るみたいで、地下水が年々減少している」
どこまで信用してくれるかだ。
「…近くの有翼族に頼めないのか?」
…普通はそう考える。
「『風の魔法石』を作っているから無理よ」
シバは、しばらく考え込んだ。
「…対価は…?」
「…私ではなく、魔法を使う本人が払ってくれるみたい…」
ソフィアはそう言いながら、自分で首を傾げた。
…魔法を使う本人…リーンの事だ。
なにの事か分からないが、そう感じた。
「…母親譲りの予知か…」
シバは苦笑いして、ソフィアを見る。
「…魔法を使う者が、カザンナ王国からの使者なのか?」
「…ちょっと違うけど、使者の…番よ」
「…。」
質問されたことに正直に答えることが、シバを動かす原動力になる。
…嘘を付くと、見抜かれ、信用してくれなくなるからだ。
「…決めるのは、使者の…番に会ってからでも良いか?」
そう簡単に、決断できる問題ではない。
遠く離れたリムナード山まで魔力を送る為には、いくつかの魔法陣を兼用して発動し、魔力を送ることになる。
ソレだけの魔力を使うとなると、ナシャールの町の結界にも多少なり影響が出てくるかもしれない…。
「かまわないわ。言い返事を待ってる」
そう言って、ソフィアは『魔女の抜け道』を閉じた。
きっとシバは、よい返事をくれ、協力してくれる。
それは確信だった。
その最大の条件が、リーンに会うことだった。
…どこかで、知り合ったのかしら?
二人とも、長い時間を生きているから、どこかで出会っているのかも知れないわね…。
ソフィアは『魔女の森』で、そんな事を思いながら、次にしておかなくてはいけない事に頭を巡らせた。
『風霊』が、知らせてきてくれた。
リーンがナシャールの町を出て、ワイトデ自治区に向かったことを…。
そろそろかしら…。
ソフィアは『魔女の抜け道』を使って、再びシバの元に繋いだ。
今度は部屋の中…。
それも目の前に、リーンと炎の竜の絵姿が飾られていた。
…どう言うこと…?
ソフィアは『魔女の抜け道』から見える、絵に…それも何枚も有る絵に驚いていると、シバがのんびりと声をかけてきた。
「…使者の…番は、キース…今はリーンだったか…。彼の事だったんだな…」
シバは絵を見ながら懐かしんで話し始めた。
「彼には、何も返せないまま、分かれてしまったからな…。それを返す分となると、協力しないわけには、いかないだろう…」
「リーンはここに来たことがあるの?」
ソフィアは疑問に思っていた事を聞いた。
「ああ。その時は、キースと言う名前で、炎の竜が目覚めた時に出会った…。そして、人族と獣人族、有翼族の交流のきっかけになった人だ…」
「そうだったの…」
ソフィアはリーンしか、知らない。
そのいくつか前の名前がキースなのだろう。
それくらい、シバが生きていると、言うことだが…。
「…協力してくれるのね」
「ああ。協力する。…いつ決行する予定だ?」
「…次の満月に…」
ソフィアはそう言った。
…時間がない…侵食が進んでいる…。
『風霊』達が近づけないエリアが増えてきた…。
「急ぎだな…。まあ、何とかしよう…」
シバはそう言って微笑んだ。
「…その絵…一枚もらえないかしら…」
ソフィアは思わずそう言ってしまった。
これはキースを描いたモノだけど、姿はリーンそのもの…。
リーンを描いた絵は、私の部屋に一枚もない…。
シバは珍しそうに、ソフィアを見てくる。
「…思い入れが有るのかい?」
「…まあね。リーンと、長い付き合いだけど、なんかその絵、良いなって思ったから…」
ソフィアが少し照れ臭そうに言うと、シバは壁にかけてあった絵を外し、『魔女の抜け道』から覗くソフィアに差し出して来た。
「持っていきなさい」
「…良いの…?」
言ったソフィアの方が驚いた。
もらえるなんて、思わなかったからだ。
ソフィアは両手で抱えるくらいの、その絵を受け取り、嬉しそうにシバに微笑んだ。
「ありがとう…」
そしてソフィアは『魔女の抜け道』を閉じた。
ソフィアは父親…シバの元に『魔女の抜け道』を繋いだ。
シバは有翼族の町ナシャールを治める首領で、光の塔の側に、神殿みたいな豪華な屋敷をかまえ、そこで家族…親族と共に暮らしている。
ソフィアが『魔女の抜け道』で、出た場所は、光の塔の最上階…。
昔、よくここに登り、レンガ造りの町を眺めていた。
遠くまで見渡せるこの場所は、翼が無く飛べないソフィアにとって、一番空に近い隠れ家でもあった。
「…珍しい客人だな」
有翼族のシバは、大きな翼をはためかせ、突然開いた『魔女の抜け道』に驚きもせず、こちらを見ていた。
「…協力して欲しいんだけど」
「…内容しだいによる」
シバは相変わらず年を取らないまま…。
ずいぶん前に会った時と同じ姿…。
一体、幾つになったのよ!
シバはじっとこちらを見ている。
「…出会った頃の…母親とそっくりに、なってきたな…」
シバは懐かしむように、目を細めてそう言う。
「何十年…何百年前の話をしているの…?」
「…どれくらい経過しているかな…」
シバはのんびりとそう答える。
この人と話していると、時間を忘れる…。
のらりくらりと、昔話が始まってしまうからだ。
…懐かしむ思い出が、多すぎるからかもしれない…。
ソフィアは気を取り直して言った。
「…もうすぐ、『炎の魔法石』を求めてカザンナ王国から使者が来る。リムナード山が、朽ち果てるのを止めるために…。その魔法石を使って魔法を使うとき、『風の魔法石』に魔力を注いで欲しいの」
「…。」
突然のことで、言葉無くシバは驚いている。
「…『魔女の森』の水脈も、この先に有るみたいで、地下水が年々減少している」
どこまで信用してくれるかだ。
「…近くの有翼族に頼めないのか?」
…普通はそう考える。
「『風の魔法石』を作っているから無理よ」
シバは、しばらく考え込んだ。
「…対価は…?」
「…私ではなく、魔法を使う本人が払ってくれるみたい…」
ソフィアはそう言いながら、自分で首を傾げた。
…魔法を使う本人…リーンの事だ。
なにの事か分からないが、そう感じた。
「…母親譲りの予知か…」
シバは苦笑いして、ソフィアを見る。
「…魔法を使う者が、カザンナ王国からの使者なのか?」
「…ちょっと違うけど、使者の…番よ」
「…。」
質問されたことに正直に答えることが、シバを動かす原動力になる。
…嘘を付くと、見抜かれ、信用してくれなくなるからだ。
「…決めるのは、使者の…番に会ってからでも良いか?」
そう簡単に、決断できる問題ではない。
遠く離れたリムナード山まで魔力を送る為には、いくつかの魔法陣を兼用して発動し、魔力を送ることになる。
ソレだけの魔力を使うとなると、ナシャールの町の結界にも多少なり影響が出てくるかもしれない…。
「かまわないわ。言い返事を待ってる」
そう言って、ソフィアは『魔女の抜け道』を閉じた。
きっとシバは、よい返事をくれ、協力してくれる。
それは確信だった。
その最大の条件が、リーンに会うことだった。
…どこかで、知り合ったのかしら?
二人とも、長い時間を生きているから、どこかで出会っているのかも知れないわね…。
ソフィアは『魔女の森』で、そんな事を思いながら、次にしておかなくてはいけない事に頭を巡らせた。
『風霊』が、知らせてきてくれた。
リーンがナシャールの町を出て、ワイトデ自治区に向かったことを…。
そろそろかしら…。
ソフィアは『魔女の抜け道』を使って、再びシバの元に繋いだ。
今度は部屋の中…。
それも目の前に、リーンと炎の竜の絵姿が飾られていた。
…どう言うこと…?
ソフィアは『魔女の抜け道』から見える、絵に…それも何枚も有る絵に驚いていると、シバがのんびりと声をかけてきた。
「…使者の…番は、キース…今はリーンだったか…。彼の事だったんだな…」
シバは絵を見ながら懐かしんで話し始めた。
「彼には、何も返せないまま、分かれてしまったからな…。それを返す分となると、協力しないわけには、いかないだろう…」
「リーンはここに来たことがあるの?」
ソフィアは疑問に思っていた事を聞いた。
「ああ。その時は、キースと言う名前で、炎の竜が目覚めた時に出会った…。そして、人族と獣人族、有翼族の交流のきっかけになった人だ…」
「そうだったの…」
ソフィアはリーンしか、知らない。
そのいくつか前の名前がキースなのだろう。
それくらい、シバが生きていると、言うことだが…。
「…協力してくれるのね」
「ああ。協力する。…いつ決行する予定だ?」
「…次の満月に…」
ソフィアはそう言った。
…時間がない…侵食が進んでいる…。
『風霊』達が近づけないエリアが増えてきた…。
「急ぎだな…。まあ、何とかしよう…」
シバはそう言って微笑んだ。
「…その絵…一枚もらえないかしら…」
ソフィアは思わずそう言ってしまった。
これはキースを描いたモノだけど、姿はリーンそのもの…。
リーンを描いた絵は、私の部屋に一枚もない…。
シバは珍しそうに、ソフィアを見てくる。
「…思い入れが有るのかい?」
「…まあね。リーンと、長い付き合いだけど、なんかその絵、良いなって思ったから…」
ソフィアが少し照れ臭そうに言うと、シバは壁にかけてあった絵を外し、『魔女の抜け道』から覗くソフィアに差し出して来た。
「持っていきなさい」
「…良いの…?」
言ったソフィアの方が驚いた。
もらえるなんて、思わなかったからだ。
ソフィアは両手で抱えるくらいの、その絵を受け取り、嬉しそうにシバに微笑んだ。
「ありがとう…」
そしてソフィアは『魔女の抜け道』を閉じた。
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