285 / 462
神の宿り木~再生 3~
迎え
しおりを挟む
ルークとヒイロがいる場所にまで『成長』の魔法が届き、足元に小さな花が咲きだした。
雑草だが、今まで何も無かったところに小さな花が点々と咲いたのだ…。
それと同時に魔法陣が消え、結界も消えた。
ルークは駆け出していた。
視界に『宿り木』が見え、側に人影が見えたからだ。
「リーン!」
ルークが叫ぶが声は届いていないようだ。
「リーン!」
人影が…リーンが『宿り木』にもたれ掛かり、そのまま足元に崩れ倒れるのが見えた。
そこへ、『宿り木』に宿ったばかりの子供の『木霊』が姿を現し、『木霊』はリーンに手を伸ばしている。
「…リーン!」
間に合ってくれ!
二人が触れあう直前に、ルークはリーンを『木霊』から引き離した。
…リーンの身体はルークの腕の中にすっぽりと収まり、魔力を使いきったリーンは、ぐったりと目を閉じルークにもたれ掛かっている。
…体温が下がっている…。
無理に魔力の放出を行い、衰弱している…。
だったら、魔力を補うしかない!
「体液で魔力を補えるんだろ!?」
ルークはそう言ってリーンに口付け、リーンに魔力の体液を送り込む。
しばらくすると、リーンがゆっくりと目を開けた…。
ルークが唇を離なすと、リーンが『宿り木』の子供へと視線を移した。
「…この大地を…お守り下さい…ナジム…」
子供の『宿り木』ナジムがリーンにそっと触れ、にっこりと笑って姿を消した。
「…リーン…」
ルークが力を無くしたリーンを抱き抱え、顔を覗き込むと、リーンは微かに微笑んでいた。
「…最後に…会えて…嬉しい…」
リーンはそう言って意識を失った。
「リーン!」
ルークは力が無くなって、ぐったりとしたリーンの身体を抱き締めた。
「リーン!!」
ルークの悲痛な叫びが木霊した。
「まだ、微かに息はしている…」
側にいたヒイロが冷静にリーンの様子を見てそう言った。
ルークはハッとして、呼吸を確かめると、微かに息がかかり、心音を確かめると、微弱で弱いが、まだ生きている!
「ヒイロ!」
「…仮死状態だ。無くした魔力を少しでも補えば、身体が回復するはず!」
ルークはリーンを抱き抱えたまま『フィールド』を展開して、リーンに魔力を注ぎ込んだ。
心音が戻れば、身体全体に魔力が巡るはず…。
俺達を置いていくな!
ルークの焦る気持ちに気がついたヒイロが、声をかけてきた。
「ゆっくり魔力を注ぐんだ。身体中に魔力を巡らせるように…。お前達は番だから、拒絶反応は無いはず…。焦らずリーンの体温か戻ってくるまで耐えるんだ!」
ヒイロがそう言うと、大地から蔦が何本も飛び出して来た。
「来たな…」
ルークはハッとした。
「ルーク、絶対に奪われるんじゃ無いぞ!」
ヒイロはそう言って魔法で杖を呼び出すと、それで蔦を叩き落とし始めた。
次々と大地から蔦が飛び出し、リーンを連れ去ろうと向かってくる。
…剣で切るわけにはいかないのか…。
ルークはリーンが言っていたことを思い出す。
『森の聖域』が仮死状態になったリーンを迎えに来たのだ。
いわば、リーンを死なせないために『森の聖域』へと連れて帰ろうとしているだけで、危害を加えるわけではない…。
ただ、記憶を無くしてしまうだけで…。
「リーンは俺達が死なせない!連れていかないでくれ!」
ルークは訴えた。
誰に言うでもなしに…誰に言えば良いのか分からず、そう叫んだ。
蔦はそれでも、ルークの『フィールド』内にも入ってきて、リーンを捕まえようとするのを必死に阻止する。
頼むから、連れていくな!
しかし蔦はルークの腕を掴み、リーンの足を掴み、しだいに二人は蔦が絡まり、身動き出来なくなってしまう。
それでもルークはリーンを離さず魔力を送り続けた。
「俺からリーンを奪わないでくれ!」
どれだけ、蔦とルークとヒイロの攻防が続いたのだろう…。
急に、蔦がほどけ、大地に消えていった…。
まるで何事も無かったかのように、蔦は姿を消したのだ。
「…大丈夫…なのか…?」
「…手を…引いた…?」
ルークとヒイロは顔を見合せた。
そして気が付く。
ルークの腕の中にいるリーンの体温が少し戻ってきていることを…心音が、聞こえることを…。
「…リーン…」
ルークはリーンを抱き締めた。
蔦が手を引いたのは、リーンの鼓動が戻ってきたからなのかも…。
大丈夫だと確信したから、手を引いてくれたのかもしれなかった。
「…帰ろう…リーン…」
ルークはリーンの漆黒の髪の毛を撫でた。
新しい『宿り木』の葉が、サワサワと風に揺られている。
今まで感じなかった、風を感じた…。
『風霊』がふわりとやってきて、リーンに触れ、どこかへと飛んでいく…。
『風霊』達も、ここへ来れるようになったのだ…。
もとに戻った大地や木々は、しだいに、この地を呑み込み、あの集落跡も森に帰るだろう…。
リーンが望んでいた通りに…。
雑草だが、今まで何も無かったところに小さな花が点々と咲いたのだ…。
それと同時に魔法陣が消え、結界も消えた。
ルークは駆け出していた。
視界に『宿り木』が見え、側に人影が見えたからだ。
「リーン!」
ルークが叫ぶが声は届いていないようだ。
「リーン!」
人影が…リーンが『宿り木』にもたれ掛かり、そのまま足元に崩れ倒れるのが見えた。
そこへ、『宿り木』に宿ったばかりの子供の『木霊』が姿を現し、『木霊』はリーンに手を伸ばしている。
「…リーン!」
間に合ってくれ!
二人が触れあう直前に、ルークはリーンを『木霊』から引き離した。
…リーンの身体はルークの腕の中にすっぽりと収まり、魔力を使いきったリーンは、ぐったりと目を閉じルークにもたれ掛かっている。
…体温が下がっている…。
無理に魔力の放出を行い、衰弱している…。
だったら、魔力を補うしかない!
「体液で魔力を補えるんだろ!?」
ルークはそう言ってリーンに口付け、リーンに魔力の体液を送り込む。
しばらくすると、リーンがゆっくりと目を開けた…。
ルークが唇を離なすと、リーンが『宿り木』の子供へと視線を移した。
「…この大地を…お守り下さい…ナジム…」
子供の『宿り木』ナジムがリーンにそっと触れ、にっこりと笑って姿を消した。
「…リーン…」
ルークが力を無くしたリーンを抱き抱え、顔を覗き込むと、リーンは微かに微笑んでいた。
「…最後に…会えて…嬉しい…」
リーンはそう言って意識を失った。
「リーン!」
ルークは力が無くなって、ぐったりとしたリーンの身体を抱き締めた。
「リーン!!」
ルークの悲痛な叫びが木霊した。
「まだ、微かに息はしている…」
側にいたヒイロが冷静にリーンの様子を見てそう言った。
ルークはハッとして、呼吸を確かめると、微かに息がかかり、心音を確かめると、微弱で弱いが、まだ生きている!
「ヒイロ!」
「…仮死状態だ。無くした魔力を少しでも補えば、身体が回復するはず!」
ルークはリーンを抱き抱えたまま『フィールド』を展開して、リーンに魔力を注ぎ込んだ。
心音が戻れば、身体全体に魔力が巡るはず…。
俺達を置いていくな!
ルークの焦る気持ちに気がついたヒイロが、声をかけてきた。
「ゆっくり魔力を注ぐんだ。身体中に魔力を巡らせるように…。お前達は番だから、拒絶反応は無いはず…。焦らずリーンの体温か戻ってくるまで耐えるんだ!」
ヒイロがそう言うと、大地から蔦が何本も飛び出して来た。
「来たな…」
ルークはハッとした。
「ルーク、絶対に奪われるんじゃ無いぞ!」
ヒイロはそう言って魔法で杖を呼び出すと、それで蔦を叩き落とし始めた。
次々と大地から蔦が飛び出し、リーンを連れ去ろうと向かってくる。
…剣で切るわけにはいかないのか…。
ルークはリーンが言っていたことを思い出す。
『森の聖域』が仮死状態になったリーンを迎えに来たのだ。
いわば、リーンを死なせないために『森の聖域』へと連れて帰ろうとしているだけで、危害を加えるわけではない…。
ただ、記憶を無くしてしまうだけで…。
「リーンは俺達が死なせない!連れていかないでくれ!」
ルークは訴えた。
誰に言うでもなしに…誰に言えば良いのか分からず、そう叫んだ。
蔦はそれでも、ルークの『フィールド』内にも入ってきて、リーンを捕まえようとするのを必死に阻止する。
頼むから、連れていくな!
しかし蔦はルークの腕を掴み、リーンの足を掴み、しだいに二人は蔦が絡まり、身動き出来なくなってしまう。
それでもルークはリーンを離さず魔力を送り続けた。
「俺からリーンを奪わないでくれ!」
どれだけ、蔦とルークとヒイロの攻防が続いたのだろう…。
急に、蔦がほどけ、大地に消えていった…。
まるで何事も無かったかのように、蔦は姿を消したのだ。
「…大丈夫…なのか…?」
「…手を…引いた…?」
ルークとヒイロは顔を見合せた。
そして気が付く。
ルークの腕の中にいるリーンの体温が少し戻ってきていることを…心音が、聞こえることを…。
「…リーン…」
ルークはリーンを抱き締めた。
蔦が手を引いたのは、リーンの鼓動が戻ってきたからなのかも…。
大丈夫だと確信したから、手を引いてくれたのかもしれなかった。
「…帰ろう…リーン…」
ルークはリーンの漆黒の髪の毛を撫でた。
新しい『宿り木』の葉が、サワサワと風に揺られている。
今まで感じなかった、風を感じた…。
『風霊』がふわりとやってきて、リーンに触れ、どこかへと飛んでいく…。
『風霊』達も、ここへ来れるようになったのだ…。
もとに戻った大地や木々は、しだいに、この地を呑み込み、あの集落跡も森に帰るだろう…。
リーンが望んでいた通りに…。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる