280 / 462
神の宿り木~再生 3~
ミーネへの質問
しおりを挟む
ルークが目覚めると、隣で寝ているはずのリーンの姿が無かった。
「…リーン?」
ルークは身体を起こし、着替えると寝室から出て、リーンの気配を探したが、近くにはいないようだ。
ルークは、ここ数日のリーンの行動が、いつもと違って不安になっていた。
週末にはリオナスに戻るように言っていたのに、王都にいて、ジーンとユーリと買い物に行った。
それも、ジーンの誕生日には『魔法石の図鑑』、ユーリには魔法道具を贈るように手配して、二人に魔法石のペンダントを買ったと言う…。
それをジーンとユーリが嬉しそうに魔法通信を使ってまで、報告してくれた。
二人にプレゼントを贈ることは別に変ではない。
なかなか子供達との時間が取れずにいるから、たまには何か贈りたいという気持ちもわかる…。
…誕生日に贈る手配…リーンは『物質保管庫』を持っているのだから、そこに保管して、子供達の誕生日にリーンが贈れば良い筈なのだが…何かが引っ掛かっていた。
不意にコツンコツンと窓が叩かれた。
珍しい…『風霊』だ。
「何かあったのか…?」
ルークが扉を開けると、風霊はぐるぐるとルークの周りを回り、外に向かって指を指す。
「…あっちに行け、と言う意味か?」
魔法が使えるようになって、彼らの姿が見えるようになって、どれだけ見えないところで、助けられていたのかを知った。
何となく気が、そちらに向く…。
それらのほとんどが、彼らが何かを察し、見えないながらも助言してくれていたのだ…。
ルークは外に出て、風霊の後を追った。
風霊が案内する方向は、『宿り木』ミーネが鎮座する場所だ。
ルークは嫌な予感がした。
急ぎ足でミーネの元にたどり着くと、『宿り木』ミーネが姿を表した。
『…。』
だが、何も話さない…。
伝えたいことが有るから姿を表したのだろうが、沈黙を保っている。
…確か、こちらの質問に答えてくれる…だったか…。
リーンには普通に話していた気がするが、それはリーンが『宿り木』に寄り添う存在だからだろう。
「…何か、伝えたいことが有るのか?」
ルークがそう言うと、ミーネは答えた。
『何か聞きたいことが、あるのでは…』
…聞きたいこと…。
それはリーンの事…。
「…リーンは旅に出たのか?」
『はい。夜明け前に出ていきました』
「…そうか…。」
寝起きで頭が回転しない…。
だが、わざわざ風霊がミーネの元に呼んだと言うことは、何か聞いて欲しいことが有ると言うこと…。
…ミーネは質問に答えてくれる…。
その質問の仕方が重要だと、リーンは言っていた…。
「どこに向かった?」
『山小屋に』
…『山小屋』?
「…。何か言っていたか?」
『心が揺らぎそうで、長い旅に出たと思ってくれる。と』
「…。」
何が…ルークの不安を掻き立てる…。
…心が揺らぐ…?
…長い旅…?
ルークはハッとして、ミーネを見上げる。
「リーンは、どこへ、何をしに、何を持っていった!?」
ルークは怒鳴るようにミーネに訪ねる。
『『山小屋』に『宿り木の苗木』と『天水球』を持って、新たなる『宿り木』を植えに行った』
ミーネは静かにそう言ってルークを見る。
…『始まりの宿り木』のある、山小屋『オメガ』の事だ!
「…リーンは戻ってこれるのか?ここへ帰ってこれるのか!?」
それが肝心!
「一人では帰れない。魔力が尽き、深い眠りにつく」
ルークはそれを聞いて駆け出していた。
風霊は…ミーネは、ソレを伝えたかったのだ!
迎えに行かなければ、リーンは眠りにつくと…。
ソレを覚悟して、リーンは山小屋『オメガ』に向かったのだと…。
そして、リーンに聞いた事を思い出していた。
魔力の尽きかけた『宿り木』に、大切な人が『柱』となり『宿り木』を復活させ、近くの村の人族と獣人族達が守ってくれている大切な『宿り木』があるのだと…。
リーンはその『核』になる、魔力を与えるつもりだ!
『始まりの宿り木』の有る、あの一帯を復活させるために…。
ルークはさっきまで眠っていた小屋に戻り、急いでグオルクのリーンの部屋に繋がっている魔法陣を潜った。
*****
本来ならば、伝えるべきではない…。
人に干渉してはいけない…。
そうやって幾人もの人を見送ってきた。
時折、後悔しながら…。
『宿り木』ミーネは、駆け出していったルークの背中を見つめていた。
ミーネには、変則的な方法でしか、人族に答える権限は無い。
永い年月を得て、『宿り木』に宿ったミーネは、ある一定の人と意志疎通が出きるようになった。
リーンのように『宿り木』に寄り添い、『木霊』達に気に入られている人だけだが…。
ルークの事は、魔力を封じられていた子供の頃から知っていて、魔力が無くとも、剣で補うと、努力を重ねてきた少年時代を見ていた。
…ルークが成長する様子を見守っていたのだ。
そんなルークに魔力が戻ってくると、『魔力の番』が出来た。
それも『森の管理者』である、今の『リーン』だった。
二人の間に子供が生まれ、王子として忙しいながらにも、二人は幸せそうだった。
そのリーンは、自分の事には無頓着だ。
永い時間を生きているからかも知れないが、森を守ることが中心になっているため、いつも自分の事は後回しなのだ。
どれだけ周りが心配しても、膨大な魔力を持っているため、ある程度何とかなってきたのだ。
…だが…今回は…。
状況を聞いて知っているミーネにには不安しか無かった。
リーンの手助けをしたい…。
けれどミーネには『天水球』を全て持っていくように言うしかなかった。
ミーネは『宿り木』。
この場所からは動けない…。
だから、自分が動けない分、同じ様に大切だと感じているルークに伝えることしか出来ない…。
伝えなければ、後で後悔するのは、ミーネ自身なのだから…。
ミーネは祈った。
無事にリーンを連れて帰って来れることを…。
「…リーン?」
ルークは身体を起こし、着替えると寝室から出て、リーンの気配を探したが、近くにはいないようだ。
ルークは、ここ数日のリーンの行動が、いつもと違って不安になっていた。
週末にはリオナスに戻るように言っていたのに、王都にいて、ジーンとユーリと買い物に行った。
それも、ジーンの誕生日には『魔法石の図鑑』、ユーリには魔法道具を贈るように手配して、二人に魔法石のペンダントを買ったと言う…。
それをジーンとユーリが嬉しそうに魔法通信を使ってまで、報告してくれた。
二人にプレゼントを贈ることは別に変ではない。
なかなか子供達との時間が取れずにいるから、たまには何か贈りたいという気持ちもわかる…。
…誕生日に贈る手配…リーンは『物質保管庫』を持っているのだから、そこに保管して、子供達の誕生日にリーンが贈れば良い筈なのだが…何かが引っ掛かっていた。
不意にコツンコツンと窓が叩かれた。
珍しい…『風霊』だ。
「何かあったのか…?」
ルークが扉を開けると、風霊はぐるぐるとルークの周りを回り、外に向かって指を指す。
「…あっちに行け、と言う意味か?」
魔法が使えるようになって、彼らの姿が見えるようになって、どれだけ見えないところで、助けられていたのかを知った。
何となく気が、そちらに向く…。
それらのほとんどが、彼らが何かを察し、見えないながらも助言してくれていたのだ…。
ルークは外に出て、風霊の後を追った。
風霊が案内する方向は、『宿り木』ミーネが鎮座する場所だ。
ルークは嫌な予感がした。
急ぎ足でミーネの元にたどり着くと、『宿り木』ミーネが姿を表した。
『…。』
だが、何も話さない…。
伝えたいことが有るから姿を表したのだろうが、沈黙を保っている。
…確か、こちらの質問に答えてくれる…だったか…。
リーンには普通に話していた気がするが、それはリーンが『宿り木』に寄り添う存在だからだろう。
「…何か、伝えたいことが有るのか?」
ルークがそう言うと、ミーネは答えた。
『何か聞きたいことが、あるのでは…』
…聞きたいこと…。
それはリーンの事…。
「…リーンは旅に出たのか?」
『はい。夜明け前に出ていきました』
「…そうか…。」
寝起きで頭が回転しない…。
だが、わざわざ風霊がミーネの元に呼んだと言うことは、何か聞いて欲しいことが有ると言うこと…。
…ミーネは質問に答えてくれる…。
その質問の仕方が重要だと、リーンは言っていた…。
「どこに向かった?」
『山小屋に』
…『山小屋』?
「…。何か言っていたか?」
『心が揺らぎそうで、長い旅に出たと思ってくれる。と』
「…。」
何が…ルークの不安を掻き立てる…。
…心が揺らぐ…?
…長い旅…?
ルークはハッとして、ミーネを見上げる。
「リーンは、どこへ、何をしに、何を持っていった!?」
ルークは怒鳴るようにミーネに訪ねる。
『『山小屋』に『宿り木の苗木』と『天水球』を持って、新たなる『宿り木』を植えに行った』
ミーネは静かにそう言ってルークを見る。
…『始まりの宿り木』のある、山小屋『オメガ』の事だ!
「…リーンは戻ってこれるのか?ここへ帰ってこれるのか!?」
それが肝心!
「一人では帰れない。魔力が尽き、深い眠りにつく」
ルークはそれを聞いて駆け出していた。
風霊は…ミーネは、ソレを伝えたかったのだ!
迎えに行かなければ、リーンは眠りにつくと…。
ソレを覚悟して、リーンは山小屋『オメガ』に向かったのだと…。
そして、リーンに聞いた事を思い出していた。
魔力の尽きかけた『宿り木』に、大切な人が『柱』となり『宿り木』を復活させ、近くの村の人族と獣人族達が守ってくれている大切な『宿り木』があるのだと…。
リーンはその『核』になる、魔力を与えるつもりだ!
『始まりの宿り木』の有る、あの一帯を復活させるために…。
ルークはさっきまで眠っていた小屋に戻り、急いでグオルクのリーンの部屋に繋がっている魔法陣を潜った。
*****
本来ならば、伝えるべきではない…。
人に干渉してはいけない…。
そうやって幾人もの人を見送ってきた。
時折、後悔しながら…。
『宿り木』ミーネは、駆け出していったルークの背中を見つめていた。
ミーネには、変則的な方法でしか、人族に答える権限は無い。
永い年月を得て、『宿り木』に宿ったミーネは、ある一定の人と意志疎通が出きるようになった。
リーンのように『宿り木』に寄り添い、『木霊』達に気に入られている人だけだが…。
ルークの事は、魔力を封じられていた子供の頃から知っていて、魔力が無くとも、剣で補うと、努力を重ねてきた少年時代を見ていた。
…ルークが成長する様子を見守っていたのだ。
そんなルークに魔力が戻ってくると、『魔力の番』が出来た。
それも『森の管理者』である、今の『リーン』だった。
二人の間に子供が生まれ、王子として忙しいながらにも、二人は幸せそうだった。
そのリーンは、自分の事には無頓着だ。
永い時間を生きているからかも知れないが、森を守ることが中心になっているため、いつも自分の事は後回しなのだ。
どれだけ周りが心配しても、膨大な魔力を持っているため、ある程度何とかなってきたのだ。
…だが…今回は…。
状況を聞いて知っているミーネにには不安しか無かった。
リーンの手助けをしたい…。
けれどミーネには『天水球』を全て持っていくように言うしかなかった。
ミーネは『宿り木』。
この場所からは動けない…。
だから、自分が動けない分、同じ様に大切だと感じているルークに伝えることしか出来ない…。
伝えなければ、後で後悔するのは、ミーネ自身なのだから…。
ミーネは祈った。
無事にリーンを連れて帰って来れることを…。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。

けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる