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神の宿り木~再生 3~
ミーネへの質問
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ルークが目覚めると、隣で寝ているはずのリーンの姿が無かった。
「…リーン?」
ルークは身体を起こし、着替えると寝室から出て、リーンの気配を探したが、近くにはいないようだ。
ルークは、ここ数日のリーンの行動が、いつもと違って不安になっていた。
週末にはリオナスに戻るように言っていたのに、王都にいて、ジーンとユーリと買い物に行った。
それも、ジーンの誕生日には『魔法石の図鑑』、ユーリには魔法道具を贈るように手配して、二人に魔法石のペンダントを買ったと言う…。
それをジーンとユーリが嬉しそうに魔法通信を使ってまで、報告してくれた。
二人にプレゼントを贈ることは別に変ではない。
なかなか子供達との時間が取れずにいるから、たまには何か贈りたいという気持ちもわかる…。
…誕生日に贈る手配…リーンは『物質保管庫』を持っているのだから、そこに保管して、子供達の誕生日にリーンが贈れば良い筈なのだが…何かが引っ掛かっていた。
不意にコツンコツンと窓が叩かれた。
珍しい…『風霊』だ。
「何かあったのか…?」
ルークが扉を開けると、風霊はぐるぐるとルークの周りを回り、外に向かって指を指す。
「…あっちに行け、と言う意味か?」
魔法が使えるようになって、彼らの姿が見えるようになって、どれだけ見えないところで、助けられていたのかを知った。
何となく気が、そちらに向く…。
それらのほとんどが、彼らが何かを察し、見えないながらも助言してくれていたのだ…。
ルークは外に出て、風霊の後を追った。
風霊が案内する方向は、『宿り木』ミーネが鎮座する場所だ。
ルークは嫌な予感がした。
急ぎ足でミーネの元にたどり着くと、『宿り木』ミーネが姿を表した。
『…。』
だが、何も話さない…。
伝えたいことが有るから姿を表したのだろうが、沈黙を保っている。
…確か、こちらの質問に答えてくれる…だったか…。
リーンには普通に話していた気がするが、それはリーンが『宿り木』に寄り添う存在だからだろう。
「…何か、伝えたいことが有るのか?」
ルークがそう言うと、ミーネは答えた。
『何か聞きたいことが、あるのでは…』
…聞きたいこと…。
それはリーンの事…。
「…リーンは旅に出たのか?」
『はい。夜明け前に出ていきました』
「…そうか…。」
寝起きで頭が回転しない…。
だが、わざわざ風霊がミーネの元に呼んだと言うことは、何か聞いて欲しいことが有ると言うこと…。
…ミーネは質問に答えてくれる…。
その質問の仕方が重要だと、リーンは言っていた…。
「どこに向かった?」
『山小屋に』
…『山小屋』?
「…。何か言っていたか?」
『心が揺らぎそうで、長い旅に出たと思ってくれる。と』
「…。」
何が…ルークの不安を掻き立てる…。
…心が揺らぐ…?
…長い旅…?
ルークはハッとして、ミーネを見上げる。
「リーンは、どこへ、何をしに、何を持っていった!?」
ルークは怒鳴るようにミーネに訪ねる。
『『山小屋』に『宿り木の苗木』と『天水球』を持って、新たなる『宿り木』を植えに行った』
ミーネは静かにそう言ってルークを見る。
…『始まりの宿り木』のある、山小屋『オメガ』の事だ!
「…リーンは戻ってこれるのか?ここへ帰ってこれるのか!?」
それが肝心!
「一人では帰れない。魔力が尽き、深い眠りにつく」
ルークはそれを聞いて駆け出していた。
風霊は…ミーネは、ソレを伝えたかったのだ!
迎えに行かなければ、リーンは眠りにつくと…。
ソレを覚悟して、リーンは山小屋『オメガ』に向かったのだと…。
そして、リーンに聞いた事を思い出していた。
魔力の尽きかけた『宿り木』に、大切な人が『柱』となり『宿り木』を復活させ、近くの村の人族と獣人族達が守ってくれている大切な『宿り木』があるのだと…。
リーンはその『核』になる、魔力を与えるつもりだ!
『始まりの宿り木』の有る、あの一帯を復活させるために…。
ルークはさっきまで眠っていた小屋に戻り、急いでグオルクのリーンの部屋に繋がっている魔法陣を潜った。
*****
本来ならば、伝えるべきではない…。
人に干渉してはいけない…。
そうやって幾人もの人を見送ってきた。
時折、後悔しながら…。
『宿り木』ミーネは、駆け出していったルークの背中を見つめていた。
ミーネには、変則的な方法でしか、人族に答える権限は無い。
永い年月を得て、『宿り木』に宿ったミーネは、ある一定の人と意志疎通が出きるようになった。
リーンのように『宿り木』に寄り添い、『木霊』達に気に入られている人だけだが…。
ルークの事は、魔力を封じられていた子供の頃から知っていて、魔力が無くとも、剣で補うと、努力を重ねてきた少年時代を見ていた。
…ルークが成長する様子を見守っていたのだ。
そんなルークに魔力が戻ってくると、『魔力の番』が出来た。
それも『森の管理者』である、今の『リーン』だった。
二人の間に子供が生まれ、王子として忙しいながらにも、二人は幸せそうだった。
そのリーンは、自分の事には無頓着だ。
永い時間を生きているからかも知れないが、森を守ることが中心になっているため、いつも自分の事は後回しなのだ。
どれだけ周りが心配しても、膨大な魔力を持っているため、ある程度何とかなってきたのだ。
…だが…今回は…。
状況を聞いて知っているミーネにには不安しか無かった。
リーンの手助けをしたい…。
けれどミーネには『天水球』を全て持っていくように言うしかなかった。
ミーネは『宿り木』。
この場所からは動けない…。
だから、自分が動けない分、同じ様に大切だと感じているルークに伝えることしか出来ない…。
伝えなければ、後で後悔するのは、ミーネ自身なのだから…。
ミーネは祈った。
無事にリーンを連れて帰って来れることを…。
「…リーン?」
ルークは身体を起こし、着替えると寝室から出て、リーンの気配を探したが、近くにはいないようだ。
ルークは、ここ数日のリーンの行動が、いつもと違って不安になっていた。
週末にはリオナスに戻るように言っていたのに、王都にいて、ジーンとユーリと買い物に行った。
それも、ジーンの誕生日には『魔法石の図鑑』、ユーリには魔法道具を贈るように手配して、二人に魔法石のペンダントを買ったと言う…。
それをジーンとユーリが嬉しそうに魔法通信を使ってまで、報告してくれた。
二人にプレゼントを贈ることは別に変ではない。
なかなか子供達との時間が取れずにいるから、たまには何か贈りたいという気持ちもわかる…。
…誕生日に贈る手配…リーンは『物質保管庫』を持っているのだから、そこに保管して、子供達の誕生日にリーンが贈れば良い筈なのだが…何かが引っ掛かっていた。
不意にコツンコツンと窓が叩かれた。
珍しい…『風霊』だ。
「何かあったのか…?」
ルークが扉を開けると、風霊はぐるぐるとルークの周りを回り、外に向かって指を指す。
「…あっちに行け、と言う意味か?」
魔法が使えるようになって、彼らの姿が見えるようになって、どれだけ見えないところで、助けられていたのかを知った。
何となく気が、そちらに向く…。
それらのほとんどが、彼らが何かを察し、見えないながらも助言してくれていたのだ…。
ルークは外に出て、風霊の後を追った。
風霊が案内する方向は、『宿り木』ミーネが鎮座する場所だ。
ルークは嫌な予感がした。
急ぎ足でミーネの元にたどり着くと、『宿り木』ミーネが姿を表した。
『…。』
だが、何も話さない…。
伝えたいことが有るから姿を表したのだろうが、沈黙を保っている。
…確か、こちらの質問に答えてくれる…だったか…。
リーンには普通に話していた気がするが、それはリーンが『宿り木』に寄り添う存在だからだろう。
「…何か、伝えたいことが有るのか?」
ルークがそう言うと、ミーネは答えた。
『何か聞きたいことが、あるのでは…』
…聞きたいこと…。
それはリーンの事…。
「…リーンは旅に出たのか?」
『はい。夜明け前に出ていきました』
「…そうか…。」
寝起きで頭が回転しない…。
だが、わざわざ風霊がミーネの元に呼んだと言うことは、何か聞いて欲しいことが有ると言うこと…。
…ミーネは質問に答えてくれる…。
その質問の仕方が重要だと、リーンは言っていた…。
「どこに向かった?」
『山小屋に』
…『山小屋』?
「…。何か言っていたか?」
『心が揺らぎそうで、長い旅に出たと思ってくれる。と』
「…。」
何が…ルークの不安を掻き立てる…。
…心が揺らぐ…?
…長い旅…?
ルークはハッとして、ミーネを見上げる。
「リーンは、どこへ、何をしに、何を持っていった!?」
ルークは怒鳴るようにミーネに訪ねる。
『『山小屋』に『宿り木の苗木』と『天水球』を持って、新たなる『宿り木』を植えに行った』
ミーネは静かにそう言ってルークを見る。
…『始まりの宿り木』のある、山小屋『オメガ』の事だ!
「…リーンは戻ってこれるのか?ここへ帰ってこれるのか!?」
それが肝心!
「一人では帰れない。魔力が尽き、深い眠りにつく」
ルークはそれを聞いて駆け出していた。
風霊は…ミーネは、ソレを伝えたかったのだ!
迎えに行かなければ、リーンは眠りにつくと…。
ソレを覚悟して、リーンは山小屋『オメガ』に向かったのだと…。
そして、リーンに聞いた事を思い出していた。
魔力の尽きかけた『宿り木』に、大切な人が『柱』となり『宿り木』を復活させ、近くの村の人族と獣人族達が守ってくれている大切な『宿り木』があるのだと…。
リーンはその『核』になる、魔力を与えるつもりだ!
『始まりの宿り木』の有る、あの一帯を復活させるために…。
ルークはさっきまで眠っていた小屋に戻り、急いでグオルクのリーンの部屋に繋がっている魔法陣を潜った。
*****
本来ならば、伝えるべきではない…。
人に干渉してはいけない…。
そうやって幾人もの人を見送ってきた。
時折、後悔しながら…。
『宿り木』ミーネは、駆け出していったルークの背中を見つめていた。
ミーネには、変則的な方法でしか、人族に答える権限は無い。
永い年月を得て、『宿り木』に宿ったミーネは、ある一定の人と意志疎通が出きるようになった。
リーンのように『宿り木』に寄り添い、『木霊』達に気に入られている人だけだが…。
ルークの事は、魔力を封じられていた子供の頃から知っていて、魔力が無くとも、剣で補うと、努力を重ねてきた少年時代を見ていた。
…ルークが成長する様子を見守っていたのだ。
そんなルークに魔力が戻ってくると、『魔力の番』が出来た。
それも『森の管理者』である、今の『リーン』だった。
二人の間に子供が生まれ、王子として忙しいながらにも、二人は幸せそうだった。
そのリーンは、自分の事には無頓着だ。
永い時間を生きているからかも知れないが、森を守ることが中心になっているため、いつも自分の事は後回しなのだ。
どれだけ周りが心配しても、膨大な魔力を持っているため、ある程度何とかなってきたのだ。
…だが…今回は…。
状況を聞いて知っているミーネにには不安しか無かった。
リーンの手助けをしたい…。
けれどミーネには『天水球』を全て持っていくように言うしかなかった。
ミーネは『宿り木』。
この場所からは動けない…。
だから、自分が動けない分、同じ様に大切だと感じているルークに伝えることしか出来ない…。
伝えなければ、後で後悔するのは、ミーネ自身なのだから…。
ミーネは祈った。
無事にリーンを連れて帰って来れることを…。
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