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神の宿り木~再生 3~
『森の聖域』
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魔女王ソフィアが言っていた、満月が近づいている…。
魔法石が揃って、『宿り木の苗』を、カザナのお屋敷のミーネの元に取りに行くだけになっている…。
もう少し…もう少しだけ、時間がある…。
…あの魔法を使った後、どうなってしまうか分からない…。
魔力を使い果たし、再び深い眠りに付いてしまうのかもしれない…。
次に目覚めたとき、リーンで有る自信がない…。
それでも…『リーン』は長い時間を生きてきた…。
悔いはない。
…心残りがあるだけ…。
ジーンとユーリの成長をもう少し、見ていたかったな…。
装飾品を作るイサキ君と出会って、ジーンとユーリに初めてプレゼントを送った。
次の誕生日には、ジーンの元には『魔法石の図鑑』が届き、ユーリの元には魔力を制御する練習用の『魔法道具』が届く。
今、私にしてあげれる事はそれくらい…。
イサキ君がカザナへ移住するための段取りを終えると、リーンは王都を離れ、『森の聖域』に戻った。
深い森の魔素の強い場所…。
きっと仮死状態になれば、この森が『私』を眠りにつかせ、再び魔力を充電させて目覚める場所…。
『私』が目覚める場所…。
この森の入り口付近には、幾つか前の『私』が作った果樹園が有る。
ここに出入りできる獣人族の者達が管理して、村や町に持って帰り、魔力を多く含む果実の恩恵をもらっていると聞く。
ここは『私』がいなくても、誰かが管理してくれる…。
森の中心に、『世界樹』と呼ぶ大木がそびえ立つ。
多分、『私』が存在する前から、ここで大地を見守ってきているのだろう…。
大地に溜まりすぎた魔力を根から吸収して、葉から放出し、この辺一体の魔力濃度を上げている。
魔力の循環を担う大木の一つだ。
そして、『私』が眠っていた場所…眠る場所…。
…その近くに、二階建ての山小屋がひっそりと建てられている。
『私』がこの地で生活するのに不便が無いように建てられ、定期的に熊族が点検して補修してくれている。
何度も増築したり取り壊したりしながら存在する山小屋には、歴代の『私』が書いたとされる書物も幾つか有った。
本棚に並べられた本の、一番端から一冊取り出し、ページをめくって、何も書かれていないページにジーンとユーリにプレゼントを贈ることを書き込んだ。
これを書き始めたのは、『始まりの宿り木』の事から目覚めてから…。
ここで目覚めて、ヒイロと遊んで、この森を出て、いろんな村や町を巡り初めて…記憶の有る限り、覚えている事を書き始めた。
それはリーンの日記のような、覚え書きだった。
次の『私』がそれを読んで、興味を持って、会いに行ってくれたらな…そんな思いで書き始めていた。
それも、今日が最後かもしれない…。
リーンは本棚にしまうのを迷って、机の上に置いたままにした。
最初に読んでくれるように…。
山小屋から少し下ると、川が流れている。
少し上流に湧き水があり、そこから流れ出る水と、雨水が作り上げた、透明度の高い綺麗な川には魚が泳いでいて、ヒイロと一緒に捕まえて、焼いて食べた事を思い出す。
今思えば、ヒイロも魔力が高かったから、魔力の宿った魚を食べても平気だったのだと思う。
そうでなければ、魔力酔いをして動くことが出来なくなっていただろうからだ。
ここには『水霊』も『風霊』もたくさんいて、新しい魔法作りを手伝ってくれた。
『木霊』と『土霊』達は各地で採取してきた貴重な薬草や草花を、育てるのを手伝ってくれ、環境と土の合った場所を選らんでくれ、所々に薬草園が作られている。
それも全て、あの一冊に書き込んである。
あとは次の『私』次第だ…。
…そうだ。
『物質保管庫』を使えなくなるのは、もったいない…。
あの中には、乾燥させた薬草や魔法石、魔法道具など、便利な道具も入っている…。
…魔力の番である、ルークなら開けることが出来るかもしれない…。
…ルーク…。
まさか魔力の番になるなんて、思いもしなかった人。
そしてそのルークとの、子供まで産むことになるとは思いもしなかった…。
…歴代の『私』の中で、番を得たのも、子供を授かったのも、私が初めてだ。
…何か、変わったのだろうか…?
…『私』と言う存在が、何か変わっていくのだろうか…?
ここで少し魔力を補充して、ルークの元に戻ろう…。
残り少ない時間を、あの人と、のんびりと一緒に過ごしたい…。
魔法石が揃って、『宿り木の苗』を、カザナのお屋敷のミーネの元に取りに行くだけになっている…。
もう少し…もう少しだけ、時間がある…。
…あの魔法を使った後、どうなってしまうか分からない…。
魔力を使い果たし、再び深い眠りに付いてしまうのかもしれない…。
次に目覚めたとき、リーンで有る自信がない…。
それでも…『リーン』は長い時間を生きてきた…。
悔いはない。
…心残りがあるだけ…。
ジーンとユーリの成長をもう少し、見ていたかったな…。
装飾品を作るイサキ君と出会って、ジーンとユーリに初めてプレゼントを送った。
次の誕生日には、ジーンの元には『魔法石の図鑑』が届き、ユーリの元には魔力を制御する練習用の『魔法道具』が届く。
今、私にしてあげれる事はそれくらい…。
イサキ君がカザナへ移住するための段取りを終えると、リーンは王都を離れ、『森の聖域』に戻った。
深い森の魔素の強い場所…。
きっと仮死状態になれば、この森が『私』を眠りにつかせ、再び魔力を充電させて目覚める場所…。
『私』が目覚める場所…。
この森の入り口付近には、幾つか前の『私』が作った果樹園が有る。
ここに出入りできる獣人族の者達が管理して、村や町に持って帰り、魔力を多く含む果実の恩恵をもらっていると聞く。
ここは『私』がいなくても、誰かが管理してくれる…。
森の中心に、『世界樹』と呼ぶ大木がそびえ立つ。
多分、『私』が存在する前から、ここで大地を見守ってきているのだろう…。
大地に溜まりすぎた魔力を根から吸収して、葉から放出し、この辺一体の魔力濃度を上げている。
魔力の循環を担う大木の一つだ。
そして、『私』が眠っていた場所…眠る場所…。
…その近くに、二階建ての山小屋がひっそりと建てられている。
『私』がこの地で生活するのに不便が無いように建てられ、定期的に熊族が点検して補修してくれている。
何度も増築したり取り壊したりしながら存在する山小屋には、歴代の『私』が書いたとされる書物も幾つか有った。
本棚に並べられた本の、一番端から一冊取り出し、ページをめくって、何も書かれていないページにジーンとユーリにプレゼントを贈ることを書き込んだ。
これを書き始めたのは、『始まりの宿り木』の事から目覚めてから…。
ここで目覚めて、ヒイロと遊んで、この森を出て、いろんな村や町を巡り初めて…記憶の有る限り、覚えている事を書き始めた。
それはリーンの日記のような、覚え書きだった。
次の『私』がそれを読んで、興味を持って、会いに行ってくれたらな…そんな思いで書き始めていた。
それも、今日が最後かもしれない…。
リーンは本棚にしまうのを迷って、机の上に置いたままにした。
最初に読んでくれるように…。
山小屋から少し下ると、川が流れている。
少し上流に湧き水があり、そこから流れ出る水と、雨水が作り上げた、透明度の高い綺麗な川には魚が泳いでいて、ヒイロと一緒に捕まえて、焼いて食べた事を思い出す。
今思えば、ヒイロも魔力が高かったから、魔力の宿った魚を食べても平気だったのだと思う。
そうでなければ、魔力酔いをして動くことが出来なくなっていただろうからだ。
ここには『水霊』も『風霊』もたくさんいて、新しい魔法作りを手伝ってくれた。
『木霊』と『土霊』達は各地で採取してきた貴重な薬草や草花を、育てるのを手伝ってくれ、環境と土の合った場所を選らんでくれ、所々に薬草園が作られている。
それも全て、あの一冊に書き込んである。
あとは次の『私』次第だ…。
…そうだ。
『物質保管庫』を使えなくなるのは、もったいない…。
あの中には、乾燥させた薬草や魔法石、魔法道具など、便利な道具も入っている…。
…魔力の番である、ルークなら開けることが出来るかもしれない…。
…ルーク…。
まさか魔力の番になるなんて、思いもしなかった人。
そしてそのルークとの、子供まで産むことになるとは思いもしなかった…。
…歴代の『私』の中で、番を得たのも、子供を授かったのも、私が初めてだ。
…何か、変わったのだろうか…?
…『私』と言う存在が、何か変わっていくのだろうか…?
ここで少し魔力を補充して、ルークの元に戻ろう…。
残り少ない時間を、あの人と、のんびりと一緒に過ごしたい…。
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