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神の宿り木~再生 3~
イサキ 2 ~ペンダント~
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「…これは君が作ったの?」
イサキは急に声をかけられて驚いた。
「…そうだよ…」
返事をして、そのお客さんを見上げてさらに驚いた。
黒髪の不思議な雰囲気を持った綺麗な人だったからだ。
「細工が綺麗だね。…君くらいの子にプレゼントするとしたら、どんなモノが良い?」
黒髪の綺麗な人は、そんな事を聞いてきた。
自分くらいの子供がプレゼントされて、嬉しいもの…。
「…あんまり着けない…」
イサキは素直にそう答えた。
自分は作るからか、欲しいとは思わないのだ。
でも、それでは答えにならないのは知っている。
「…リングやブレスレットは邪魔になるし、ブローチや髪飾りは落としそうで…ペンダントくらいなら…着けるかも…」
「ペンダントか…」
黒髪の綺麗な人は並べられているペンダントを見る。
置いてある商品は、子供向きではない。
「…他に何か有る?…双子だから対になっているのとか、シンプルなものが良いんだけど…」
黒髪の綺麗な人がそう言ったので、イサキは横に置いてあった箱の中から試作品のペンダントトップだけを取り出した。
コインくらいの大きさの小さなクロスのペンダント。
その中心には魔法石が嵌め込まれている。
この人は気がつくのだろうか…。
「…これって…」
一目で気がついた!
「…たまに…家の近くの川に流れてくるんだ…。小さすぎて使えないのか、加工した後の欠片が流れ着いたのか分からないけど…ほんのり光って見えるんだ」
イサキは、この魔法石の説明をした。
それも、親切なお客さんと考えた疑われないための答え…。
「他のも見せてくれる?」
黒髪の綺麗な人がそう言ったので、箱の蓋に布を敷いて並べて置いた。
雫の形をした丸い部分に魔法石が嵌め込まれた物、丸の中心に魔法石、大小縦に並んだ魔法石、剣の形にくびれに魔法石…など、いろんな形…。
思い付く限りを形にしたものだ。
黒髪の綺麗な人が、剣の形と雫の形を手に取り、
「これを下さい」
と、差し出してきて、イサキは驚いてその人を見上げた。
そんなつもりで見せたのではない…。
「…これは…試作品で…売れるような商品ではない…」
イサキは少し困って、どうしようかと首をかしげた。
試作品だからまだ、磨きが足りない…。
…それに、欲しいと言ってくれるとは思わなかった…。
「でもこれ、気に入ったんだ」
「…もう少し…待ってくれますか」
イサキは苦笑いした。
それでも気に入ってくれて、買ってくれるなら…。
「…せめて、なっとくのいくだけ磨きたい…」
…まだ完成品では無いと言うことを、分かってくれるだろうか…。
「良いよ。…でも、週末までに出来るかな?王都から離れるから…」
黒髪の綺麗な人はそう言って、イサキにペンダントトップを渡してきた。
王都を離れるのなら旅行者なのかもしれない。
週末までなら何とかなるだろう…。
「はい。それまでには」
イサキは頬を染めて頷いた。
今まで作った事の無い作品が、試作品とは言え評価されるのは嬉しかった。
「私の名前はリーン。…週末もこの辺にいる?」
「はい、今時分には。…僕の名前はイサキです」
黒髪のリーンさんは微笑んで、腰に着けたポーチの中から魔法石の欠片を差し出してきた。
川から流れてきたのでは無いので、でこぼこと角張った、指が二個分くらいの魔法石だ。
イサキはそれを見て驚いた。
こんな無造作に魔法石を持っていて良いのか?
「これは前金。もし、取りに来れなかったら、代理人に頼むから、取っといてね」
イサキは差し出した魔法石をじっと見て、リーンさんの顔を交互に見る。
「…これって…」
イサキがそう訪ねると、リーンさんは微笑んだ。
魔法石だと気が付くか、試されたのだろうか。
「ちゃんと取りに来るって保証も兼ねてだから受け取って」
「…でも…」
イサキは戸惑いながらリーンを見る。
こんな高価なものを持っていて、盗んだと思われないだろうか、心配になってきた。
「…そうだね。疑われるのも嫌だから、メッセージを付けておくよ」
イサキの不安に気が付いたのか、リーンさんはそう言って小さな魔法でメモを作りだし、『イサキへ。リーンより』と書いて、魔法石に張り付けてくれた。
目の前で簡単に魔法を扱うので、かなりの使い手なのだろう。
「誰かに何か言われたら、『リーンにもらった。メッセージが張り付けてある』って言えば良いから。分かる人には分かるから安心して」
リーンさんはそう言ってイサキの手に魔法石の欠片を納めて、微笑んでくれた。
「また、週末にね」
リーンさんはそう言って、イサキの側を離れ、敷物を敷いて店を出している他のところも覗きながら、歩いて行った。
イサキは茫然として、手にした魔法石の欠片を見て、姿が見えなくなったリーンさんの向かった方を見た。
ありがとうございます。
必ず週末までに仕上げて持ってきます。
イサキは魔法石の欠片を布でくるみ、頼まれたペンダントトップと一緒に箱の中にしまった。
イサキは急に声をかけられて驚いた。
「…そうだよ…」
返事をして、そのお客さんを見上げてさらに驚いた。
黒髪の不思議な雰囲気を持った綺麗な人だったからだ。
「細工が綺麗だね。…君くらいの子にプレゼントするとしたら、どんなモノが良い?」
黒髪の綺麗な人は、そんな事を聞いてきた。
自分くらいの子供がプレゼントされて、嬉しいもの…。
「…あんまり着けない…」
イサキは素直にそう答えた。
自分は作るからか、欲しいとは思わないのだ。
でも、それでは答えにならないのは知っている。
「…リングやブレスレットは邪魔になるし、ブローチや髪飾りは落としそうで…ペンダントくらいなら…着けるかも…」
「ペンダントか…」
黒髪の綺麗な人は並べられているペンダントを見る。
置いてある商品は、子供向きではない。
「…他に何か有る?…双子だから対になっているのとか、シンプルなものが良いんだけど…」
黒髪の綺麗な人がそう言ったので、イサキは横に置いてあった箱の中から試作品のペンダントトップだけを取り出した。
コインくらいの大きさの小さなクロスのペンダント。
その中心には魔法石が嵌め込まれている。
この人は気がつくのだろうか…。
「…これって…」
一目で気がついた!
「…たまに…家の近くの川に流れてくるんだ…。小さすぎて使えないのか、加工した後の欠片が流れ着いたのか分からないけど…ほんのり光って見えるんだ」
イサキは、この魔法石の説明をした。
それも、親切なお客さんと考えた疑われないための答え…。
「他のも見せてくれる?」
黒髪の綺麗な人がそう言ったので、箱の蓋に布を敷いて並べて置いた。
雫の形をした丸い部分に魔法石が嵌め込まれた物、丸の中心に魔法石、大小縦に並んだ魔法石、剣の形にくびれに魔法石…など、いろんな形…。
思い付く限りを形にしたものだ。
黒髪の綺麗な人が、剣の形と雫の形を手に取り、
「これを下さい」
と、差し出してきて、イサキは驚いてその人を見上げた。
そんなつもりで見せたのではない…。
「…これは…試作品で…売れるような商品ではない…」
イサキは少し困って、どうしようかと首をかしげた。
試作品だからまだ、磨きが足りない…。
…それに、欲しいと言ってくれるとは思わなかった…。
「でもこれ、気に入ったんだ」
「…もう少し…待ってくれますか」
イサキは苦笑いした。
それでも気に入ってくれて、買ってくれるなら…。
「…せめて、なっとくのいくだけ磨きたい…」
…まだ完成品では無いと言うことを、分かってくれるだろうか…。
「良いよ。…でも、週末までに出来るかな?王都から離れるから…」
黒髪の綺麗な人はそう言って、イサキにペンダントトップを渡してきた。
王都を離れるのなら旅行者なのかもしれない。
週末までなら何とかなるだろう…。
「はい。それまでには」
イサキは頬を染めて頷いた。
今まで作った事の無い作品が、試作品とは言え評価されるのは嬉しかった。
「私の名前はリーン。…週末もこの辺にいる?」
「はい、今時分には。…僕の名前はイサキです」
黒髪のリーンさんは微笑んで、腰に着けたポーチの中から魔法石の欠片を差し出してきた。
川から流れてきたのでは無いので、でこぼこと角張った、指が二個分くらいの魔法石だ。
イサキはそれを見て驚いた。
こんな無造作に魔法石を持っていて良いのか?
「これは前金。もし、取りに来れなかったら、代理人に頼むから、取っといてね」
イサキは差し出した魔法石をじっと見て、リーンさんの顔を交互に見る。
「…これって…」
イサキがそう訪ねると、リーンさんは微笑んだ。
魔法石だと気が付くか、試されたのだろうか。
「ちゃんと取りに来るって保証も兼ねてだから受け取って」
「…でも…」
イサキは戸惑いながらリーンを見る。
こんな高価なものを持っていて、盗んだと思われないだろうか、心配になってきた。
「…そうだね。疑われるのも嫌だから、メッセージを付けておくよ」
イサキの不安に気が付いたのか、リーンさんはそう言って小さな魔法でメモを作りだし、『イサキへ。リーンより』と書いて、魔法石に張り付けてくれた。
目の前で簡単に魔法を扱うので、かなりの使い手なのだろう。
「誰かに何か言われたら、『リーンにもらった。メッセージが張り付けてある』って言えば良いから。分かる人には分かるから安心して」
リーンさんはそう言ってイサキの手に魔法石の欠片を納めて、微笑んでくれた。
「また、週末にね」
リーンさんはそう言って、イサキの側を離れ、敷物を敷いて店を出している他のところも覗きながら、歩いて行った。
イサキは茫然として、手にした魔法石の欠片を見て、姿が見えなくなったリーンさんの向かった方を見た。
ありがとうございます。
必ず週末までに仕上げて持ってきます。
イサキは魔法石の欠片を布でくるみ、頼まれたペンダントトップと一緒に箱の中にしまった。
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