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神の宿り木~再生 3~
原石の少年
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リーンはだいぶん悩んで、でも、ピンと来たものがなくて、魔法道具街から商店街の方に戻って歩き出すと、建物の角で道端に布を敷いてアクセサリーを販売している少年がいた。
来るときには見なかったが、後からここに来て、店を広げているのかも知れない。
よく見れば、建物に沿って点々と敷物を敷いて、日用品や魔法道具を並べている者達がいる。
…何か掘り出し物が有るかもしれない。
リーンは少年の並べているアクセサリーを見た。
手作り感のあるペンダントや髪飾り、リング、ブレスレットなどどれも細かい細工が施してあった。
「…これは君が作ったの?」
リーンが声をかけると、少年は驚いて目を丸くしている。
「…そうだよ…」
「細工が綺麗だね。…君くらいの子にプレゼントするとしたら、どんなモノが良い?」
リーンはこの際だからと、聞いてみた。
「…あんまり着けない…」
少年は素直にそう答えた。
「…リングやブレスレットは邪魔になるし、ブローチや髪飾りは落としそうで…ペンダントくらいなら…着けるかも…」
「ペンダントか…」
リーンは並べられているペンダントを見る。
どれも細工が細かいが、子供達向きではない。
「…他に何か有る?…双子だから対になっているのとか、シンプルなものが良いんだけど…」
リーンがそう言うと、少年は横に置いてあった箱の中からペンダントトップだけを取り出した。
コインくらいの大きさの小さなクロスのペンダント。
その中心には魔法石が嵌め込まれていた。
「…これって…」
「…たまに…家の近くの川に流れてくるんだ…。小さすぎて使えないのか、加工した後の欠片が流れ着いたのか分からないけど…ほんのり光って見えるんだ」
この魔法石は本物だ。
そしてそれを見つけることが出来る目を持ったこの少年も、磨けば輝く原石だ。
「他のも見せてくれる?」
リーンがそう言うと、箱の蓋に布を敷いて並べてくれた。
雫の形をした丸い部分に魔法石が嵌め込まれていたり、丸の中心に魔法石、大小縦に並んだ魔法石、剣の形に括れに魔法石…など、いろんな形があってリーンは迷ってしまった。
ユーリは剣を習い始めたと言うから、剣の形。
ジーンは…雫の形…かな…。
リーンは二つを手に取り、買うことに決めた。
「これを下さい」
リーンが差し出すと、少年は驚いてリーンを見てくる。
「…これは…試作品で…売れるような商品ではない…」
少年は少し困ったように首をかしげた。
…買ってくれるとは思っていなかったのだろう…。
「でもこれ、気に入ったんだ」
「…もう少し…待ってくれますか」
少年は苦笑いする。
「…せめて、なっとくのいくだけ磨きたい…」
…まだ、完成品では無いと言うことか…。
「良いよ。…でも、週末までに出来るかな?王都から離れるから…」
リーンはそう言って少年にペンダントトップを渡した。
週末にジーンとユーリと買い物をして、翌日、二人が学校に行っている間に、王都を離れようと思っているからだ。
「はい。それまでには」
少年は頬を染めて頷いた。
「私の名前はリーン。…週末もこの辺にいる?」
「はい、今時分には。…僕の名前はイサキです」
リーンは微笑んで腰に着けたポーチの中から魔法石の欠片を差し出した。
川から流れてきたのでは無いので、でこぼこと角張った、指が二個分くらいの魔法石だ。
「これは前金。もし、取りに来れなかったら、代理人に頼むから、取っといてね」
少年は差し出した魔法石をじっと見て、リーンの顔を交互に見る。
「…これって…」
リーンは微笑む。
イサキは魔法石だと気がついている。
「ちゃんと取りに来るって保証も兼ねてだから受け取って」
「…でも…」
イサキは戸惑いながらリーンを見る。
「…そうだね。疑われるのも嫌だから、メッセージを付けておくよ」
イサキが、高価な魔法石の原石を盗んできたと思われるのは嫌だ。
リーンはそう言って小さな魔法でメモを作りだし、『イサキへ。リーンより』と書いて、魔法石に張り付ける。
「誰かに何か言われたら、『リーンにもらった。メッセージが張り付けてある』って言えば良いから。分かる人には分かるから安心して」
リーンはそう言ってイサキの手に納めた。
カザンナ王国の第三王子ルークの番の名前は、貴族や警備隊の者達には知られている。
一般の住民にはあまり知られていないが、何かあればすぐに連絡が来るだろう。
何も連絡が来ない方が良いが…。
「また、週末にね」
リーンはそう言って、イサキの側を離れ、敷物を敷いて店を出している他のところも覗いていった。
来るときには見なかったが、後からここに来て、店を広げているのかも知れない。
よく見れば、建物に沿って点々と敷物を敷いて、日用品や魔法道具を並べている者達がいる。
…何か掘り出し物が有るかもしれない。
リーンは少年の並べているアクセサリーを見た。
手作り感のあるペンダントや髪飾り、リング、ブレスレットなどどれも細かい細工が施してあった。
「…これは君が作ったの?」
リーンが声をかけると、少年は驚いて目を丸くしている。
「…そうだよ…」
「細工が綺麗だね。…君くらいの子にプレゼントするとしたら、どんなモノが良い?」
リーンはこの際だからと、聞いてみた。
「…あんまり着けない…」
少年は素直にそう答えた。
「…リングやブレスレットは邪魔になるし、ブローチや髪飾りは落としそうで…ペンダントくらいなら…着けるかも…」
「ペンダントか…」
リーンは並べられているペンダントを見る。
どれも細工が細かいが、子供達向きではない。
「…他に何か有る?…双子だから対になっているのとか、シンプルなものが良いんだけど…」
リーンがそう言うと、少年は横に置いてあった箱の中からペンダントトップだけを取り出した。
コインくらいの大きさの小さなクロスのペンダント。
その中心には魔法石が嵌め込まれていた。
「…これって…」
「…たまに…家の近くの川に流れてくるんだ…。小さすぎて使えないのか、加工した後の欠片が流れ着いたのか分からないけど…ほんのり光って見えるんだ」
この魔法石は本物だ。
そしてそれを見つけることが出来る目を持ったこの少年も、磨けば輝く原石だ。
「他のも見せてくれる?」
リーンがそう言うと、箱の蓋に布を敷いて並べてくれた。
雫の形をした丸い部分に魔法石が嵌め込まれていたり、丸の中心に魔法石、大小縦に並んだ魔法石、剣の形に括れに魔法石…など、いろんな形があってリーンは迷ってしまった。
ユーリは剣を習い始めたと言うから、剣の形。
ジーンは…雫の形…かな…。
リーンは二つを手に取り、買うことに決めた。
「これを下さい」
リーンが差し出すと、少年は驚いてリーンを見てくる。
「…これは…試作品で…売れるような商品ではない…」
少年は少し困ったように首をかしげた。
…買ってくれるとは思っていなかったのだろう…。
「でもこれ、気に入ったんだ」
「…もう少し…待ってくれますか」
少年は苦笑いする。
「…せめて、なっとくのいくだけ磨きたい…」
…まだ、完成品では無いと言うことか…。
「良いよ。…でも、週末までに出来るかな?王都から離れるから…」
リーンはそう言って少年にペンダントトップを渡した。
週末にジーンとユーリと買い物をして、翌日、二人が学校に行っている間に、王都を離れようと思っているからだ。
「はい。それまでには」
少年は頬を染めて頷いた。
「私の名前はリーン。…週末もこの辺にいる?」
「はい、今時分には。…僕の名前はイサキです」
リーンは微笑んで腰に着けたポーチの中から魔法石の欠片を差し出した。
川から流れてきたのでは無いので、でこぼこと角張った、指が二個分くらいの魔法石だ。
「これは前金。もし、取りに来れなかったら、代理人に頼むから、取っといてね」
少年は差し出した魔法石をじっと見て、リーンの顔を交互に見る。
「…これって…」
リーンは微笑む。
イサキは魔法石だと気がついている。
「ちゃんと取りに来るって保証も兼ねてだから受け取って」
「…でも…」
イサキは戸惑いながらリーンを見る。
「…そうだね。疑われるのも嫌だから、メッセージを付けておくよ」
イサキが、高価な魔法石の原石を盗んできたと思われるのは嫌だ。
リーンはそう言って小さな魔法でメモを作りだし、『イサキへ。リーンより』と書いて、魔法石に張り付ける。
「誰かに何か言われたら、『リーンにもらった。メッセージが張り付けてある』って言えば良いから。分かる人には分かるから安心して」
リーンはそう言ってイサキの手に納めた。
カザンナ王国の第三王子ルークの番の名前は、貴族や警備隊の者達には知られている。
一般の住民にはあまり知られていないが、何かあればすぐに連絡が来るだろう。
何も連絡が来ない方が良いが…。
「また、週末にね」
リーンはそう言って、イサキの側を離れ、敷物を敷いて店を出している他のところも覗いていった。
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